事業承継における生命保険の活用法|納税資金と自社株評価への影響を解説
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事業承継における生命保険の活用法|納税資金と自社株評価への影響を解説

事業承継における生命保険の活用は、後継者が用意すべき納税資金や自社株式・事業用資産の買取資金を準備する手段の一つとして検討されます。

相続税・贈与税は自社株式の評価額をもとに決まるため、評価額が高い会社ほど後継者が用意すべき資金は大きくなりがちです。

生命保険は解約返戻金や死亡保険金という形でこの資金を準備できる一方、保険料という継続的な負担や、2019年の税制改正による制約も同じ重みで理解しておく必要があります。

本記事では特定の保険会社や商品名には触れず、事業承継における生命保険の活用が果たす役割と注意点に絞って整理します。


経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。 プロの目利きで自社の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。

事業承継における生命保険の活用が注目される理由

事業承継における生命保険の活用が注目される背景には、後継者が用意すべき資金の重さがあります。

自社株式は非上場で市場価格がないため、税務上のルールに沿って評価額を算定しますが、この評価額が高い会社ほど、相続税や贈与税、自社株式の買取資金として後継者が用意すべき金額は大きくなりがちです。

事業承継全体の進め方や税金の基本については、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継とは|方法・進め方・税金までの流れをまとめて理解できるガイド』

相続税・贈与税の納税資金が不足するリスク

自社株式を相続や贈与で受け取った後継者は、その評価額に応じた相続税・贈与税を自己資金で納める必要があります。

株価が高く、かつ後継者の手元資金が少ない場合、納税資金が不足するリスクは無視できません。相続税・贈与税の基本的な仕組みや暦年贈与・相続時精算課税の使い分けについては、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継の相続税・贈与税とは|相続時精算課税と暦年贈与の使い分け』

後継者以外の家族への代償金(争族回避)が必要になるケース

後継者一人に自社株式を集中させる場合、他の相続人との公平感をどう保つかも課題になります。

後継者が他の相続人に代償金を支払う代償分割という方法をとる場合、その原資をどう準備するかが実務上の論点になります。

経営者に万一のことがあった際の資金繰りへの不安

経営者が急に亡くなった場合、運転資金や借入の返済が一時的に滞るのではという不安を持つ後継者候補は少なくありません。

事業を止めずに引き継ぐためには、こうした一時的な資金需要への備えも検討事項になります。

事業承継における生命保険の活用でできること

事業承継における生命保険の活用でできることは、大きく4つの資金需要に整理できます。

いずれも、経営者に万一のことがあった際に会社や遺族が受け取る保険金を、目的に応じた資金として使う考え方です。

相続税・贈与税など納税資金の原資にする

死亡保険金の受取人を後継者やその他の相続人にしておけば、相続税・贈与税の納税資金として活用できます。

死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」で計算される相続税の非課税枠が設けられており(出典:国税庁「No.4108 相続税がかからない財産」)、この枠内であれば非課税で受け取れます。

現場では「銀行預金で同じ金額を用意しようとすると何年かかるか分かりませんが、生命保険であれば解約返戻金という形で資金化できます」という声も聞かれ、資金化までの早さがメリットとして語られる場面が多いです。

自社株式や事業用資産の買取資金の原資にする

分散した株式や少数株主が保有する株式を会社が買い取る、いわゆる自社株買いの資金として保険金や解約返戻金を充てる設計も一般的です。

自社株買いの実務や少数株主対応の詳しい進め方については、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継の金庫株(自社株買い)で分散株式を集約する方法とみなし配当の注意点』

死亡退職金・弔慰金の原資にする

会社が受け取った死亡保険金は、経営者の死亡退職金や弔慰金の支払い原資にもなります。

死亡退職金には相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が別途設けられており(出典:国税庁「No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金」)、弔慰金についても業務上の死亡であれば普通給与の3年分、業務外の死亡であれば6か月分を目安に、社会通念上相当な金額までは相続税の対象にならないとされています(出典:国税庁「No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い」)。

後継者以外の相続人への代償分割の原資にする

後継者に自社株式を集中させる代わりに、他の相続人へ現金で代償金を支払う代償分割を選ぶ場合、生命保険金をその原資に充てることができます。

株式そのものを分散させずに済むため、経営権の安定と相続人間の公平感の両立を図りやすくなります。

保険料の支払いが自社株式の評価額に影響する場合がある

生命保険は資金準備の手段になる一方、保険料の支払いや解約返戻金の状況が自社株式の評価額に影響することもあります。

非上場株式の評価で使われる純資産価額方式では、解約返戻金相当額も会社の資産として確認され、積立額を上回る局面ではその差額が含み益として評価に反映される場合があります。

