事業承継の課題は、後継者不在という一つの問題だけで語れるものではありません。
借金を抱えた会社を継ぐことにメリットを感じられないという後継者候補の迷いや、後継者がいなければ廃業するしかないのかという不安が示すとおり、後継者不在・経営者の高齢化・準備不足・自社株評価や資金負担・相談先への不信感という複数の層が重なって表れます。
本記事では、事業承継の課題を5つの軸に分けて整理し、どこから解決の方向性を見つければよいかを解説します。
経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。 プロの目利きで自社の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。

事業承継の課題は後継者不在から相談先選びまで複数の層に重なっている
事業承継の課題を一言で説明するのは容易ではありません。まず全体像を押さえたうえで、自社に当てはまる軸を見極める必要があります。
事業承継の課題は主に5つの軸で整理できる
事業承継の相談を最初に受ける段階で見えてくる課題は、一つの領域にとどまりません。
組織・人材の問題、資金繰りの問題、売上が事業のライフサイクルの最終ステージで伸び悩む問題など、案件によって表れ方はさまざまです。
実務上は、これらを次の5つの軸に分けて整理すると、自社の状況を把握しやすくなります。
• 後継者不在・経営者の高齢化
• 準備不足のまま話が進んでしまうこと
• 自社株評価や資金面の負担
• 承継の手法(親族内・従業員・第三者)ごとに異なる課題
• 相談先への不信感や相談しづらさ
どの課題から着手すべきかという優先順位は、まず「どこに問題がありそうか、発生しそうか」を把握しないと決められません。
経験上、入り口の段階でこの見極めを飛ばしてしまうと、後から対応の順番を組み直すことになりやすいというのが実務上の実感です。
中小企業庁も事業承継の課題への早期の取り組みを呼びかけている
中小企業庁や関連機関も、経営者の高齢化や後継者不在といった事業承継の課題について、早期の取り組みを呼びかける情報発信を行っています(具体的な統計数値は調査主体・調査年によって異なるため、最新の公式発表を確認することをおすすめします)。
事業承継そのものの方法や進め方、税金までの全体像を先に押さえておきたい方は、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継とは|方法・進め方・税金までの流れをまとめて理解できるガイド』

事業承継の課題として後継者不在と経営者の高齢化が重なっている
事業承継の課題のなかでも、後継者不在と経営者の高齢化は特に重なって語られることが多い軸です。
後継者が決まっていないことは事業承継の課題の中でも指摘される頻度が高い
「後継者がいない会社はやはり廃業になるのでしょうか」。こうした不安を抱く経営者や、その会社で働く従業員は少なくありません。
後継者が正式に決まっていない状態は、事業承継の課題のなかでも指摘される頻度が高い項目です。
廃業という選択肢自体がなくなったわけではありませんが、現場では、後継者が決まらないまま時間だけが過ぎてしまう会社を数多く見てきました。
経営者の高齢化によって事業承継の課題が先送りにされる実例もある
70歳前後、あるいはそれ以上の経営者が、後継者不在のまま事業承継を切り出すケースは珍しくありません。
経営者本人にとって、事業承継は日常的な経営課題として意識されにくいという事情があります。
税理士など外部の専門家の側も、経営者の年齢が承継期に近づいているという実感がないと言い出しにくいという構造的な事情もあります。
一方で、経営者保証ガイドラインの整備や関連する補助金制度の拡充など、事業承継を後押しする外部環境は着実に整ってきています。
50代の経営者に対しても、「事業承継ではまだ早い」と感じている段階から、10年後・20年後に承継しやすい会社をつくるために今何をすべきかを明確にする働きかけを行うことが、課題の先送りを防ぐ実務上のポイントです。

事業承継の課題は準備不足によって当日ではなく何年も前から積み重なる
事業承継の課題は、承継のタイミングになって突然表れるわけではありません。何年も前からの準備不足が積み重なった結果として表面化するケースが目立ちます。
引き継ぎの準備が整わないまま代表権だけが先に動くケースがある
引継ぎが進まないまま代表権だけが先に移ることや、株式を持たないまま経営を任される状態に戸惑う後継者候補は少なくありません。
実務上、事業承継の相談を受ける際にまず確認するのは、後継者がどの程度の期間、社内でどのような立場にいるのか、そして株式を現経営者がどの程度保有しているのか、という基本的な状況です。
も準備が進んでいない場合は、こうした基本情報を一からすべて確認する必要があり、承継のゴールをいつに設定しているかが定まっていないほど、直前になって対応しなければならない事項が増えてしまいます。
提示された条件の数字が読み手にとって不透明なまま話が進むケースもある
準備不足は、条件面の数字にも表れます。たとえば、想定される資産額を大きく上回る退職金額が希望として示され、承継開始時点で会社の実質的な評価がマイナスになってしまうなど、数字の整合性が取れないまま条件が提示されるケースもあります。
段階的に株式を取得していく提案についても、経営権を握られた後に一方的な決定によって後継者候補が経営から退けられるリスクを具体的に指摘する声もあります。
条件を提示される側が数字の意味を十分に理解できないまま話が進んでしまうことは、準備不足が引き起こす課題の典型例です。

