事業承継税制の期限は、令和8年度(2026年度)税制改正によって見直されました。
特例承継計画の提出期限が、これまでの2026年3月31日から延長された一方、実際に贈与や相続を行う適用期限は変わっていません。
「提出期限が延びたのだから、まだ時間がある」と受け止めている経営者や後継者の方も少なくありませんが、提出期限と適用期限を同じものとして扱ってしまうと、準備のスケジュールを見誤るおそれがあります。
税務会計を専門とする立場から、この2つの期限の違いと、いつまでに何をすべきかを整理します。
本記事では、期限に関わる年月の確認と、焦って承継の方向性を決めないための考え方に絞って解説します。
事業承継税制の仕組みそのものや、特例措置・一般措置の適用要件の詳細は、専門記事に譲ります。
なお、期限に関する情報は税制改正のたびに変わりうるため、本記事の記載は執筆時点で確認できた内容であり、実際の対応にあたっては中小企業庁・国税庁の最新の公表資料や税理士への確認を必ず行ってください。
経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。 プロの目利きで自社の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。


事業承継税制の期限は2026年3月からどう変わったのか
事業承継税制の期限のうち、最も検索される疑問が「2026年3月にどうなるのか」という点です。
結論として、特例承継計画の提出期限は2026年3月31日で終わらず、令和8年度税制改正によって延長されています。
もともとの提出期限は2026年3月31日だった
特例承継計画の提出期限は、制度が始まった平成30年(2018年)以降、これまでにも複数回見直されてきました。
直近では2024年の税制改正で提出期限が2年延長され、2024年3月31日から2026年3月31日に変更された経緯があります。
今回の令和8年度税制改正は、この2026年3月31日という期限をさらに先へ延ばす、2回目の延長にあたります。
実務の現場でも、「提出期限はこまめに延長されてきた制度」という受け止め方をしている専門家は多く、今回の延長も想定の範囲内だったといえます。

令和8年度税制改正で提出期限が延長された
令和8年度税制改正では、特例承継計画の提出期限が、法人版で1年6か月、個人版で2年6か月延長されるとされています。
具体的な年月は次の章で法人版・個人版に分けて整理しますが、いずれの場合も「提出期限が延びた」ことと「事業承継税制そのものの適用期限が延びた」ことは同じ意味ではありません。
この点は、本記事執筆にあたって複数の税理士法人・専門機関の公開情報を確認したうえでの整理であり、経営者の方が実際に手続きを進める際は、中小企業庁・国税庁の最新の公表資料、または顧問税理士への確認をあらためて行うことをおすすめします。
事業承継税制の期限|特例承継計画の提出期限と適用期限の違い
事業承継税制の期限を理解するうえで欠かせないのが、特例承継計画の「提出期限」と、事業承継税制そのものの「適用期限」を分けて考えることです。
実務上は、この2つの期限が混同されて語られる場面が少なくありません。
特例承継計画の提出期限とは
特例承継計画の提出期限とは、特例措置を利用するために必要な計画を都道府県へ提出する期限です。
計画には、認定経営革新等支援機関(税理士や商工会議所など)が後継者や承継までの経営見通しについて所見を記載する必要があり、この提出が特例措置を使うための前提条件になります。
事業承継税制の仕組みや、特例措置・一般措置という2つの制度の違いについては、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継税制とは?納税猶予の仕組みと特例措置をわかりやすく解説』

適用期限(対象となる贈与・相続の期限)とは
適用期限とは、特例措置の対象になる贈与または相続を実際に行う期限のことです。
特例承継計画の提出とは別に定められており、この期限までに株式の贈与または相続を実行しなければ、特例措置そのものが使えなくなります。
実務の現場でも、この2つの期限が混同されやすいという指摘があります。
「特例承継計画の提出期限だけでなく、それとは別に実際に贈与や相続を行う期限があり、提出期限はこれまでも何度か延期されてきた」としたうえで、「そこまでに相続や贈与を行う、というところが最後の期限になっている」と話す専門家もいます。
ここでいう「最後の期限」が指しているのは、提出期限ではなく適用期限だと考えられます。
提出期限と適用期限を同じ期限だと捉えてしまうと、準備のスケジュールそのものを誤りかねないため、どちらの期限を指しているのかを都度確認する姿勢が欠かせません。
特例措置・一般措置それぞれの適用要件を会社・後継者・先代経営者別に整理した内容は、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継税制の要件|特例措置と一般措置の違いを会社・後継者・先代経営者別に解説』
特例承継計画の提出期限は法人版と個人版で異なる
特例承継計画の提出期限と適用期限は、法人版事業承継税制と個人版事業承継税制とで異なる年月が設定されています。
自社がどちらに該当するかによって、確認すべき期限が変わります。
法人版事業承継税制の提出期限・適用期限
法人版事業承継税制(特例措置)では、特例承継計画の提出期限が令和8年度税制改正により2026年3月31日から2027年9月30日へ、1年6か月延長されるとされています。
一方、対象となる贈与・相続の適用期限は2027年12月31日のままで、こちらは変更されません。
提出期限までにまだ余裕があるように見えても、適用期限である2027年12月31日までに贈与または相続を終えている必要がある点は変わらないため、両方の期限を混同しないよう注意が必要です。
個人版事業承継税制の提出期限・適用期限
個人版事業承継税制では、個人事業承継計画の提出期限が2026年3月31日から2028年9月30日へ、2年6か月延長されるとされています。
適用期限は2028年12月31日のまま変更されないとされており、法人版よりも1年遅い設定になっています。
なお、法人版・個人版の年月の組み合わせは、情報源によって表記が異なって紹介されている場合があります。
本記事作成時に複数の専門機関の公開情報を突き合わせた限りでは、法人版が2027年、個人版が2028年という組み合わせが一致していましたが、実際に手続きを進める際は、中小企業庁の特例承継計画に関する案内や、顧問税理士への確認を通じて、自社に適用される正確な年月をあらためて確認することをおすすめします。

