この記事では、不動産会社経営者が、長年育ててきた会社を「最も高い評価」で、かつ「従業員や取引先を守りながら」次世代へバトンタッチするためのM&A戦略について解説します。
読了後には、廃業ではなくM&Aを選ぶべき明確な理由と、失敗しないための具体的な手順が理解できます。
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不動産売買M&Aの成功戦略|株式譲渡で節税し手取りを最大化する方法
不動産会社の譲渡で最後に残る金額は、譲渡価格ではなく税引き後で決まります。
株式を譲り渡す形であれば、譲渡益にかかる税金は申告分離課税で20.315パーセントです。
他の所得と合算されないため、役員報酬として受け取り続ける場合より手元に残る割合が大きくなります。
もう一つ、この段階でよく出てくるのが「会社と一緒に譲りたい物件と、手元に残したい物件を分けたい」という相談です。
銀行の借入が付いている物件についても同じ質問が届きます。
結論としては分けることができ、そのための手法も決まっています。
手取りが何で決まるか、会社を閉じて物件を個別に譲る場合と何が違うか、物件を分けたいときにどう進めるか、そして譲る年をいつにするかの順に整理します。
不動産会社そのものの評価がどう決まるかについては、こちらのコラムもおすすめです。
不動産会社のM&Aと事業承継の進め方

不動産会社の譲渡で手取りはどう決まるか
譲渡価格が決まっても、その金額がそのまま手元に入るわけではありません。
差し引かれるものの順番を先に押さえておくと、提示された価格の受け止め方が変わります。
譲渡代金から何が引かれるか
株式を譲り渡す場合、代金を受け取るのは会社ではなく株主である個人です。
ここから引かれるものは、大きく3つになります。
1つめが譲渡益にかかる税金です。受け取った金額そのものではなく、そこから株式の取得費と譲渡にかかった費用を引いた利益に対してかかります。
創業者であれば取得費は設立時の出資額であることが多く、結果として代金のほとんどが利益として扱われます。
2つめが仲介手数料です。成功報酬の形が一般的で、着手金の有無や計算方法は会社によって変わります。
3つめが、譲渡に伴って発生する専門家費用です。
会社に借入が残っている場合、その扱いも確かめておく必要があります。
株式譲渡であれば借入は会社に付いたまま譲り受ける側へ移りますが、社長個人の連帯保証が外れる時期は案件ごとに異なります。
金額の話と同じタイミングで、保証の解除がいつになるかを確認しておいてください。
株式譲渡の税率は20.315パーセントです
株式を譲渡して得た利益には、申告分離課税で20.315パーセントの税金がかかります。
内訳は所得税15パーセント、復興特別所得税0.315パーセント、住民税5パーセントです。
この税率が重要なのは、他の所得と合算されないためです。
給与所得や不動産所得がいくらあっても、株式の譲渡益にかかる税率は変わりません。
たとえば譲渡益が1億円であれば、税額はおよそ2,031万円、手元に残るのはおよそ7,968万円という計算になります。
この数字は税金だけを差し引いたもので、実際にはここから仲介手数料と専門家費用が引かれます。
役員報酬として受け取り続ける場合との違い
会社に利益が積み上がっている状態で、それを役員報酬という形で少しずつ受け取っていく方法もあります。
ただし、手元に残る割合で見ると条件は良くありません。
役員報酬は給与所得として総合課税の対象になり、所得が増えるほど税率が上がります。
社会保険料の負担も乗ります。会社側でも、役員報酬を出せば利益が減るため法人税は下がりますが、個人の側で累進税率と社会保険料を負担することになります。
長年かけて会社に残してきた内部留保を個人に移す方法として比べた場合、株式譲渡のほうが手元に残る割合は大きくなります。
譲渡を考え始めた段階で役員報酬を増やして調整しようとすると、かえって手取りが減ることがありますので、順番には注意が必要です。

会社を閉じて物件を個別に譲る場合と何が違うか
「会社を畳んで、物件を一つずつ売っていく」という選択肢と比べたいという相談もよくいただきます。
どちらが手元に多く残るかは条件によって変わりますが、税金のかかり方は構造として違います。
法人と個人で二度かかるという構造
会社が保有している物件を会社のまま譲渡すると、その売却益に法人税がかかります。中小法人であれば実効税率はおおむね30パーセント台です。
そのうえで、税引き後に残った資金を会社の清算という形で個人が受け取ると、出資額を超える部分はみなし配当として配当所得になります。
