事業承継のメリット・デメリット|手法別に整理して選び方がわかるガイド
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事業承継のメリット・デメリット|手法別に整理して選び方がわかるガイド

事業承継のメリット・デメリットを調べている方の中には、「このまま倒産しそうな借金だらけの会社を継承しても、メリットなどないのではないか」という疑いから検索を始めた方も少なくありません。

多少の債務超過に近い状態であっても、将来的な改善計画を描ければ、事業承継によって自己破産を避けながら債務を返済できるキャッシュフローを構築できる場合があります。

負債の有無だけで承継の可否を判断するのは早計です。

事業承継は「良いことだから進めるべきもの」と決めつけて選ぶものではありません。

親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)という3つの手法にはそれぞれ異なるメリット・デメリットがあり、承継せずに廃業を選ぶという道にも両面があります。

本記事では、事業承継そのものの基本的なメリット・デメリットに加え、3つの手法別の比較、廃業との比較、そしてデメリットを軽減する考え方までを中立な立場で整理します。

事業承継の基本的な内容を確認したい方は、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継とは|方法・進め方・税金までの流れをまとめて理解できるガイド』


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事業承継のメリット・デメリットは何か|まず全体像を整理する

事業承継のメリット・デメリットは、まず手法を問わない共通の要素から押さえておくと全体像をつかみやすくなります。

事業承継のメリット4つ

事業承継の主なメリットは、次の4つに整理できます。

# 雇用を維持できる

事業承継における大きなメリットの一つは、従業員の雇用を維持できる点です。

廃業を選んだ場合、従業員は職を失い新たな勤務先を探す必要がありますが、事業承継によって会社が存続すれば、雇用契約はそのまま引き継がれます。

実務上は、後継者が決まった時点で従業員の不安が和らぎ、離職を防げるケースも少なくありません。

# 取引先との関係を維持できる

長年築いてきた取引先との関係を保てる点も、事業承継のメリットです。

廃業すれば取引先は新たな仕入れ先や委託先を探さなければなりませんが、事業承継によって会社が存続すれば取引をそのまま継続できます。

地域に根ざした商圏では、取引先との関係そのものが会社の価値の一部になっている場合が多いです。

# 経営ノウハウ・技術を次の代へ引き継げる

先代が培ってきた経営ノウハウや技術、顧客対応の勘所を次の代へ引き継げる点も見逃せません。

ゼロから会社を立ち上げる場合と比べ、事業承継では先代の経験や信用をそのまま活用できるため、後継者にとっては時間を買うことに近い意味を持ちます。

# (第三者承継の場合)譲渡による対価を得られる可能性がある

第三者承継(M&A)を選んだ場合は、会社や事業を譲渡した対価を現経営者が得られる可能性があるという、他の手法にはないメリットもあります。

対価の水準は会社の収益力や資産内容によって変わるため一律には言えませんが、引退後の生活資金や次の取り組みの元手として活用できる余地があります。

事業承継のデメリット3つ

一方で、事業承継には次の3つのデメリットも伴います。

# 後継者の選定・育成に時間がかかる

後継者としての適性や意欲を持つ人材を見つけ、経営者として育成するには、数年単位の時間がかかります。親族内承継・従業員承継のいずれであっても、後継者候補が経営判断に必要な視野を身につけるまでには一定の期間が必要です。

# 手法によって資金・税負担が生じる

事業承継では、選ぶ手法によって資金負担や税負担が発生します。

親族内承継であれば相続税・贈与税、従業員承継であれば株式を買い取るための資金、第三者承継であれば仲介や専門家への報酬が、それぞれ課題になりやすいです。

全額を一括で用意できない場合は、分割払いにして資金負担を長期的に分散する方法もあります。

# 経営方針の変化に社内外の反発が起きる場合がある

後継者が経営方針を変えようとすると、先代のもとで長く働いてきた幹部や、既存の取引先から反発を受ける場合があります。

経営者としての力量を疑う厳しい言葉を投げかけられるケースも実際にあり、周囲を巻き込みながら理解を得ていく努力が欠かせません。

準備不足のまま承継を進め、こうした反発に直面した実例は、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継の失敗事例とうまくいかない理由|早期の相談で防げる備え方』

