事業承継の融資とは|公庫・保証協会の活用と個人保証の注意点
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事業承継の融資とは|公庫・保証協会の活用と個人保証の注意点

事業承継の融資は、後継者が株式や事業を取得する買取資金と、承継後に事業を回す運転資金のどちらを指すかによって、使える制度が変わります。

「自走できている会社で、お金をかけずに引き継げる方法」を探している経営者や後継者候補は少なくありませんが、実際には株式の買取や当面の運転資金として、まとまった資金が必要になる場面が多く見られます。

提示された承継条件を確認すると、資産5,000万円ほどの会社に対して退職金8,000万円を求められ、承継開始時点で3,000万円の資金不足が生じるというケースも見られ、こうした不足分を補う手段として融資が検討されます。

日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金、信用保証協会の保証制度、地方自治体や民間金融機関のローンには、それぞれ対象となる資金の使いみちや審査の視点に違いがあります。

特定の金融機関や制度に偏らず、資金の使いみちや個人保証の考え方から比較できるよう整理します。


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事業承継の融資とは|買取資金と運転資金の違いを整理

事業承継の融資と一口にいっても、必要になる資金の性質は一様ではありません。

後継者が株式や事業そのものを取得するための買取資金と、承継が終わったあとに事業を回していくための運転資金という、大きく2つの性質に分けて考える必要があります。

実務上は、この2つを区別しないまま金融機関に相談し、想定していた条件と提示された条件がかみ合わないケースも見られます。

買取資金(後継者が株式・事業を取得するための資金)

買取資金とは、親族内承継や従業員承継で後継者が自社株を買い取る場合や、第三者承継(M&A)で譲受側が株式・事業を取得する場合に必要となる資金です。

段階的に株式を買い増していく方法も選択肢の一つですが、過半数を取得するまでの間は経営権が不安定になりやすく、こうしたリスクを避けたい場合は、まとまった資金を融資でそろえて一括で取得する方法も検討されます。

運転資金(承継後に事業を回すための資金)

運転資金は、承継が完了したあとに事業を継続していくための資金です。

後継者が就任した直後は株式の買取資金や納税資金に関する相談が中心になりやすい一方、しばらく経営を続けた段階になると、設備の入れ替えや老朽化した拠点の建て替えといった投資のための資金調達の相談が増える傾向も見られます。

どちらの資金ニーズが先に生じるかは会社の状況によって異なるため、一概にどちらが多いとはいえません。

提示された条件の数字が合わない場合に確認したいこと

承継の条件として提示された退職金や株価が、会社の資産規模に対して過大に見える場合は、まず買取資金と運転資金のどちらの不足なのかを切り分けて確認することが欠かせません。

資産5,000万円ほどの会社に対して退職金8,000万円を求められ、承継開始時点で3,000万円の不足が生じるようなケースでは、不足分を融資でまかなえるのか、条件そのものを見直すべきなのかを専門家と一緒に整理する必要があります。

事業承継の融資で使える主な制度|公庫・信用保証協会・自治体・民間

事業承継の融資として活用できる制度は、大きく日本政策金融公庫、信用保証協会の保証制度、地方自治体の制度、民間金融機関のローンの4つに分けられます。

制度ごとに融資限度額や金利、対象となる状況が異なるため、まず全体像を押さえておくことが比較の出発点になります。

日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金

日本政策金融公庫には、事業承継・集約・活性化支援資金という制度があります。

中小企業事業(直接貸付)では融資限度額14億4,000万円、国民生活事業では融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)とされ、返済期間は設備資金が20年以内(据置5年以内)、運転資金が10年以内(据置5年以内)です。

基準利率から一定の引下げ措置が設けられている場合もあります。

これらの数値は2026年7月時点で公表されている情報であり、制度は改定されることがあるため、申込み前に必ず公式サイトで最新の内容を確認することをおすすめします。

国民生活事業と中小企業事業の違い

日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金は、個人事業主や小規模な会社を主な対象とする国民生活事業と、より規模の大きい会社も対象になる中小企業事業とで、融資限度額や利用できる窓口が分かれています。

自社の規模やこれまでの取引実態によってどちらの窓口が対象になるかが変わるため、相談の初期段階で確認しておくと話が早く進みます。

信用保証協会の事業承継特別保証

信用保証協会には、事業承継特別保証という制度があります。

限度額は2億8,000万円とされ、承継計画中の企業や承継が完了して間もない企業(3年以内など)を対象に、経営者保証を求めない、または保証の負担を軽減する設計になっている点が特徴です。

個人保証を避けたい、または引き継ぎたくないと考える後継者にとって、比較検討する価値がある制度といえます。

地方自治体の事業承継融資制度(自治体ごとに条件が異なる)

都道府県や市区町村が独自に用意している事業承継向けの融資制度もあります。

例えば北海道の事業承継貸付は限度額1億円以内・金利年1.1〜1.7%程度、東京都江東区の事業承継支援資金は借入限度額2,000万円・金利2.1%程度で信用保証料の本人負担がないといった制度が公表されています。

