事業承継の失敗事例とうまくいかない理由|早期の相談で防げる備え方
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事業承継の失敗事例とうまくいかない理由|早期の相談で防げる備え方

「要は乗っ取りということでいいのでしょうか」。M&A仲介から届いた提案書を前に、こう戸惑う経営者の声は珍しくありません。事業承継の失敗事例を見ていくと、原因の多くは特別な事情ではなく、後継者との方向性の不一致、条件設計の甘さ、準備不足、相談先の見極め不足といった、いくつかの型に集約されることが分かります。早い段階で中立な立場に相談しておけば、防げたはずのケースが少なくありません。本記事では、事業承継の実務で繰り返し見られる失敗の型と、その回避策に絞って解説します。税務会計を専門とする立場から、相談の現場でよく見られる反省点を交えて整理していきます。


経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。 プロの目利きで自社の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。

事業承継の失敗事例に共通する4つの結末|廃業・業績悪化・退職者増加・資金繰り悪化

事業承継の失敗事例を型として整理する前に、まず結末として起こりやすい4つのパターンを押さえておきます。どの失敗も、最終的にはこの4つのいずれかにつながっていきます。

後継者が見つからず廃業に至る

後継者が見つからないまま経営者が引退や体調の変化を迎えると、事業を継続する担い手を失い、廃業を選ばざるを得なくなります。

帝国データバンクの2025年調査によると、全国の後継者不在率は50.1%、中小企業に絞ると51.2%、小規模企業では57.3%まで上昇しています(出典:帝国データバンク「全国後継者不在率動向調査(2025年)」)。後継者が「いない」こと自体よりも、探す・育てる・引き継ぐという行動を起こせるかどうかが、廃業との分かれ道になります。

経営体制の混乱で業績が悪化する

後継者が就任した直後、社内の理解が追いつかず経営体制が混乱し、業績が悪化するケースがあります。

実務上は、先代の下で経験を積んだ幹部から、後継者に対して「本当に社長に向いているのか」「社長ができるのか」とかなり厳しい言葉が投げかけられる場面に立ち会うことがあります。

あるケースでは、こうした厳しい評価を口にした幹部本人に「後継社長を支えてほしい」と直接働きかけたところ、その後は後継者の理解者として動いてもらえるようになりました。

反発してきた相手を遠ざけるのではなく、味方に変えられるかどうかが、経営体制の混乱を早期に収められるかの分かれ目になります。

古参社員の離職が相次ぐ

経営体制の混乱が長引くと、先代の時代から会社を支えてきた古参社員が見切りをつけ、離職が相次ぐことがあります。

新しい経営方針についていけない社員が抜けていくと、技術やノウハウ、顧客との関係まで一緒に失われかねません。

後継者への不信感が現場の士気低下につながる前に、周囲を巻き込みながら進めることが欠かせません。

資金繰りが厳しくなる

株式の買い取り資金や退職金の支払いによって、承継後の資金繰りが厳しくなることもあります。

とくに従業員承継では、後継者となる社員が株式を取得するための資金調達が課題になりやすく、無理のある返済計画を組んでしまうと、承継直後の経営を圧迫しかねません。

 


事業承継の失敗事例①後継者と方向性が一致しないまま話が進むケース

事業承継の失敗事例のうち、もっとも根本的なのが、経営者と後継者候補の間で方向性がそもそも一致していないケースです。

「継がなければ廃業になる」と言われても意思が固まらない

個人事業主のもとで長年働いてきた後継者候補が、実際には引き継ぎたい気持ちを持っていても、自分からは言い出せずにいる例があります。

ある相談サイトへの投稿には「こちらから切り出すのも何か違うような気がします」という声が寄せられていました。

経営者側が明確に「継いでほしい」と伝えないまま時間が過ぎると、後継者候補は自分の意思をどう扱えばよいか分からなくなります。

承継と相続の違いが家族内で共有されていない

前述の投稿では、父親が「引き継ぎのタイミング」を「相続が発生したとき」だと考えていることも背景にありました。

相続は経営者が亡くなった後に財産が移転する手続きであるのに対し、事業承継は経営者が元気なうちに計画的に進められる取り組みです。

この違いが家族内で共有されないまま話が止まってしまうと、後継者候補の覚悟を確認する機会も先延ばしになります。

実務では、親子だけで話すと感情が先に立ってしまうため、第三者が客観的な立場で間に入り、意思確認を進める場面もあります。

親族内承継の具体的な進め方やメリット・デメリットについては、こちらのコラムもおすすめです。

『親族内承継とは|メリット・デメリットと進め方を経営者・後継者向けに解説』

事業承継の失敗事例②条件設計が甘いまま合意してしまうケース

方向性が一致していても、株式や退職金といった条件の詰めが甘いまま合意してしまう事業承継の失敗事例もあります。

株式や代表権の移行手順を詰めずに進めるリスク

段階的に株式を取得していく計画を提案された従業員に対して、ある相談サイトの回答者は「株式の過半数を先代側が握ったままだと、業績が悪化した局面で株主総会により後継者の立場を失う可能性がある」という趣旨の指摘をしていました。