配当所得は総合課税の対象なので、他の所得と合算したうえで累進税率が適用され、最高税率の区分に入ると所得税と住民税を合わせて55パーセント前後になります。
非上場株式の配当には配当控除の適用がありますので、実際の負担はこれより下がります。
つまり、法人の段階と個人の段階で二度かかります。
株式譲渡であれば法人の段階が発生せず、個人の段階も分離課税の20.315パーセントで済みます。
この構造の違いが、手取りの差になって表れます。
どのくらい変わるかは案件ごとに計算が必要です
ただし、「何倍変わる」と一律に言うことはできません。会社がどの物件をいくらの簿価で持っているか、含み益がどれだけあるか、借入がいくら残っているかで結果が変わるためです。
物件ごとに取得時期も取得価額も違いますので、実務では個別に計算することになります。
判断の材料としてお伝えできるのは、株式譲渡であれば個人の段階で20.315パーセントという点、そして会社を清算する形では法人と個人の二段階になるという点です。
この2つを押さえたうえで、自社の決算書をもとに試算してもらうのが確実です。
廃業には費用と時間もかかります
税金以外の負担も比べておく必要があります。
会社を閉じるには、事務所の原状回復、従業員の解雇に伴う費用、清算の手続きにかかる期間が発生します。
管理を任されている物件があれば、大家へ一件ずつ説明して引き継ぎ先を探すことにもなります。
譲渡であれば、これらの費用は発生しません。
従業員の雇用は続き、大家との管理受託契約もそのまま残ります。長年築いてきた屋号を残せる可能性もあります。
金額の比較だけでなく、この部分も含めて考える価値があります。

譲りたい物件と残したい物件を分けられるか
会社が物件を持っている場合、「全部は手放したくない」という希望が出てきます。
銀行の借入が付いている物件について同じ質問がインターネット上の相談でも見られますが、分けることはできます。
物件を残して事業だけを譲るという形があります
関東のある不動産会社では、6億円ほどの物件と、ほぼ同額の借入を会社が抱えていました。
物件を持ち続ける仕事は娘さんが引き継ぐ方針が決まっており、一方で3名の体制で運営していた賃貸管理と賃貸仲介は、続けるのが難しくなっていました。
そこで、物件は会社に残したまま、賃貸管理と賃貸仲介の事業だけを譲り渡す形をとりました。
譲り受けたのは同じ関東の年商約17億円の建設会社です。
管理戸数は約450戸、譲渡の対象になった事業の規模は年商約2,000万円ほどでした。
譲り渡した側の社長は当時68歳でした。
会社分割という手法で物件を手元に残し、事業だけを譲り渡した例もあります。
どちらの形をとるかは、その後も物件オーナーとしての仕事を続けたいかどうかで決まります。
引退してすべてのリスクを手放したいのであれば、物件ごと会社を譲り渡す形のほうが合います。
分けるときの手順
進め方は決まっています。最初にやるのは、譲渡の対象をはっきりさせることです。
どの物件を残したいかを一つずつ確かめていきます。
この段階を飛ばすと、後の交渉で対象が動いて話が戻ります。
対象が決まったら、手法を選びます。会社分割であれば会社法に沿った手続きを踏み、事業譲渡であれば契約を一つずつ巻き直していきます。
管理受託契約と賃貸借契約が対象になるため、戸数が多いほど作業量は増えます。
期間は2か月から3か月ほどを見ておくと実態に近くなります。
ここに、譲り受ける側が宅地建物取引業の免許や賃貸住宅管理業の登録を持っていない場合の取得期間が乗ってきます。
銀行の借入が付いている物件はどうなるか
借入が付いていても支障はありません。
借入ごと譲り渡すことも、借入だけ手元に残すこともできます。
物件と残債をひとまとめにして動かす形も実際に使われています。
ただし、どちらを選ぶかで金融機関との調整が入りますので、手法を決める段階で取引先の金融機関にも当たっておく必要があります。
ここが後回しになると、契約の日程が金融機関の決裁待ちで動かせなくなります。
なお、株式譲渡を選ぶ場合は事情が変わります。
会社ごと動くため株式が移転するだけで、物件を個別に譲渡するより簡単に借入も譲り受ける側へ移ります。
手元に残したい物件がないのであれば、株式譲渡のほうが手続きは軽くなります。
事業譲渡そのものの進め方と注意点については、こちらのコラムもおすすめです。
不動産会社の事業譲渡で管理離れを防ぐ進め方

短期所有土地の特例に当たるかどうか
株式譲渡であれば20.315パーセント、と書きましたが、例外があります。