自治体ごとに条件が大きく異なるため、まず日本政策金融公庫や信用保証協会の全国共通の制度を押さえたうえで、本社や事業所が所在する自治体の制度を個別に確認する進め方が実務的です。

民間金融機関の事業承継ローン

民間の銀行や信用金庫にも、事業承継を目的としたローン商品があります。

融資限度額や金利、審査の基準は金融機関によって異なり、すでに取引実績のある金融機関のほうが相談を進めやすい傾向があります。

公的な制度と条件を比較しながら、複数の金融機関に相談してみる価値があります。

事業承継の融資で日本政策金融公庫を活用するときのポイント

対象となりやすいケース

日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金は、事業承継計画を策定している最中の企業や、承継後に新しい事業に取り組む予定がある企業、第三者承継のマッチング支援を活用している企業などが対象になりやすいとされています。

承継のタイミングだけでなく、承継後の事業の見通しを具体的に説明できるかどうかも重視される傾向があります。

融資の申込みから利用までの流れ

融資の利用は、公庫や金融機関への相談から始まり、事業承継計画や資金使途を整理した申込書類の準備、面談・審査を経て融資が実行されるという流れが一般的です。

実務上は、審査で特別に見られる基準があるというよりも、金融機関の担当者にどこまで具体的に説明し、資料をそろえられるかが結果を左右します。

資料の作成だけでも1〜2か月程度かかることが多く、金融機関との事前のすり合わせを含めると、合計で少なくとも数か月程度の準備期間を見ておく必要があります。

資料の作成や金融機関との事前のすり合わせは、事業承継コンサルや税理士に相談しながら進めるケースも見られます。

依頼先の選び方や費用相場を確認したい方は、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継コンサルの選び方と費用相場|依頼できることと注意点をわかりやすく解説』

審査で重視されやすい点

審査では、事業承継計画の具体性や、承継後の事業の継続性・収益性の見通しが重視されやすいとされています。

後継者が事業を継続する意思を明確に持っているかどうかも、金融機関が確認したいポイントの一つです。

事業承継の融資と個人保証の関係

旧経営者の個人保証はどうなるか

事業承継が完了しても、旧経営者が金融機関と結んでいる個人保証(経営者保証)は、契約を見直さない限り自動的に消えるわけではありません。

実務上は、承継のタイミングで金融機関に保証の解除や後継者への切り替えを相談するケースが一般的とされています。

中小企業庁と金融機関団体がまとめた経営者保証に関するガイドラインでは、一定の条件を満たす場合に経営者保証を求めない対応を検討することが示されており、承継の場面でもこの考え方が参考にされています。

後継者にはどこまで個人保証が求められるか

後継者に個人保証をどこまで求めるかは、金融機関や利用する制度によって対応が分かれます。

会社の財務状況や後継者自身の資産状況によっても判断が変わるため、融資を申し込む段階で、個人保証の要否について具体的に確認しておくことをおすすめします。

経営者保証を求めない制度の考え方(事業承継特別保証など)

信用保証協会の事業承継特別保証のように、経営者保証を求めない、または負担を軽減する設計の制度も用意されています。

個人保証を理由に承継そのものをためらっている後継者にとっては、こうした制度の存在を早い段階で知っておくことが、判断の幅を広げることにつながります。


事業承継の融資を選ぶときに見ておきたい判断軸

資金の使いみち(買取資金か運転資金か)で選ぶ

株式や事業を取得するための買取資金なのか、承継後の事業運営のための運転資金なのかによって、対応する制度は変わります。

まず自社に必要な資金の性質を整理することが、制度選びの出発点になります。

融資限度額・金利・返済期間で比較する

必要な資金の規模に対して、制度の融資限度額が足りるかどうかを確認します。

あわせて、基準利率からの引下げの有無や、据置期間を含めた返済期間の長さも、負担の軽さに直結する条件です。

経営者保証の要否で比較する

経営者保証を求められるかどうかは、後継者の心理的な負担に直結します。

事業承継特別保証のように経営者保証を求めない制度もあるため、保証の要否を比較の軸に加えることをおすすめします。

審査のスピードと対象地域(自治体制度)で比較する

現場では、限度額や金利だけを比較し、審査にかかる期間や対象地域の確認を後回しにしてしまう相談も見られます。

承継のタイミングが決まっている場合は、審査にかかる期間も比較の対象になります。

また自治体の制度を利用する場合は、本社や事業所の所在地によって対象になるかどうかが変わるため、事前の確認が欠かせません。

事業承継の融資で不足する場合に検討したいこと

補助金・自己資金・分割払いなど融資以外の選択肢

融資は返済が必要な資金調達手段のため、返済が不要な補助金や、自己資金、分割払いといった選択肢とあわせて検討する余地があります。

経験上、融資だけで必要な資金をすべてまかなおうとせず、返済不要の手段と組み合わせる相談は珍しくありません。

事業承継に使える補助金は、対象者や金額、申請の流れを確認したうえで、融資と組み合わせて活用できないかを検討する価値があります。

対象者や申請の流れ、承継手法ごとの使い方をさらに詳しく知りたい方は、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継補助金とは|対象者・金額・申請の流れと承継手法別の使い方を解説』