代表権だけを先に譲り、議決権につながる株式の移行を後回しにすると、経営の実権と法的な権限がずれたままになり、後継者が不安定な立場に置かれ続けます。

提示された条件の数字を検証しないまま進めるリスク

資産5,000万円に対して退職金8,000万円を支払う条件を提示され、開始時点で3,000万円のマイナスになるという矛盾した相談も見られます。

この投稿でも、回答者は数字の整合性を指摘したうえで専門家への相談を勧めていました。

感情や関係性を優先するあまり、条件面の数字を検証しないまま合意してしまうと、実行段階になって資金が足りないという事態に陥ります。

自社の株価評価を把握しないまま話を進めるリスク

自社の株価評価が現状どうなっているかを把握していない経営者は少なくありません。

実務では、相談を受けた際にまず「今、自社がどういう株価評価になっているか把握されていますか」と必ず確認するようにしています。

株式評価の算定方法は見直しが行われることもあり、把握が遅れるほど対応の選択肢は狭まっていきます。

条件を詰める前に、まず現在地を数字で確認しておくことが、事業承継の失敗事例を避ける第一歩になります。

自社の株価評価や税務面の精査は、税理士に相談することで具体的に進められます。

事業承継を税理士に相談する際のメリットや費用については、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継を税理士に相談するメリットと費用|できること・できないこと』

税制優遇を使える前提で計画し、要件を満たせず使えなくなるリスク

事業承継税制などの税制優遇を使う前提で資金計画を立てたものの、後継者の議決権要件や継続要件を満たせず、想定していた優遇が使えなくなるケースもあります。

税制優遇はあくまで事業を継続する決意が固まっていることが前提の制度であり、要件を満たせるかどうかを事前に精査せずに計画へ組み込むと、後から資金計画そのものを見直す事態になりかねません。

事業承継税制のデメリットや、使わない方がいいと言われる理由については、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継税制のデメリットと使わない方がいいケース|メリットとの比較』

従業員承継における資金調達の実務やリスクヘッジの工夫については、こちらのコラムもおすすめです。
『従業員承継(社内承継・MBO/EBO)とは|進め方とメリット・デメリット』

 



事業承継の失敗事例③準備期間が足りないまま動き出すケース

準備にかけられる期間が足りないまま動き出してしまうことも、繰り返し見られる事業承継の失敗事例です。

検討から実行までにかかる実際の期間

事業承継の準備には、想像以上に時間がかかります。

信用金庫系のキャピタル会社やM&A支援会社が公開している事例では、廃業か継続かを長く抱え込んだ末に本格的な検討を始め、成約に至るまで一年半から二年半程度を要したケースが紹介されています。

いずれも「早めに」という抽象的な助言だけでは足りない、具体的な時間感覚を示しています。

先代の実務を理解しないまま就任し想定外の負担に直面するケース

準備期間の不足は、経営者側だけでなく後継者側にも起こります。

先代が担ってきた業務の内容を十分に理解しないまま社長に就任し、「社長がこんなに大変だとは思いもしなかった」という相談を受けたことがあります。

負担の大きさに直面し、一時は会社を譲渡する道も検討しましたが、周囲の支援体制を整えたことで「続けられそうだ」と踏みとどまり、その後も経営を続けています。

この経験から実務上感じているのは、もっと早い段階で、経営の仕組みそのものを引き継げる体制を作っておくべきだったという反省です。

就任してから慌てて仕組みを学ぶのではなく、就任前の段階で先代の業務を可視化しておくことが、この種の事業承継の失敗事例を防ぐ具体策になります。

直前になって動き出すと選択肢が狭まる

経営者の年齢や健康状態に余裕がある段階で動き出せば、10年ほどかけて借入をゼロに近づけてから引き継ぐといった計画も立てられます。

一方で、直前になって初めて動き出すと、比較検討できる承継方法も、資金調達の手段も限られてきます。

準備期間が足りないまま進めることそのものが、事業承継の失敗事例に共通する土台になっています。

 

