葬儀業界M&A:2024年以降のM&Aの今後・ポイント・動向を解説
- 葬祭業 M&Aレポート
皆様こんにちは。船井総合研究所M&A支援部です。
今回は、2024年以降の葬儀業界のM&Aがどのようになっていくのか、また2023年の葬祭業界を振り返りながら、M&Aが加速した要因について振り返ってみます。
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2023年の葬祭業界・葬儀社のM&Aの振り返り
2023年はコロナの影響がひと段落し単価ももとに戻ってきた一年でした。2022年は2021年の死亡者数減の反動で、全国的に死亡者が多かったのですが、2023年の死亡者数は全国的に落ち着いていたように感じます。一般的な業界相場として、斎場別の年間葬儀施行件数が100件を超えるとハイパフォーマンス・高い稼働率を確保している葬儀社様となります。自社の斎場の葬儀件数が100件を超えた会社様、回復基調にある会社様もいらっしゃると思われます。
ただし、業界を取り巻く構造的な問題はコロナ前から変わっておらず、むしろ課題感が増している点が現状です。
その中で葬儀業界におけるM&Aは2023年の後半活発になってきました。
代表的なM&Aで言いますと
2023年12月にティア様(本社:愛知県)が、日本産業推進機構様(NSSK)というファンドがご投資されていた、東海典礼様(本社:愛知県)・八光殿様(本社:大阪府)をグループ化されました。
時は同じくして、別のファンドがご投資されていた天光社様(本社:福岡県)の株式を日本企業成長投資様(NIC)が譲り受けられたり、セレモア様(本社:東京都)がPEファンドであるライジング・ジャパン・エクイティ様に株を譲渡されたり、と葬儀業界の中堅・大手の会社がM&Aをされるケースが多くなってきました。
2024年の葬祭業界のM&A
葬儀業界のM&Aの流れは2024年も継続して起こっており、3月には富士葬祭様(本社:沖縄県)を天光社の株を所有するPEファンド、NIC様がM&Aをされております。
そここでは名前を上げることはできませんが、他にも地域密着型の葬儀社同士のM&Aなど葬儀業界のM&Aは活発になっております。
なぜ、葬儀業界のM&Aは活発化しているのか
葬儀業界のM&Aが活発化している背景には3つの要因があります。
①オーナー様の高齢化 ②2040年問題 ③業界再編
が、その要因となっております。一つ一つ見ていきましょう。
①オーナー様の高齢化
現在、国内の中小企業約300万社のうち、オーナー経営者様の平均年齢は66歳で事業承継のニーズが増加しております。なかでもオーナー経営者様のご年齢が60歳以上の会社のうち、後継者が不在とされる企業数は48%を超えています。
葬儀業界でもオーナー様の高齢化、そして後継者がいないというケースは例外ではありません。今までは先祖代々から引き継いで経営してきたが、子息・ご令嬢が不在、もしくは、いるけれども違う職業についており戻ってこないというお話を伺います。
②2040年問題
今後の葬祭業界の市場動向を俯瞰するうえで欠かせない指標が死亡人口です。現在の死亡人口は、国内の高齢者人口にともなって増加傾向にあります。しかし、2040年頃から死亡人口が減少傾向になると推測されます。2040年、つまり現在から凡そ15年後にはマーケットのパイが減少に転じることになります。
事業承継の局面では、ご子息・ご令嬢がいるものの、M&Aを通じて第三者に譲渡するというケースが増加しています。現在15歳の息子様がいらっしゃっても、2040年には30歳前後になります。そこで経営者のバトンを引き渡しても、いばらの道が待っているのは誰の目から見ても明白です。M&Aで資本力のある大手に経営を委ねるという選択をされるオーナー経営者様も増えています。
近年、葬儀社様の譲渡主で一番、船井総研にご相談が多いのが45歳前後の経営者様(息子様が中学生)です。
今、業績の良いタイミングで大手と手を組むことでより企業を成長させていこう、という考えられるケースが増えてきています。
③葬儀業界再編
前述のとおり2023年の年末を皮切りに葬儀業界は再編時期に入ったと言えます。大手のグループに中堅が入っていったり、2024年9月には燦ホールディングス様(公益社)と、きずなホールディングス様(ファミーユ)が同じグループになりました。
葬儀業界は地域密着型のビジネスであり、かつ、施設ビジネスでもあるため、式場の出店スピードが大きく業績に影響を与えると言っても過言ではありません。
自社単体で出店しながら行っていくよりも他社と一緒になってビジネスを展開していく方が、より効率的に展開することが可能となるビジネスでもあります。
一社単独のノウハウではなく、複数の企業が手を組みグループでシナジーを生みながら展開していくことで、より自社の業績を伸ばす可能性があります。
まとめ:葬儀業界の動向とM&A
2040年問題、つまりマーケットの縮小を見越した時に企業が生き残るための主な方策はエリア拡大か別事業への展開になります。
家族葬の台頭に代表されるように、近年の葬儀単価は減少傾向となります。葬儀単価が100万円を超えるような一般葬が減り、一日葬や直葬・火葬が増えたとお感じのオーナー経営者様も多いと思います。特にコロナが拡大した2020年以降は感染拡大を抑えるため少ない参列者で葬儀を行いたい、小規模で執り行わざるを得ない、という事情もあいまって、葬儀単価減少に拍車がかかったと言えます。
売上を確保するには、葬儀単価か施行件数の二軸が考えられます。上記のように葬儀単価が減少傾向の場合、施行件数を増やせるか、が問われますが、競合との競争が激しくなるなかで、施行件数の改善も限度がみられます。
こうしたときに、自力出店と比較し少ない持ち出しで新規出店が可能となるM&Aは非常に有効です。自力出店と比較し、投資回収期間が短くて済む、スピードも買うことができる、というM&Aのメリットは葬祭業界でも極めて有効です。
税務監査・財務コンサルティングの業務経験に加え、事業承継・事業再生コンサルティングの成功経験を多く持つ。2017年10月に船井総研中途入社後、M&Aコンサルティングにより22件の案件成約を担当。 現在、船井総研における事業承継・M&Aコンサルティングの中核的な役割を担う。
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