整骨院M&A完全ガイド|相場・譲渡益・失敗リスクを専門家が提言

この記事では、競争が激化する整骨院業界において、M&Aという選択肢が経営者、スタッフ、患者様にもたらすメリットとリスクを、現場の最前線を知る専門家の視点で解説します。読了後には、自院を「高く譲渡できる院」に変えるための具体的なアクションプランが見えてくるはずです。

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1. 整骨院M&Aとは?単なる譲渡ではなく「存続」と「成長」の戦略

M&A(合併・譲受)と聞くと、「経営に失敗したから身売りする」「乗っ取られる」といったネガティブなイメージを持つ経営者様も少なくありません。しかし、現代の整骨院業界におけるM&Aは、むしろ「攻めの経営戦略」としての側面が強くなっています。

後継者不在で廃業を余儀なくされる前に、資本力のあるグループにバトンを渡すことで、長年地域で愛されてきた院を存続させる。あるいは、大手グループの傘下に入ることで、スタッフの給与水準を上げ、最新の機器や教育システムを導入する。M&Aは、経営者、スタッフ、そして患者様の「三方よし」を実現するための有効な手段なのです。

整骨院M&Aのメリットについてより詳しく知りたい方はこちら

「整骨院」「接骨院」「整体院」M&Aにおける決定的な違い

M&Aを検討する上でまず押さえておきたいのが、業態による評価の違いです。一般の方からは同じように見られがちですが、M&Aの市場価値という点では明確な線引きがあります。

まず、「整骨院」と「接骨院」は、名称(屋号)が違うだけで中身は同じです。どちらも国家資格である柔道整復師が施術を行い、保険診療が可能です。M&A市場においても、この2つは同等のものとして扱われます。

一方、「整体院」は全く別物です。整体院は国家資格が不要で、誰でも開業できます。そのため、M&Aにおける評価基準や買い手の需要も、整骨院とは大きく異なります。

治療院業界のM&A動向についてはこちらをご覧ください整骨院の内観

国家資格の有無が「譲渡価格」と「買い手需要」を左右する

M&Aにおいて最も価格を左右するのは、「有資格者(柔道整復師・鍼灸師)が何人在籍しているか」という点です。
現在、柔道整復師の養成校入学者は減少傾向にあり、採用難易度は年々上がっています。買い手企業、特に多店舗展開を目指す大手グループにとって、M&Aは「時間を買って患者さんを譲り受ける」だけでなく、「喉から手が出るほど欲しい有資格者をまとめて採用する」ための手段でもあります。

そのため、有資格者が定着している整骨院・接骨院は、それだけで高い価値がつきます。対して、業務委託のスタッフが中心で、人の入れ替わりが激しい整体院やリラクゼーションサロンは、組織としての資産価値が低く見積もられがちで、M&Aの難易度は高くなります。

整骨院のM&Aにおける特徴や目的について詳しく知りたい方はこちら

廃業かM&Aか?手元に残るお金と従業員の未来を比較

「もう歳だし、畳んでしまおうか」と考える前に、廃業とM&Aのコストを比較してみてください。
賃貸で店舗を借りている場合、廃業するには「原状回復工事」が必要です。内装をスケルトンに戻すために数百万円のキャッシュが出ていきます。さらに、長年勤めてくれたスタッフを解雇しなければなりません。

一方、M&Aで譲渡できれば、内装や設備をそのまま引き継いでもらえるため、原状回復費用は不要です。それどころか、「譲渡益」としてまとまった現金が手元に残ります。何より、スタッフは新しいオーナーのもとで雇用が継続され、患者様も通い慣れた院で施術を受け続けることができます。
経済的な合理性はもちろん、経営者としての「最後の大仕事」として、どちらがハッピーな選択かは明白です。
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2. 整骨院M&Aの相場と譲渡価格の決まり方【2026年最新版】

「うちはいくらで売れるのか?」
これは全ての経営者様が最初に抱く疑問でしょう。ここでは、M&Aの現場で実際に使われている価格算出の目安と、数字には表れない「評価ポイント」について解説します。

一般的な相場算出法「時価純資産+営業権(のれん)」

中小規模の整骨院M&Aでは、以下の計算式が目安としてよく使われます。

譲渡価格 = 時価純資産 + 営業権(のれん代)

