【物流業界・倉庫業界M&A】2024年以降の時流・今後・動向・ポイントを解説
- 物流・倉庫業 M&Aレポート
物流・トラック運送業界は今、かつてないほどの変革期を迎えています。2024年問題に代表される労働環境の大幅な変化や、燃料費の高騰、そして慢性的なドライバー不足。これらの課題に直面している経営者の方々にとって、企業の成長や存続をどう実現するかは、今後の経営戦略の鍵を握っています。
この厳しい市場環境の中で、M&A(企業の合併・買収)が注目されていることをご存知でしょうか?中小規模の物流企業が活用することで、事業の拡大、労働力の確保、さらには業界再編を通じた競争力強化を実現しています。本記事では、物流業界におけるM&Aの最新動向や、成長を続ける企業がどのようにM&Aを成功させているのか、その具体的な戦略を詳しく解説いたします。今後の事業のあり方を見直し、次の一手を考える上で、必ず参考になる情報が詰まっています。
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■物流・トラック運送業界の動向と2024年問題
物流業界は、近年、急速に成長しているEC市場に支えられ、これまで以上に活況を呈しています。特にコロナ禍の影響により、オンラインショッピングの需要が急増し、それに伴って物流企業の役割が一層重要となりました。外出自粛やリモートワークの拡大によって、消費者の生活スタイルが変化し、多くの消費活動がインターネットを通じて行われるようになりました。この変化により、物流業界の需要はピークに達し、配送業務の重要性がかつてないほど高まりました。
しかし、この急成長の一方で、慢性的なドライバー不足や労働環境の悪化といった課題が浮き彫りになっています。特にドライバーの長時間労働や過酷な労働条件が大きな問題となっており、このような背景を受けて登場したのが、2024年問題です。
2024年問題とは?
2024年問題とは、働き方改革関連法に基づき、自動車運転業務の時間外労働に対する上限規制が厳格化される問題を指します。2024年4月以降、ドライバーの年間の時間外労働は960時間に制限され、これを超える労働には厳しい罰則が適用されることになります。具体的には、違反した企業には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。この規制は物流業界全体に大きな影響を与え、特に長距離輸送に依存している企業にとっては、運行スケジュールや労働管理体制の見直しが必須となるでしょう。
この規制は、業界全体で労働環境の改善を促すものであり、ドライバーの負担を軽減することを目的としていますが、一方で企業にとっては大きな負担となります。規制を遵守しつつ、業務を回すためには、労働時間の短縮に対応した新たな経営戦略や業務体制の構築が求められます。
ドライバーの拘束時間の減少
特に長距離輸送を行う物流企業にとって、従来の運行形態の維持は困難になります。これまで、ドライバーは長時間労働に依存し、多くの距離を一日でカバーしていましたが、2024年の規制によりそのような運行スタイルは大幅に制限されます。例えば、以前は1日でカバーできていた輸送距離が短縮され、これにより配送時間の遅延が発生する可能性があります。特に、「時間厳守」が求められる顧客との契約においては、納期の遅延がビジネス上の信頼低下や契約解除に繋がるリスクもあるでしょう。
ドライバーの拘束時間を減らすためには、企業は輸送効率を改善する新たな戦略を立てる必要があります。例えば、複数の拠点を設けた中継輸送や、運行ルートの最適化が考えられます。中継拠点を設けることで、ドライバーの労働時間を分割し、長距離を一人で運行する負担を軽減することができます。しかし、これには新たな設備投資が必要であり、資金的な負担が増加します。また、ルートの最適化に関しては、AIやIoTを活用した輸送管理システムを導入することも有効ですが、これも中小企業にとってはハードルが高いと言えます。
売上・利益の減少
