開業医の高齢化、勤務医割合の増加、後継者不足による黒字廃院が進み、67,000件を切った歯科医院のM&Aの振り返りをしたいと思います。
2023年歯科医院開設数は1454件、廃止数は2037件
※厚生労働省医道審議会統計より船井総研あがたFASグラフ作成
上記は2023年の数字ですが、2017年に初めて廃止数が開設数を上回ったときから、2019年、2020年(コロナの影響も大)、2022年も廃止数が上回っており、歯科医院数の減少が常態化し始めています。その背景には歯科医師数と、開業意向の変化が挙げられます。
2024年の歯科医師合格者数2060名
歯科医師勤務医割合2008年25.2%➡2024年31.8%
歯科開設者平均年齢1994年48.9歳➡2022年59.1歳

※厚生労働省医道審議会統計より船井総研あがたFASグラフ作成
歯科医師数は2014年以降毎年2000名の推移となっており、それ以前の約2割減となっております。また歯科医師になっても開業せずに、勤務医として活躍するキャリアを選ぶ先生も増えてきており、開設数よりも廃止数が多くなる業界構造になっています。
※厚生労働省医師・歯科医師・薬剤師調査の概況より
加えて、1994年時点では診療所開設者の平均年齢48.9歳でしたが、2022年時点では59.1歳と、平均10歳高齢化しています。開業意向ドクターは減少しているにもかかわらず事業承継ニーズは激増しているという難しい課題を歯科業界は抱えており、早急に対策を講じる必要が出てきています。
※厚生労働省医療施設調査より
2024年の後継者動向について
帝国データバンク社が毎年公表している「全国「後継者不在率」動向調査(2024年11月12日)」より、新代表(後継者)の属性が発表されていました。内部昇格による就任がTOPで36.4%、同族承継が‐3.8ポイントの32.2%、M&Aほかが+1.1ポイントの20.5%でした。
2023年時点では内部昇格が34.4%、同族承継36%、M&Aほかが19.4%だったことを鑑みると、出口戦略の幅が広くなっていることを実感します。当動向調査では、中小企業・会社が対象となっておりますが、歯科医院でも、今までは親族内承継が当たり前だったけれど、インターネットの普及や働き方の多様化に伴い、ご子息が別の道を歩まれるケースもよく聞きます。
特に歯科経営者からは
「息子・娘が歯科医師にならないことが確定しました。廃業かM&Aかどう思いますか…」
「息子・娘が歯科医師になってくれたはいいのですが、大手法人で勤務医していて、そこがとても充実しているらしく帰ってくる見込みがなさそうです…」
「息子・娘が独立開業することが確定しました。廃業を検討しています。」
そういったお声をいただくことが増えています。
歯科経営者にとってのM&A(第3者承継)
昨年の秋に出た、歯科M&Aにまつわる週刊誌をご覧になった方も多いのではないでしょうか。歯科のM&Aを実行された大規模法人の譲渡側歯科医師の安堵した様子が描かれており、譲受側から好感される歯科医院・医療法人の特徴などもまとめられていて、参考になる部分もあったのではないかと思います。
一方で、自院はどうなのか、自分はまだ働きたいのだが譲受側次第では働き口を失うことにもなるのではないか、そういったご不安もよく聞きます。実際のところ、M&Aにおいて、相手方と細かく条件を定めていきますので、一方がどうしても納得できない条件でM&Aが成立することはあり得ません。譲渡対価の金額や、支払方法、従業員の雇用について、経営権が移った後の経営方針の確認や、譲渡側の先生のこれからの働き方と報酬体系、事業・サービス形態についてなど、双方が希望を出し、納得できる形で最終契約をまとめますので、そこは相手方との話し合いにつきます。
歯科のM&Aに関しては、告示の義務がありませんので正確な数は不明ですが、ここ数年で明らかにM&Aの相談数、M&Aを用いて成長していこうとする譲受側の数が増えてきています。おそらく年間100医院ほどはM&Aが実行されているのではないかと思います。
ファンドや一般社団法人、他業種からのアプローチも増えてきている中、魅力があるけれども後継者がいない歯科医院・法人の出口戦略にとって、M&Aは必要不可欠な存在になると確信しております。スタッフの流動性も高まりさらなる採用難が押し寄せる2025年以降も、歯科のM&Aの数は増え続けていくのは間違いないので、今の内から様々な情報を収集しておくことをお勧めします。
弊社では歯科専門のコンサルタントが、歯科M&Aのサポートをさせていただいております。いつでもお気軽にご相談くださいませ。先生のこれからに寄与できますと幸いです。

歯科のM&Aに関するより詳しい情報は、下記の記事をご参照ください。
1.歯科医院M&AのTOP
2.歯科のM&A事例
3.歯科のM&Aの失敗事例
4.歯科のM&Aのメリット・デメリット
5.歯科のM&Aのポイント
6.歯科のM&Aの特徴
7.歯科のM&Aの譲渡対価の相場観
8.歯科のM&Aの注意点
