整骨院や治療院のM&Aが活発になりつつある現在、多くの経営者が「自院を売却する際の適正価格はどの程度なのか?」という疑問を抱えています。M&Aにおける譲渡対価は、さまざまな要因によって決まるため、単純な計算では導き出せません。
本記事では、整骨院・治療院の譲渡対価の相場観について詳しく解説し、どのような要素が価格に影響を与えるのかを明らかにします。
1. 整骨院/治療院のM&Aにおける譲渡対価の決定要素
M&Aの譲渡対価を決定する際には、以下の要素が考慮されます。
売上・利益
最も基本的な評価基準は、売上と利益の水準です。一般的に、年間売上の0.5倍〜1.5倍が譲渡価格の目安となります。ただし、利益率が高い院は評価が高まりやすく、売上規模が大きい場合にはより高い倍率が適用されることもあります。
- 年間売上1,000万円の院 → 譲渡価格500万円〜1,500万円
- 年間売上5,000万円の院 → 譲渡価格2,500万円〜7,500万円
また、売上だけでなく営業利益(EBITDA)も重視されるため、利益率が低い院は売上の割に評価額が下がる傾向にあります。
患者数とリピート率
整骨院や治療院は、リピート患者が経営の安定性を左右します。そのため、患者の定着率が高い院ほど評価額が高くなります。
- リピート率80%以上 → 高評価(譲渡価格が上昇しやすい)
- リピート率50%以下 → 低評価(譲渡価格が下がる可能性)
また、月間の新規患者数が多い院も、将来の売上成長が見込めるため、好条件で譲渡が行われることが多いです。
立地と競争環境
立地条件は、M&Aの評価に大きく影響を与える要素です。
- 駅前や商業施設内の院 → 評価が高い
- 住宅街の奥まった場所の院 → 評価が低い
- 競合が少ないエリア → 譲渡価格が上がりやすい
- 競争が激しいエリア → 譲渡価格が低くなりがち
都市部の人気エリアでは、同じ売上規模の院でも譲渡価格が高くなる傾向があります。
スタッフの有無と定着率
スタッフの有無とその定着率も重要な評価ポイントです。M&A後に院を引き継ぐ際、既存スタッフが継続勤務する場合は、買い手の負担が軽減されるため、高評価につながります。
- スタッフが全員継続勤務 → 評価が上がる
- スタッフの離職率が高い → 評価が下がる
- 院長1人で運営(スタッフなし) → 院長交代による患者流出リスクがあるため評価が下がる
設備・内装の状態
施術ベッドや治療機器、待合室の清潔さなど、設備や内装の状態も価格に影響を与えます。設備が老朽化している場合、新たに投資が必要になるため、譲渡価格が下がる要因になります。
- 最新設備を導入済み → 高評価
- 設備が老朽化している → 低評価
- 特別な施術機器がある(例:ハイボルテージ治療器) → プラス評価
2. 一般的な譲渡対価の相場
前述した要素を踏まえた上で、一般的な整骨院/治療院のM&A譲渡対価の相場を以下に示します。
売上規模 | 営業利益率 | 立地・競争環境 | 評価額の目安 |
1,000万円 | 10% | 住宅街・競争多 | 500万~800万円 |
3,000万円 | 15% | 駅前・競争少 | 1,500万~3,000万円 |
5,000万円 | 20% | 商業施設内・独占エリア | 3,000万~7,500万円 |
このように、売上や立地条件、利益率によって譲渡対価の相場は大きく変動します。
3. M&A成功のためのポイント
M&Aを成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
財務データの透明性を確保する
売上や利益の実績を明確にし、信頼できるデータを提供する
患者の流出リスクを低減する
院長交代の際、一定期間の引継ぎ期間を設ける
設備や内装を適切に維持する
設備の老朽化を防ぎ、買い手にとって魅力的な環境を整える
スタッフの雇用継続を確保する
M&A後もスタッフが安心して働けるよう、条件を整える
まとめ
整骨院・治療院のM&Aにおける譲渡対価の相場は、売上や利益、患者数、立地、スタッフの状況などさまざまな要素によって決まります。単純な売上倍率だけでなく、経営の安定性や成長性を考慮した評価が求められます。
適正な価格でM&Aを成功させるためには、適切な準備と情報収集が欠かせません。譲渡を検討している方は、本記事の内容を参考にしながら、慎重に進めていきましょう。
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