従業員承継で買取資金が壁になっている場合の考え方

従業員承継では、後継者となる従業員が自社株を買い取るだけの資金を用意できず、承継の話が前に進まないケースが見られます。

段階的に株式を買い増していく方法もありますが、過半数を取得するまでの間、経営権が不安定になるリスクも指摘されています。

融資でまとまった資金をそろえ、一括で株式を取得するという選択肢は、こうした資金の壁を乗り越える手段の一つになります。

従業員承継の進め方やメリット・デメリットを詳しく知りたい方は、こちらのコラムもおすすめです。

『従業員承継(社内承継・MBO/EBO)とは|進め方とメリット・デメリット』

【まとめ】事業承継の融資は資金の使いみちを整理してから選ぶ

事業承継の融資には、日本政策金融公庫、信用保証協会の保証制度、地方自治体の制度、民間金融機関のローンという複数の選択肢があり、買取資金か運転資金かという資金の使いみちや、個人保証の要否によって適した制度は変わります

。実務上は、融資限度額や金利だけでなく、審査に必要な資料の準備期間まで含めて計画を立てることが欠かせません。

まずは自社に必要な資金が買取資金なのか運転資金なのかを整理し、複数の制度を比較したうえで、金融機関や専門家に相談しながら申込みを進めることをおすすめします。

事業承継全体の費用を確認したい場合は、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継の費用相場|手法別・依頼先別の内訳をわかりやすく整理』

事業承継全体の方法・進め方・税金を確認したい場合は、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継とは|方法・進め方・税金までの流れをまとめて理解できるガイド』

自社に合った相談先を中立の立場で選びたい方は、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継は誰に相談すべき?相談先の種類と選び方をわかりやすく解説』

船井総研あがたFASでは、融資や補助金といった特定の手段に絞らず、税務会計と経営コンサルティングを一気通貫で見る立場から、資金調達を含めた事業承継全体の選択肢を一緒に整理する相談を受け付けています。

資金調達を含めた事業承継の進め方を相談したい場合は、事業承継の無料相談活用できます。

あわせて、事業承継の資料ダウンロードから判断材料を集めることもできます。


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よくある質問

Q. 事業承継の融資とは何ですか?

事業承継の融資とは、後継者が株式や事業を取得する買取資金や、承継後に事業を続ける運転資金を金融機関から調達する仕組みです。日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金や信用保証協会の保証制度、地方自治体・民間金融機関のローンなど複数の選択肢があり、資金の使いみちによって適した制度が異なります。

Q. 事業承継の融資は自己資金がなくても受けられますか?

自己資金がなくても、日本政策金融公庫や信用保証協会の制度を活用できる場合があります。ただし審査では、事業承継計画の内容や承継後の返済の見通しが重視されるため、自己資金の有無だけでなく、事業計画や資料の準備状況が結果に影響すると考えられます。

Q. 日本政策金融公庫の融資と信用保証協会の保証はどう違いますか?

日本政策金融公庫は公庫自身が直接資金を貸し付ける制度で、信用保証協会は民間金融機関からの借入に公的な保証を付ける仕組みです。信用保証協会の事業承継特別保証は経営者保証を求めない、または軽減する設計になっている点が、公庫の直接貸付との違いとして挙げられます。

Q. 事業承継の融資を受けるにはどれくらいの期間がかかりますか?

事業承継の融資は、申込書類の準備だけでも1〜2か月程度かかることが多く、金融機関との事前の相談や条件のすり合わせを含めると、合計で数か月程度を見込んでおく必要があるとされています。承継の時期が決まっている場合は、早めに準備を始めることをおすすめします。

Q. 事業承継で会社の借入金(負債)はどうなりますか?

株式譲渡による事業承継では、会社が抱える借入金は原則としてそのまま会社に残り、後継者が個人で肩代わりするものではありません。ただし旧経営者が個人保証を付けている場合は、承継後に金融機関へ保証の見直しを相談する必要があるため、負債と個人保証を分けて確認することをおすすめします。


植木 諒

(株)船井総研あがたFAS マネージャー

士業事務所でキャリアを歩み、法務・不動産の現場実務に精通。2018年の船井総研入社後は、財務コンサルティングを主軸に数多くの事業承継・再生案件を完遂してきた 。現在はグループの事業承継分野で中核を担う存在である 

土地家屋調査士・行政書士の資格を保持し、「事業・財産・組織」の3つの視点から包括的に支援 。現場実務から承継戦略までをワンストップで解決できる希少なコンサルタントとして、多くの経営者から厚い信頼を得ている。

植木 諒

(株)船井総研あがたFAS マネージャー

士業事務所でキャリアを歩み、法務・不動産の現場実務に精通。2018年の船井総研入社後は、財務コンサルティングを主軸に数多くの事業承継・再生案件を完遂してきた 。現在はグループの事業承継分野で中核を担う存在である 

土地家屋調査士・行政書士の資格を保持し、「事業・財産・組織」の3つの視点から包括的に支援 。現場実務から承継戦略までをワンストップで解決できる希少なコンサルタントとして、多くの経営者から厚い信頼を得ている。