歯科

歯科のM&Aの特徴

歯科のM&Aに行うにあたり特徴を把握しておく必要があります。経営権をどのように譲渡するのか、法人か個人か、法人ならば出資持分の有無別に、解説いたします。

歯科医院の運営形態はおおまかに3つ

出資持分有り医療法人、出資持分無し医療法人、個人事業

こちらご覧の先生方は上記3つのいずれかに当てはまるかと思います。

出資持分有り医療法人は、2007年4月以前に定款にて出資規定が記載されて出資が行われて設立された医療法人を指します。出資持分は簡単に言うと財産権でして、出資した割合に応じて純資産評価額の払い戻しを受けられる権利と言い換えられます。

出資持分無し医療法人は、2007年4月以降に申請された医療法人で、出資持分を持たない医療法人です。出資持分払い戻しの経営上のリスクを重く見た国の方針で、第5次医療法改正により、2007年4月以降設立の医療法人は全て持分無し医療法人となっています。

個人事業は法人化していない単独歯科医院です。 厚生労働省の種類別医療法人数の年次推移をみると、2023年時点での持分有り医療法人が63.9%、出資持分無し医療法人は36.1%となっています。

出資持分有り医療法人の譲渡、M&Aの方法

基本は出資持分譲渡×入社退社方式

出資者が出資持分を全部譲渡し対価を受け取ることで、医療法人ごと譲渡します。社員の入退社、理事の交代をすることで運営するクリニックを含む法人全体の資産、負債、権利、義務などを包括的に承継します。非常にシンプルな方法であり、基本はこの方法を採用します。譲受側からはシンプルに譲受することが出来るため人気が高いように思います。 

分院の譲渡の場合は後程解説する事業譲渡の方法をとるため、医療法人全体を譲渡する場合にしか出資持分譲渡によるM&Aは行えません。

出資持分無し医療法人の譲渡、M&Aの方法

基本は入社退社方式によるM&A

譲渡する医療法人を存続させたまま、社員の入退社、理事の交代をすることで運営するクリニックを含む法人全体の資産、負債、権利、義務などを包括的に承継する方法です。

対価の受け取り方に関しては少し工夫が必要です。譲渡する出資持分がないため、院長個人に出資持分譲渡による譲渡対価の受取りが発生せず、かつ事業譲渡による譲渡対価は医療法人が受取ることになるので、ドクター個人が金銭的対価を受取るためには、譲受側の理事長に医療法人を譲渡後、役員退職金を受取るなどの方法を別途取組む必要があります。

個人事業歯科医院の譲渡、M&Aの方法

事業譲渡によるM&A

事業譲渡は、医院の資産(土地、建物、医療機器、歯科材料等)を個別に譲渡する方法です。モノを譲渡するイメージで、業者様との契約や従業員との雇用契約などは承継されず(一度廃院する必要があるため)、別途譲受側が契約を結びなおす必要があります。
ひとつひとつの資産に対して譲渡するしないを確認していきますので、中々に大変な方法となります。分院の譲渡に関してはこの事業譲渡の方法をとるため、注意が必要です。

歯科医院・法人の譲渡対価はどう決まるのか?

本コラムでは、歯科医院の運営形態別のM&Aの代表的な方法について簡単にまとめました。幸いにも良いパートナーが見つかり実際にM&Aの話が進む際に、最大の関心事と言っても良い譲渡対価についてお互い交渉を行う必要があります。その譲渡対価の目安についても事前に大枠理解をしておく方がスムーズに話し合いは進んでいきますので、詳しくは下記リンクよりご確認いただければと思います。

歯科医院・法人の譲渡対価はどう決まるのかについてはこちらから

歯科のM&Aに関するより詳しい情報は、下記の記事をご参照ください。

1.歯科医院M&AのTOP
2.歯科のM&A事例
3.歯科のM&Aの失敗事例
4.歯科のM&Aのメリット・デメリット
5.歯科のM&Aのポイント
6.歯科のM&Aの特徴
7.歯科のM&Aの譲渡対価の相場観
8.歯科のM&Aの注意点

ご自身の法人がどのような形態になっているのか、実際にM&Aを行う場合はどのようなスキームになるのか把握しておきたいという方は、弊社までお気軽にお問合せ下さい。
先生のこれからに寄与できますと幸いです。


長谷川光太郎

(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント

国内大手メーカー勤務を経て、2018年に船井総研に入社。歯科医院の経営コンサルティングに従事し、現在は歯科医院・医療法人の事業承継全般の支援を行っている。医療法人特有の事業承継に関わる知見を有し、譲渡側・譲受側双方からの信頼が厚い。

長谷川光太郎

(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント

国内大手メーカー勤務を経て、2018年に船井総研に入社。歯科医院の経営コンサルティングに従事し、現在は歯科医院・医療法人の事業承継全般の支援を行っている。医療法人特有の事業承継に関わる知見を有し、譲渡側・譲受側双方からの信頼が厚い。