  • 時価純資産: 院が持っている資産(現金、設備、敷金など)から負債を引いたもの。

  • 営業権(のれん代): 院の「収益力」や「ブランド価値」をお金に換算したもの。一般的には「修正営業利益の1年〜3年分」と言われています。

例えば、純資産が500万円あり、年間利益が300万円出ている院であれば、
500万円 +(300万円 × 2年分)= 1,100万円
あたりが相場の目安となります。ただし、これはあくまで机上の計算です。実際には、次に挙げるような定性的な要素が価格を大きく上下させます。

買い手が「高値でも欲しい」と思う院の共通点

買い手企業がデューデリジェンス(買収監査)で最も注目するのは、「社長(院長)がいなくても回る仕組みがあるか」です。

社長が現場でバリバリ施術をして売上を作っている院は、社長が抜けた途端に売上がガタ落ちするリスクがあります。これでは高い値段はつきません。
逆に、社長は現場に出ず、採用やマーケティング、マネジメントなどの経営業務に専念しており、現場は幹部スタッフを中心に自走している。このような院は、譲受後も安定した収益が見込めるため、相場以上の評価がつきます。

採用難の時代に「人材」が定着している院は最強の資産

前述の通り、この業界は慢性的な人材不足です。特に新卒の柔道整復師の奪い合いは激化しています。
そんな中、「毎年コンスタントに新卒を採用できている」「スタッフの勤続年数が長い」という事実は、それだけで強烈なアピールポイントになります。人が育ち、定着している組織は、将来の成長性が高いと判断され、営業権(のれん代)の上乗せ要因となります。柔道整復師

価格を下げる要因:赤字、立地、そして「回数券」

逆に、評価を下げる要因もあります。
当然ながら「赤字」はマイナス評価ですが、買い手がシナジー(相乗効果)を出せると判断すれば、買い手がつくこともあります。
「立地」も重要です。駅近や視認性の良いロードサイド店舗は人気ですが、集客力の弱い立地はマイナスです。
そして、意外に見落とされがちで、時にM&Aそのものを破談にしてしまう最大のリスク要因が、次章で解説する「回数券(プリペイドカード)」の存在です。

3. 失敗しない整骨院M&A|現場で起きる「3つの落とし穴」

ここからは、M&Aの現場で実際に起きているトラブルや、譲渡価格を大きく下げる要因となる「落とし穴」について、専門家ならではの視点で深掘りします。

【落とし穴①】未消化「回数券」がM&Aを破談にする

自費診療のメニューで、回数券を販売している院は多いと思います。キャッシュフローが良くなるため経営上のメリットは大きいですが、M&Aにおいてはこれが「負債(借金)」とみなされることをご存知でしょうか?

会計上、販売した回数券の未消化分は「前受金」として処理し、施術を行った時点で初めて「売上」に計上するのが原則です。しかし、多くの院では販売した時点で全額を売上にしてしまい、未消化分が帳簿に乗っていないケースが多々あります。
これを「簿外債務」と呼びます。買い手からすれば、「お金はもう受け取っているのに、これから無料で施術をしなければならない義務」を引き継ぐことになります。

簿外債務の実態と、譲渡前に打つべき「有効期限」の対策

例えば、未消化の回数券が1,000万円分あったとします。買い手は、企業価値からこの1,000万円を差し引いて譲渡価格を提示してくるでしょう。場合によっては、「リスクが大きすぎる」と破談になることもあります。

このリスクを減らすために今すぐやるべきことは、「回数券に有効期限を設ける」ことです。
有効期限がないと、その債務は半永久的に消えません。しかし、例えば「有効期限1年」としておけば、期限切れの分は債務から外れ、雑収入として処理できます。
これからM&Aを検討される方は、回数券の管理(預かり金処理)を適正化し、必ず有効期限を設定するようにしてください。