具体的な影響の大きさは契約内容や決算のタイミングによって変わるため、保険会社から解約返戻金の証明を取り寄せたうえで、専門家に確認することをおすすめします。

事業承継で使われる生命保険の主な種類

事業承継で使われる生命保険は、いくつかの一般的な種類に分けられます。

ここでは特定の保険会社や商品名には触れず、種類ごとの基本的な特徴だけを整理します。

定期保険

一定期間だけ死亡保障が続く保険です。

保険料は比較的抑えられますが、満期を迎えると保障はなくなり、解約返戻金もほとんど残らない設計が一般的です。

終身保険

保障が一生涯続く保険です。

保険料は定期保険より高くなりやすいものの、解約返戻金が積み上がっていく設計が多く、納税資金や買取資金の準備手段として選ばれることがあります。

長期平準定期保険

定期保険でありながら保険期間を長く設定し、保険料を平準化した保険です。

保険期間の中盤にかけて解約返戻金が高まる時期があり、経営者の勇退時期や事業承継のタイミングに合わせた活用が検討されます。

逓増定期保険

保険期間の経過とともに死亡保険金額が増えていく保険です。

保険期間の前半で解約返戻金が急速に高まる特徴があり、短期間での資金準備を目的に検討されることがあります。

事業承継で生命保険を活用する際の注意点

事業承継で生命保険を活用する際は、メリットだけでなく負担や制約も同じ重みで理解しておく必要があります。

保険料の負担が資金計画・キャッシュフローを圧迫する可能性

生命保険は加入している間、継続的に保険料を支払い続けることになります。

実務上は「株価評価の面でのメリットはあまりありませんが、資金繰りの面ではメリットが出ることがあります」という受け止め方をされる場面が多く、評価対策としてではなく資金繰り対策として位置づけたほうが実態に合います。

保険料の負担が事業の通常のキャッシュフローに対してどの程度なら無理がないか、あらかじめ見極めておくことが欠かせません。

解約のタイミングによっては返戻金が保険料の総額を下回る可能性

解約返戻金は、契約からの経過年数によって金額が変動します。

解約する時期を誤ると、それまでに支払った保険料の総額を返戻金が下回ってしまうこともあります。承継を予定している時期と、解約返戻金が最も高くなる時期が一致しているかどうかは、契約時にあわせて確認しておきたいポイントです。

節税目的での過度な活用は税制上制限されている

かつては生命保険に節税効果も期待されていましたが、2019年の税制改正により、解約返戻率が一定水準を超える定期保険等については、保険料の一部を資産として計上することが必要になりました(出典:国税庁 法人税基本通達9-3-5)。

実務でも「今は節税を目的にした保険の効果はほとんどゼロに近くなっています」という声が聞かれるとおり、保険料を全額損金にできる保険は限られています。

生命保険はあくまで資金繰りを支える手段の一つとして考え、節税効果を前提にした設計は避けることをおすすめします。

事業承継の資金対策は生命保険だけでなく複数の手法を組み合わせて考える

生命保険だけで事業承継の資金課題をすべて解決しようとするのは現実的ではありません。

実務では、複数の対策を組み合わせて検討するケースがほとんどです。

自社株式の分散・集約(株式の承継)とあわせて検討する

名義株や少数株主が保有する株式が分散している場合、生命保険による資金準備とあわせて、株式そのものをどう集約していくかも並行して検討する必要があります。

贈与・相続・売買のどの方法で株式を引き継ぐか、分散した株式をどう買い戻していくかについては、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継の株式・自社株の承継|贈与・相続・譲渡の選び方と株式集約』

収益不動産やオペレーティングリースなど他の資金対策と比較する

生命保険以外にも、収益不動産の取得やオペレーティングリースを組み合わせる方法があります。

「収益不動産は購入から3年以内は評価減が使えませんが、3年が経過すると財産評価基本通達に基づく路線価評価による評価減が使えるようになります」という点も、実務ではあわせて踏まえておく必要があります。

オペレーティングリースも、評価減の効果と投下資本の回収時期を踏まえたうえで検討する対策の一つです。

それぞれの対策には向き不向きがあるため、生命保険と並べて比較したうえで、自社に合う組み合わせを選ぶことが大切です。

事業承継の生命保険活用で迷ったときの相談先

事業承継における生命保険の活用で迷ったときは、相談する相手選びも重要な判断になります。

保険の販売者だけでなく中立的な専門家にも相談する重要性

生命保険の相談先は保険代理店や保険会社の担当者に偏りがちですが、保険料が資金計画やキャッシュフローに与える影響、自社株式の評価への影響まで含めて判断するには、税務・会計の専門家の視点もあわせて確認しておくことをおすすめします。