土地を多く持つ会社の株式を譲渡する場合の特例です。
条件が重なったときだけ税率が上がります
租税特別措置法第32条第2項は「短期所有土地の譲渡に類似する株式等の譲渡」を定めています。
これに当たると、分離短期譲渡所得として所得税30パーセント、住民税9パーセント(ほかに復興特別所得税)が適用されます。
国税庁の資料によれば、適用されるのは次の条件が重なった場合です。
譲渡した株式の発行法人の資産総額の70パーセント以上が土地等であること。
その土地等の所有期間が、譲渡した年の1月1日時点で5年以下であること。
特殊関係株主等が過去3年以内に30パーセント以上を保有していること。
そしてその年に5パーセント以上を譲渡し、過去3年内に15パーセント以上を譲渡していること。
M&A全般でどの税金がいつ発生するかについては、こちらのコラムもおすすめです。
M&Aにおける税金
賃貸管理が主業の会社で当たることは多くありません
条件を並べると分かるとおり、鍵になるのは「資産の70パーセント以上が、取得して5年以内の土地」という部分です。
賃貸管理を主な仕事にしてきた会社では、この状態になることはそう多くありません。
実務上も、取得して間もない物件を持っているという理由だけで譲渡の判断が変わることはあまりありません。
注意が必要なのは、土地の仕入れと販売を回している会社や、直近で仕入れた土地を在庫として抱えている会社です。
この場合は、譲渡の前に税理士に当てはまりを確認しておいてください。
該当するかどうかで手法の選び方が変わります。
会社分割で対象を切り分けるという選択肢もありますが、専門的な設計が必要になります。

通常の不動産売買と、会社を譲る場合の違い
同じ「不動産を動かす」ことでも、物件を売買する場合と会社ごと譲る場合とで、かかる税金も手続きも変わります。
対象が物件か会社かで税金の種類が変わります
物件そのものを売買する場合、対象は不動産です。
会社が売主であれば売却益に法人税がかかり、譲り受ける側には不動産取得税と登録免許税が発生します。
会社ごと譲る場合、動くのは株式です。
不動産の名義は法人のまま変わらないため、譲り受ける側に不動産取得税と登録免許税はかかりません。
大型の物件を含む場合、この流通税の差だけで数千万円になることもあります。
譲り渡す側から見ても、株式譲渡であれば個人の譲渡所得として分離課税の対象になり、法人の段階を経ずに済みます。
契約を巻き直さなくてよいという実務上の差
もう一つの違いが契約です。物件を売買すると所有者が変わるため、賃貸借契約や管理受託契約の扱いを整理する必要が出てきます。
株式譲渡であれば法人が存続するので、賃貸借契約も管理受託契約も雇用契約もそのまま続きます。
宅地建物取引業の免許と賃貸住宅管理業の登録も、法人が変わらないため引き継がれます。
数百戸、数千戸の契約を抱える会社にとって、この差は手間としても、離反のリスクとしても大きくなります。
不動産M&Aのスキーム別に手取りはどう変わるか
手法の選び方は、手続きの軽さだけで決めるものではありません。
どのスキームを選ぶかで、誰が対価を受け取るのかが変わり、その結果として税金のかかり方も変わります。
株式譲渡|対価を個人が直接受け取ります
株主である個人が買い手へ株式を譲り、代金を個人が直接受け取ります。
会社を経由しないため、法人税は発生しません。
個人の側で申告分離課税の20.315パーセントがかかり、残りが手元に入ります。
3つのスキームのうち、手元に残る割合がもっとも大きくなるのが通常この形です。
引退して会社から離れるのであれば、まずこれを検討することになります。
事業譲渡|対価はいったん会社に入ります
賃貸管理部門だけ、賃貸仲介店舗だけ、といった単位で切り出して譲り渡す方法です。
買い手は引き継ぐ資産と負債を選べるため、簿外債務を遮断したい場合に選ばれます。
手取りの面では注意が要ります。対価を受け取るのは会社であって、個人ではありません。
会社にいったん入った資金を個人に移すには、役員退職金として支給するか、会社を清算して残余財産の分配を受けるかのどちらかになります。
前者は退職所得として扱われ、後者はみなし配当として総合課税の対象になります。
この一段が挟まるぶん、株式譲渡より手取りは目減りします。
会社分割|残したいものを切り離してから譲ります
会社を2つに分け、譲り渡す側の株式だけを譲渡する方法です。
先祖代々の土地や個人で使ってきた資産を手元に残しつつ、買い手が欲しがる事業だけを渡すことができます。
手取りの計算は、分割したあとの株式譲渡と同じ考え方になります。