【落とし穴②】M&A直後の「スタッフ一斉離職」リスク

整骨院は「人」につくビジネスです。「〇〇先生に診てもらいたい」という患者様が多い院ほど、M&Aのリスクは高くなります。
もし、そのカリスマ先生がM&Aを機に独立し、近所で開業したらどうなるでしょうか? 患者様をごっそり連れて行かれ、残ったのは空っぽの箱だけ…という事態になりかねません。これを防ぐための法的な「競業避止義務」契約もありますが、職業選択の自由との兼ね合いで、完全に防ぐことは難しいのが現実です。整骨院で働く男性

「担当制」の廃止が、M&A成功と高額譲渡への第一歩

この「人についてもっていくリスク」を減らすための根本的な対策は、「担当制にしない」ことです。
特定のスタッフだけが患者様を担当するのではなく、院全体で患者様を診るチーム制にする。カルテや施術情報を共有し、誰が担当しても一定の品質を提供できるようにマニュアル化する。
これは、M&Aのためだけでなく、普段の経営におけるスタッフの急な欠勤や退職リスクへの備えにもなります。属人性を排除し、組織として機能している院こそが、M&Aで高く評価される院なのです。

【落とし穴③】レセプト不正請求(コンプライアンス違反)の発覚

「少しぐらいなら大丈夫だろう」という軽い気持ちで行っている保険請求のグレーゾーン。これはM&Aのデューデリジェンスで必ずバレます。
ただ業界特性上、買い手企業から見て許容範囲に収まっていれば大きな減額につながることは少ないです。ただ、どんなに小さなネガティブ要因もないに越したことはありませんので、過去のレセプトデータをチェックし、「部位転がし」(負傷箇所を次々と変えて長期請求すること)や、明らかに慢性症状と思われる請求が自院にないか、業界常識を逸脱していないかはセルフチェックをしましょう。

 買い手は見ている:保険収入比率と「部位転がし」のリスク

買い手は「売上全体に占める保険収入の割合」を見ています。この比率が異常に高い場合、「不正をしているのではないか?」あるいは「保険改定があったら経営が傾くのではないか?」と警戒します。
M&Aを目指すなら、今のうちからコンプライアンスを徹底し、自費診療の割合を増やして健全な収益構造を作っておくことが重要です。

4. 整骨院M&Aの流れと期間|相談から成約、統合まで

M&Aは、思い立ってすぐにできるものではありません。一般的には、相談から成約まで3ヶ月〜1年程度の期間がかかります。

  1. 事前準備・磨き上げ: 自社の価値算定、資料作成、リスク(回数券など)の整理。

  2. マッチング: 買い手候補の探索と打診。

  3. トップ面談: 経営者同士の顔合わせ。理念や方向性の確認。

  4. 基本合意・監査: 仮条件での合意と、詳細な調査(デューデリジェンス)。

  5. 最終契約・決済: 条件確定、契約締結、株式や事業の譲渡。

  6. PMI(統合プロセス): 新体制での運営開始。

準備~成約までの標準期間(3ヶ月~1年)

焦って売ろうとすると、足元を見られて価格を叩かれたり、条件の悪い契約を結ばされたりしがちです。
理想的なのは、「1〜2年後を見据えて今から準備を始める」ことです。担当制の廃止や回数券の整理など、組織の「磨き上げ」を行ってから市場に出すことで、より良い条件での成約が可能になります。

最も重要な「PMI(統合プロセス)」の鉄則

M&Aのゴールは契約調印ではありません。本当の勝負は、そこから始まります。これをPMI(Post Merger Integration)と呼びます。
特に整骨院の場合、オーナーが変わったことによるスタッフの動揺や不安をどう鎮め、モチベーションを維持するかが最重要課題です。

「1年間は何も変えない」が成功の黄金律である理由

PMIで失敗する典型例は、新しいオーナーが乗り込んできて、いきなり「明日からこのやり方に変えてください」と指示することです。これでは現場が反発し、離職を招きます。
成功の鉄則は、「最初の1年間は、現場のやり方を変えない」ことです。
変えていいのは、給与アップや福利厚生の充実など、スタッフにとってプラスになることだけ。まずは信頼関係を築き、「このオーナーになって良かった」と思ってもらうこと。オペレーションの変更や統合は、その土台ができてからゆっくり進めればいいのです。