承継の方向性から中立的に相談できる窓口

生命保険による資金対策は、親族内承継・従業員承継・第三者承継のどの方向性を選ぶかが固まってから検討したほうが、無駄のない設計になります。

特定の保険商品や承継方法に偏らず、自社の状況を中立的な立場で整理したい場合は、複数の選択肢を横断して相談できる窓口を頼るのも一つの方法です。

自社に合った相談先の選び方については、こちらのコラムもおすすめです。

『事業承継は誰に相談すべき?相談先の種類と選び方をわかりやすく解説』

【まとめ】事業承継における生命保険の活用は、納税資金・買取資金・代償分割の3つの視点で中立に考える

事業承継における生命保険の活用は、相続税・贈与税の納税資金、自社株式や事業用資産の買取資金、死亡退職金・弔慰金、代償分割という4つの資金需要を支える手段になり得ます。

一方で、保険料という継続的な負担や、解約のタイミングによる返戻金の変動、2019年の税制改正による制約も同じ重みで理解しておく必要があります。

生命保険だけで完結させようとせず、自社株式の分散・集約や収益不動産といった他の資金対策と比較しながら、自社に合う組み合わせを見極めることが欠かせません。

まずは自社株式の評価額と、相続税・贈与税・買取資金としてどの程度の資金が必要になるかを把握したうえで、生命保険を含めた資金対策の全体像を専門家と整理することが、次に取るべき行動になります。

税務会計と経営コンサルティングを一気通貫で担う船井総研あがたFASでは、事業承継における生命保険の活用を、他の資金対策や承継の方向性そのものとあわせて中立的な立場で整理し、実行まで伴走しています。

生命保険を含めた資金対策の進め方に迷ったときは、事業承継の無料相談で状況を整理できます。

事業承継の資金対策の基礎を確認したい方には、業種を問わず使える事業承継の資料ダウンロードもご用意しています。


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よくある質問

Q. 事業承継における生命保険の活用とは何ですか?

事業承継における生命保険の活用とは、経営者に万一のことがあった際に受け取る保険金を、相続税・贈与税の納税資金や自社株式の買取資金、死亡退職金・弔慰金、代償分割の原資として使う資金対策です。特定の保険商品を売り込むものではなく、資金の目的に応じて必要な部分にだけ活用するかどうかを判断する考え方です。保険料の負担など制約もあわせて検討する必要があります。

Q. 事業承継に生命保険は必要ですか?

自社株式の評価額が高く、後継者の手元資金だけでは納税資金や買取資金が不足する見通しがある場合には、生命保険が資金準備の選択肢の一つになります。ただし必須の対策ではなく、収益不動産や自社株式の分散・集約など他の方法でも同様の資金需要に対応できる場合があります。自社の状況に応じて、複数の対策を比較したうえで判断することをおすすめします。

Q. 定期保険と終身保険の違いは何ですか?

定期保険は一定期間だけ死亡保障が続く保険で、保険料を抑えやすい一方、満期後は保障がなくなり解約返戻金もほとんど残りません。終身保険は保障が一生涯続き、保険料は高くなりやすいものの解約返戻金が積み上がっていく設計が一般的です。事業承継の資金準備では、資金が必要になる時期の見通しに応じて使い分けが検討されます。

Q. 生命保険の解約返戻金はいつ受け取るのが有利ですか?

解約返戻金は契約からの経過年数によって金額が変動し、保険の種類ごとにピークを迎える時期が異なります。承継を予定している時期と解約返戻金が最も高くなる時期がずれていると、想定より少ない金額しか受け取れないことがあります。契約時にあらかじめ承継予定時期とのタイミングを確認し、返戻率の推移を保険会社に確認したうえで判断することをおすすめします。

Q. 事業承継で生命保険を活用する際はどこに相談すればよいですか?

保険代理店や保険会社だけでなく、保険料が資金計画や自社株式の評価に与える影響まで含めて判断できる税務・会計の専門家にも相談することをおすすめします。承継の方向性がまだ固まっていない場合は、親族内承継・従業員承継・第三者承継を横断して中立的に相談できる窓口を頼る方法もあります。特定の保険商品への誘導がない立場で話を聞ける相手を選ぶことが判断の質を左右します。


植木 諒

(株)船井総研あがたFAS マネージャー

士業事務所でキャリアを歩み、法務・不動産の現場実務に精通。2018年の船井総研入社後は、財務コンサルティングを主軸に数多くの事業承継・再生案件を完遂してきた 。現在はグループの事業承継分野で中核を担う存在である 

土地家屋調査士・行政書士の資格を保持し、「事業・財産・組織」の3つの視点から包括的に支援 。現場実務から承継戦略までをワンストップで解決できる希少なコンサルタントとして、多くの経営者から厚い信頼を得ている。

植木 諒

(株)船井総研あがたFAS マネージャー

士業事務所でキャリアを歩み、法務・不動産の現場実務に精通。2018年の船井総研入社後は、財務コンサルティングを主軸に数多くの事業承継・再生案件を完遂してきた 。現在はグループの事業承継分野で中核を担う存在である 

土地家屋調査士・行政書士の資格を保持し、「事業・財産・組織」の3つの視点から包括的に支援 。現場実務から承継戦略までをワンストップで解決できる希少なコンサルタントとして、多くの経営者から厚い信頼を得ている。