事業承継ガイドラインとは、中小企業庁が事業承継の進め方を体系的に示した公的な指針です。
M&A仲介会社から届いた提案を前に、特定企業の営業資料ではなく公的な資料でまず全体像を確認したいと考える経営者や後継者は少なくありません。
中小企業庁はこの指針のなかで、事業承継の流れを5つのステップに整理しており、自社が今どの段階にいるかを把握する手がかりになります。
本記事では、事業承継ガイドラインが示す5つのステップの要点を、特定の手法や相談先へ誘導しない立場から整理します。
経営の正解は、一つではありません。
まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。
プロの目利きで自社の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。


事業承継ガイドラインとは中小企業庁が策定した公的な指針
中小企業庁が策定した事業承継ガイドラインは、特定の企業や仲介会社が作成した営業資料ではなく、国の機関がまとめた資料です。
この立場の違いに価値を感じて検索する読者が一定数存在します。
中小企業庁が事業承継ガイドラインを策定した目的
中小企業庁が事業承継ガイドラインを策定した背景には、後継者不在に悩む中小企業の増加があります。
親族内承継を前提とした従来の事業承継の進め方だけでは対応しきれない企業が増え、従業員承継や第三者承継(M&A)も含めた選択肢を経営者と支援機関が共有できるよう、共通の指針としてまとめられました。
想定読者は経営者だけでなく支援機関も含まれる
事業承継ガイドラインは、経営者本人が読んで手順どおりに実行するための説明書というより、税理士や金融機関など支援機関側が課題解決の型を把握し、サポート体制を組み立てるための土台として使われる場面が実務上は多くあります。
金融機関から株価対策の依頼を受けて相談が始まった案件であっても、株価対策だけで事業承継が完結することはなく、結局はゼロから会社全体の状況を聞き直す必要が生じるケースがほとんどです。
経営者自身が読む場合も、この指針が誰に向けて書かれているかを踏まえておくと、内容を実務にどう落とし込めばよいかが見えやすくなります。
事業承継の全体像を先に確認しておきたい方は、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継とは|方法・進め方・税金までの流れをまとめて理解できるガイド』
中小M&Aガイドラインとは別の指針である点に注意
中小企業庁は、事業承継ガイドラインとは別に「中小M&Aガイドライン」という指針も策定しています。
中小M&Aガイドラインは、2015年に策定された事業引継ぎガイドラインを2020年に全面改訂したもので、M&A仲介会社等の行動指針や手数料の目安を示すことに重点を置く内容です。
これに対して事業承継ガイドラインは、親族内承継・従業員承継・M&Aを含む事業承継全体の進め方を5つのステップで示す、より範囲の広い指針にあたります。検索結果に似た名前が並ぶことがあるため、区別して理解しておく必要があります。

事業承継ガイドラインの改訂の経緯|最新は第3版(2022年3月改訂・要出典確認)
事業承継ガイドラインは、策定から複数回の改訂を経て内容が更新されてきました。
中小企業庁の公式サイトへ直接アクセスして版数を確認しようと試みましたが、アクセスできなかったため、以下は複数の専門メディアの記述を突き合わせて整理した内容です。
最新の版数・改訂年月は、中小企業庁の公式サイトで必ずご確認ください。(要出典確認)
初版の策定から2回の改訂を経て現在に至る(要出典確認)
事業承継ガイドラインは2006年に初版が策定され、2016年12月に一度改訂されたのち、2022年3月に「第3版」として再び改訂されたと複数のメディアが記述しています。
2016年版から2022年の第3版までは約5年の間隔が空いており、この間に後継者不在率の上昇や第三者承継(M&A)の一般化といった社会環境の変化が生じたことが、改訂の理由の一つとされています。
直近の改訂で従業員承継・M&Aの説明が充実した(要出典確認)
2022年の第3版では、掲載データや支援施策の更新に加えて、従業員承継や第三者承継(M&A)に関する説明が充実し、後継者の目線に立った説明も追加されたと紹介されています。
従来のガイドラインは親族内承継を中心に想定した内容でしたが、近年は親族以外への承継やM&Aの比率が高まっていることを踏まえた改訂だといえます。
事業承継ガイドラインが示す5つのステップの全体像
事業承継ガイドラインの中心となるのが、事業承継の進め方を5段階に整理した5つのステップです。
競合する記事の多くはステップの名称を列挙するだけで終えていますが、まずは全体の流れを一覧で押さえておきます。
5つのステップを一覧で確認する
事業承継ガイドラインが示す5つのステップは、次のとおりです。
ステップ1.事業承継に向けた準備の必要性の認識
ステップ2.経営状況・経営課題の把握(見える化)
ステップ3.事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
ステップ4.事業承継計画の策定、またはM&Aのマッチング
ステップ5.事業承継(またはM&A)の実行
5つの段階は、事業承継に向き合い始める最初の意識づけから、実際に手法を実行する段階まで、時系列に沿って並んでいます。
次の章からは、ステップ1〜3とステップ4・5に分けて、それぞれの中身を具体的に見ていきます。
事業承継の手続き全体の流れをさらに詳しく知りたい方は、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継の進め方・手続きの流れを解説|何から始めるべきか迷わず分かる』

