不動産会社M&A仲介の選び方|手数料の仕組みと失敗しない5つの鉄則

この記事では、不動産業界特化のM&Aコンサルタントが、不動産会社のM&Aにおける「相場」「手数料」「失敗しないための実務の鉄則」を徹底解説します。読了後には、自社の適正な売り時と、誰に相談すべきかが明確になります。

経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。 プロの目利きで自社の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。

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不動産業界のM&Aについての全体像を知りたい方はこちらもご覧ください。

1. 不動産会社のM&A仲介とは?廃業ではなく「事業のバトンタッチ」を選ぶ経営戦略

「M&A」と聞くと、ハゲタカファンドによる乗っ取りや、経営失敗による身売りといったネガティブなイメージを持つ経営者は少なくありません。

しかし、現代の、特に地域密着型の不動産業界におけるM&Aは、「地域に必要なインフラ(不動産管理機能)を次世代へバトンタッチする前向きな戦略」です。

廃業を選択すれば、従業員は職を失い、長年お付き合いのあるオーナー様は次の管理会社探しに翻弄されることになります。

M&Aを活用することで、これらのステークホルダーを守りながら、経営者自身も創業者利益を得てリタイアすることが可能です。

なぜ今、不動産業界でM&Aが急増しているのか

現在、不動産業界ではM&Aが急増しています。その背景には、経営者の高齢化と後継者不足という全業種共通の課題に加え、不動産業界特有の事情があります。

後継者不在と2021年賃貸住宅管理業法の影響

特に大きな転換点となったのが、2021年の「賃貸住宅管理業法」の施行です。

これにより、管理戸数200戸以上の事業者には登録が義務付けられ、業務管理者(賃貸不動産経営管理士など)の設置や、家賃と会社資産の分別管理が厳格化されました。

「昔ながらのどんぶり勘定」が通用しなくなり、コンプライアンス対応のコストが増大したことで、「体力のあるうちに大手の傘下に入ったほうが、従業員もお客様も安心できる」と判断する経営者が増えているのです。

「株式譲渡」と「事業譲渡」の違いと選び方

M&Aには大きく分けて「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つの手法があります。不動産業界では、目的によってこの2つを明確に使い分けます。

項目株式譲渡事業譲渡
対象会社そのもの(株式)特定の事業や資産
契約関係原則そのまま引き継ぐ巻き直しが必要
税金(譲渡側)約20%(分離課税)法人税(約30~34%)
借入金買い手が引き継ぐ(個人保証解除)原則譲渡側に残る

会社ごと譲渡するか、管理部門だけ切り出すか

もし、あなたが「借入金の個人保証から解放されたい」「会社を丸ごと手放してリタイアしたい」と考えているなら、「株式譲渡」が適しています。

税率も約20%と低く抑えられます。

一方で、「自社ビルは手元に残したい」「仲介店舗だけを譲渡して、管理業は続けたい」といった場合は「事業譲渡」が有効です。

ただし、事業譲渡は従業員の再雇用契約や、オーナー様との管理契約の巻き直しが必要になるため、実務的な負担は大きくなります。

仲介会社とアドバイザーの役割

M&Aは、売り手と買い手だけで成立させることは極めて困難です。

条件交渉、契約書作成、デューデリジェンス(買収監査)など、高度な専門知識が必要になるからです。

専門家なしのM&Aが危険な理由

特に不動産業界では、宅建業法の規制や、過去の取引における法的リスク(契約不適合責任など)が複雑に絡み合います。

専門家を介さずに進めると、「譲渡後に隠れた瑕疵が見つかり、損害賠償を請求される」といったトラブルに発展するリスクが高まります。

仲介会社は、単なるマッチング屋ではありません。「感情的になりがちな交渉の緩衝材」となり、「破談のリスクを最小化するプロジェクトマネージャー」としての役割を果たします。

