歯科のM&Aの失敗事例について、皆様も噂程度でお聞きしているのではないでしょうか。どのような失敗がよくあるのかを、ケーススタディの形でまとめていきます。
※当コラムは実際に起きた事例を基に、解説として改変し紹介しております。特定の医院・個人を指すものではなく、弊社が仲介した事例ではございません。
失敗事例①譲渡意思が固まっておらず途中で破談
背景
親族内に歯科医師がいるが、跡を継ぐ気がないことが確定し、勤務医にも適任者がいないためM&Aをご検討を始めました。実際に複数社とTOP面談を行い、A社から意向表明が提出され、具体的な承継スケジュールも固まり、デューデリジェンスも実行しました。あとは最終契約書の条件を双方で詰めていく段階で、急遽譲渡側の先生からストップがかかりました。
よくよくお話を伺ってみると、M&Aに否定的な関係者がおられ、その方のアドバイスで本件に後ろ向きになったとのことです。結果としてお話を進めていたA社とは破談になりました。M&Aの取り組み自体も停滞し、廃院の方向でご検討を進めて行くことになりました。
失敗ポイント
譲渡側先生の譲渡意思がそこまで固まっていない段階で一気にお話が進んだことにより、譲渡側先生の不安が大きくなったことが、今回のM&Aの失敗ポイントです。
振り返ってみて思うこと
出口戦略は「親族内承継」「院内(勤務医)承継」「M&A」「廃院」とある中で、今回は親族内承継と院内承継の道はなく、M&Aか廃院どちらかの状況でした。それでもM&Aではなく廃院を選択されたのは、個人的に大きな気付きをいただきました。
今まで院長としてすべて自分の責任で決裁してきた身から、グループインすることで環境が変わる。その恐怖やご不安に向き合う余白を少しでも作れていたら、また違う選択があったかもしれません。
失敗事例②対等な話し合いが出来ず途中で破談
背景
地域で一定のブランドがある医院で、患者さんも多く来院され、従業員も数十名抱える法人の理事長よりM&Aのご相談がありました。法人規模が大きくなり、親族にも勤務医にも引き継げないため、診療品質や従業員への待遇を低下させない、力のある第三者との提携を希望されました。
法人規模の大きさもあり、候補が限られる中でA社から手が挙がり、TOP面談を実施しました。最初は和やかなムードでお話が進んでいましたが、譲渡側理事長より高圧的な言動があり、その態度にA社理事長は今後の信頼関係構築に不安を感じ、結果お話は前に進まず、M&A自体も停滞状況となっています。
失敗ポイント
いくら経営者歴、診療歴に差があっても、上から目線で臨むと、譲受側は一気に引きます。譲受後の運営を考えた際にパートナーシップを築ける相手がどうかを見極められたのが、今回のM&Aの失敗ポイントと言えます。
振り返ってみて思うこと
譲受後の運営時にパートナーシップを築ける相手がどうか、どちらか一方にでも疑問が生まれるのであれば決してM&Aは成立しないということを、改めて気づかされた件でした。
「儲かっているから引き継ぐ」「ブランドがあるから引き継ぐ」というよりかは、
「これから一緒にやっていくことで更に成長できる気がする」「一緒に頑張りたいと思える先生である」というような要素の方が、譲受側の譲受決断を左右するように思えます。
失敗事例③譲渡後の前院長のパフォーマンス低下
背景
訪問診療で強みのある歯科医院であり、後継者不在の中でM&Aをご決断されました。訪問診療を得意とする医療法人にグループインする形で、無事にM&Aが成立しました。
そこまでは良かったのですが、M&A成立後、日に日に前院長のパフォーマンスが低下しました。以前は患者さんをよく見ていたのに、今では以前の半分程度を診るような状態になりました。譲受側の法人として頭が痛い状態となっています。
失敗ポイント
経営負担から解放されたことで、診療や、経営実績に関心が薄くなり、結果としてパフォーマンスが低下しました。グループイン型M&Aのリスクとして一定存在するケースで、先回りして契約書でカバーしていても、譲受側の運営負担は大きくなってしまいます。失敗ポイントが挙げづらい悩ましいケースと言えます。
振り返ってみて思うこと
その人の最大限パフォーマンスを引き出しているのは、経営責任を負うからこそだと気づかされました。ただ、譲受後にもっと前院長とコミュニケーションをとって、構想や目標を丁寧に伝えていくことで、もしかしたら回避できたかもしれません。
「そのまま今まで通り頑張ってもらえたらそれでいいです」のようなコミュニケーションだと、譲受後上手くいかないのだなと、学びになりました。
当該事例から学ぶこと
歯科のM&Aの失敗事例をご覧になられていかがでしたでしょうか。「経営から解放される、後継者問題を解決できる」と思うのか、「経営者じゃなくなってしまう、今までの人間関係が壊れてしまう」朋うのか、人それぞれです。ご自身らしいご決断をしていかれることを願っています。
今まで歯科のM&Aの成功事例、失敗事例をご覧いただきましたが、そもそも歯科M&Aにはどのようなメリット・デメリットがあるのかについて理解する必要があります。下記コラムにまとめておりますので、是非ご覧ください。
歯科のM&Aのメリット・デメリットについてはこちらから
歯科のM&Aに関するより詳しい情報は、下記の記事をご参照ください。
1.歯科医院M&AのTOP
2.歯科のM&A事例
3.歯科のM&Aの失敗事例
4.歯科のM&Aのメリット・デメリット
5.歯科のM&Aのポイント
6.歯科のM&Aの特徴
7.歯科のM&Aの譲渡対価の相場観
8.歯科のM&Aの注意点
今後のライフプランニングや、M&Aすべきかどうかなど、いつでもお気軽にご相談くださいませ。先生のこれからに寄与できますと幸いです。