事業承継の失敗事例④M&A仲介に任せきりで進めてしまうケース

第三者承継(M&A)を検討する段階では、M&A仲介からの提案をそのまま受け入れ、十分な確認をしないまま進めてしまう事業承継の失敗事例も見られます。

「乗っ取りでは」と感じる営業への警戒

小規模企業の経営者のもとに、M&A仲介から資本提携の提案が届いた際、「要は乗っ取りということでいいのでしょうか」「断ったら何らかの嫌がらせに遭うことはないか」という不安の声が相談サイトに寄せられていました。

従業員数名の小さな会社にまで営業の連絡が繰り返し届く状況について、「適当な仕事をしているのではないか」と受け止める投稿も見られます。

提案の背景や仲介の役割を確認しないまま話を進めると、こうした不信感が解消されないまま検討だけが先送りになります。

相手企業の実態を確認せずに進めるリスク

譲渡先の候補と交渉を進める過程で、相手企業の実態を十分に確認しないまま話を進めてしまうケースもあります。

ある実例では、本格的な交渉に入った段階になっても相手企業の社長との面談が設定されず、送られてきた経歴書の記載にも違和感を覚えたといいます。

この違和感をきっかけに交渉先を見直し、あらためて条件を精査したうえで別の相手先と実行に至っています。

譲受側・譲渡側のどちらの立場でも、面談や資料の整合性を自分の目で確認する姿勢が欠かせません。

第三者承継(M&A)の具体的な流れや会社譲渡の進め方については、こちらのコラムもおすすめです。

『第三者承継(M&A)とは|会社売却の流れと後継者の探し方を中立に解説』

事業承継の失敗事例⑤家族内の合意形成が不足するケース

事業承継の失敗事例の背景を突き詰めると、家族内や身近な関係者との合意形成が不足していたという根っこに行き着くことが少なくありません。

経営者が一人で抱え込み周囲に相談できない

廃業か継続かを一人で長く抱え込み、なかなか周囲に相談できなかったと振り返る経営者は少なくありません。

義理の親子関係にあたる後継者候補が、銀行や税理士に相談に行くこと自体を躊躇してしまうという声も、インターネット上の相談などで見られます。

身内を飛び越えて外部の専門家に頼ることへの心理的なハードルは、想像以上に高いものです。

後継者側も切り出しづらく話が進まない

一人で抱え込むのは経営者側だけではありません。

前述のとおり、後継者側も「自分から切り出すのは違う気がする」とためらい、双方が相手の出方を待ったまま時間が過ぎてしまうことがあります。

経営者・後継者のどちらか一方に判断を委ねるのではなく、第三者が間に入って双方の本音を確認することが、合意形成の停滞を解く糸口になります。

 

事業承継の失敗事例を防ぐために備えておきたいこと

ここまで見てきた事業承継の失敗事例には共通点があります。

いずれも、早い段階で中立な立場に相談し、複数の選択肢を比較していれば防げた可能性があるという点です。

早い段階で中立的な立場に相談する

相談先を選ぶ際は、まず自社の事業承継に関してどのような課題があるのかを、しっかり精査してくれる相手かどうかを見極めることが最初の一歩になります。

判断軸としては、業種特有の事情を理解しているか、株式評価や資金調達といった数字を検証できる実務力があるか、検討段階の情報を社内外に漏らさず扱えるか、という点を確認しておきたいところです。

加えて、相談から実行まで長期にわたって同じ窓口で伴走してもらえるかどうかも、事業承継の失敗事例を防ぐうえで重要な基準です。

手法を決める前に複数の選択肢を比較する

親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)のどれか一つに最初から絞り込むのではなく、比較したうえで方針を決めることをおすすめします。

実務では、当初は親族内承継しか考えていなかった経営者が、検討を進めるうちに従業員承継や第三者承継へ方針を切り替えるケースも珍しくありません。

事業承継全体の流れや3つの方法の基本については、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継とは|方法・進め方・税金までの流れをまとめて理解できるガイド』

3つの方法を横断して比較検討したい場合は、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継の方法3類型を比較|親族内・従業員・M&Aの違いと選び方ガイド』



【まとめ】事業承継の失敗事例は備え方次第で避けられる

事業承継の失敗事例は、後継者との方向性の不一致、条件設計の甘さ、準備期間の不足、M&A仲介への過度な依存、家族内の合意形成不足という、いくつかの型に集約されます。

廃業や業績悪化、退職者の増加、資金繰りの悪化といった結末は、いずれも特別な事情から生まれるものではなく、早い段階で中立な立場に相談し、複数の選択肢を比較しておけば防げた可能性がある失敗です。