ドライバーの労働時間制限は、直接的に輸送量の減少を招き、それに伴い売上や利益の減少が避けられません。特に中小規模の物流企業にとっては、ドライバーの増員や新たな設備の導入に対する資金調達が難しく、限られたリソースの中で効率を最大化しなければならないという厳しい状況に直面しています。
このような状況では、運賃の引き上げを検討することが一般的ですが、物流業界では価格競争が激しいため、簡単に値上げを行うことはリスクが伴います。特に、大手のクライアントに対して値上げを提示すれば、他社との価格競争に敗れて取引を失う可能性があります。さらに、燃料費の高騰や保険料の増加といった外部要因も、業績に悪影響を及ぼしており、これに対する対策を講じなければ、経営の健全性が損なわれるリスクが高まっています。
倒産リスクの増加
これにより、企業の経営が立ち行かなくなり、最悪の場合、倒産に至るケースが増加しています。物流業界全体での倒産件数は近年増加傾向にあり、特に中小企業では、資本力の弱さからこうした外部要因に対する耐性が低いため、厳しい局面に立たされている企業が多く見られます。
ドライバーの収入減少
労働時間の短縮は、ドライバーにとって収入減少の直接的な要因となります。特に長距離輸送を担当するドライバーにとって、残業代は収入の大きな割合を占めており、働き方改革によって残業時間が減少すれば、その分の収入も減少することになります。この収入減少は、ドライバーの生活に直接的な影響を与え、生活の不安定化が進むことが予想されます。
離職率の上昇と労働力不足の深刻化
収入の減少により、ドライバーの離職率が増加する可能性が高くなります。特に、長時間労働が前提の働き方に慣れていたドライバーにとって、急激な収入の減少は大きな不安材料となるため、他業界への転職を考えるドライバーが増えるでしょう。このような状況が進行すれば、物流業界全体の労働力不足がさらに深刻化し、企業はドライバー確保のためにより多くのコストを費やさざるを得なくなります。
需給の逆転
労働力の減少に伴い、供給力が需要に追いつかなくなるという事態が現実のものとなっています。特に、2030年までに全国で約35%の貨物が輸送できなくなるという試算もあります。これにより、物流業界では、今後、輸送力の確保が重要な経営課題となるでしょう。
効率的な運送体制の構築
需給の逆転に対応するため、企業はより効率的な運送体制を構築する必要があります。例えば、AIやIoT技術を活用した配送管理システムの導入や、自動運転技術を活用した車両の導入などが考えられます。これらの技術は、ドライバーの負担を軽減し、効率的な運行を実現する手段として期待されていますが、導入には莫大なコストがかかり、特に中小企業にとっては大きな投資が必要です。
■物流・トラック運送業界のM&A背景、傾向
物流業界におけるM&A(企業の合併・買収)が急速に増加しています。その背景には、オーナーの高齢化や後継者不足が主要な要因として挙げられます。特に、1990年代に制定された「物流二法」をきっかけに設立された企業のオーナーは、現在60代に達しており、引退を視野に入れた経営戦略が求められています。また、物流業界は中小企業が多く、後継者不在のためにM&Aを選択するケースが増加しています。
オーナーの高齢化と後継者不足
物流業界のオーナー層は他の業界に比べて高齢化が進んでおり、後継者が見つからないことが多いです。特に中小規模の企業では、家族経営が主流であり、従来は子供や親戚が後を継ぐことが一般的でした。しかし、現在では物流業界特有の過酷な労働環境や長時間労働に対する若い世代の敬遠が強まり、家業を継ぐことを望まないケースが増えています。これにより、オーナーは事業継続のための選択肢として第三者に事業を譲渡することを検討せざるを得ない状況に追い込まれています。
労働環境と業界の実態
物流業界の労働環境は、長時間労働や過酷な作業条件が特徴であり、ドライバー不足も深刻化しています。若い世代がこの業界を避ける傾向は年々強まっており、後継者不足がM&Aを選択する大きな要因となっています。特に、規模が小さい家族経営の企業は、次の世代に引き継ぐための労働環境改善や、適切な労働管理を行う余裕がないことが多く、この問題が事業譲渡を急速に進める要因となっています。
