今回、住宅リフォーム事業を営む夢工房様が、同業を営むマエダハウジング様へ株式譲渡されたことについて、夢工房 代表取締役の成相様にお話をお伺いさせて頂きました。
夢工房様の会社の成り立ちから教えてください。
成相氏:夢工房は前社長が1992年に設立した会社で、当時は大型建築の施工図作成業務を行っており、以前私が勤めていた会社から夢工房に業務を依頼していたので、私は前社長とはその時からお付き合いがありました。
成相社長が引き継いだ経緯について教えてください。
成相氏:BtoCの業務、お客様の顔が直接見れる仕事がしたいとの思いやこれから戸建住宅のリフォーム事業が伸びるだろうなという予測もあり、2014年に夢工房に入社いたしました。山田専務も同じタイミングで入社しました。
その時から社長を引き継ぐという話はあったのですが、1年経った2015年に株を譲ってもらい、代表取締役に就任いたしました。最初は「工務店の仕事を前社長と一緒にやっていこう」と話していたのですが、「社長を譲るから自由に取り組んでいいよ」と言われ、株を承継して頂いたという経緯です。ただ最初は経営が全く分からず、不安はありました。
引き継いでからどのように経営してこられましたか。
成相氏:今思えば運が良かったのかなと思います。山田専務とよく最近話をするのは「二人だったから良かった」ということです。二人のタイプが違っていて、新しいことを思いつく私と、実践力のある山田専務。お互いの能力の違いによって、夢工房はここまで成長したのだと思います。
また、もともと代表を引き継いだ当社は、新築事業が中心でしたが、ある時、船井総研さんのおかげでリノベーションに出会ってそこに特化しようと決断できたことも良かったと思います。その決断が早かったことが順調な会社の成長のきっかけだと思います。
リノベーションに特化したのは引き継いで何年後ですか。
成相氏:社長を引き継いで4年程でリノベーション事業に特化しました。最初は4名で、新築を年間4棟やっていたのですが、今後も続けていくことは中々難しいのではないかと思っていました。特に競合も多く、お客様から夢工房を選んでもらい、実際に来てもらうのは難しいのではと思っていました。
そこで、リノベーションに特化することが他社との差別化になり、市場的にもニーズが大きくなるのではないかと考え取り組みました。また当時リノベーションはメジャーではなかったのですが、船井総研さんのおかげでリノベーションに出会うことができました。
弊社でご支援させて頂いたとはいえ、リノベーションに特化することは難しかったのではないですか。
成相氏:そうですね。リノベーションは家を壊してみて分かるということもありますし、例えば家を壊してみて初めて、取り除くことができない柱が出てきて、図面を描きなおさなければならないこともあります。その場合は間取りから変えないといけなかったりしますので、きちんとお客様に説明できていないとクレームに繋がります。体感ギャラリーやモデルハウスも最初に見ていただくことで、リスクを先にお伝えすることもできています。
ここからはM&Aについてお伺いできればと思います。今回、M&Aを検討された理由やきっかけを教えてください。
成相氏:それは、足立さんです。夏ごろに電話を頂いたことがきっかけです。それまでM&Aは興味が無い訳ではなかったのですが、全く考えていませんでした。ただ、子ども達は会社を継ぐ意思はなく、後継者候補の山田専務とともに右腕として経営してくれればと期待をしていた従業員の方が、足立さんとお会いする直前に退職されたということもあり、承継については潜在的な悩みがありました。
一度、以前に船井さんではない別の仲介会社の方に株価算定を実施してもらったことがあるのですが当時株価があまりつかなかったということもあり、M&Aは頭から離れていました。
今回は、会社も成長したので、とりあえず今の株価を聞いてみようかなと思い、足立さんの話を伺いました。自分自身、このまま株を持っていても大変かなという思いはありましたので、良いきっかけだったと思っています。

承継以外に、経営で悩まれていたことはございましたか。
成相氏:組織面、組織作りに課題がありました。夢工房は若い従業員の方が多く、その方たちが幹部に成長するまでには時間がかかります。また山田専務の右腕となる人材を育てていかないといけませんが、どうやっていけばいいのかなど組織作りにおいて課題を感じていました。若くても皆さん優秀でよく会社に貢献してくれていますが、経営はまた別の角度での能力向上が必要になります。そういった人材を育てていくということが私自身課題でした。
また、会社が廃業になってしまうと過去工事をお願いしてくださった方々に迷惑をかけてしまいます。そのような課題があったので、将来のことを考えた時に結果的にM&Aという選択肢が良かったのではないかと思います。
