後継者不在率の現状と対策|最新データと廃業回避に向けた選択肢がわかる
事業承継

後継者不在率の現状と対策|最新データと廃業回避に向けた選択肢がわかる

「後継者がいない会社は、やはり廃業になるのでしょうか」。

こうした不安を抱く経営者や、その会社で働く方は少なくありません。

後継者不在率という数値は毎年のように報道されますが、これは全国的な傾向を示す指標であり、廃業だけがその先に決まっているわけではありません。

本記事では、帝国データバンクと東京商工リサーチ、双方の最新データを調査主体・調査年つきで確認しながら、後継者不在率が高まる背景と、廃業を避けるために今から検討できる選択肢を、特定の手法に偏らない立場から整理します。


経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。

プロの目利きで自社の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。

後継者不在率とは中小企業の何割が後継者を決めていないかを示す指標

後継者不在率とは、経営者に後継者の有無を尋ねる調査で、「後継者が決まっていない」と回答した企業の割合を指します。

帝国データバンクや東京商工リサーチといった信用調査会社が、保有する企業データベースをもとに毎年算出し、公表しています。

後継者不在率は経営者が「後継者が決まっていない」と回答した企業の割合

後継者不在率の対象になるのは、親族・従業員・社外を問わず、承継先が具体的に固まっていない企業です。

実務上は、後継者候補そのものがまったく存在しない会社ばかりではなく、候補はいるものの本人の意思確認や社内での位置づけが済んでいないために「不在」として集計されるケースも含まれます。

この点を踏まえずに数値だけを見ると、実態より深刻な印象を受けやすくなります。

後継者不在率が高いほど廃業リスクが注目されやすい

後継者不在率が大きく報じられるのは、後継者が見つからないまま経営者の引退や体調の変化を迎えると、事業を継続する担い手を失い、廃業に至りやすくなるためです。

ただし、後継者不在の状態がそのまま何年も続きながら事業を継続している会社も少なくありません。

不在率が高いことと、個々の会社が実際に廃業するかどうかは、切り分けて考える必要があります。

事業承継全体の基礎や3つの承継方法をまとめて確認したい場合は、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継とは|方法・進め方・税金までの流れをまとめて理解できるガイド』

後継者不在率の最新データは調査機関によって50.1%から62.60%まで幅がある(要出典確認)

後継者不在率を調べると、帝国データバンクと東京商工リサーチという2つの主要な調査機関で、公表される数値に大きな開きがあることに気づきます。

どちらか一方だけを見ると誤解が生じやすいため、両方の数値を調査年とあわせて確認しておきます。

帝国データバンク調査による後継者不在率は2025年に50.1%で改善傾向(要出典確認)

帝国データバンクの「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)」によると、2025年時点の全国の後継者不在率は50.1%で、前年から2.0ポイント低下し、7年連続で前年の水準を下回りました。

ただし企業規模別の内訳を見ると、中小企業では51.2%、小規模企業では57.3%まで数値が上がり、事業規模が小さいほど後継者不在の解消が遅れている様子がうかがえます。

年代別では、社長が30代未満の企業で83.2%、80代以上の企業でも22.2%が不在という結果です。

都道府県別では、最も高い秋田県が73.7%、最も低い三重県が33.9%と、地域差も大きくなっています。

同じ調査では、2025年に代表者が交代した企業のうち、血縁によらない役員・社員が引き継ぐ「内部昇格」が36.1%となり、従来最も多かった「同族承継」の32.3%を初めて上回りました。

「M&Aほか」は20.6%、「外部招聘」は7.6%です。家族が継ぐことを前提にできない会社が増えている実態が、代表者交代の内訳にも表れています(出典:帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)」2025年11月公表)。

東京商工リサーチ調査による後継者不在率は2025年に62.60%で上昇傾向(要出典確認)

東京商工リサーチの調査では、2025年の後継者不在率は62.60%で、前年の62.15%から0.45ポイント上昇しました。

2019年の55.61%から一貫して上昇が続いており、帝国データバンクとは反対の傾向を示しています。

産業別では情報通信業が77.06%と最も高く、代表者年齢別では80代以上でも24.97%が不在という結果でした。

すでに後継者が決まっている企業に限ると、同族継承が63.65%、外部招聘が19.67%、内部昇進が16.23%となっており、後継者が決まっている企業では依然として同族継承が多数を占めています(出典:東京商工リサーチ「後継者不在率」調査2025年)。