労働力不足とドライバーの高齢化
物流業界における労働力不足は深刻な問題です。特に、地方の中小企業では若年層のドライバー確保が難しく、既存のドライバーの高齢化が進んでいます。日本国内の物流ドライバーの平均年齢は50代後半に達しており、近い将来、定年退職を迎えるドライバーが急増する見通しです。ドライバー不足の背景には、厳しい労働条件や低賃金の問題があり、これが若者の参入を阻む一因となっています。
M&Aによる人材確保と事業の効率化
こうした状況を背景に、企業は人材の確保や事業の効率化を目的として、M&Aを活用するケースが増えています。例えば、ドライバー不足に悩む企業が、他社を買収してその従業員を引き継ぐことで、急激な労働力減少に対応することができるようになります。また、M&Aによって他社の拠点や物流ネットワークを取り込むことで、運行効率を高め、経営の安定化を図る企業も増えています。特に地方の物流企業にとって、地理的に広範な運送網を確保することが困難なため、既存の強固なネットワークを持つ企業とのM&Aが非常に有効です。
物価高騰と経営難
近年の燃料費高騰や物価上昇も、物流業界に大きな影響を与えています。燃料費は物流コストにおいて非常に大きな割合を占めており、これが上昇することで、企業の利益が圧迫されます。さらに、物価上昇が継続する中、物流業者はその負担を顧客に転嫁するのが難しく、結果として収益性が低下します。特に中小企業は、燃料費の変動に耐えるための資金的な余裕が乏しいため、経営の安定を維持することが難しくなっています。
M&Aによる規模の経済の活用
こうした経済的な圧力に対処するため、多くの企業は規模の経済を活かすためにM&Aを選択しています。複数の企業が統合することで、燃料や設備の購入に対するコストを削減し、効率的な運営を実現することが可能です。特に、燃料費の上昇が企業収益に直結する物流業界では、こうしたコスト削減策が非常に重要です。また、M&Aにより規模を拡大することで、取引先との価格交渉力が強化され、より有利な条件での取引が可能になる場合もあります。
2024年問題への対応
2024年には働き方改革関連法に基づく時間外労働規制が強化されることが決まっており、これが物流業界に大きな影響を与えることが予想されています。特に長距離輸送を行っている企業にとっては、従来の労働時間や運行体制を維持することが難しくなり、労働時間の短縮に対応した新たな運行体制の構築が必要です。
中継拠点の確保とM&Aの活用
長距離輸送の制約に対応するためには、中継拠点を設置し、輸送効率を高めることが一つの解決策となります。しかし、適切な土地を見つけ、そこに拠点を設置することは簡単ではありません。また、これに伴う設備投資やシステムの整備には多大なコストがかかります。このような背景から、他社との連携やM&Aを通じて、既存の拠点や設備を利用する動きが加速しています。
中継拠点の運用には、高度な管理システムや効率的な人員配置が必要です。これらの導入には専門的な知識と資金が求められるため、M&Aによって、既にこうしたインフラを持つ企業を取り込むことでコスト削減を図る動きが増えています。特に、物流システムの高度化が進む中、最新のデジタル技術や物流管理システムを導入している企業とのM&Aは、企業の競争力を大きく向上させる効果があります。
不測の事態に備える動き
近年のコロナ禍や、自然災害の頻発など、不測の事態に対する備えとして、企業はリスクを分散させる戦略を求めています。物流業界では、特定の地域や荷主に依存したビジネスモデルを持つ企業が多く、この偏りが大きなリスクとなる可能性があります。たとえば、ある地域が自然災害に見舞われた場合、物流が止まってしまうことがあり、特定の荷主に依存している場合は、その荷主の業績に左右されるリスクもあります。
リスク分散のためのM&A