 


事業承継のメリット・デメリットを手法別に比較する|親族内・従業員・第三者(M&A)

事業承継の手法は、大きく親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)の3つに分かれ、それぞれメリット・デメリットの中身が異なります。

3つの方法をまとめて比較したい場合は、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継の方法3類型を比較|親族内・従業員・M&Aの違いと選び方ガイド』

親族内承継のメリット・デメリット

# メリット|経営理念や社風を引き継ぎやすい

親族内承継の大きなメリットは、先代の経営理念や社風を後継者が自然な形で引き継ぎやすいことです。

後継者教育に十分な時間をかけられる場合が多く、従業員や取引先にとっても経営体制の変化を予測しやすいという安心感があります。

# デメリット|後継者の資質や意欲を条件に合わせて選べるとは限らない

一方で、経営者としての適性や意欲を持つ人材が親族の中に必ずいるとは限りません。

「継ぐ意味を見いだせない」まま話が進み、後継者本人が迷いを抱えるケースも少なくありません。

加えて、経営者保証の引き継ぎをめぐって配偶者から反発を受ける場合もあります。

親族内承継の進め方や税金の詳細は、こちらのコラムもおすすめです。

『親族内承継とは|メリット・デメリットと進め方を経営者・後継者向けに解説』

従業員承継のメリット・デメリット

# メリット|社内の事情を理解した人材に引き継げる

従業員承継のメリットは、社内の実情や取引の経緯をすでに理解している人材に経営を引き継げる点です。

先代と一緒に会社を成長させてきた実績のある人材がいる場合、経営者としての適性を見極めやすく、引き継ぎ後の立ち上がりも早い傾向があります。

反対に、経営者がなんでも自分でやり切ってしまうタイプで、社内に育成された人材がいない場合は、この手法の選択肢としての強みが弱くなります。

# デメリット|株式取得の資金負担や代表権の移転条件が後継者にかかりやすい

デメリットは、後継者が自社株を買い取るための資金を用意する必要が生じやすいことです。

日本の中小企業では所有と経営が分離していないケースが多く、株式を持たないまま代表権だけを引き継ぐと、業績が振るわない局面で株主から退任を求められるリスクがゼロとは言い切れません。

従業員承継の資金調達の具体的な方法は、こちらのコラムもおすすめです。

『従業員承継(社内承継・MBO/EBO)とは|進め方とメリット・デメリット』


第三者承継(M&A)のメリット・デメリット

# メリット|身内や社内に後継者がいなくても会社を存続させられる

第三者承継(M&A)のメリットは、親族にも社内にも後継者となる人材がいない場合でも、会社を存続させられることです。

譲受先の経営基盤を生かして事業を伸ばせる可能性があるほか、現経営者が譲渡の対価を得られる場合もあります。

# デメリット|経営権が社外に移ることへの心理的な抵抗や警戒が生じやすい

デメリットとしてまず挙がるのが、経営権が社外に移ることへの心理的な抵抗です。

M&A仲介会社から届く提案を、乗っ取りに近いものではないかと警戒する経営者は少なくありません。

実際には、譲渡側が条件に納得したうえで契約を結ぶ取引であり、条件が折り合わなければ交渉を打ち切ることもできます。

第三者承継の流れと、こうした不信への向き合い方は、こちらのコラムもおすすめです。

『第三者承継(M&A)とは|会社売却の流れと後継者の探し方を中立に解説』

 