今は譲渡してから約2か月が経ち、会社を維持していかないといけないという大きなプレッシャーから少し解放されました。もちろん、譲渡して終わりではないのでこれから更に会社の成長に向けて励んでいこうと思います。
奥様はM&Aについて何か仰っていましたか。
成相氏:特に何も言わず、私の選択を尊重してくれていました。また私自身の個人保証が今回外れたので、これまで会社に何かあった時のために役員報酬を貯蓄に回していましたが、これからはその必要もなくなり、その点は喜んでくれていると思います。
M&Aに関して不安に思っていたことはありましたか。
成相氏:報道番組や新聞でM&Aによるトラブルを見て、やはり少し不安はありました。また、自分自身のモチベーションが、株を譲渡すると下がってしまうのではないかという不安もありました。
今のところ約2か月経ってモチベーションは下がっておらず、会社の成長に向けて事業拡大やエリア拡大を検討していますが、当初は社長を継続して会社に残っても、譲受先から幹部や役員が派遣され会社をどんどん変えていかれるのではないかという不安もありました。
それがM&Aなんだろうなと思っていた部分もあったのですが、マエダハウジングの前田社長は、私の意向を汲み取りながら今後の方針を検討してくださいます。
M&Aの実際の進み方はいかがでしたか。
成相氏:株価の評価額が3~4年で大きく上がったことは嬉しかったのですが、(譲受候補先からの)オファーが来ない可能性もあった中で複数社とご面談の機会を頂戴できたので安心しました。また、実際に進めていく中で「本当にこの決断で大丈夫なのか」、「自分でやっていた会社を人に譲ってもいいのか」というのは自問自答していました。
ただ、会社は自分のものではないので、従業員やお客様のことを考え、会社を維持していくという事を考えたら、M&Aを選択してよかったと思います。
M&Aのお話を進めていく上で、船井総研の立ち位置はどうでしたか。
成相氏:正直に言うと、おんぶにだっこでしたね。M&Aは仲介をしてくれる方がいないとなかなか話が進まないでしょうし、銀行さんなどに間に入ってもらう選択肢もあったのですが、業界に知見のある船井さんにお願いしてよかったと思っています。
お相手との出会いについて、何を重要視したのか、どうやって選んだのか、決め手などを伺わせてください。
成相氏:夢工房を一番成長させてくれて、お互いで親和性を発揮できるお相手がマエダハウジングさんだと思い選ばせて頂きました。他の候補先の方々も、上場されている会社や異業種で多角的に展開されている方など、将来的に一緒に成長していける未来は描けましたが、一番シナジー効果を得られるのがマエダハウジングさんだと思いました。
マエダハウジングさんは同業で元々お付き合いもあり、リフォームについては業界でもトップクラスですし、夢工房としてこれから取り組もうと考えていた不動産業のノウハウも豊富にあります。また、課題だった組織作りにおいても、前田社長と一緒に改善に取り組めるのではないかということもプラスの判断材料でした。そういったことも含めてご縁なのかなと思います。
M&Aを実際に進めていく中で大変だった部分や不安だったところはいかがですか。
成相氏:デューデリジェンスに向けての書類の準備は大変でした。まだ会社を引き継いでそんなに長くないのですが、過去の資料などを探して集めることが大変でした。
M&A実施前と実施後で夢工房としての展望は変わりましたか。
成相氏:それは変わりました。マエダハウジングさんも拡大し、夢工房でも拡大していくということが重要だと思っています。また資金面のプレッシャーは減ったので、アクティブに戦略を立てやすくなったと思います。今後エリアを拡大していこうと思えば実践可能ですし、事業拡大も検討しやすくなりました。マエダハウジングさんも様々な業種をグループに迎え入れていますので、グループ間でノウハウを共有することも可能です。
組織面では、まだ決まってはいませんが今後はグループ合同で入社式を実施する可能性もあります。そうなった場合は、夢工房の新入社員に社会人としての心得などをグループとして共有いただけるのかなと思います。
M&Aを振り返ってどうでしたか。
最初に足立さんとお話してから、あっという間だったと思います。あのタイミングでお話を頂いてなければ、自分でM&Aを検討するとこともなかったと思いますので、本当に良かったのかなと思っています。またマエダハウジングさんとのご縁があったことも本当によかったです。
承継で悩まれている社長様に何か助言があれば教えてください。
成相氏:M&Aは承継問題の解決策になるということもそうですが、会社の成長という側面においても一つの選択肢になってくると思います。提携後が新たなスタートになりますので、この選択が正解と言えるように私自身しっかりとこれからも励んでいきます。
最後に、私のこの経験が皆様の考える一つのきっかけとなれば幸いです。
