本稿では、住宅業界・リフォーム業界におけるM&Aの特徴を5つご紹介できればと思います。
住宅業界・リフォーム業界でも第三者承継が増えております。その中でも「グループインしてよかった。会社がさらに成長した」と仰っていただく譲渡オーナー様が多くいらっしゃいます。そうするためにも、まずは住宅業界・リフォーム業界のM&Aの特徴を抑えていただければと思います。
1. 後継者難+現場過多=“需要過多型”の買い手市場
新築着工数がピーク時の6割まで縮小する一方、築30年以上の既存住宅は約1,400万戸へ膨張しています。外壁塗装・水回り改修などの問い合わせは前年比2ケタ増が続くものの、経営者の高齢化と職人不足が業界内でも目立っています。
そこに追い打ちをかけるように「後継者不在」というケースが多発しています。これは住宅業界・リフォーム業界だけでなく建設業界全般で見たときの話なのですが、代表者の約44%が60歳を過ぎており、業界内では約6割が後継者不在という調査もございます。
建設業は全体で約48万社ありますから、その内約126,000社が代表者の高齢化・後継者不在という状況になっています。
そこで、そういった悩みを抱える会社が譲渡先を探すケースが急増してきました。
とりわけ、社長が60代後半に差しかかるタイミングで「従業員を守るための譲渡」を選択し、案件探索から成約まで6か月以内に完了するようなディールも散見されます。
2. 買収価値は「顧客CRM×職人網×許認可」の三点セットで見る
建設業界におけるM&Aで、財務情報以外によって企業価値が大きく異なります。
①10年以上蓄積されたOB顧客情報と定期点検履歴
②常用・手間請を含む多能工職人ネットワーク
③建設業許可や住宅瑕疵保険といったインフラ
例えば、某外壁塗装業者を買収した事業者は「自社商品の購入時に取得した顧客DBと職人網」を掛け合わせ、クロスセル比率を6%→17%へ引き上げた事例もあります。住宅業界・リフォーム業界ならではの収益拡張モデルですね。
3. EVを左右するのはEBITDA倍率より“工事件数×粗利率”
M&AではPBR・EBITDAなどが議論されますが、リフォーム業は高付加価値工事を何件捌けるかでキャッシュ創出力が決まります。例えば年間500件施工・粗利35%の会社と、施工700件・粗利25%の会社は規模が似ていても評価額が違います。実務では「粗利率×OBリピート率」を指標化されます。
確認すべき決算書外のKPIが多い点こそ、住宅業界・リフォーム業界M&Aの特徴と言えます。
4. 異業種参入が加速
「リフォーム会社がリフォーム会社を買収する」「リフォーム会社が塗装会社を買収する」といったケースよりも、ハウスメーカー・住宅会社・家電量販店・ホームセンターがM&Aを行うケースが増えています。
これは、上記のような業界の企業が自社製品の販売数量を底上げする“垂直統合”を推進しているからです。これにより「販売チャネル⇒施工⇒アフター」の一貫体制を大手が構築し、人口減少が進む日本でも生き残るための戦略を立てています。
5. キャッシュフローは“梅雨・冬場の谷”で試される
リフォーム工事は梅雨時期・真夏期・真冬期に工期が延び、売上が2割以上落ち込むケースがあります。
私が過去に、とある塗装会社様にコンサルティングを手掛けていた時は「中嶋さん、うちの地域では11~3月は一切施工ができないので、8か月で年間売り上げを立てる事業計画でお願いできませんか?」と言われたことがあります。
この「谷間」でキャッシュアウトが発生しやすいのです。経験豊富なファンドは「運転資金3か月分の現預金保持」をクロージング条件に入れ、工事着工前入金率を高めるDX施策(電子契約・オンライン決済)を同時実装するケースもあります。
経営者様が安心して事業承継・第三者承継に取り組んでいただけるよう、寄り添ったサービスが必要だと考えております。総合的な経営判断としてセカンドオピニオンサービスも行っております。建設業に特化したM&Aコンサルタントが対応させていただきます。買収によって事業をさらに推進したい・第三者承継を行いたい、という経営者様も、お気軽にご相談ください。
住宅/リフォーム業のM&Aに関するより詳しい情報は、下記の記事をご参照ください。
1.住宅/リフォーム業のTOP
2.住宅/リフォーム業のM&Aの失敗事例と注意点
3.住宅/リフォーム業の業界再編と主な目的
4.住宅/リフォーム業のM&Aのポイント
5.住宅/リフォーム業のM&Aの特徴
6.住宅/リフォーム業M&Aの譲渡対価の相場観
7.住宅/リフォーム業の社長に必ず考えて欲しい第三者承継