数値に差が出るのは調査対象・算出方法が異なるため

同じ「後継者不在率」という言葉でも、50.1%と62.60%という10ポイント以上の開きが生まれるのは、両社が対象とする企業の母集団や、「不在」と判定する基準が異なるためです。

実務上は、どちらの数値が正しいかを議論するより、各社が公表する数値の推移(改善しているか、悪化しているか)を継続的に追うほうが実態把握には役立ちます。

数値には調査時点による変動があるため、最新の公式発表を都度確認することをおすすめします(要出典確認:各社公式発表の最新値をご確認ください)。

後継者不在率が高い背景には後継者候補の意思と相談のしづらさがある

後継者不在率という数字の裏側には、単に候補者がいないという事情だけでなく、候補者本人の意思や、周囲への相談しづらさが複雑に絡み合っています。

後継者候補が承継を望まないケースが増えている

ある相談サイトには、父親の会社が債務超過に近く、交際費の私的な使い込みも続いていた状況を前に、「このまま倒産しそうな借金だらけの会社を継承しても、自分にメリットはないのではないか」と疑問を投げかける後継者候補の声が寄せられていました。

財務状態への不安から承継そのものへの意欲が持てなくなるケースは、後継者不在率を押し上げる一因になっています。

一方で、実務上は債務超過に近い状態でも、事業再構築や財務再構築といった改善計画を描ければ、承継によって自己破産を避けながら返済できるキャッシュフローを組み立てられるケースもあります。

財務状況だけで承継の可否を判断する前に、改善の余地があるかどうかを専門家と一緒に確認する価値はあります。

継ぐ意味を見いだせないまま話が進まないケースもある

別の相談では、父親から「お前が継がなければ廃業になる」と伝えられながらも、質問者本人は「仕事にやり甲斐も感じられず、この仕事を今後もやっていきたいとは思わなかった」と振り返っていました。

経営者が「継いでほしい」という期待だけを伝え、後継者候補の意思や適性をきちんと確認しないまま時間が過ぎると、候補者は自分の気持ちの置きどころが分からなくなります。

経営者本人にとって、事業承継は日常的な経営課題として意識されにくいテーマでもあり、こうした行き違いが起きやすい背景の一つになっています。

相談する一歩を踏み出せず後継者不在が長期化するケースもある

家族間の力関係や遠慮から、後継者候補の側から銀行や税理士などの専門家に相談しづらいという事情は珍しくありません。

税理士のような身近な専門家であっても、経営者の年齢が承継期に近づいてきたという実感がなければ、こちらから切り出しにくいという構造的な事情も指摘されています。

近年は経営者保証に関するガイドラインの整備や補助金制度の拡充など、相談への一歩を後押しする外部環境が整いつつあり、以前より相談しやすい状況に変わってきています。

後継者不在率が高くても廃業だけが結末になるわけではない

ここまで見てきた数値だけを切り取ると、後継者不在率が高い会社ほど廃業に近づいているように感じられるかもしれません。

ただし、不在率が示すのはあくまで全国的な傾向であり、個社の結末を決めるものではありません。

「後継者がいない会社はやはり廃業になるのでしょうか」という悩みの実態

冒頭で紹介した「後継者がいない会社はやはり廃業になるのでしょうか」という問いに対して、実務の現場での答えは「不在のまま何もしなければ廃業に近づくが、行動を起こせば選択肢は残る」というものです。

50代の経営者からは「事業承継はまだ早い」という声を聞くことが多いものの、実務上はこの段階から、10年後・20年後に承継しやすい会社をつくるために今から何をすべきかを明確にする働きかけが行われています。

準備には少なくとも数年、6年以上を見ておくことが望ましく、経営者の年齢や健康状態に余裕があれば、10年ほどかけて借入をゼロに近づけながら計画的に進める例もあります。

なお、廃業そのものも選択肢の一つではありますが、選ぶ場合はできるだけ良いタイミングで従業員の転職先を確保し、残余財産をきちんと分配できる状態で清算することが望まれます。

事業と雇用を残せる可能性が少しでもあるなら、廃業を決める前に比較検討する時間を確保しておきたいところです。

後継者候補はいても顕在化していないだけのケースもある

統計上「不在」とカウントされる企業のなかには、実際には後継者候補が存在するのに、それが表に出ていないだけのケースも含まれます。

たとえば、個人事業主の親のもとで長年働いてきた後継者候補が、事業を引き継ぎたいと思いながらも、自分から切り出すのは何か違う気がして言い出せずにいるケースがあります。