事業承継の課題には自社株評価や資金面の負担も含まれる
事業承継の課題として見過ごせないのが、自社株評価や資金面の負担です。
自社株の評価額が想定と異なり資金計画が崩れる課題がある
自社株式には市場価格がないため、評価額は相続や贈与のタイミングで初めて明らかになることが少なくありません。
想定より評価額が高く算定され、後継者の納税資金や買取資金の計画が崩れてしまうという課題は、業歴が長く利益を積み上げてきた会社ほど起こりやすい傾向にあります。
自社株・株式の承継をどう進めるかを詳しく知りたい方は、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継の株式・自社株の承継|贈与・相続・譲渡の選び方と株式集約』
個人保証や税負担が承継の意欲を削ぐ課題になりやすい
自社株の評価額に連動する相続税・贈与税の負担、そして金融機関からの借入に付随する経営者保証の引き継ぎは、後継者が承継そのものに二の足を踏む要因になりやすい課題です(負担の重さの感じ方は会社の財務状況によって異なるため、一律の断定はできません)。
相続税・贈与税の考え方を具体的に知りたい方は、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継の相続税・贈与税とは|相続時精算課税と暦年贈与の使い分け』。
経営者保証の扱いを含め、事業承継の資金面をどう組み立てるかについては、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継の融資とは|公庫・保証協会の活用と個人保証の注意点』
事業承継の課題は選ぶ手法によって現れ方が異なる
事業承継の課題は、親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)のどの手法を選ぶかによっても現れ方が変わります。
親族内承継では気持ちの整理と対話が課題になりやすい
親族内承継では、後継者候補が承継そのものに納得できるかという気持ちの整理が課題になりやすい傾向があります。
会社の経営状態そのものが承継への意欲を左右し、後継者候補が二の足を踏む場合もあります。親族内承継のメリット・デメリットと進め方については、こちらのコラムもおすすめです。
『親族内承継とは|メリット・デメリットと進め方を経営者・後継者向けに解説』
従業員承継では株式取得の資金と経営権の分散が課題になりやすい
従業員承継では、後継者となる従業員に株式を買い取るだけの資金力があるかどうかが課題になります。
加えて、段階的に株式を移していく過程で経営権が分散し、想定していなかった形で経営から退かざるを得なくなるリスクも指摘されています。
従業員承継(社内承継・MBO/EBO)の進め方については、こちらのコラムもおすすめです。
『従業員承継(社内承継・MBO/EBO)とは|進め方とメリット・デメリット』
第三者承継(M&A)では相手探しと仲介への不信感が課題になりやすい
第三者承継(M&A)では、自社に合った相手を見つけられるかという課題に加えて、M&A仲介からの営業手法そのものへの不信感が課題になるケースがあります。
M&Aを乗っ取りと同一視してしまうような、手法そのものへの誤解が、相談への一歩を踏み出しにくくしている場合も少なくありません。
第三者承継(M&A)の進め方や、事業承継全体のなかでの位置づけについては、こちらのコラムもおすすめです。
『第三者承継(M&A)とは|会社売却の流れと後継者の探し方を中立に解説』。
事業承継とM&Aがどう関係するのか整理したい方は、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継とM&Aの違いとは|第三者承継という一手法との関係を中立に整理』

