歯科のM&Aにおける注意点についてまとめます。歯科のM&Aのプロセスで確認すべき点、譲渡側が必要となる費用、意外と知られていない注意点についてまとめます。
歯科M&Aのプロセスを理解しておく

M&Aにかかる所要期間は半年~2年ほど
一般的な歯科医院のM&Aのプロセスは上図の通りです。半年で最終契約締結まで至るケースもあれば、2年以上時間を要することもあります。いずれにせよ、余裕をもって検討することが、良いパートナーを見つけることにつながります。
企業価値算定の実施と、譲渡意思を固める
医院価値相場に納得できるか、他の選択肢を検討していないか。
まず最初に自院の医院価値算定を行い、譲渡対価の相場観を知ることが肝要です。譲渡対価の相場観に対して納得できるかどうかが、後の交渉においても大きな要素になりますので、納得できないのであればこの時点で別の出口戦略を検討されるのが良いです。
また、ご子息ご息女がいてもしかしたら継いでくれるかもしれないという状況でM&Aの話合いが始まると、交渉が終盤に近付くにつれて「やはり少し待ってくれないか」というお話しになりがちです。これは、真剣に譲受を考えているお相手に対して宜しくないことですので、M&Aを本格的に進める場合は他の出口戦略は選択肢から外していただくのが良いです。
特に、基本合意後のデューデリジェンスと呼ばれる監査に関しては、譲受側が100万単位の費用を負担して実施します。デューデリジェンスを実施した後、最終交渉で譲渡側の一方的な理由による破談の場合、デューデリジェンスにかかった費用の負担を求められるケースもありますので、譲渡意思を固めることは重要なステップとなります。
譲受候補への打診とTOP面談
過剰に良く見せた企業概要書はNG。企業概要書にも誠実さがにじみ出る
譲渡対価の相場観に納得し、譲渡意思を固めた次は、M&A専門家が譲受候補先を挙げるので、その中から譲渡の話を伝えてよい先を確認していただきます。この段階で伝えてほしくない譲受候補先を、その理由と共に丁寧にご説明いただくことで、ご自身・自院にとってマッチしやすそうな譲受候補先の開拓にも繋がりますので、ここは専門家と時間を設けて確認していただくのが良いです。
上記を経た上で、専門家から対象候補先へ貴院の医院概要を説明します。医院概要の説明の質を高めるために、決算情報や医院の現状、従業員や業者との関係性などを専門家からヒアリングを受けると思いますが、ここを面倒くさがると後に譲受側が「聞いていたのと違う」と破談しますので協力しましょう。そして医院概要説明を受けた候補先が前向きに検討したいとなれば、代表者同士の面談と医院見学を行います。ここでお互いの考え方や、経営方針についてのQ&Aの実施、人となりを確認し合います。
基本合意とデューデリジェンス。そして最終合意締結
リスクを双方理解した上で、それでも一緒になれるかどうかを決断
TOP面談を経てお互いに良さそうだと感じたら、譲受側から意向表明書、基本合意契約が提示されるので、内容(譲渡対価や実施時期などが記載されている)をご確認の上、基本合意を締結します。ここからは当該相手と独占交渉に入ります。
譲受側は譲受後のリスクを低減するために、財務税務的なリスク(決算内容の正確性確認)、労務的なリスク(残業未払い等)、法務的なリスク(患者との訴訟を抱えていないか等)を事前に確認するデューデリジェンスを行います。ここでそれまで現れていなかったリスクが表面化した場合は、そこを加味して譲渡対価や最終合意契約内容に反映させます。デューデリジェンスを経て、最終的な譲渡対価と最終合意契約書が提示されるので、内容を確認し納得できれば最終合意します。最後に譲渡対価の受け取りと仲介者へのフィーを支払うクロージングを行い、晴れてM&Aは達成されます。
プロセス全体を理解しておくことで、お話の途中でのトラブルを減らすことができます。お互いに重要な決断を伴う内容ですので、出来る限り事前に全体像を理解されることをお勧めします。
