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昭和の初期の時代に既に栄えていた地域の不動産は“バブル”、“アベノミクス”の影響で購入した時の簿価よりも遥かに高い値段で取引されているようになっているものがあります。そのような不動産を物件として購入する場合は注意しなくてよいことですが、不動産を保有している法人をM&Aで購入する場合は注意が必要です。当たり前のことですが、株式の購入者が安い不動産の簿価を引き継いでしまいます。不動産を一生保有する場合は構わないのですが、再販する場合は安い簿価を引き継いでいるため、税務リスクを買主が負ってしまいます。(再販した際に簿価と時価の差の売却益に税金がかかるリスクを買主が負います)
リーマン以降の不動産市況が冷え込んでいるときは、買主が抱える税務リスクを考慮し、税務リスクを差し引いた値段で取引されるのが一般的でした。値引きを行ったとしても、売主側のメリットとして、不動産の売却益に対する税金よりも、株式の売却益にした方が税務メリットが得られ、買主としては税務リスクを負う代わりに安価で不動産を仕入れられるメリットがありました。
最近の傾向としては、アベノミクス以降の不動産市況の高騰により、売主の方が有利になり税務リスクの値引き分が効かず、税務リスクを買主が負うケースが増えてきています。(都心の好立地物件が多い)物件を売らないという前提であればよいのですが、先々のことはわからず、もし売却する状況になった時に、売却益にかかる税金の問題に直面します。
不動産M&A案件については上記のリスクについて考慮するのは当たり前のことですが、事業のM&Aで不動産が付いている業種を購入する場合も上記のリスクについて考慮する必要性があります。不動産鑑定士及び税理士による事前のDDを行った場合においても、再販による税務リスクについては忘れがちです。
松井哲也
(株)船井総研あがたFAS ディレクター
船井総合研究所入社後、不動産業界のコンサルティングに従事。賃貸管理業界のトップコンサルタントとして賃貸管理会社の勉強会立ち上げや管理戸数拡大、資産コンサルティングを手掛ける。現在は、船井総研あがたFASにて、不動産業界を中心に事業承継・M&Aコンサルティングに従事している。
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