M&A後のトラブルを防ぐための準備や、自院に合ったPMIの進め方について詳しく知りたい方は、業界特化の専門家に一度ご相談ください。

5. 異業種(介護・マッサージ)からの参入とM&A

最近では、同業の整骨院グループだけでなく、異業種からの買収オファーも増えています。

介護事業者が整骨院を譲受する「水平統合」のメリット

代表的な異業種参入は、デイサービスなどを運営する介護事業者による譲受です。
介護事業者は、高齢者の利用者様を抱えています。整骨院を譲受することで、機能訓練(リハビリ)のノウハウを取り込んだり、整骨院に通う高齢者を将来的に介護施設へ紹介したりといったシナジー(相乗効果)を狙っています。
地域密着で高齢者の患者様が多い整骨院にとって、介護事業者は有力な買い手候補となり得ます。

マッサージ・リラクゼーション業態のM&A事情

一方で、マッサージやリラクゼーション業界のM&Aは、整骨院に比べると少し事情が異なります。
単価が低く、業務委託スタッフが中心のこの業界は、利益率があまり高くないため、高値での譲渡は難しい傾向にあります。
しかし、「単価を上げたい」「国家資格者を入れたい」と考えているマッサージ店運営企業が、整骨院を譲受したがるケースはあります。この場合、整骨院側にとっては「売り手市場」となりやすいです。

6. 【まとめ】整骨院M&Aは「準備」が9割。まずは自院の健康診断を

整骨院のM&Aは、単なる店舗の売買ではありません。そこで働くスタッフ、通ってくれる患者様、そして経営者自身の人生をつなぐ重要な決断です。

成功の鍵は、「準備」にあります。
回数券の処理、担当制の廃止、レセプトの適正化。これらは一朝一夕にはできません。だからこそ、M&Aを検討し始めた段階で、専門家の目を入れることを強くお勧めします。
「うちは売れるのだろうか?」「いくらになるのだろうか?」
そう思ったら、まずは弁護士や税理士よりも、整骨院・治療院業界のM&Aに特化した専門仲介会社にご相談ください。業界特有のリスクと価値を正しく理解してくれるパートナーを見つけることが、成功への最短ルートです。

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7.整骨院のM&Aについてよくあるご質問

Q1. 整骨院M&Aの相場はどれくらいですか?
A. 一般的には「時価純資産+修正営業利益の1〜3年分」が目安です。ただし、有資格者の定着率や立地、回数券の未消化分(負債)によって評価額は大きく変動します。

Q2. 赤字の整骨院でも譲渡できますか?
A. 可能です。買い手が重視するのは「現在の利益」よりも「有資格者の確保」や「立地」である場合が多いため、再生の余地があれば譲渡のチャンスは十分にあります。

Q3. M&A後、スタッフは辞めてしまいませんか?
A. リスクはあります。それを防ぐため、特定の個人に患者様がつかないよう「担当制」を廃止し、引継ぎ後1年間は待遇や方針を変えない「PMI(統合)」期間を設けることが重要です。

Q4. 個人経営の小さな整骨院でもM&Aは可能ですか?
A. 可能です。規模に関わらず、地域に密着し固定患者がいる院は価値があります。ただし、院長一人に依存している場合は、引継ぎ期間の契約などが重要になります。

Q5. 回数券の未消化分はどう扱われますか?
A. M&Aでは「将来の施術義務(負債)」とみなされ、譲渡価格から差し引かれるのが一般的です。譲渡を検討する際は、有効期限の設定など事前の対策が必要です。


宮澤 駿

(株)船井総研あがたFAS ディレクター

大学卒業後、2014年に株式会社船井総合研究所へ入社。「院長を経営者に」を大切にし、鍼灸整骨院業界の経営コンサルティングに従事。現在は、船井総研あがたFASを兼務し、約10年間のコンサルティングで得た経験と知見を元に鍼灸整骨院業界の市場規模拡大のためM&A・事業承継に注力している。

宮澤 駿

(株)船井総研あがたFAS ディレクター

大学卒業後、2014年に株式会社船井総合研究所へ入社。「院長を経営者に」を大切にし、鍼灸整骨院業界の経営コンサルティングに従事。現在は、船井総研あがたFASを兼務し、約10年間のコンサルティングで得た経験と知見を元に鍼灸整骨院業界の市場規模拡大のためM&A・事業承継に注力している。