歯科

歯科経営者がM&Aを考え始めるきっかけ

歯科経営者は、診療、経営、事務作業、マネジメント、家に帰れば家長としてハードな毎日を過ごしています。そんな歯科経営者がM&Aを考え始めるきっかけは、何が多いのか。250院以上のご相談をいただいてきた弊社なりにまとめてみます。

ご子息・ご息女が後継しないことが確定した

ご子息・ご息女の独立開業。歯科医師・医師の道に進まない

歯科医師や医師のご子息・ご息女がいる場合、歯科経営者からすると後継してくれるのではないかと淡い期待を抱いているケースが多いです。ところが、ご子息・ご息女にいざ後継の話を切り出すと、独立開業すると判明。その瞬間、後継者不在が確定し、M&Aを検討されるという場合が多くあります。
また、ご子息・ご息女が歯科大学、医科大学を選択しないと分かったタイミングで、M&Aを検討される場合も多いです。

基本的な対策

親族内承継ができないことが明確になったこと自体は、そこまで悪いことではありません。後継者候補と話し合いを進めずに、「継いでくれるはずだ」で日々を過ごしていることが、最もリスクが高いです。出口戦略の選択肢が減ることで、逆に他の選択肢を真剣に考えるきっかけになります。出口戦略を積極的に進めて行くことで、結果納得感のあるゴールを迎えることも非常に多くあります。

まずはご子息・ご息女に対して、日々のコミュニケーションの中で後継するつもりがあるのかどうかを確認していくことが、基本的な対策となります。ご子息・ご息女が継がないことが判明すれば、他の出口戦略の中で最も自分のニーズに合致しているものが何かを、専門家に相談することが良いスタートを切れるポイントです。

先生の体調不良

突然の健康不安の発生。先行きに大きな不安

先生方は大変な毎日を過ごされていることが殆どです。首と目と腰に多大な身体的負担はかかるし、診療も集中が求められ心理的負担も大きい仕事です。そういった日々を過ごされていると、突然思いもよらない健康不安が発生することがあります。どれだけ健康に気を付けていても、健康不安は、起きるときには起きてしまいます。
歯科医院は院長先生に依存している運営体制になっていることが多く、院長先生に健康不安が起きるとクリニックの運営に多大な支障をきたします。患者さんの受け入れもままならない状態になり、後継者も不在であれば、M&Aを第一選択肢として検討されることが多いです。

基本的な対策

正直申し上げて、健康不安が発生した後から対策を講じるのは至難です。
出来ることであれば、健康に過ごせている中で「院長依存診療体制からの脱却」「経営幹部の育成」「財務・経理のシステム化」を進めることで、急な院長不在にも一定耐えうる体制を構築することが良いです。上記の体制が取れていることで、M&Aにおいても譲受先が経営を承継しやすく、多くの候補を募ることが出来ます。

ご自身のお身体のことでも、先々を見通すことは困難です。突然の健康不安が起き得ることを頭の片隅に入れて、院長依存型の診療体制からの脱却をはかっていくことが重要です。

法人規模が大きくなってきた

自分以外の近親者・幹部が、承継できる気がしない

法人規模が50名を超えてきたあたりから組織図が整ってきますが、最上位に理事長がいる体制は変わりません。そしてその最上位にご子息・ご息女が収まる、あるいは幹部が収まるイメージは全くわかないでしょう。周りの関係者も同様に、現理事長以外の近親者・幹部が、承継して経営するイメージはわきません。
そうなると、出口戦略としてはM&Aか廃業となります。廃業するには、地域、雇用、患者さんへの影響が大きく、ここまで培ってきた組織や診療品質を無にしてしまうのも、あまりに勿体ない。そこでM&Aによる、外部からの優秀な経営者を募ることを検討されるケースが多いです。

基本的な対策

法人規模が大きくなった場合、譲受候補先は限られますが、優秀な外部経営者から手が挙がりやすくなります。そのため、成長投資を止めるのではなく、積極的に成長戦略を描き、実行し、さらに法人の規模や組織体制を磨きあげることが出口戦略上も優位となります。

「これ以上大きくしても最後どうするのだろう…」とご不安になられるかもしれませんが、魅力的で一定の規模以上の法人には、思いもよらぬ候補者から手が挙がることも多々ありますので、積極的に成長投資をされることをお勧めします。

最近M&Aが成立した、近しい先生がいる

年齢や規模感が近しい先生、あるいは同期がM&Aした話を聞いた

開業のタイミングも同じく、年齢が近しい先生や、同期が開業した話を聞くと、自分も開業しようかなと考え始めるケースが多いです。結婚や、ご自宅の購入など、大きな決断の背景には、意外と周りの影響があるものです。
ご自身と年齢や規模感が近しい先生が、あるいは同期がM&Aした話を聞いて、M&Aを検討されるケースも多いです。

基本的な対策

歯科のM&Aは、運営形態や、医院の特徴によって形や候補先が大きく変わります。M&Aをされた先生もほとんどのケースでM&A専門家にご相談されて、無事M&Aを成立させていると思われます。まずは信頼できそうなM&A専門家に御相談されることが基本的な対策の第一歩と言えます。

先生はどのタイミングで出口戦略を決断されますか

歯科経営者がM&Aを考え始めるきっかけについて、代表的なものを挙げさせていただきました。
M&Aに限らず、出口戦略を考えることは先生にとっても、ご家族にとっても、従業員や患者さんにとっても大事なことです。まずは信頼できる方からご相談を始めていくことをお勧めします。


歯科のM&Aに関するより詳しい情報は、下記の記事をご参照ください。

1.歯科医院M&AのTOP
2.歯科のM&A事例
3.歯科のM&Aの失敗事例
4.歯科のM&Aのメリット・デメリット
5.歯科のM&Aのポイント
6.歯科のM&Aの特徴
7.歯科のM&Aの譲渡対価の相場観
8.歯科のM&Aの注意点


長谷川光太郎

(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント

国内大手メーカー勤務を経て、2018年に船井総研に入社。歯科医院の経営コンサルティングに従事し、現在は歯科医院・医療法人の事業承継全般の支援を行っている。医療法人特有の事業承継に関わる知見を有し、譲渡側・譲受側双方からの信頼が厚い。

長谷川光太郎

(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント

国内大手メーカー勤務を経て、2018年に船井総研に入社。歯科医院の経営コンサルティングに従事し、現在は歯科医院・医療法人の事業承継全般の支援を行っている。医療法人特有の事業承継に関わる知見を有し、譲渡側・譲受側双方からの信頼が厚い。