2023年以降の歯科に関わるM&A・資本提携関連のニュースについて取り上げていきます。歯科コンサルタントの目線からそれぞれのニュースから得られる示唆をまとめていきます。
①ホワイトエッセンスとオリックスとの資本業務提携
IPOではなく、信頼できる経営パートナーと手を結ぶ道へ
ホワイトエッセンスは歯科経営者にとって身近な企業ではないでしょうか。2003年の創業からホワイトニングのフランチャイズとして圧倒的な知名度を有し、多くの加盟歯科医院があります。
IPOによってさらなる発展の道を探っていたのは有名な話ですが、2023年にオリックスと資本業務提携を結ぶ道を選択されました。オリックスを経営パートナーとして迎えたことで、優秀な中途人材の採用、そしてオリックスが持つ海外販路の活用によるグローバル展開を見据えているようです。
得られる示唆
日本企業のエグジット状況としてIPOが7割・M&Aが3割の割合ですが、アメリカではIPOが1割・M&Aが9割と、まるで逆の状況です。日本ではオーガニックグロースが良いものとされますが、他国ではM&Aグロースをフル活用して上手く他企業との連携を進めることで、より早く理念や目標の実現に向かっている印象です。
ホワイトエッセンスの経営戦略は我々にとっても示唆深く、理念や目標の実現に向けて取りうる選択肢をゼロベースで考えることの重要性を教えてくれたニュースでした。
②GENOVAとSABUとの資本業務提携
マーケティング支援企業と事務代行企業との提携
GENOVAはWEBマーケティング支援を中心に、SABUは事務・採用・インスタグラム代行を中心に、歯科経営を支援されてきた企業です。我々もクライアントから両社のお話を伺うことも多く、実際に導入されている歯科医院も多いサービスです。
そんな両者が2024年に資本業務提携を結び、両者の強みをさらに伸ばす。WEBを中心とした外向け(集患やブランディング)の支援と、作業として時間がかかる取り組みの実行支援とを組み合わせたことで、歯科医師や歯科衛生士が診療に集中でき、より医院の持続的成長に寄与する包括的サポートを目指していくようです。
得られる示唆
GENOVAもSABUも、歯科で経営コンサルタントをしていると良くお話にあがる企業です。そんな両社が手を結ぶというニュースは、個人的に印象的でした。
両者の強みをさらに伸ばす資本業務提携とのことですが、まさしくその通りだと感じます。「ここと手を結べばもっと高品質で幅の広い支援を顧客に届けられるのではないか」といった、オーガニックグロースに限らない発想も、日本でも今後主流になっていくことでしょう。
③医療法人社団友伸會のスポンサー型民事再生
「東京プラス歯科」「キレイライン」で有名な歯科法人のスポンサー型民事再生
2023年秋、最大で29院展開されていた歯科法人の民事再生のニュースはショッキングなものでした。2021年時点で年間売上80億強の規模で、歯科の売上としては最大に躍り出ていた法人が、経営を続けるには困難なほどに財務状態が悪化していたというのは、歯科業界に衝撃を与えました。
スポンサー型民事再生(外部企業…スポンサーが資本提供し債務整理を進める形態のこと。経営不振に陥ってもスポンサーが入ることで事業を存続させることが可能となる)によって、今も運営を続けることが出来ています。
得られる示唆
商品構成の変更によって患者数が減少したことが原因での経営不振と言われています。そもそも2020年以降マウスピース型矯正は多くの歯科医院が導入を始め、広告過多、競争激化しており、1社が一人勝ちできる状態ではありませんでした。加えて、集患経路の広告依存度の高さ、人件費の圧迫、診療自体のコスト高、返金対応などの要因も重なり、窮地に陥ったのではないかと考えられます。
経営としては一度破綻しましたが、スポンサー型民事再生によって事業を継続できたことで、今も患者さんや従業員の雇用を一定守れていることは、個人的に良いことなのではないかと感じます。
歯科の成長戦略・出口戦略はどう変わっていくのか
歯科に関連する企業、法人でも、成長戦略・出口戦略の選択肢がこの数年で大きく変わってきております。さらなる成長を遂げるために、理念の実現をもっと早めるために、M&Aによって他社と手を組む選択肢が日本でも受け入れられてきていることを感じます。
民事再生のニュースも記載しましたが、さらなる成長を目指す歯科経営者の戦略はオーガニックグロースに限らなくなるのではないでしょうか。今後も歯科の動向を注視していきます。

歯科のM&Aに関するより詳しい情報は、下記の記事をご参照ください。
1.歯科医院M&AのTOP
2.歯科のM&A事例
3.歯科のM&Aの失敗事例
4.歯科のM&Aのメリット・デメリット
5.歯科のM&Aのポイント
6.歯科のM&Aの特徴
7.歯科のM&Aの譲渡対価の相場観
8.歯科のM&Aの注意点