事業承継の課題を解決する方向性は早期に中立な相談から始まる
事業承継の課題を並べるだけでは、解決の方向性は見えてきません。本記事では、課題を網羅することよりも、どこに相談すればその課題を整理できるかという一歩に絞って解説します。
手法を決める前に複数の選択肢を整理して比較する
親族内・従業員・第三者承継のどれを選ぶかを決める前に、まず自社にどの課題があり、どの手法であれば解決しやすいかを比較しておくことをおすすめします。
手法ごとのメリット・デメリットをまとめて比較したい方は、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継のメリット・デメリット|手法別に整理して選び方がわかるガイド』
税務・法務・M&Aのいずれにも偏らない相談先を選ぶ
身内を飛び越えて銀行や税理士などの専門家に相談すること自体に心理的なハードルを感じる方も少なくありません。
事業承継に関連する課題は、株価・自社株対策だけでなく、財務体質の改善、経営者保証の解消、人材・組織の開発、事業のライフサイクルに応じた戦略まで多岐にわたります。
一社で全体像を総合的に見てくれるかどうかを基準に選ぶと、遠回りをせずに済みます。相談先を選ぶ際の軸としては、次の5点が実務上参考になります。
• 自社の業種特性を理解した助言ができるか
• 自社株評価・資金・税務を一気通貫で整理できるか
• 特定の手法に誘導せず中立に比較できるか
• 検討段階の情報が社内外に漏れないよう配慮できるか
• 相談から実行まで同じ窓口で長期的に伴走できるか
なかでも、特定の手法へ偏らずに整理できるかどうかは見落とされがちな軸です。事業承継は誰に相談すべきか、相談先の選び方を詳しく知りたい方は、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継は誰に相談すべき?相談先の種類と選び方をわかりやすく解説』

【まとめ】事業承継の課題を放置せず早期の相談で解決の方向性を見つける
事業承継の課題は、後継者不在・経営者の高齢化・準備不足・自社株評価や資金面の負担・相談先への不信感という複数の層が重なって表れます。
課題を一つずつ個別に解決しようとするより、まずどこに問題がありそうかを洗い出し、優先順位を付けたうえで、手法を決める前に中立な立場で相談することが、遠回りを避ける近道です。
税務会計と経営コンサルティングを一気通貫で担う船井総研あがたFASでは、事業承継の課題を後継者不在・自社株評価・資金・相談先選びまで幅広く整理し、手法を決めるところから実行まで中立な立場で伴走しています。
自社の事業承継の課題をどこから整理すればよいか迷う段階でも、事業承継の無料相談を受け付けています。
事業承継やM&Aの基礎を業種を問わず確認したい方には、事業承継の資料ダウンロードもご用意しています。
経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。 プロの目利きで自社の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。
【業界専門コンサルタントが担当】「出口戦略」診断で自社の価値を正しく守る。ベストな承継を実現するための第一歩。


よくある質問
Q. 事業承継の課題にはどのようなものがありますか?
事業承継の課題は、後継者不在・経営者の高齢化、準備不足、自社株評価や資金面の負担、承継の手法ごとに異なる課題、相談先への不信感や相談しづらさという主に5つの軸に整理できます。
どの課題が重いかは会社によって異なるため、自社の状況を洗い出したうえで優先順位を付けることが必要です。
Q. 後継者不在と経営者の高齢化にはどのような関係がありますか?
経営者本人にとって事業承継は日常的な経営課題として意識されにくく、後継者が決まらないまま経営者の高齢化だけが進んでしまうケースが少なくありません。
50代のうちから10年後・20年後を見据えた準備を始めることで、後継者不在の課題が先送りされる事態を避けやすくなります。
Q. 事業承継の課題を放置するとどのようなリスクがありますか?
事業承継の課題を放置すると、後継者不在のまま経営者の高齢化が進み、廃業以外の選択肢を検討する時間が限られてしまうリスクがあります。
加えて、準備不足のまま代表権の移転や条件提示が先行すると、自社株評価や資金計画の食い違いが後から表面化し、後継者との間でトラブルに発展する可能性もあります。
Q. 事業承継の課題を整理して相談するにはどうすればよいですか?
まずは自社にどの課題があるかを、後継者不在・自社株評価や資金・手法選び・相談先という軸で洗い出すことから始めます。
そのうえで、特定の手法に誘導せず、業種特性の理解や税務まで一気通貫で整理できる相談先を選ぶことが、遠回りを避けるための実務上のポイントです。
Q. 事業承継の課題に対応するには、どのくらいの準備期間を見込めばよいですか?
必要な準備期間は会社の状況や選ぶ手法によって異なりますが、後継者の育成や自社株の評価・税負担の軽減まで含めると、複数年単位の計画を見込んでおくことが実務上一般的です。
承継のゴールまでの期間が短いほど対応すべき事項が集中しやすいため、早期の相談が選択肢を広く保つことにつながります。