事業承継ガイドラインのステップ1〜3|準備・見える化・磨き上げ
事業承継ガイドラインの前半3ステップは、事業承継を意識し始めてから、実際に動き出す準備を整えるまでの段階にあたります。
ステップ1.事業承継に向けた準備の必要性の認識
最初のステップは、経営者自身が事業承継の必要性を認識するところから始まります。
経営者本人にとって、事業承継は日常的な経営課題として意識されにくいテーマであり、税理士など外部の専門家からの一声がきっかけになることも少なくありません。
実務上、相談の入り口はこのステップ1(そもそもの課題把握)から始まるケースがほとんどで、金融機関からの紹介で株価対策の依頼を受けた案件であっても、結局は会社全体の状況をゼロから聞き直すことになります。
後継者が決まっていない状況をどう整理すればよいかについては、こちらのコラムもおすすめです。
『後継者不在率の現状と対策|最新データと廃業回避に向けた選択肢がわかる』
ステップ2.経営状況・経営課題の把握(見える化)
2つ目のステップは、自社の経営状況と課題を客観的に洗い出す見える化です。
見える化の実務は、M&Aにおけるセラーズデューデリジェンス(売り手側の事前準備)に近い側面があります。
買い手からデューデリジェンスで質問される前提で自社の状況を整理し、現状の財務分析を行い、先代の経営の経緯をどこまで後継者が理解しているかを確認する作業が、ここでいう見える化の具体的な中身です。
事業承継における課題の洗い出し方については、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継の課題と問題点|後継者不在から自社株評価まで整理してわかる』
ステップ3.事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
3つ目のステップは、見える化で洗い出した課題をもとに経営改善を進める磨き上げです。
収益力の向上や財務体質の改善だけでなく、組織や人材の体制を整えることも磨き上げに含まれます。
経験上、この段階での改善状況は、後継者候補が承継を前向きに検討できるかどうかにも影響します。

事業承継ガイドラインのステップ4・5|計画策定・マッチングと実行
後半の2ステップは、磨き上げまでの準備を踏まえて、具体的な計画を固め、実際に承継を進める段階です。
ステップ4.事業承継計画の策定、またはM&Aのマッチング
親族内承継・従業員承継の場合は事業承継計画書を策定し、第三者承継(M&A)の場合は譲渡先とのマッチングを進めるのが、このステップの内容です。
事業承継計画書自体に難しい記載事項はなく、現状把握さえできていれば書ききれない項目は多くありません。
ただし、計画書には書ききれない実行計画を裏側で詳細に詰めていく作業が欠かせず、たとえば経営者保証を外したい場合は、経営者保証に関するガイドラインに基づいて金融機関と交渉を進める実行計画を、別途組み立てる必要があります。
事業承継計画書の具体的な記載項目や作り方については、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継計画書の作り方|記載項目と進め方が記入例つきで迷わず分かる』
ステップ5.事業承継(またはM&A)の実行
最後のステップは、策定した計画やマッチングの結果に沿って、実際に経営権や資産を引き継ぐ段階です。
第三者承継(M&A)を選ぶ場合は、契約締結や資産の移転手続きを経て譲渡が実行されます。
かつては会社を譲渡することに否定的なイメージを持つ経営者も見られましたが、現在はグループの一員として共同で成長を目指す選択として受け止められる場面が増えています。
第三者承継(M&A)の具体的な流れについては、こちらのコラムもおすすめです。
『第三者承継(M&A)とは|会社売却の流れと後継者の探し方を中立に解説』
事業承継ガイドラインを読んだあとに何を相談すればよいか
事業承継ガイドラインは、事業承継の進め方の型を示すものであり、自社がどの手法に向いているかまでは書かれていません。
読み終えたあとに何をすればよいかを整理しておきます。
自社が今どのステップにいるかを整理する
まずは、5つのステップのうち自社が今どの段階にいるかを確認します。
準備の必要性すら意識できていない段階なのか、見える化や磨き上げの途中なのか、計画策定や実行の段階に入っているのかによって、必要な行動は大きく変わります。
手法選び・税金・契約書など個別テーマは専門家への相談が必要になる
見える化や磨き上げの段階は、自己診断だけでは限界があります。
税務会計の知見を持つ相談先が加わることで、資産や株式の整理、経営改善の精度が上がりやすくなります。
資産承継の実務では、不動産の売買契約や登記、賃借人への通知など自社だけで完結できない手続きが生じる場面もあり、必要に応じて税理士や司法書士など専門家への依頼が必要になります。
制度面では、事業承継補助金のように専門家への依頼費用や設備投資を後押しする制度もあるため、早い段階で存在を知っておくと選択肢が広がります。
事業承継補助金の対象者や申請の流れについては、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継補助金とは|対象者・金額・申請の流れと承継手法別の使い方を解説』
後継者が決まっていない場合の相談先
後継者候補が社内にも親族にも見当たらない場合は、公的な相談窓口である事業承継・引継ぎ支援センターや、民間のマッチングサービスを活用する方法があります。
手法を決め切る前の段階では、特定の手法に強い相談先ではなく、中立な立場で選択肢を整理できる窓口に相談することで、特定の手法への誘導を受けずに検討を進められます。
事業承継の相談先の選び方をさらに詳しく知りたい方は、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継は誰に相談すべき?相談先の種類と選び方をわかりやすく解説』