親の側は「引き継ぎのタイミング」を「相続が発生したとき」だと考えており、生前に計画的に進める事業承継という発想がそもそも共有されていなかったことが背景にあります。

後継者候補がいないのではなく、意思確認や引き継ぎ方の共有が済んでいないだけ、というケースは想像より多く存在します。

後継者不在率のデータを踏まえて今から検討できる対策

後継者不在率のデータを自社に引き寄せて考えるなら、重要なのは数値に一喜一憂することではなく、今から検討できる選択肢を具体的に比較することです。

親族内・従業員承継の可能性をあらためて確認する

後継者不在というと親族に継がせる相手がいない状況を思い浮かべがちですが、従業員承継の可能性もあらためて確認する価値があります。

実務上、社長という役割は担いたいものの、株式を自分の資金で買い取ることにためらいを感じている社員は少なくありません。

銀行融資を軸にした資金調達や、種類株の活用といった工夫次第で、選択肢として現実味を帯びてくることもあります。

親族内承継の具体的な進め方やメリット・デメリットについては、こちらのコラムもおすすめです。

『親族内承継とは|メリット・デメリットと進め方を経営者・後継者向けに解説』

従業員承継における資金調達の実務やリスクヘッジの工夫については、こちらのコラムもおすすめです。

『従業員承継(社内承継・MBO/EBO)とは|進め方とメリット・デメリット』

親族内・従業員・第三者承継の3つを横断して比較検討したい場合は、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継の方法3類型を比較|親族内・従業員・M&Aの違いと選び方ガイド』

第三者承継(M&A)で社外に引き継ぐ選択肢を持つ

親族にも社内にも継がせる相手が見当たらない場合は、社外の会社や個人に引き継ぐ第三者承継(M&A)が選択肢になります。

かつては「会社を売る」「乗っ取られる」といった否定的なイメージで語られがちでしたが、現在は取引先や同業のグループに加わって共同で成長を目指す前向きな選択として捉えられる場面が増えています。

事業承継のための特別な手法というより、事業拡大や事業成長の手段として日常的に行われているM&Aの延長線上に、後継者不在の解消という出口があると考えると分かりやすくなります。

第三者承継(M&A)の具体的な流れや後継者の探し方については、こちらのコラムもおすすめです。

『第三者承継(M&A)とは|会社売却の流れと後継者の探し方を中立に解説』

事業承継とM&Aがどのような関係にあるかを整理して理解したい場合は、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継とM&Aの違いとは|第三者承継という一手法との関係を中立に整理』

マッチングサービスや支援機関を使って相手を探す

第三者承継を検討する場合、相手探しの手段としてマッチングサイトを併用する方法があります。

実務上は、経営者が単独でマッチングサイトへの掲載を決めるというより、依頼を受けた仲介業者が、より良い相手を見つけるための選択肢の一つとして活用する構造が一般的です。

掲載後の成約がうまくいくかどうかは、価格の期待値を早い段階で市場の実態に近づけておけるかどうかにも左右されます。公的な相談窓口である事業承継・引継ぎ支援センターの後継者人材バンクを利用する方法もあります。

後継者募集とマッチングサービスの使い方やメリット・注意点については、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継のマッチングサイトとは|後継者募集の使い方とメリット・注意点』

手法を決める前に中立な相談先で選択肢を整理する

親族内・従業員・第三者承継のどれが自社に合っているかは、後継者候補の有無だけでなく、資金調達の負担や経営者保証の扱い、譲渡対価の受け取り方によっても変わります。

相談先を選ぶ際は、業種特有の事情を理解した助言ができるか、親族内・従業員・第三者のいずれの手法でも税務面まで一気通貫で対応できるか、特定の手法に誘導せず比較したうえで選べるか、検討段階の情報が社内外に漏れないよう配慮できるか、相談から実行まで長期にわたって同じ窓口で伴走できるか、という5つの観点で比較しておくと判断しやすくなります。

事業承継の相談先の選び方をさらに詳しく知りたい方は、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継は誰に相談すべき?相談先の種類と選び方をわかりやすく解説』

【まとめ】後継者不在率のデータを自社に当てはめて次の一歩を考える

後継者不在率は、帝国データバンクで50.1%、東京商工リサーチで62.60%と、調査機関によって数値に開きがあります(2025年・要出典確認)。

どちらの数値も全国的な傾向を示すものであり、自社が不在としてカウントされているからといって、廃業が決まっているわけではありません。

後継者候補が本当にいないのか、それとも意思確認や引き継ぎ方の共有が済んでいないだけなのかを、まず自社の状況に当てはめて整理することが最初の一歩になります。

そのうえで、親族内・従業員・第三者承継のどれか一つに絞り込む前に、複数の選択肢を比較しながら、資金調達や税務面まで一貫して相談できる窓口に早めに声をかけてみることをおすすめします。