事業承継税制の期限までにいつまでに何をすべきか
事業承継税制の期限に対応するためには、特例承継計画の提出までに複数の準備が必要です。
期限までの日数だけを見て「まだ大丈夫」と判断せず、必要な工程を早めに把握しておくことが欠かせません。
認定経営革新等支援機関の指導・助言を受ける
特例承継計画の作成には、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けることが前提になります。
顧問税理士がこの認定を受けているケースは多いものの、対応していない場合は、対応可能な税理士や商工会議所などを別途探す必要があります。
経験上、この確認を後回しにしてしまうと、計画作成そのものよりも支援機関探しに時間がかかってしまうことが少なくありません。
特例承継計画を都道府県に提出する
認定経営革新等支援機関の所見を得たうえで、特例承継計画を都道府県へ提出します。
実務上は、計画の様式作成自体に大きな時間がかかることは多くなく、後継者の事業計画や株主構成の確認に時間を要するケースのほうが目立ちます。
特例承継計画の提出期限が延長されるタイミングでは、事業承継税制についての相談や提案の件数が増える傾向があるともいわれており、期限を意識して動き出す経営者が一定数いることがうかがえます。
準備は承継の方向性の検討と並行して進める
親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)のどれを選ぶか、承継の方向性がまだ固まっていない場合でも、特例承継計画の提出に向けた準備自体は並行して始められる場合があります。
方向性が決まってから動き出そうとすると、認定経営革新等支援機関への相談や株主構成の確認といった工程が期限直前に集中してしまい、かえって選択肢が狭まることにもなりかねません。
事業承継税制の期限が延びても焦って承継方法を決めないために
特例承継計画の提出期限が延長されたことは、準備期間に余裕が生まれたという点で歓迎できる変化です。
一方で、期限が延びたことをきっかけに、承継の方向性そのものを性急に決めてしまうと、かえって後悔につながりかねません。

期限に間に合わせることと承継の方向性の検討は分けて考える
事業承継税制の期限に対応することと、親族内承継・従業員承継・第三者承継のどれを選ぶかという承継の方向性を決めることは、本来別々に検討すべき事柄です。
期限を意識するあまり、後継者との十分なすり合わせを省いたまま計画提出だけを急いでしまうと、後継者側の納得感が置き去りになる場合があります。
提出期限に余裕がある今のうちに、承継の方向性そのものを丁寧に検討しておくことが、結果的に近道になります。
将来M&Aを検討する可能性がある場合の留意点
将来的に第三者承継(M&A)へ転じる可能性を残しておきたい場合は、事業承継税制を選ぶことで経営判断の自由度がどの程度制約されるのかを、あらかじめ確認しておく必要があります。
特例措置は後継者が株式を持ち続けて事業を継続することを前提にした制度であるため、将来の選択肢をどこまで残したいかによって、要件を満たす意味合いも変わってきます。
特例措置・一般措置それぞれの適用要件や、要件を満たせなくなった場合のリスクについては、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継税制の要件|特例措置と一般措置の違いを会社・後継者・先代経営者別に解説』
事業承継税制の期限や特例承継計画で迷ったときの相談先
事業承継税制の期限に関する情報は税制改正のたびに変わりやすく、法人版・個人版で年月も異なるため、自己判断だけで進めず、早い段階で専門家に確認しておくことが遠回りに見えて近道です。
税理士に相談するメリットと費用
特例承継計画の提出期限や適用期限が自社にどう当てはまるか、認定経営革新等支援機関としての対応が可能かどうかは、税理士に相談するのが基本です。
事業承継案件の実績がある税理士であれば、期限までの逆算スケジュールも含めて具体的な提案を受けられます。
事業承継を税理士に相談する際のメリットや費用の目安については、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継を税理士に相談するメリットと費用|できること・できないこと』
承継の方向性から中立的に相談できる窓口
事業承継税制は、承継の方向性が固まったあとに使う税金の制度です。
親族内承継・従業員承継・第三者承継のどれを選ぶかという、より大きな判断がまだ固まっていない場合は、税制の期限から入るよりも、承継の方向性そのものを中立的な立場で整理できる窓口に相談したほうが、遠回りにならずに済みます。
自社に合った相談先の選び方については、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継は誰に相談すべき?相談先の種類と選び方をわかりやすく解説』