ただし分割そのものに法定の手続きと期間がかかるため、譲渡までの時間は長くなります。
手元に残したいものがはっきりしている場合に選ぶ手法です。
どのスキームでも、最終的に比べるのは提示価格ではなく税引き後の金額です。
同じ譲渡価格でも、手法が違えば手元に残る金額は変わります。
価格の交渉に入る前に、この3つで試算しておくことをおすすめします。

不動産M&Aのメリットとデメリット
譲り渡す側と譲り受ける側では、見ているものが違います。
両方を知っておくと、交渉で相手が何に反応しているかが分かります。
譲渡側のメリット|税負担と、廃業では残らないもの
もっとも大きいのは税負担の差です。
会社を清算する形では法人と個人の二段階で課税されますが、株式譲渡であれば個人の段階だけで済みます。
金額以外のメリットもあります。
従業員の雇用が続くこと、大家との管理受託契約がそのまま残ること、長年使ってきた屋号を残せる可能性があること。
廃業を選ぶと、これらはすべて失われたうえに原状回復や解雇に伴う費用が出ていきます。
譲渡側のデメリット|買い手がつかない状態がある
デメリットとして現実的なのは、買い手が見つからない場合があることです。
会社の資金と個人の資金の線引きが曖昧だったり、預かった敷金の管理が整理されていなかったりすると、譲り受ける側は警戒します。
また、譲渡までには相応の時間がかかります。
相手探しから成約まで、準備が整っている状態でも数か月単位で見ておく必要があります。
思い立ってすぐ現金化できる方法ではありません。
譲受側のメリット|流通税がかからず、時間を買えます
譲り受ける側の利点は2つあります。
1つは流通税です。
物件を現物で購入すると不動産取得税と登録免許税がかかりますが、株式譲渡であれば不動産の名義は法人のまま変わらないため、これらは発生しません。
もう1つは時間です。
管理戸数を自力で積み上げるには年単位の営業が必要ですが、譲り受ければ契約した時点で移ります。
宅地建物取引業の免許と賃貸住宅管理業の登録も、株式譲渡なら取り直す必要がありません。
譲受側のデメリット|引き継ぐのは資産だけではありません
株式譲渡では、負債も過去の労務上の問題もそのまま引き継ぎます。
未払いの残業代や、帳簿に載っていない債務が後から出てくる可能性があります。
人の問題も残ります。
資格者である宅地建物取引士が退職すれば、専任の設置要件を満たせなくなります。
大家との関係が前の社長個人に付いていた場合は、引き継ぎの過程で管理を解約されることもあります。
買収監査では、数字だけでなくこの2点を確かめることになります。
手取りを目減りさせないために、先に整えておくこと
価格が決まってから減額される要因は、ほとんどが事前に潰せるものです。
譲渡を考え始めた段階で手を付けておくと、提示額をそのまま守りやすくなります。
預り金と会社の資金が混ざっていないか
賃貸管理では、敷金や集金した家賃を預かります。
これが会社の運転資金と混ざっていると、それだけで減額の材料になります。
分別して管理し、帳簿の数字と実際の残高が合っている状態にしておいてください。
ここが合わないまま買収監査に入ると、金額の交渉以前に信用の問題になります。
契約書のない管理物件を残さない
「昔からの付き合いだから」という理由で、契約書を交わさずに管理している物件が残っていることがあります。
この売上は評価の対象から外されるか、大きく割り引かれます。
管理戸数として数えている物件に契約書の裏付けがあるかどうかを確かめ、無いものは書面化しておいてください。
この作業は時間がかかりますが、そのまま評価額に返ってきます。
未払いの残業代と係争は先に開示する
帳簿に載っていない負担がもっとも警戒されます。
不動産業では未払いの残業代と、過去の取引に絡む係争が典型です。
隠したまま契約すると、後から発覚したときに損害賠償の請求につながります。
先に洗い出して開示し、それを踏まえた価格で合意するほうが、結果として手元に残る金額は安定します。
譲り受ける側が何をどこまで調べるのかについては、こちらのコラムもおすすめです。
不動産M&Aのデューデリジェンス|買収監査で見られる項目と実務の流れ

譲る年をいつにするかで手取りが変わることがあります
最後に時期の話です。同じ条件でも、年をまたぐかどうかで総額が変わる場合があります。
事業譲渡では会社の決算と重なります
事業譲渡では、対価が個人ではなく会社に入ります。
その年にすでに物件を譲渡して利益が出ている状態でこれを重ねると、会社の利益が膨らんで税負担が増えます。
