住宅/リフォームの業界再編とM&Aの主な目的

本稿では住宅業界・リフォーム業の業界再編とM&Aのポイントについて述べます。
今、住宅業界・リフォーム業界における第三者承継が活発になっております。事実、弊社へのご相談も、3~4年前と比べるとかなりの件数が増えております。

2023年12月、大和ハウス工業のHPに衝撃のニュースが掲載されました。「株式会社ナサホームの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」と銘打ち、業界に激震が走った記憶を今でも覚えています。
同社は独立系のリフォーム会社としても全国トップクラスの売上を誇り、業績を伸ばしていました。そこを、住宅業界トップクラスの大和ハウス工業社が買収。「業界再編」の波が来ています。

新設住宅着工戸数は頭打ち。一方で、築30年以上のストックが全国で約1,400万戸に膨張し、外壁・水回り・断熱改修など“攻めのリフォーム需要”が伸びています。
ところが、人手不足で受注をさばき切れない地場工務店は多く、好採算のアフター市場を奪い合う構図が顕在化。その隙を突いて、エディオンが外壁塗装の麻布を買収するなどを行い(2024年3月)、家電販売客をリフォームへ送り込むクロスセル体制を構築しました。

住宅/リフォーム業界のM&Aの主な目的

多くの住宅業界・リフォーム業界のM&Aに携わってきた中で、主な目的を3つに分類してみました。

  1. 顧客に提供する商品拡大
     例えば、住宅会社がリフォーム会社を買収する・リフォーム会社が塗装会社を買収する、などです。「自社のOBにリフォームを販売していきたい」「住宅塗装の販売が弱いから買収により補いたい」など、住関連の取扱商品を増やすため。

  2. エリア拡大
     営業所を1拠点ずつ開設するより、中小の優良店を抱える方が早い。とくに地方は“顔パス文化”が根強く、買収先の看板が新規参入リスクを劇的に下げます。

  3. 人材・施工体制の即時確保
     これは建設業界全般に言えることですが、人材の確保です。第三者承継を行う建設業界の経営者様にはよくお話いただくのですが、「え、うちってこんなに高くなるの?」です。
    営業利益や純資産がなかったとしても、施工管理技士が複数名在籍している・多能工職人が複数在籍している、といったパターンであれば、それを求める買い主から「財務状況以上の企業価値」として見てもらえることもあります。

注意したい3つのポイント

船井総研あがたFASでは、「とにもかくにも、M&Aの成約だけではなく、成約後に、譲渡されたオーナー様にとっても、譲り受けた会社にとっても、働いている社員さんにとっても、良かったと思われるM&Aをお手伝いする」という方針でやっております。だからこそ、住宅・リフォーム業界のM&Aでは、合意締結前にこの3点は目に留めて頂きたいです。

  • 施工品質(買い手目線の落とし穴)
     住宅業界・リフォーム業界の方には釈迦に説法ですが、施工品質の確保による顧客のOB客化はマストです。優秀な会社ほど、OBからの年間リピート率が高くなります。
    にも関わらず、「新築の工期が遅くクレームになっている」「リフォームにおける施工トラブルが発生している」「目に見えたクレームにはなっていないが、不満が募りサイレントクレームになっている」≒OBリピートの売上につながらない、などです。買収前には必ず、OBリピート率を見るのが良いかと思います。

  • 従業員の雇用を守ってくれるか(売り手目線の落とし穴)
     過去、忘れられないエピソードがあります。M&A終了後、買い手企業がもともといた従業員の過半数に冷遇を行い、1年以内にすべての従業員が離職してしまったことです。
    ここでポイントなのが「リストラ」ではないのです。給与を下げたり役職を下げたり、社内での業務を渡さなかったり。そう、その会社が抱える職人・OB顧客だけが狙いだったのです。これでは、売り手オーナー様も「なぜこんなことに・・・」と思わざるを得ません。

  • アフター保証債務の過小計上(買い手目線の落とし穴)
     住宅瑕疵保険や塗膜保証など、引き継ぐ潜在債務の精査が甘いと、買収後に赤字化する地雷案件に変身します。デューデリ段階で保証残存期間とコール発生率を必ずサンプリングしましょう。

船井総研ではオーナー経営者様に寄り添って、総合的な経営判断としてセカンドオピニオンサービスも行っております。建設業に特化したM&Aコンサルタントが対応させていただきます。買収によって事業をさらに推進したい・第三者承継を行いたい、という経営者様も、お気軽にご相談ください。
住宅/リフォーム業のM&Aに関するより詳しい情報は、下記の記事をご参照ください。

1.住宅/リフォーム業のTOP
2.住宅/リフォーム業のM&Aの失敗事例と注意点
3.住宅/リフォーム業の業界再編と主な目的
4.住宅/リフォーム業のM&Aのポイント
5.住宅/リフォーム業のM&Aの特徴
6.住宅/リフォーム業M&Aの譲渡対価の相場観
7.住宅/リフォーム業の社長に必ず考えて欲しい第三者承継

中嶋 翔一

(株)船井総合研究所 マネージングディレクター

三重県四日市市出身、電気工事会社を経営する父を持つ。2017年、㈱船井総合研究所入社。現在は専門工事業向けコンサルティング部門の統括を行っている。2025年より株式会社船井総研あがたFAS兼任で、「建設業の業界再編と成長」に向けてM&A事業にも従事している。

中嶋 翔一

(株)船井総合研究所 マネージングディレクター

三重県四日市市出身、電気工事会社を経営する父を持つ。2017年、㈱船井総合研究所入社。現在は専門工事業向けコンサルティング部門の統括を行っている。2025年より株式会社船井総研あがたFAS兼任で、「建設業の業界再編と成長」に向けてM&A事業にも従事している。