2. 不動産会社M&Aの手数料と相場|管理戸数「500戸」が運命の分岐点

経営者にとって最も気になるのが、「自分の会社はいくらで売れるのか」という点でしょう。

ここでは、不動産業界特有の評価基準について解説します。

不動産会社M&Aの仲介手数料の仕組み

仲介会社に支払う手数料には、一般的に以下の種類があります。

着手金: 依頼時に支払う費用(数十万〜数百万)。最近は無料の会社も増えています。

中間金: 基本合意締結時に支払う費用(成功報酬の10〜20%程度)。

成功報酬: 成約時に支払う費用。

レーマン方式と完全成功報酬制の注意点

多くの仲介会社は「レーマン方式」という計算式を採用しています。

これは取引金額に応じて手数料率が変わる仕組みです(例:5億円以下の部分は5%)。

注意すべきは「最低報酬額」です。大手仲介会社の場合、最低報酬が2,000万円〜に設定されていることもあります。

小規模な不動産会社のM&Aでは、手数料負けしてしまう可能性があるため、最低報酬額が低い、あるいは完全成功報酬制の会社を選ぶのが賢明です。

譲渡価格はどう決まる?相場の算出方法

企業価値評価(バリュエーション)にはいくつかの方法がありますが、中小企業のM&Aでは「年買法(時価純資産法+営業権)」がよく使われます。

純資産+営業権(のれん)の基本計算式

【企業価値 = 時価純資産 + 実質営業利益 × 3〜5年分】

これが基本の計算式です。「時価純資産」とは、会社の資産(現預金、不動産など)から負債を引いたものです。

ここに、会社の収益力である「のれん代(営業権)」を上乗せします。

【現場の真実】査定額が1.3億円上振れする条件

しかし、不動産会社の価値は、この計算式だけでは測れません。現場の感覚として、評価額が大きく跳ね上がるポイントがあります。

管理戸数500戸の壁と地理的プレミアム

私が実際に担当した案件では、管理戸数が「500戸」を超えているかが大きな分岐点となりました。

ある東京都内の管理会社様の事例では、管理戸数が500〜1,000戸あり、かつエリアの賃料相場が高い地域でした。

この案件では、通常の評価額よりも約1億3,000万円も上振れした価格で成約しました。

買い手企業(特に大手やファンド)からすると、500戸以上のまとまった管理物件を一気に手に入れられることは、時間を金で買う以上の価値があります。

逆に、ワンルームマンションのサブリースばかりで利益率が低い場合などは、戸数が多くても評価は伸び悩みます。

オーナーとの「繋がり」が価値になる理由

また、単に「管理している」だけでなく、「地主・オーナーと深い信頼関係があるか」も重要です。

「〇〇社長に任せているから」と、修繕や売買の相談が優先的に来る。

地元の名士とのパイプがある。

こうした「見えない資産」は、買い手企業が最も欲しがるシナジー(相乗効果)の源泉です。ここを適切にアピールできるかどうかが、高値譲渡の鍵を握ります。

自社の管理戸数やエリア特性が、市場でどれくらい評価されるのか気になりませんか?

まずは不動産業界に特化した出口戦略診断で、自社の「隠れた価値」を確認してみてください。

3. 不動産会社M&Aで「損金」と「税金」を賢く扱う|手取りを最大化する技術

M&Aは「いくらで売れたか」よりも「手元にいくら残るか」が重要です。

税金や手数料を考慮した手取り額を最大化するための知識を押さえましょう。

誰が払う?手数料と税金の負担者

譲渡企業と譲受企業の費用分担

仲介手数料: 原則として、売り手と買い手の双方がそれぞれの仲介会社(または仲介者)に支払います。

税金: 譲渡益を得た売り手側に発生します。

事業譲渡における損金扱いのポイント

株式譲渡は個人の所得税(約20%)で済みますが、事業譲渡の場合は会社に法人税(約30〜34%)がかかります。

節税効果を高めるスキームの基礎

事業譲渡で得た利益をそのままにすると多額の法人税がかかりますが、これを「役員退職金」として経営者に支払うことで、会社の利益を圧縮(損金算入)し、かつ経営者個人も退職所得控除という税制優遇を受けることができます。

このようなスキームを組めるかどうかも、コンサルタントの腕の見せ所です。

簿外債務と「使い込み」リスクの事前処理

M&Aの交渉中に発覚すると、一発で破談になるのが「お金の不透明さ」です。

敷金・預り金の管理不備は致命傷になる

不動産管理業で最も恐ろしいのが、「敷金や家賃の使い込み」や「会社資産と個人資産の混同」です。

預り金である敷金が、決算書上の現預金残高と合っていないケースは、中小零細企業では残念ながら珍しくありません。

「回っているから大丈夫」と思っていても、M&Aのデューデリジェンス(監査)では必ずバレます。

もし心当たりがある場合は、M&Aを検討し始めた段階で、専門家に相談して密かに是正しておく必要があります。

4. 失敗しない不動産M&Aの鉄則|コンサルタントが明かす「現場の落とし穴」

M&Aは契約して終わりではありません。むしろ、そこからの引き継ぎが本番です。

デューデリジェンス(買収監査)の現実

基本合意後に行われるデューデリジェンスでは、買い手側が公認会計士や弁護士を送り込み、会社の中身を徹底的に調べます。

未払い残業代と社会保険の未加入問題

ここでよく問題になるのが「未払い残業代」です。

不動産業界は歩合給や長時間労働が慣習化しており、労務管理が甘い会社が少なくありません。

これが発覚すると、数百万円単位で譲渡価格を減額されたり、最悪の場合はブレイク(破談)になります。

従業員の離職を防ぐPMI(統合プロセス)

