歯科

歯科M&Aの譲渡対価の相場観

歯科の譲渡対価はどのようにしてもとめられるのか、代表的な二つの方法を紹介いたします。


医院・法人が持つ「時価純資産」に着目した年買法

時価純資産+(正常営業利益×1~3)=譲渡対価

年買法の大枠の考え方として上図にまとめているように「時価純資産+のれん代」で譲渡対価を算定します。ただし、相場観はあっても、結局は譲渡側と譲受側それぞれの希望条件を交渉することで企業価値が変動するので、飽くまで一般論としてでしかお伝え出来ませんが、上記の考え方を基に譲渡対価を算定します。
※事業譲渡の場合は、譲渡する資産(土地、建物、機材、材料など)の価格を個別にまとめ、のれん代を一部加えるかどうか、というような形で譲渡対価を見るケースが多いです。

時価純資産=時価の資産ー負債

時価純資産とは、医院資産を時価評価に直したうえで、その総額から負債をマイナスすることで求めることが出来る、医院価値の基礎たる部分です。バランスシートの右下の純資産の部分を、現在価値に直して求めるといった方が分かりやすいかもしれません。
土地の価格も年々変化していますし、保険積立金がある場合は解約返戻金で資産が上振れることもあり、現時点での価値に起きなおすことで、簿価ではなく時価の医院価値を求めます。

のれん代=正常営業利益×業界マルチプル1~3倍

のれん代は、正常営業利益(実効税率税引き後)に対して、歯科業界では一般的にマルチプル1~3倍を掛けて求めます。マルチプルの考え方としては、新規開業と比べて何年早く見込み収益を達成できるか、特にドクターが継続勤務されるか、好立地で自費診療に偏りがないか、といった視点で掛け率が変わってきます。
当然譲受先の資本力によっても変わってくる部分ではありますので、のれん代がどれくらい評価されるのか、に関してはケースバイケースとなります。

年買法による企業価値算定イメージ

時価純資産の求め方と、のれん代の計算の基となる正常営業利益の求め方の大枠を、上図にイメージでまとめております。ご自身で一度計算されてみても良いかと思いますが、よく分からないということでしたら無料で医院価値算定のお手伝いを行っておりますので、お気軽にご連絡いただければと思います。

医院・法人が持つ「キャッシュ」に着目したマルチプル法

Net Cash/Debt+(正常EBITDA×2~4)=譲渡対価

マルチプル法の大枠の考え方として上図にまとめているように「Net Cash/Debt+正常EBITDA」で譲渡対価を算定します。

Net Cash/Debt時価の現金同等物ー有利子負債

Net Cash/Debtとは、現金預金と保険積立金等を時価評価に直したうえで、その総額から有利子負債をマイナスすることで求めることが出来る、医院価値の基礎たる部分です。有利子負債を差し引いて医院・法人がいくらの現金同等物を保有しているか、といった方が分かりやすいかもしれません。
キャッシュは誰しもが等しく認める価値です。キャッシュがある分は、当然その分譲渡対価に反映されますし、逆にキャッシュがマイナスの場合もその分譲渡対価に反映されます。
有利子負債を差し引いてキャッシュが余っている状態をNet Cash、キャッシュがマイナスの状態をNet Debtと呼びます。

企業価値=正常EBITDA×業界マルチプル2~4倍

企業価値は、正常EBITDAに対して、歯科業界では一般的にマルチプル2~4倍を掛けて求めます。EBITDAとは、簡単に言うと営業利益+減価償却費です。年間に本業でどれだけキャッシュを稼ぐ力があるのかをはかる指標で、マルチプル法ではこのキャッシュを稼ぐ力を重視します。

マルチプル法による企業価値算定イメージ

マルチプル法の求め方と、企業価値の計算の基となる正常EBITDAの求め方の大枠を、上図にイメージでまとめております。ご自身で一度計算されてみても良いかと思いますが、よく分からないということでしたら無料で医院価値算定のお手伝いを行っておりますので、お気軽にご連絡いただければと思います。

歯科のM&Aに関するより詳しい情報は、下記の記事をご参照ください。

1.歯科医院M&AのTOP
2.歯科のM&A事例
3.歯科のM&Aの失敗事例
4.歯科のM&Aのメリット・デメリット
5.歯科のM&Aのポイント
6.歯科のM&Aの特徴
7.歯科のM&Aの譲渡対価の相場観
8.歯科のM&Aの注意点


長谷川光太郎

(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント

国内大手メーカー勤務を経て、2018年に船井総研に入社。歯科医院の経営コンサルティングに従事し、現在は歯科医院・医療法人の事業承継全般の支援を行っている。医療法人特有の事業承継に関わる知見を有し、譲渡側・譲受側双方からの信頼が厚い。

長谷川光太郎

(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント

国内大手メーカー勤務を経て、2018年に船井総研に入社。歯科医院の経営コンサルティングに従事し、現在は歯科医院・医療法人の事業承継全般の支援を行っている。医療法人特有の事業承継に関わる知見を有し、譲渡側・譲受側双方からの信頼が厚い。