歯科M&Aで譲渡側が必要となる費用を理解する
M&A専門家への報酬、リーガルチェック費用
譲渡側がM&Aを行うにあたって、フェアなM&Aを望むならM&A専門家は必要となります。譲受候補者の開拓と選定、譲渡対価や契約内容がフェアかどうかの確認をご自身で行えるなら必要になりませんが、経営者として臨床家として多忙を極める院長にその余裕があるかと言えば、ほぼ不可能だと思います。
M&A専門家とアドバイザリー契約を結ぶ場合、必要となってくる手数料としては一般的に「着手金・中間金・成功報酬」となります。また、契約内容が法的に問題ないか、過剰に譲受側に有利になっていないかを確認するためのリーガルチェック費用が必要となるケースも多いです。
※リーガルチェックで過剰に譲渡側有利にして譲受側に返送すると破断しかねないので、塩梅を理解するM&Aを得意とする弁護士先生に確認してもらいましょう。
M&A専門家への報酬
着手金・中間金・成功報酬とは
M&A専門家への手数料として一般的に必要となるのは「着手金」「中間金」「成功報酬」の三つです。
「着手金」➡M&A専門家とアドバイザリー契約を結んだ際に発生する手数料です。医院概要書の作成や譲受先開拓、説明などに対するフィーと理解できます。
「中間金」➡基本合意契約を結んだ際に発生する手数料です。想定成功報酬の10%~30%がかかることが多いです。基本合意後最終契約に至らなくても、返金されることはありません。最終合意に至り、成功報酬が発生する際には、成功報酬から中間金で支払った金額を差し引く専門家もいます。
「成功報酬」➡M&Aにおいては、レーマン方式という譲渡対価、もしくは移動総資産額に対してパーセンテージをかけた額を成功報酬として支払うことが多いです。
後述しますが、弊社では「着手金・中間金」は頂かず、「譲渡対価に対しての成功報酬」のみで、フェアなM&A実現のサポートを行っております。大事なことですので、様々な企業の情報を得た上で、どのM&A専門家に依頼をするか決断されることをお勧めします。
提示された契約書のリーガルチェック費用
中小M&A慣れした弁護士先生に頼むのが鉄則
契約内容が法的に問題ないか、過剰に譲受側に有利になっていないかを確認するためのリーガルチェックは行った方が良いです。M&A専門家も一般論として契約内容の妥当性を論じれますが、契約内容に手を加えることは非弁行為となり行ってはいけない為、弁護士先生に依頼することが必要です。
ただ、先述の通り、中小M&Aに慣れていない懇意にしている顧問弁護士先生などにリーガルチェックを依頼すると、逆に過剰に譲渡側有利にして譲受側に返送して破断するケースが散見されますので、塩梅を理解するM&Aを得意とする弁護士先生に別途依頼して、リーガルチェックしてもらうようにしましょう。
おおよそ30万前後を予算感として見ておくと良いかと思います。
意外と知られていない歯科M&Aの注意点
「社保かどうか」
「事業譲渡の場合は新規指導の対象になる」
「決算書上の前受金は、金額によってリスク評価となる」
など、歯科M&Aならではの注意点が別途存在します。医療法人、歯科の事業承継、M&Aを得意とする専門家に依頼をすることで、前もってリスクの洗い出しをしてくれるので、後工程でのトラブルケースを抑えられます。
今後の出口戦略でM&Aを検討されている先生には、是非歯科特有の情報を豊富に持つM&A専門家に依頼されることをお勧めします。

歯科のM&Aに関するより詳しい情報は、下記の記事をご参照ください。
1.歯科医院M&AのTOP
2.歯科のM&A事例
3.歯科のM&Aの失敗事例
4.歯科のM&Aのメリット・デメリット
5.歯科のM&Aのポイント
6.歯科のM&Aの特徴
7.歯科のM&Aの譲渡対価の相場観
8.歯科のM&Aの注意点