決算の見通しによっては、翌年に回したほうが総額として手元に残る金額が大きくなることがあります。
物件の売却を予定しているのであれば、譲渡の時期を考え始めた段階で決算の見通しと合わせて確認しておいてください。
株式譲渡であれば個人が直接受け取るため、この論点は出てきません。どちらの手法をとるかで、時期の考え方も変わります。
ただし、待つことと動かないことは別です
年をまたぐ判断と、様子を見て何もしないことは違います。
譲渡を見送ったあと、ご自身で立て直せた会社は、実務の実感として多くありません。
人手が足りないなかで社長が現場に出ながら経営も担うという状態は、時間が経つほど厳しくなります。
決めるのを急ぐ必要はありません。
ただ、分析と選択肢の整理は早いほうが選べる幅が広がります。
1年半ほど前にご相談をいただき、当時は希望の金額に届かなかった会社が、今年の春にあらためて分析したところ条件が整い、現在は譲渡の活動を進めているという例もあります。
まとめ|税引き後の金額と、残したい物件を先に決めてください
不動産会社の譲渡で手元に残る金額は、株式譲渡であれば譲渡益から20.315パーセントを引いた額が出発点になります。
会社を閉じて物件を個別に譲る形では、法人と個人の二段階で税金がかかります。
どちらが有利かは、物件の簿価と含み益、借入の残高によって変わりますので、自社の決算書をもとに試算してください。
次に取るべき行動は3つです。
手元に残したい物件があるかどうかを先に決めること。
預り金の分別と、契約書のない管理物件の書面化を進めること。
そして、物件の売却を予定しているなら、譲渡の時期を決算の見通しと合わせて確認すること。
この3つを整理したうえで、不動産会社の譲渡と税務の両方が分かる相手に試算を頼んでみることも、選択肢の一つになります。
M&A・事業承継のご相談は、こちらから承っています。
知識を得るだけでは、未来は変わりません。
激変する環境下で、貴社の選択肢が狭まってしまう前に『攻めの出口戦略』を。
独自のノウハウを凝縮した出口戦略診断ツールをダウンロードし、 その上で、プロの目利きで『自社の真価』を直接確かめる。
経営者としての集大成を、最も価値ある形で次へ繋ぐ準備は、今、ここから始まります。
【主導権を握れるうちに、一度プロの視点で「最良の出口」を可視化しませんか?】

よくあるご質問
Q. 不動産会社を譲渡すると手取りはいくら残りますか?
株式を譲り渡す形であれば、譲渡益に対して20.315パーセントの税金がかかり、残りが手元に入ります。内訳は所得税15パーセント、復興特別所得税0.315パーセント、住民税5パーセントです。譲渡益が1億円であれば税額はおよそ2,031万円で、手元にはおよそ7,968万円が残る計算になります。実際にはここから仲介手数料と専門家費用が引かれます。
Q. 会社を清算して物件を個別に売る場合と、どちらが手元に多く残りますか?
一般的には会社ごと譲り渡すほうが多く残ります。物件を会社のまま売却すると売却益に法人税がかかり、残った資金を清算で個人が受け取るとみなし配当として総合課税の対象になるためです。株式譲渡であれば法人の段階が発生せず、個人の段階も分離課税の20.315パーセントで済みます。ただし差額は物件の簿価と含み益、借入残高で変わるため、個別に試算が必要です。
Q. 譲りたい物件と手元に残したい物件を分けることはできますか?
分けることができます。物件を会社に残して賃貸管理や賃貸仲介の事業だけを譲り渡す事業譲渡と、会社を分けて一方だけを譲り渡す会社分割の2つの方法があります。銀行の借入が付いている物件も、借入ごと譲り渡すことも、借入だけ手元に残すこともできます。期間は2か月から3か月ほどが目安です。
Q. 株式譲渡でも税率が20.315パーセントにならないことはありますか?
あります。租税特別措置法第32条第2項の「短期所有土地の譲渡に類似する株式等の譲渡」に当たる場合は、分離短期譲渡所得として所得税30パーセント、住民税9パーセント(ほかに復興特別所得税)が適用されます。資産総額の70パーセント以上が土地等で、その所有期間が譲渡した年の1月1日時点で5年以下であることなど、複数の条件が重なった場合に限られます。
Q. 譲渡する年はいつがよいですか?
株式譲渡であれば、譲渡益は個人が直接受け取るため年による差は出にくくなります。事業譲渡では対価が会社に入るため、その年に物件の売却益が出ていると会社の利益が膨らみ、税負担が増えます。物件の売却を予定している場合は、翌年に回したほうが総額として手元に残る金額が大きくなることがありますので、決算の見通しと合わせて確認してください。