不動産会社の経営者が「自身の会社を譲渡しよう」と考えたとき、真っ先に直面するのが価格の壁です。
ネット上には「管理戸数1戸あたり◯万円」といった簡易的な数字が溢れていますが、実務の現場では、決算書に載らない「管理契約の質」や「預り金の状態」で、数千万単位の価格調整が行われるのが現実です。
この記事では、不動産会社会社におけるM&Aの相場について、現場のコンサルタントしか知らない実例とともに解説します。
経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。 プロの目利きで自社の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。
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不動産業界のM&Aについての全体像を知りたい方はこちらもご覧ください。
不動産仲介業界における最新のM&A時流や、大手企業による買収戦略について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
不動産会社におけるM&Aの相場はどう決まる?2つのアプローチ
売却価格はどう決まる?2つのアプローチ
不動産会社の売却価格(企業価値)を算出するには、大きく2つのアプローチがあります。1つは会社の純資産をベースにする方法、もう1つは会社の収益力(利益)をベースにする方法です。
アプローチ①:純資産+のれん(年買法)
不動産会社の譲渡価格を算出する際、最も信頼性が高く、実務で多用されるのが「年買法(ねんばいほう)」です。
【企業価値 = 時価純資産 + 実質営業利益 × 3〜5年分】
これは、会社の「解散価値」ともいえる時価純資産(会社の資産から負債を引いたもの)に、将来の収益力である「営業権(のれん)」を上乗せする考え方です。
のれんは、一般的に「実質的な営業利益の3〜5年分」で計算されます。
アプローチ②:類似会社比較(マルチプル法)
もう一つのアプローチが、上場企業などの類似会社と比較して価値を算出する「マルチプル法」です。
【企業価値 = EBITDA × マルチプル(倍率)】
EBITDA(イービットディーエー)とは、簡単に言えば「会社が事業活動で稼いだ現金」に近い利益指標です(税引前利益+支払利息+減価償却費)。
マルチプルとは、類似の上場企業やM&Aの成約事例が、EBITDAの何倍で評価されているかを示す倍率です。
例えば、不動産業界の平均マルチプルが「5倍」であれば、自社のEBITDAに5を掛けて企業価値を算出します。
M&A評価の考え方:「コストアプローチ」と「インカムアプローチ」
多くの現場では資産背景を見るコストアプローチが中心ですが、賃貸管理部門を持つ会社であれば「インカムアプローチ」的視点が極めて重視されます。
管理手数料という安定したストック収入は、買い手にとって「買収後のキャッシュフローの予測が立ちやすい」ため、高い評価(のれん代)が付きやすい傾向にあります。
管理戸数500戸が分岐点?不動産会社のM&A評価額が跳ね上がるポイント
私の経験上、管理戸数が「500戸」を超えると、譲受企業の関心が劇的に高まります。
特に東京都内の物件であれば、賃料水準が高いため、管理手数料収入そのものの収益性が地方とは桁違いです。
過去には、管理戸数500〜1,000戸程度の会社が、地理的プレミアとオーナー層の質の良さを評価され、純資産に1億円以上の「のれん」が乗ったケースもあります。
一方で、ワンルームマンションの管理ばかりだと、スケールメリットはあっても、そこから派生する売買やリフォームの機会が少ないため、評価が伸び悩むこともあります。
「地主(オーナー)と深く繋がっているか」が、隠れた評価指標なのです。
自社の管理物件がどの程度の評価を受けるのか、具体的なシミュレーションを知りたい方は、業界特化のコンサルタントによる無料診断をご活用ください。

実務で差が出る!不動産会社の譲渡価格 修正・減額ポイント
交渉の最終局面で、「当初の提示額から数千万引いてほしい」と買い手から言われることがあります。
これを防ぐには、不動産業界特有の「爆弾」を事前に処理しておく必要があります。
不動産会社におけるM&Aで譲渡時に発生する税務リスク
不動産会社M&Aのデューデリジェンス(調査)で、最も厳しくチェックされるのが「預り金(敷金など)」の取扱いです。
2021年の「賃貸住宅管理業法」施行により、分別管理は義務となりました。
これが徹底されておらず、会社の運転資金と敷金が混同されている(使い込まれている)場合、買収価格からその負債分を直接差し引かれるだけでなく、コンプライアンス違反として譲渡そのものが破談になるリスクさえあります。
注意すべき短期所有土地の譲渡とM&Aで発生する費用
また、保有物件を短期(5年以内)で転売した利益に依存している場合、税率の問題(租税回避の懸念)から買い手が慎重になるケースもあります。
M&A仲介手数料についても、譲渡価格に応じた手数料が発生するため、最終的な手残りを正確に計算しておくことが重要です。
手数料体系を知る:不動産会社のM&Aにおける手数料の相場と算出ルール
譲渡を検討する際、仲介会社に支払M&Aの手数料相場を理解しておくことは、出口戦略を立てる上で欠かせません。
レーマン方式の具体的な計算例
業界標準として用いられるのが「レーマン方式」です。
これは移動する資産の価格に応じて、5%・4%・3%……と報酬率が段階的に適用される仕組みです。
注意すべきは、手数料の最低金額(最低成功報酬)の設定です。
小規模な不動産譲渡であっても、数百万円の最低報酬が設定されていることが多いため、自社の想定譲渡額と照らし合わせて確認が必要です。
不動産会社のM&Aを成功させる「地主と従業員を守る」出口戦略
不動産会社、特に賃貸管理を主体とする企業の価値は、結局のところ「地主(オーナー)との信頼関係」と「現場を支える従業員の熟練度」に集約されます。
譲渡を成功させるための鉄則をまとめます。
★ 管理契約の書面化: 「口約」での管理は、譲渡時に価値ゼロとみなされるリスクがあります。
★ 情報の開示タイミング: 決済前に従業員に不用意にバラし、宅建士が離職してしまった失敗事例は枚挙にいとまがありません。
★ 買い手選定の軸: 異業種(建設業など)からの参入組は、シナジーを期待して相場より高い価格を提示することがありますが、社風の不一致による離職リスクも考慮すべきです。
不動産M&Aは、地域で長年培ってきた「信頼のバトンタッチ」です。不透明な相場に惑わされず、適正なバリュエーション(価値評価)を行うことが、あなたと、あなたの会社を支えてきた人々を守る唯一の道です。
その分野(テーマ)については、まずは不動産業界の商慣習に精通した「M&A専門のコンサルタント」に相談することをお勧めいたします。
知識を得るだけでは、未来は変わりません。 激変する環境下で、貴社の選択肢が狭まってしまう前に『攻めの出口戦略』を。
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経営者としての集大成を、最も価値ある形で次へ繋ぐ準備は、今、ここから始まります。
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不動産会社におけるM&Aの相場についてよくあるご質問
Q: 不動産会社 m&a 相場の計算で「のれん」は何年分が一般的?
A: 一般的に営業利益の2〜5年分ですが、管理戸数が多くストック収入が安定している場合は5年分に近い高い評価が付きやすくなります。
Q: 管理契約書がなくても譲渡は可能ですか?
A: 可能ですが、買い手にとってはリスクとなるため評価額が大幅に下がります。譲渡検討を開始した段階で「管理委託承諾書」などの書面整備を行うのが鉄則です。
Q: 宅建士が1名しかいない場合、M&Aに影響しますか?
A: 極めて大きな影響があります。譲渡後にその1名が退職すると営業停止リスクが生じるため、買い手は慎重になります。従業員へのケアや補充計画が必須です。