このリスクを軽減するために、M&Aを活用して新しい市場や多様な荷主を取り込むことが注目されています。たとえば、異なる地域に拠点を持つ企業と統合することで、災害リスクの分散が図れます。また、複数の荷主を持つことで、一社の業績に依存しない安定的なビジネス基盤を築くことができます。さらに、複数の貨物種類を取り扱うことで、特定の市場の影響を受けにくい体制を構築できるため、こうした多角化戦略が重要となっています。
■倒産件数とM&A件数の推移
近年、物流業界における倒産件数は急速に増加しています。2020年以降、新型コロナウイルスのパンデミックによって市場環境が大きく変動したことが背景にあります。消費者のオンラインショッピング利用が急増し、物流の需要は拡大しましたが、同時に、燃料費の高騰や人手不足といった業界特有の問題が深刻化しました。
特に、2022年から2023年にかけては、燃料費の急激な上昇が企業経営に大きな影響を及ぼしました。帝国データバンクの調査によれば、物流企業における燃料費のコストは全体の運営コストの大きな部分を占めており、これが増加したことで、利益率が圧迫される企業が続出しました。倒産に至る主な要因として、燃料費の高騰に加え、労働力不足によるコスト増も影響しています。
2024年には、倒産件数がリーマンショック後の最大件数を超える可能性が高いと予測されています。リーマンショック後の2009年には物流業界で374件の倒産が記録されましたが、2024年の倒産件数はこれを上回る見込みです。業界全体の供給力が維持できなくなり、特に中小企業においては、燃料費、労働力、運営コストの三重苦が経営の足枷となっており、資金繰りが限界に達している企業が増加している状況です。
倒産の要因:燃料費の高騰と労働力不足
倒産の大きな要因として、まず燃料費の高騰が挙げられます。物流業界は、トラックを用いた輸送が主な業務であり、そのため燃料コストが大きな経費を占めています。燃料価格の上昇は、直接的に企業の収益を圧迫し、特に中小規模の物流企業にとっては、燃料費の増加を転嫁できる余力がないため、利益率が急激に悪化する事態が生じています。
また、労働力不足も倒産の重要な要因です。特に、ドライバーの高齢化が進む中で、若年層の人材確保が難しい状況が続いています。ドライバーの採用や教育にかかるコストは増加しており、さらに2024年問題による労働時間の規制強化に伴い、一人当たりの稼働時間が制限されるため、企業はより多くの人材を確保しなければなりません。しかし、こうしたコスト増加に対応できない企業は、事業の継続が困難となり、倒産に追い込まれることが増えています。
M&A件数の増加
一方で、倒産件数が増加する一方、物流業界におけるM&A件数も年々増加しています。特に中小規模の物流企業においては、事業承継の問題が深刻化しており、オーナーの高齢化や後継者不足が背景にあります。このような状況下で、企業はM&Aによって事業を売却し、引退を図るケースが増加しています。
2023年には物流業界全体でのM&A件数が前年に比べて約20%増加しており、特に後継者問題を抱える企業が多い地方において、その傾向が顕著です。M&Aによって他社と統合することで、ドライバーや設備の確保が可能となり、事業を継続させる動きが活発化しています。
M&Aが進む理由:事業承継と労働力確保
物流業界におけるM&Aが進む背景には、倒産回避や事業承継の他にも、労働力の確保が重要な要因となっています。特に、人手不足に悩む企業が、他社を買収することでドライバーや現場の労働者を獲得し、経営を継続するケースが多く見られます。物流業界では、長時間労働や過酷な労働条件が問題となっており、個別の企業が単独で労働環境を改善することが難しいため、規模を拡大して労働負担を分散させることで、業務の効率化を図ることができるのです。
また、M&Aによって地域や業務分野の多様化が進むことで、特定の荷主や地域に依存しない経営が可能になります。特定の荷主や市場に依存したビジネスモデルは、顧客や地域経済の変動に大きく影響を受けるため、こうしたリスクを軽減するために、異なる地域や業態の企業を買収し、事業を多角化させる戦略が取られています。
■物流・トラック運送業界のM&Aを検討する前に押さえておくべきポイント
