整骨院/治療院のM&Aの注意点

近年、整骨院や治療院業界においてM&Aが活発になっています。業界の競争が激化する中で、事業拡大や後継者問題の解決手段としてM&Aを活用するケースが増えています。しかし、M&Aには多くの注意点があり、適切な準備や対策を行わないと、思わぬトラブルや経営の失敗につながる可能性があります。
本記事では、整骨院・治療院のM&Aにおける注意点を詳しく解説し、成功に導くためのポイントを紹介します。
1. M&Aの目的を明確にする
M&Aを成功させるためには、まず目的を明確にすることが重要です。目的が不明確なままM&Aを進めると、買収後に経営方針が定まらず、事業の継続が困難になることがあります。
売り手側の目的
- 後継者不在の解決:院長の高齢化や後継者不在による事業承継のためにM&Aを活用するケース。
- 経営負担の軽減:個人経営による負担が大きく、資本力のある企業に売却することで負担を減らす。
- 資金確保:新たな事業を始めるための資金調達としてM&Aを利用する。
買い手側の目的
- 事業拡大:複数の院を展開し、規模のメリットを活かす。
- ブランド強化:知名度のある整骨院を買収し、グループ全体のブランド価値を向上させる。
- 患者基盤の確保:既存の患者を維持しながら、新規市場に参入する。
2. 適正な価格設定と査定の重要性
M&Aの成功には、適正な価格設定が不可欠です。売り手と買い手の双方が納得できる価格で取引を進めるためには、以下の要素を考慮する必要があります。
売却価格の評価ポイント
- 時価純資産+のれん代:のれん代は正常営業利益額の1倍〜3倍が相場とされます。
- 営業利益(EBITDA):利益率が高いほど評価額が上がる。
- 患者のリピート率:リピート率が高い院は安定した収益が見込めるため、評価が高くなる。
- 立地条件:駅前や商業施設内など、利便性の高い立地は評価が高い。
- スタッフの継続率:スタッフが継続勤務する場合、M&A後の安定した運営が可能になるため、高評価につながる。
財務の透明性
- 負債の有無を確認する:未払いの債務がある場合、買い手にとってリスク要因となる。
- 財務諸表の正確性:売上や経費の詳細を正確に開示し、適正な評価を受けることが重要。
3. 患者やスタッフへの影響を考慮する
M&Aが行われると、院の運営体制が変わることにより、患者やスタッフに影響を及ぼす可能性があります。
患者への対応
- 事前に周知する:突然の経営者変更は、患者の不安を招くため、丁寧な説明が必要。
- 施術方針の統一:施術方法が大きく変わると、既存の患者が離れるリスクがあるため、引き継ぎをしっかり行う。
- サービスの質を維持する:M&A後も同じレベルの施術を提供し、患者の信頼を維持することが重要。
スタッフの対応
- 雇用条件の維持:M&A後に待遇が大幅に変わると、スタッフのモチベーションが低下する可能性がある。
- 退職リスクを考慮する:スタッフが離職しないように、買い手は雇用条件の調整を慎重に行う必要がある。
契約内容の精査
M&A契約の際には、細かい契約内容を慎重に確認することが重要です。特に以下のポイントに注意しましょう。
競業避止義務の設定
売却後に、売り手が近隣で同様の院を開業すると、患者が流出する可能性があります。そのため、一定期間・一定エリア内での競業を禁止する契約を設定することが重要です。
設備・資産の引き継ぎ
- 施術機器や設備の所有権を明確にする
- リース契約がある場合、買い手に引き継げるか確認する
契約解除条件
万が一、M&A後に問題が発生した場合の契約解除条件を事前に取り決めておくことで、トラブルを回避できます。
5. M&A後の統合作業
M&Aが完了した後も、統合作業が成功の鍵を握ります。
患者への適切な引き継ぎ
- 新体制への移行をスムーズに行う
- 施術内容やサービスの変更を最小限にする
スタッフとのコミュニケーション
- 新経営体制の説明を丁寧に行う
- スタッフの意見を尊重し、働きやすい環境を維持する
まとめ
整骨院・治療院のM&Aには多くのメリットがありますが、慎重な準備と適切な対応が必要です。特に、価格設定、患者やスタッフへの配慮、契約内容の精査、M&A後の統合作業に十分な注意を払うことで、成功確率を高めることができます。
M&Aを検討する際には、本記事の注意点を参考にしながら、専門家と相談しつつ慎重に進めることをおすすめします。
整骨・治療院のM&A専門サポートチームがある弊社では、お話をお伺いしながら現実的なM&A戦略を一緒に検討することが出来ます。是非一度お問い合わせください。
整骨院のM&Aに関する詳しい情報は、こちらをご参照ください。
1.整骨院/治療院のM&Aトップへ
2.整骨院/治療院のM&Aの特徴
3.整骨院/治療院のM&Aのメリット・デメリット
4.整骨院/治療院のM&Aの注意点
5.整骨院/治療院のM&Aの譲渡対価の相場観
6.整骨院/治療院のM&A事例
7.整骨院/治療院のM&Aの失敗事例
8.整骨院/治療院のM&Aの2024年の振り返り

宮澤 駿
(株)船井総合研究所 シニアコンサルタント
大学卒業後、2014年に株式会社船井総合研究所へ入社。「院長を経営者に」を大切にし、鍼灸整骨院業界の経営コンサルティングに従事。現在は、船井総研あがたFASを兼務し、約10年間のコンサルティングで得た経験と知見を元に鍼灸整骨院業界の市場規模拡大のためM&A・事業承継に注力している。

宮澤 駿
(株)船井総合研究所 シニアコンサルタント
大学卒業後、2014年に株式会社船井総合研究所へ入社。「院長を経営者に」を大切にし、鍼灸整骨院業界の経営コンサルティングに従事。現在は、船井総研あがたFASを兼務し、約10年間のコンサルティングで得た経験と知見を元に鍼灸整骨院業界の市場規模拡大のためM&A・事業承継に注力している。