【まとめ】事業承継ガイドラインは5つのステップで事業承継の進め方を示す指針
事業承継ガイドラインは、中小企業庁が策定した公的な指針で、準備の必要性の認識・見える化・磨き上げ・計画策定またはマッチング・実行という5つのステップで事業承継の進め方を示しています。
最新は2022年3月に改訂された第3版とされていますが(要出典確認)、版数にかかわらず、ガイドラインが示すのはあくまで進め方の型です。
自社がどの手法(親族内・従業員・M&A)に向いているかの判断や、税金・契約書などの実務は、この型だけでは決まりません。
まず取り組みたいのは、自社が今どのステップにいるかを整理することです。
そのうえで、手法を一つに絞り込む前に複数の選択肢を比較しながら、税務会計まで一貫して相談できる窓口に早めに声をかけることをおすすめします。
船井総研あがたFASでは、事業承継ガイドラインのどのステップからでも、特定の手法に偏ることなく選択肢を整理し、実行まで伴走する相談を受け付けています。
事業承継の相談先の選び方については、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継は誰に相談すべき?相談先の種類と選び方をわかりやすく解説』
事業承継ガイドラインを読んで自社の状況を整理したいときは、事業承継の無料相談で選択肢を比較できます。
事業承継の進め方をまとめた資料は、事業承継の資料ダウンロードからご覧いただけます。
経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。 プロの目利きで自社の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。
【業界専門コンサルタントが担当】「出口戦略」診断で自社の価値を正しく守る。ベストな承継を実現するための第一歩。


よくある質問
Q. 事業承継ガイドラインとは何ですか?
事業承継ガイドラインとは、中小企業庁が策定した事業承継の進め方に関する公的な指針です。親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)を含む事業承継全体を5つのステップに整理しており、経営者本人だけでなく、税理士や金融機関など支援機関が体制を組み立てるための土台としても使われています。特定の仲介会社が作成した営業資料とは異なり、国の機関がまとめた中立的な資料である点が特徴です。
Q. 事業承継ガイドラインが示す5つのステップは何ですか?
事業承継ガイドラインが示す5つのステップは、準備の必要性の認識、経営状況・経営課題の把握(見える化)、経営改善(磨き上げ)、事業承継計画の策定またはM&Aのマッチング、事業承継(またはM&A)の実行です。5つは時系列に沿って設定されており、この順序で自社の状況を照らし合わせると、今どの段階にいるかを整理しやすくなります。
Q. 事業承継ガイドラインの最新版はいつ改訂されましたか?
最新は2022年3月に改訂された第3版とされています(要出典確認)。2006年の策定後、2016年12月に一度改訂され、2022年3月に約5年ぶりの改訂を経て現在の第3版に至ったと複数のメディアが記述しています。改訂の背景には、後継者不在率の上昇や第三者承継(M&A)の一般化といった社会環境の変化があります。正確な版数・改訂年月は中小企業庁の公式サイトでご確認ください。
Q. 事業承継ガイドラインと中小M&Aガイドラインの違いは何ですか?
事業承継ガイドラインは、親族内承継・従業員承継・M&Aを含む事業承継全体の進め方を5つのステップで示す指針です。一方の中小M&Aガイドラインは、事業引継ぎガイドラインを2020年に全面改訂したもので、M&A仲介会社等の行動指針や手数料の目安を示すことに重点を置いた、対象範囲の異なる指針にあたります。
Q. 事業承継ガイドラインは経営者自身が読む必要がありますか?
経営者自身が読んでも役立ちますが、実務上は税理士や金融機関といった支援機関が課題解決の型を把握し、サポート体制を組み立てるための土台として使われる場面のほうが多くあります。経営者にとっては、内容をそのまま実行するというより、支援機関とのやり取りにおける共通言語として活用する読み方が実務的です。