事業承継と廃業、どちらを選ぶか|メリット・デメリットを比較する

事業承継と廃業、それぞれのメリット・デメリットを比較する視点を持つと、判断がしやすくなります。

「後継者がいない会社はやはり廃業になるのでしょうか」という疑問を持つ方もいますが、廃業だけが唯一の道ではありません。

廃業を選ぶメリット|経営の負担から解放される

廃業を選ぶメリットは、後継者を探す負担や、経営を続けることそのものの重圧から解放される点です。

健康状態や体力面で経営の継続が難しくなっている経営者にとっては、区切りをつけられるという面で現実的な選択になり得ます。

廃業を選ぶデメリット|雇用・取引先への影響と廃業コストが生じる

一方で、廃業を選ぶと、従業員は職を失い新たな勤務先を探すことになり、取引先も新たな仕入れ先や委託先への切り替えを迫られます。

設備の処分費用や在庫の整理費用など、廃業そのものにもコストがかかります。

後継者不在の背景や、廃業を避けるために検討できる選択肢については、こちらのコラムもおすすめです。

『後継者不在率の現状と対策|最新データと廃業回避に向けた選択肢がわかる』

廃業寄りだった経営者が承継を選び直すケースもある

たとえば、中小企業基盤整備機構が運営する「事業承継・引継ぎポータル」で公開されている事例では、体調の問題から事業の継続が難しくなり廃業を検討していたガソリンスタンドの経営者が、業界紙の記事をきっかけに譲受先と出会い、短期間で事業承継に至ったことが紹介されています。

同じく同ポータルで公開されている事例には、高齢と体力の限界から一度は廃業を決めて周知していた豆腐店が、それを知った譲受側からの申し出を受け、契約成立までおよそ5か月で事業承継に至ったケースもあります。

廃業を決める前に、事業承継という選択肢を確認しておく価値はあります。

 


事業承継のデメリットを軽減するための考え方

事業承継のデメリットは、着手のタイミングと相談先の選び方次第で軽減できる余地があります。

後継者の選定・育成には早めに時間をかける

後継者の選定・育成という事業承継のデメリットは、着手する時期を早めることである程度軽減できます。

実務上は、経営者が50代の段階から「10年後、20年後に承継しやすい会社をどう作るか」を明確にし始めるケースがあります。

後継者不在に気づくのが遅れるほど、選べる手法の幅も狭くなっていきます。

手法を決める前に中立な立場の相談先を持つ

資金負担や税負担といったデメリットも、手法を決め打ちする前に中立な立場で整理してくれる相談先を持つことで軽減しやすくなります。

経営者が最初に相談する段階では、組織・人材の課題、資金繰りの課題、事業の成長段階に応じた課題など、論点は多岐にわたります。

何を優先すべき課題かを把握しないまま手法を選ぶと、後から資金計画や税負担の見通しが崩れることもあります。

事業承継における課題の整理の仕方は、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継の課題と問題点|後継者不在から自社株評価まで整理してわかる』

事業承継のメリット・デメリットをふまえて選ぶときの3つの視点

事業承継のメリット・デメリットをふまえて選択する際は、次の3つの視点で状況を整理すると判断しやすくなります。

何を最優先するか(雇用維持・資金・スピード)で見え方が変わる

雇用の維持を最優先するのであれば、親族内承継や従業員承継のメリットが大きく見えやすくなります。

一方、後継者不在で会社の存続そのものを優先するのであれば、第三者承継(M&A)のメリットが相対的に大きくなります。

資金負担を誰が負うかで選択肢が変わる

親族内承継は相続・贈与の制度を活用できる一方、従業員承継は後継者自身が株式取得の資金を用意する必要が生じやすくなります。

第三者承継は、譲渡側に対価が入るという構造そのものが他の2つの手法と異なります。

誰が資金を負担するのかを整理すると、比較の軸は自然と絞られていきます。

検討にかけられる時間で向き不向きが変わる

後継者育成に数年単位の時間をかけられるのであれば、親族内承継・従業員承継のデメリットである育成期間の長さも許容しやすくなります。

反対に、時間的な制約が大きい場合は、比較的短期間で経営体制を引き継げる第三者承継の比重が大きくなりやすいといえます。

 