【まとめ】事業承継税制の期限を正しく理解し、余裕を持って準備を進める
親族内承継・従業員承継・第三者承継を含めた事業承継全体の方法や進め方の流れについては、こちらのコラムもおすすめです。
『事業承継とは|方法・進め方・税金までの流れをまとめて理解できるガイド』
事業承継税制の期限は、特例承継計画の「提出期限」と、贈与・相続を実行する「適用期限」という、性質の異なる2つの期限で構成されています。
令和8年度税制改正により提出期限は延長されましたが、適用期限は変わっていないため、この2つを混同したまま準備を進めると、スケジュールを見誤るおそれがあります。
まずは自社が法人版・個人版のどちらに該当するかを確認したうえで、認定経営革新等支援機関への相談、株主構成の確認、承継の方向性のすり合わせという工程を、期限までの日数から逆算して進めることが次の一歩になります。
税務会計と経営コンサルティングを一気通貫で担う船井総研あがたFASでは、事業承継税制の期限への対応だけでなく、親族内承継・従業員承継・第三者承継を含めた承継の方向性そのものを、中立的な立場で一緒に整理し、実行まで伴走しています。
経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。 プロの目利きで自社の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。
【業界専門コンサルタントが担当】「出口戦略」診断で自社の価値を正しく守る。ベストな承継を実現するための第一歩。


事業承継税制についてよくあるご質問
Q.事業承継税制の期限とは何を指しますか?
A.事業承継税制の期限には、特例措置を利用するために都道府県へ提出する「特例承継計画の提出期限」と、実際に株式の贈与・相続を行う「適用期限」の2種類があります。
両者は別々に定められており、提出期限が延長されても適用期限は変わらない場合があるため、どちらの期限を指しているかを確認することが重要です。
法人版と個人版でも年月が異なるため、自社がどちらに該当するかもあわせて確認しておく必要があります。
Q.事業承継税制は2026年3月にどうなりますか?
A.特例承継計画の提出期限は、従来2026年3月31日までとされていましたが、令和8年度税制改正により延長されるとされています。
延長後の期限は法人版・個人版で異なり、贈与・相続を行う適用期限自体は変更されないとされています。
提出期限に余裕ができた分、承継の方向性の検討を後回しにせず並行して進めることが重要です。
正確な年月は中小企業庁・国税庁の最新情報で確認する必要があります。
Q.特例承継計画の提出期限と適用期限の違いは何ですか?
A.提出期限は特例承継計画を都道府県へ提出する期限で、適用期限は対象となる贈与・相続を実際に行う期限です。
令和8年度税制改正では提出期限のみが延長されるとされており、適用期限は法人版が2027年12月31日、個人版が2028年12月31日のまま変更されないとされています。
提出期限が延びたことを、適用期限まで延びたと誤解しないよう注意が必要です。
Q.特例承継計画はどこに提出すればよいですか?
A.特例承継計画は、認定経営革新等支援機関による所見を記載してもらったうえで、会社の主たる事務所が所在する都道府県へ提出します。
認定経営革新等支援機関には税理士や商工会議所などが該当し、顧問税理士がこの認定を受けているかどうかを事前に確認しておく必要があります。
対応できない場合は、対応可能な税理士や商工会議所など、他の認定経営革新等支援機関を早めに探しておくことをおすすめします。
Q.特例承継計画の提出期限に間に合わなかった場合はどうなりますか?
A.提出期限までに特例承継計画を提出できなかった場合、猶予割合や対象株式の範囲が限定される一般措置を検討する余地は残りますが、特例措置は利用できなくなるとされています。
期限内に対応できるかどうか不安がある場合は、早めに税理士など専門家に相談することをおすすめします。
一般措置は特例措置と異なり提出期限そのものが設けられていないため、検討の選択肢として押さえておく価値があります。