整骨院/治療院のM&A事例

近年、整骨院・治療院業界においてM&Aが増加しています。業界の競争が激化する中、事業拡大や引退後の出口戦略としてM&Aを活用する経営者が増えているのです。しかし、整骨院・治療院ならではの課題も多く、成功させるためには具体的な事例を学ぶことが重要です。
本記事では、実際に行われた整骨院・治療院のM&A事例を紹介し、成功のポイントや注意すべき点について解説します。
1. 地域密着型整骨院のM&A事例
背景
ある地方都市で30年以上にわたって営業していた整骨院A院長は、高齢に伴い引退を考えていました。しかし、長年地域の患者に寄り添ってきたため、閉院するのではなく、院を存続させたいという思いがありました。一方で、同じ地域に新規展開を考えていたB社は、既存の整骨院をM&Aすることで、早期の地域密着を図りたいと考えていました。
M&Aのプロセス
- A院長はM&Aアドバイザーに相談し、売却希望を提示。
- B社はA院の立地と既存の患者基盤に魅力を感じ、買収を決定。
- 売却価格の決定に際し、患者数の推移や売上データを基に査定を実施。
- 引き継ぎ期間を設け、A院長がB社の新院長とともに一定期間勤務。
- 地域の患者に対し、運営者変更の説明を実施し、信頼関係を維持。
成功のポイント
- 地域密着の強みを活かしたM&A:既存の患者基盤があり、スムーズな移行が可能だった。
- 引き継ぎ期間の設定:突然の院長変更ではなく、時間をかけて引き継ぎを行った。
- 患者への丁寧な説明:院名変更を行わず、従来のサービスを維持した。
2. 大手整骨院グループによる治療院の買収事例
背景
都市部で個人経営をしていた整骨院Cは、資金繰りの問題や経営ノウハウの不足から、事業の存続が難しくなっていました。一方で、大手整骨院グループDは、エリア拡大を目指しており、C院の立地や患者数に注目しました。
M&Aのプロセス
- C院の院長が売却を検討し、M&Aの専門会社に相談。
- D社がC院の収益状況を分析し、買収価格を決定。
- C院のスタッフはD社の雇用条件を確認し、ほぼ全員が継続勤務。
- D社がC院の設備を活用しつつ、ブランド戦略に基づいたリニューアルを実施。
- D社の経営ノウハウを活用し、施術メニューやマーケティング施策を強化。
成功のポイント
- 経営のスムーズな引き継ぎ:スタッフの雇用継続により、患者の安心感を維持。
- 大手のブランド力活用:集客力や信頼性が向上し、売上増加に成功。
- 設備の有効活用:既存設備を維持しながら、必要なリニューアルを実施。
3. 後継者不在の整骨院の事業承継M&A
背景
E院長は、開業から20年が経ち、引退を考えていました。しかし、後継者がいないため、閉院せざるを得ない状況でした。そこに、地域内で成長を続けるF整骨院が関心を持ち、M&Aが検討されました。
M&Aのプロセス
- E院長が後継者不在のため、M&Aによる事業承継を希望。
- F整骨院がE院の経営状況や患者層を分析し、買収を決定。
- M&A後、E院のスタッフはF整骨院の一員として雇用継続。
- ブランド統合を進めながら、患者に向けた周知活動を実施。
- 施術方法や治療方針を統合し、サービス品質を向上。
成功のポイント
- 地域内での承継により患者の流出を防止。
- スタッフの雇用継続による安心感の提供。
- サービス向上を目的とした統合戦略の実施。
4. まとめ
整骨院・治療院のM&Aは、単なる売却・買収ではなく、患者やスタッフの安心感を確保しながら進めることが重要です。成功するM&Aの共通点として、
- 目的を明確にすること(事業拡大・経営難の打開・後継者問題の解決など)
- 患者の信頼を維持すること(院長交代の丁寧な説明、スタッフの継続雇用)
- 適正な価格査定を行うこと(患者数、売上、地域性などの分析)
- M&A後の統合作業を慎重に進めること(ブランド統合、施術方法の標準化)
といった点が挙げられます。
M&Aは整骨院・治療院の未来を大きく左右する重要な決断です。事例を参考にしながら、適切な進め方を検討し、成功するM&Aを実現しましょう。
整骨・治療院のM&A専門サポートチームがある弊社では、お話をお伺いしながら現実的なM&A戦略を一緒に検討することが出来ます。是非一度お問い合わせください。
整骨院のM&Aに関する詳しい情報は、こちらをご参照ください。
1.整骨院/治療院のM&Aトップへ
2.整骨院/治療院のM&Aの特徴
3.整骨院/治療院のM&Aのメリット・デメリット
4.整骨院/治療院のM&Aの注意点
5.整骨院/治療院のM&Aの譲渡対価の相場観
6.整骨院/治療院のM&A事例
7.整骨院/治療院のM&Aの失敗事例
8.整骨院/治療院のM&Aの2024年の振り返り

宮澤 駿
(株)船井総合研究所 シニアコンサルタント
大学卒業後、2014年に株式会社船井総合研究所へ入社。「院長を経営者に」を大切にし、鍼灸整骨院業界の経営コンサルティングに従事。現在は、船井総研あがたFASを兼務し、約10年間のコンサルティングで得た経験と知見を元に鍼灸整骨院業界の市場規模拡大のためM&A・事業承継に注力している。

宮澤 駿
(株)船井総合研究所 シニアコンサルタント
大学卒業後、2014年に株式会社船井総合研究所へ入社。「院長を経営者に」を大切にし、鍼灸整骨院業界の経営コンサルティングに従事。現在は、船井総研あがたFASを兼務し、約10年間のコンサルティングで得た経験と知見を元に鍼灸整骨院業界の市場規模拡大のためM&A・事業承継に注力している。