事業承継のメリット・デメリットは状況次第|まずは中立な相談から

事業承継のメリット・デメリットは、手法によっても、承継か廃業かという選択によっても変わります。

雇用や取引先との関係を維持できる一方、後継者の選定・育成や資金・税負担といったデメリットも避けて通れません。

どれが最適かは、後継者の有無、資金力、検討にかけられる時間によって変わるため、一律の正解はありません。

まずは自社の状況を整理したうえで、手法を決め打ちせずに相談できる窓口を早めに持つことが、次に取るべき行動になります。

事業承継の相談先の選び方は、こちらのコラムで詳しく解説しています。

『事業承継は誰に相談すべき?相談先の種類と選び方をわかりやすく解説』

船井総研あがたFASでは、親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)のいずれにも偏らず、税務会計と経営コンサルティングを一気通貫で見る立場から、メリット・デメリットの整理を含めた相談を受け付けています。

手法を決めかねている場合は、事業承継の無料相談でメリット・デメリットを一緒に整理できます。

手法別のメリット・デメリットをまとめた資料は、事業承継の資料ダウンロードからご覧いただけます。


経営の正解は、一つではありません。

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よくある質問

Q. 事業承継の代表的なメリットとデメリットは何ですか?

事業承継の代表的なメリットは、雇用や取引先との関係を維持しながら、経営ノウハウや技術を次の代へ引き継げる点です。デメリットは、後継者の選定・育成に時間がかかるほか、手法によって資金・税負担が生じ、経営方針の変化に社内外から反発が出る場合がある点です。どちらの比重が大きく見えるかは、後継者の有無や資金力、検討にかけられる時間によって変わります。

Q. 事業承継の手法によって、かかる費用は変わりますか?

はい、変わります。親族内承継は相続・贈与に伴う税負担が中心になりやすく、従業員承継は株式を買い取るための資金調達が必要になりやすいです。第三者承継(M&A)は仲介や専門家への報酬が発生する一方、譲渡側は対価を得られる可能性があります。早い段階で株価評価や資金計画を確認しておくと、想定外の費用負担を避けやすくなります。

Q. 親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)でメリット・デメリットはどう違いますか?

親族内承継は経営理念や社風を引き継ぎやすい一方、後継者の資質や意欲を条件に合わせて選べるとは限りません。従業員承継は社内の事情を理解した人材に引き継げますが、株式取得の資金負担が後継者にかかりやすいです。第三者承継(M&A)は後継者不在でも会社を存続させやすい一方、経営権が社外に移ることへの心理的な抵抗が生じやすいという違いがあります。

Q. 事業承継の問題点は何ですか?

事業承継の主な問題点は、後継者の選定・育成に時間がかかること、手法によって資金や税金の負担が生じること、経営方針が変わることで社内外から反発が出る場合があることです。加えて、後継者不在のまま先送りにすると、選べる手法の幅そのものが狭まっていく点も見落とされやすい問題点です。

Q. 事業承継のデメリットを軽減するにはどうすればよいですか?

後継者の選定・育成には早めに着手し、数年単位の時間を確保することが有効です。資金負担が大きい場合は、一括ではなく分割払いや融資の活用など負担を分散する方法もあります。加えて、手法を決め打ちせず、親族内・従業員・第三者承継を中立に比較できる相談先を早期に持つことも、デメリットを軽減する有効な考え方です。


植木 諒

(株)船井総研あがたFAS マネージャー

士業事務所でキャリアを歩み、法務・不動産の現場実務に精通。2018年の船井総研入社後は、財務コンサルティングを主軸に数多くの事業承継・再生案件を完遂してきた 。現在はグループの事業承継分野で中核を担う存在である 

土地家屋調査士・行政書士の資格を保持し、「事業・財産・組織」の3つの視点から包括的に支援 。現場実務から承継戦略までをワンストップで解決できる希少なコンサルタントとして、多くの経営者から厚い信頼を得ている。

植木 諒

(株)船井総研あがたFAS マネージャー

士業事務所でキャリアを歩み、法務・不動産の現場実務に精通。2018年の船井総研入社後は、財務コンサルティングを主軸に数多くの事業承継・再生案件を完遂してきた 。現在はグループの事業承継分野で中核を担う存在である 

土地家屋調査士・行政書士の資格を保持し、「事業・財産・組織」の3つの視点から包括的に支援 。現場実務から承継戦略までをワンストップで解決できる希少なコンサルタントとして、多くの経営者から厚い信頼を得ている。