船井総研あがたFASでは、後継者不在の状況を整理する段階から、特定の承継手法に偏ることなく選択肢を比較し、実行まで伴走する相談を受け付けています。

後継者不在の状況をどう整理すればよいか迷ったときは、事業承継の無料相談で選択肢を比較できます。

後継者不在への向き合い方をまとめた資料は、事業承継の資料ダウンロードからご覧いただけます。

事業承継の相談先の選び方については、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継は誰に相談すべき?相談先の種類と選び方をわかりやすく解説』


経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。

プロの目利きで自社の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。

【業界専門コンサルタントが担当】「出口戦略」診断で自社の価値を正しく守る。ベストな承継を実現するための第一歩。


よくある質問

Q. 後継者不在率とは何ですか?

後継者不在率とは、経営者に後継者の有無を尋ねる調査で、「後継者が決まっていない」と回答した企業の割合を指します。帝国データバンクや東京商工リサーチが企業データベースをもとに毎年算出しており、親族・従業員・社外を問わず承継先が具体的に固まっていない企業が対象に含まれます。数値だけでなく、算出方法の違いも踏まえて読むことが大切です。

Q. 後継者不在率は全国でどれくらいですか?

2025年時点で、帝国データバンクの調査では全国平均50.1%、東京商工リサーチの調査では62.60%です(要出典確認:各社公式発表の最新値をご確認ください)。企業規模別では、帝国データバンクの調査で中小企業51.2%、小規模企業57.3%と、規模が小さいほど不在率が上昇する傾向があります。都道府県別では、同じ調査で秋田県が73.7%と最も高く、三重県が33.9%と最も低くなっています。

Q. 帝国データバンクと東京商工リサーチで後継者不在率の数値が違うのはなぜですか?

両社が対象とする企業の母集団や、「後継者不在」と判定する基準が異なるためです。たとえば2025年は帝国データバンクが50.1%、東京商工リサーチが62.60%と、同じ年でも10ポイント以上の差が生まれています。帝国データバンクの数値は近年改善傾向にある一方、東京商工リサーチの数値は上昇傾向が続いており、単純に一方の数値だけで実態を判断すると誤解が生じやすくなります。

Q. 後継者不在率が高い会社は必ず廃業しますか?

必ずしも廃業するとは限りません。後継者不在率は全国的な傾向を示す指標であり、個々の会社が実際に廃業するかどうかを決めるものではないためです。後継者候補が本当にいないのか、意思確認や引き継ぎ方の共有が済んでいないだけなのかを整理したうえで、親族内・従業員・第三者承継という選択肢を比較すれば、廃業以外の結末につながる可能性があります。

Q. 後継者不在に気づいたら何から始めればよいですか?

まず、後継者候補が本当に存在しないのか、意思確認ができていないだけなのかを整理することから始めます。そのうえで親族内・従業員・第三者承継の3つの選択肢を比較し、資金調達や税務面まで一貫して相談できる中立な窓口に早めに相談することをおすすめします。動き出しが早いほど、比較検討できる選択肢の幅は広がります。

 


植木 諒

(株)船井総研あがたFAS マネージャー

士業事務所でキャリアを歩み、法務・不動産の現場実務に精通。2018年の船井総研入社後は、財務コンサルティングを主軸に数多くの事業承継・再生案件を完遂してきた 。現在はグループの事業承継分野で中核を担う存在である 

土地家屋調査士・行政書士の資格を保持し、「事業・財産・組織」の3つの視点から包括的に支援 。現場実務から承継戦略までをワンストップで解決できる希少なコンサルタントとして、多くの経営者から厚い信頼を得ている。

植木 諒

(株)船井総研あがたFAS マネージャー

士業事務所でキャリアを歩み、法務・不動産の現場実務に精通。2018年の船井総研入社後は、財務コンサルティングを主軸に数多くの事業承継・再生案件を完遂してきた 。現在はグループの事業承継分野で中核を担う存在である 

土地家屋調査士・行政書士の資格を保持し、「事業・財産・組織」の3つの視点から包括的に支援 。現場実務から承継戦略までをワンストップで解決できる希少なコンサルタントとして、多くの経営者から厚い信頼を得ている。