物流業界でM&Aを行う際には、いくつかの重要なポイントを事前に把握しておくことが成功への鍵となります。
M&Aの目的を明確にする
M&Aを成功に導くためには、まず「何のためにM&Aを行うのか」を明確に定義することが重要です。多くの中小企業が、M&Aを考える際に、「ドライバーを確保したい」や「規模を拡大したい」といった具体的な目的を掲げることが一般的です。しかし、それだけでは不十分です。より深く、M&Aを通じて自社がどのように成長していくのか、そのビジョンを持ち、具体化しておくことが必要です。
たとえば、単に「ドライバー不足を解消するため」という理由でM&Aを行うと、買収した企業の従業員がすぐに辞めてしまったり、期待したほどの効果が得られなかったりすることがあります。したがって、「ドライバー確保を目的にするのであれば、どの地域でどのような人材をどれくらい確保したいのか」や「新たに確保した人材をどのように活用し、業務にどう組み込んでいくのか」まで具体的に計画することが不可欠です。
同様に、規模の拡大を目的とする場合も、単に「大きくしたい」という動機ではなく、「どのような業務領域や地理的エリアを拡大したいのか」、「その拡大がどのように収益増加や業務効率化に繋がるのか」を細かく計画する必要があります。目的が曖昧だと、買収後に思ったようなシナジーが得られず、逆に資金や経営リソースが無駄になってしまうリスクがあります。
成長ビジョンの重要性
成長ビジョンを具体化することで、M&A後にどのようなシナジー効果を期待するのかが明確になります。たとえば、「M&A後、企業規模を拡大し、取引先に対するサービス品質を向上させ、さらなる市場シェアの拡大を図る」といった、成長ビジョンを持っていれば、M&A後の経営戦略が明確になります。また、このビジョンは、社内外のステークホルダーにも共有されるべきです。特に譲渡側の企業のオーナーや従業員が納得できるビジョンを持つことが、スムーズな譲渡とその後の安定した運営に繋がります。
タイミングとご縁の重要性
M&Aはよく「結婚」に例えられるように、理想的な相手が見つかったとしても、タイミングが合わなければ成功しないという点が特徴です。たとえば、自社がM&Aを行う準備ができていない段階で、理想的な譲渡先が見つかっても、そのチャンスを逃してしまうことがあります。また、相手企業もM&Aの準備が整っていなければ、いくら条件が良くても交渉が成立しないことがあります。
譲渡企業の情報収集
M&Aを成功させるためには、常に市場に目を向け、譲渡企業の情報を収集しておくことが重要です。これには、業界内の動向や競合他社の動き、さらには地域の経済状況を把握することが含まれます。特に物流業界では、各企業の資産状況や業務内容、人材構成などが異なるため、どのような企業がどのタイミングで譲渡を検討しているのかを知っておくことが非常に重要です。
タイミングの見極め
M&Aを行うための最適なタイミングを見極めるには、自社の内部状況と外部の市場環境の両方を考慮する必要があります。例えば、2024年問題が発生する直前にM&Aを実施すれば、労働力不足に対応するための準備を整えることができるかもしれません。また、燃料価格や輸送コストの増加が見込まれる場合、その影響を最小限に抑えるために、早めにM&Aを行うことも戦略の一つです。市場や競合の動向を注視し、どのタイミングでM&Aを行うべきかを的確に判断することが成功の鍵となります。
M&A仲介会社の選定
M&Aを成功させるためのもう一つの重要な要素は、適切なM&A仲介会社を選ぶことです。特に物流業界では、業界特有の課題や慣習があるため、業界の知識や経験が豊富な仲介会社を選ぶことが不可欠です。
また、物流業界に特化したM&A仲介会社を選ぶことで、業界特有の問題や課題に対する深い理解を得ることができます。たとえば、ドライバーの労務管理や車両管理に関する課題は、他業界には見られない特有の問題です。このような問題に精通しているアドバイザーがいれば、適切な譲渡価格や条件の設定、また譲渡後の経営改善策など、実務的な支援を受けることができます。