まずは自社の現状と課題を整理したうえで、方向性を決める前に相談できる窓口を探すことが、次の一歩になります。

船井総研あがたFASでは、親族内・従業員・第三者(M&A)のいずれの手法にも偏らず、税務会計と経営コンサルティングを一気通貫で見る立場から、状況に応じた選択肢を一緒に整理し、実行まで伴走する相談を受け付けています。

船井総研あがたFASでは、承継手法を1つに絞らず、税務会計と経営コンサルティングを一気通貫で見る立場から、状況に応じた選択肢を整理し実行まで伴走する相談を受け付けています。

事業承継の進め方に迷う場合は、事業承継の無料相談活用できます。

あわせて、事業承継の資料ダウンロードら状況の整理に役立てることもできます。


経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。 プロの目利きで自社の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。

【業界専門コンサルタントが担当】「出口戦略」診断で自社の価値を正しく守る。ベストな承継を実現するための第一歩。


よくある質問

Q. 事業承継の失敗事例にはどのようなものがありますか?

事業承継の失敗事例には、後継者と方向性が一致しないまま話を進めるケース、株式や退職金の条件設計が甘いまま合意するケース、準備期間が足りないまま動き出すケース、M&A仲介に任せきりで進めるケース、家族内の合意形成が不足するケースの5つが代表的です。いずれも早い段階で中立な立場に相談することで防げる可能性があります。

Q. 事業承継が失敗するとどうなりますか?

事業承継が失敗すると、後継者が見つからないまま廃業に至る、経営体制の混乱で業績が悪化する、古参社員の離職が相次ぐ、資金繰りが厳しくなるといった結末につながることがあります。とくに準備不足のまま後継者が就任すると、経営の仕組みを理解しきれず社内が混乱しやすくなります。原因の多くは準備不足や条件設計の甘さにあり、早い段階から備えておくことで避けられるケースが少なくありません。

Q. 事業承継で家族や社内の幹部とトラブルになることはありますか?

起こり得ます。後継者候補が継ぐ意思を切り出せずに話が進まないケースや、就任後に経験豊富な幹部から経営者としての適性を厳しく問われるケースが実務でも見られます。とくに幹部の反発は、対立したまま放置すると経営体制の混乱や離職につながりかねません。第三者が間に入り、感情的な対立を避けながら合意形成を進めることで、こうしたトラブルを和らげられます。

Q. 事業承継の失敗を防ぐにはどうすればよいですか?

事業承継の失敗を防ぐには、自社の課題を精査してくれる相談先を早い段階で見極め、親族内・従業員・第三者という複数の選択肢を比較したうえで方針を決めることが有効です。株式評価や資金調達の条件を数字で検証しておくことも欠かせません。手法を一つに絞り込む前に、業種の実情を理解したうえで税務・資金調達まで一貫して見てくれる相談先を選ぶことが、遠回りに見えて結果的な近道になります。

Q. 事業承継の準備にはどれくらいの期間が必要ですか?

実務上の目安として、準備から実行まで少なくとも数年、6年以上を見ておくことが望ましいとされています。経営者の年齢や健康状態に余裕があれば、10年ほどかけて借入をゼロに近づけながら計画的に進める例もあります。逆に経営者の年齢が高く時間の余裕が少ない場合は、選択肢が狭まる前に、より早急な判断が求められます。


植木 諒

(株)船井総研あがたFAS マネージャー

士業事務所でキャリアを歩み、法務・不動産の現場実務に精通。2018年の船井総研入社後は、財務コンサルティングを主軸に数多くの事業承継・再生案件を完遂してきた 。現在はグループの事業承継分野で中核を担う存在である 

土地家屋調査士・行政書士の資格を保持し、「事業・財産・組織」の3つの視点から包括的に支援 。現場実務から承継戦略までをワンストップで解決できる希少なコンサルタントとして、多くの経営者から厚い信頼を得ている。

植木 諒

(株)船井総研あがたFAS マネージャー

士業事務所でキャリアを歩み、法務・不動産の現場実務に精通。2018年の船井総研入社後は、財務コンサルティングを主軸に数多くの事業承継・再生案件を完遂してきた 。現在はグループの事業承継分野で中核を担う存在である 

土地家屋調査士・行政書士の資格を保持し、「事業・財産・組織」の3つの視点から包括的に支援 。現場実務から承継戦略までをワンストップで解決できる希少なコンサルタントとして、多くの経営者から厚い信頼を得ている。