M&A発表直後の従業員のケアは、会社の存続に関わる最重要事項です。

「宅建士が辞めて営業停止」を防ぐ手当

不動産会社にとって致命的なのが、「専任の宅地建物取引士の退職」です。

5人に1人の設置義務を満たせなくなれば、営業停止処分を受けてしまいます。

過去の事例では、M&A発表と同時に資格手当を増額したり、買い手企業から宅建士を派遣してもらう準備を整えたりすることで、この危機を乗り越えました。

従業員には「処遇は変わらない、むしろ良くなる」ことを丁寧に説明し、不安を取り除く必要があります。

オーナー・地主への説明と引き継ぎ

挨拶回りのタイミングと「顔つなぎ」の重要性

管理会社が変わることを嫌がるオーナー様もいます。

「前の社長だから任せていたのに」と言われないよう、クロージング(譲渡実行)の前後には、新旧社長が揃って挨拶回りに行くことが鉄則です。

この「顔つなぎ」の儀式を丁寧に行うことで、オーナー様も安心し、管理契約の継続(=会社価値の維持)が可能になります

5. 良いM&A仲介会社・コンサルタントの選び方

最後に、成功のパートナーとなる仲介会社の選び方をお伝えします。

業界特化型と総合型の違い

M&A仲介会社には、全業種を扱う「総合型」と、特定の業界に強い「特化型」があります。

不動産会社のM&Aにおいては、「業界特化型」を強く推奨します。

不動産実務を知らない担当者は避けるべき

不動産業界は法規制や商習慣が特殊です。「重要事項説明書」や「賃貸管理契約書」の中身を理解できない担当者では、リスクの所在を見抜くことができません。

「管理戸数の定義はどうなっていますか?」「サブリース物件の解約条項はどうなっていますか?」といった質問に対し、即座に意味を理解できるコンサルタントを選びましょう。

相談する前に準備しておくべきこと

契約書と重要事項説明書の整備状況

相談に行く前に、「管理委託契約書」や「重要事項説明書」が揃っているか確認してください。

「口約束で管理している」状態では、M&Aのテーブルに乗せることすらできません。

不備がある場合は、今のうちに契約書を巻き直しておくことが、将来の企業価値向上に直結します。

契約書の整備状況に不安がある方や、まずは自社の現状を整理したい方は、不動産業界のM&Aに精通した専門家への相談をおすすめします。

6. 【まとめ】不動産会社のM&Aは「準備」と「パートナー選び」で決まる

不動産会社のM&Aは、単なる会社の売買ではありません。

オーナー様、入居者様、そして従業員の生活を守り、地域社会のインフラを次世代に繋ぐ、尊い経営判断です。

成功の鍵は、「早めの準備(コンプライアンスの是正)」と「業界を知り尽くしたパートナー選び」にあります。

もし、後継者問題や将来の経営に少しでも不安があるなら、まずは専門家の話を聞いてみることから始めてはいかがでしょうか。

その一歩が、あなたの会社の未来を拓くことになります。

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不動産会社におけるM&Aの手数料についてよくあるご質問

Q1. 不動産会社のM&A仲介手数料の相場は?

A. 一般的にはレーマン方式(取引額の1〜5%)が採用されますが、最低報酬額(2,000万円〜など)が設定されている場合があります。小規模案件では完全成功報酬制の会社を選ぶのが賢明です。

Q2. 赤字の不動産会社でも売却できますか?

A. 可能です。不動産業界では営業利益よりも「管理物件のストック収益」や「保有不動産の資産価値」が重視されるため、実質的な価値があれば買い手はつきます。

Q3. 管理戸数は何戸あればM&Aの対象になりますか?

A. 数十戸からでも可能ですが、一般的に大手やファンドが高値をつける目安は「500戸」以上と言われています。それ以下の場合は、近隣同業者への譲渡が現実的です。

Q4. M&Aをすると従業員は辞めてしまいますか?

A. 適切なPMI(統合プロセス)を行えば防げます。特に宅建士などの有資格者には、処遇改善や丁寧な面談を行い、不安を解消することで定着率を高めることが可能です。

Q5. オーナー(大家さん)への説明はどうすればいいですか?

A. 譲渡実行の直前または直後に、新旧社長が揃って挨拶に行くのが鉄則です。事前の根回しなしに書面だけで通知すると、不信感を招き解約に繋がるリスクがあります。

大西 由訓

(株)船井総研あがたFAS シニアコンサルタント

中小企業サポートのエフアンドエムにて個人事業主・法人の支援をした後、雑貨企画販売業のシンシアの財務担当役員に就任。船井総合研究所に入社後は、不動産業を中心に複数の案件成約に携わり、現在は不動産・建設M&Aを統括。

大西 由訓

(株)船井総研あがたFAS シニアコンサルタント

中小企業サポートのエフアンドエムにて個人事業主・法人の支援をした後、雑貨企画販売業のシンシアの財務担当役員に就任。船井総合研究所に入社後は、不動産業を中心に複数の案件成約に携わり、現在は不動産・建設M&Aを統括。