幅広いネットワークを持つ仲介会社のメリット
仲介会社を選ぶ際には、その会社が持つネットワークの広さも重要です。譲渡先企業を見つける際には、適切な相手を見つけるために多くの企業の情報を収集し、比較検討する必要があります。仲介会社が広いネットワークを持っていれば、その分、適した譲渡企業を見つける可能性が高くなります。また、ネットワークを通じて、他の成功事例や失敗事例に基づいたアドバイスも得られるため、情報の質と量がM&Aの成功を左右すると言えるでしょう。
■物流・トラック運送業界特有の注意点
物流業界のM&Aには、他の業界とは異なる特有の課題やリスクがあります。特に、法令遵守や労務管理に関する問題は、譲渡後に大きなリスクとなることが多く、事前に十分な調査と対策を行うことが必要です。
法令遵守(コンプライアンス)の重要性
物流業界では、特に労務管理が問題となることが多く、未払残業代や退職給付債務などが発覚するケースがあります。これらの問題が譲渡後に発覚すると、譲受企業は大きなコストを負担することになり、場合によっては経営に重大な支障をきたすこともあります。そのため、M&Aを行う前に、労務管理の実態を詳細に調査し、必要な改善策を講じることが重要です。
グレーゾーン労働のリスク
物流業界では、労働法規を厳密に守らない、いわゆる「グレーゾーン」の労働が存在することもあります。たとえば、社会保険に未加入のドライバーや、過度な長時間労働が行われているケースなどです。これらの問題がM&A後に発覚すると、譲受企業にとって大きなリスクとなり、経営の健全性が損なわれる可能性があります。したがって、M&Aの交渉段階で、こうしたリスクが存在するかどうかを事前に確認し、適切な対策を講じることが求められます。
■物流・トラック運送業界の企業価値の決定方法とM&A相場
物流業界でM&Aを実施する際には、企業価値の適正な算定が必要不可欠です。中小企業の場合、一般的には「時価純資産法」や「マルチプル法」を使用して企業価値を算定します。
時価純資産法
時価純資産法とは、企業が保有する資産と負債を時価ベースで評価し、その差額を企業価値とする方法です。物流企業の場合、特に車両や倉庫などの固定資産が重要な役割を果たすため、これらの時価評価が適切に行われることが重要です。また、未払残業代や退職給付債務などの簿外負債も、時価純資産法の算定においてはしっかりと考慮する必要があります。
マルチプル法
マルチプル法は、企業の償却前営業利益に特定の倍率(マルチプル)を掛け合わせて企業価値を算定する方法です。物流業界では、特に車両の更新にかかるコストが大きいため、これらの更新投資額を控除した後の利益を基に算定することが一般的です。適切な倍率を設定する際には、企業の競争力や独自のビジネスモデル、取引先の多様性などが考慮されます。
■物流業界M&Aまとめ
物流業界では、2024年問題や労働力不足、燃料費の高騰など、さまざまな課題に直面しています。このような状況下で、自社の成長を加速させるための一つの有効な手段としてM&Aが存在します。適切なパートナーを見つけ、シナジー効果を最大限に発揮することで、企業の競争力を強化し、持続的な成長を図ることが可能です。M&Aを成功させるためには、企業価値の適切な算定と戦略的なビジョンの策定が鍵となります。
当社グループでは、2023年に「サステナグロースカンパニーをもっと。」というグループパーパスを制定しました。
変化が激しい不確実性の時代においても、力強く持続的に成長し続けられる会社をサステナグロースカンパニーと定義し、そのような企業を数多く輩出するという想いを込めています。
是非、自社の戦略のひとつに、「M&A」を取り込むことのサポートを行っていますので、ご不明な点等があれば、ご相談ください。
船井総研では、50年以上にわたる業種別コンサルティングの経験を活かした、M&A 成立後の業績向上・企業の発展にコミットするM&Aを目指しております。業種専門の経営コンサルタントとM&A専門のコンサルタントがタッグを組み、最適な成長戦略を描きます。