建設工事業

【株式会社九昭ホールディングス】独占インタビュー~借金10億円から優良企業に変貌させた“付加価値額経営”とは?~

今回、電気設備工事やメンテナンス業を営む、株式会社九昭ホールディングスの代表取締役、池上秀一氏にお話をお伺いしました。

同社は、売上1.5億・経常利益300万から、自社が推奨する「付加価値額経営」とM&A戦略により、現在ではグループ7社で売上約25億へ成長しました。

このインタビュー内容は2025年12月に開催する「電気設備工事・設備メンテナンス業界向けM&Aセミナー」で本編収録されておりますので、ご興味をお持ちいただけましたら、是非セミナーに申し込みいただき、ご視聴いただけると幸いです。

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以下回答:株式会社九昭ホールディングス 代表取締役 池上秀一

 

Q:株式会社九昭ホールディングスの概要について

A:株式会社九昭ホールディングスは、持ち株会社としてグループ全体を統括しており、現在はホールディングスを含めて7社体制で事業を運営しています。主要なグループ会社には、九昭電設工業株式会社、九昭エンジニアリング株式会社、株式会社大新電設工業、株式会社小倉電設などがあり、グループ全体の売上規模は現在約25億円です。当社は、中小企業庁が推進する「100億企業宣言」に取り組んでおり、この25億円という売上高を10年計画で100億円にすることを目指し、事業を拡大しています。

 

Q: 参加した経営セミナーで講師から「ゴミのような会社」と言われた際に感じたことを教えてください。

A: 私は27歳で会社を引き継いだ直後、あるセミナーで「売上3億円以下、自己資本比率30%以下の会社はゴミ」と言われ、大変なショックを受けました。この基準を達成してゴミ会社から脱出しようと決心しました。以前は、何年かかっても良いから100億円の企業にしたいという漠然とした考えでしたが、中小企業庁の資料作成を通じて、きちんと10年計画でやるべきだと意識が変わりました。よっぽど良い技術を持っているところは生き残るかもしれませんが、2億〜3億円くらいの建設会社は間違いなく淘汰されていくという危機感を持っています。


Q: 九昭グループの今後のビジョン・経営計画を教えてください。 

A: 現在、10年計画の中で何をすべきかを作成している最中です。100億円を達成するためには、九昭電設工業株式会社、九昭エンジニアリング株式会社を中心に売上計画を立てています。エリアとしては、まず九州・沖縄で全エリアをカバーできる体制を考え、次に山口や広島への展開を考えています。沖縄での成功事例(営業所と地場の会社とのタイアップ)を九州各県でも実現することで、100億円ぐらいは達成できると考えています。

 

九昭ホールディングスのM&A戦略とグループイン後の関わり方

Q: 譲り受けをした後(グループインした後)、企業様への経営への関わり方を教えてください。 

A: 最初のM&A先(現在の九昭エンジニアリング)では、まず3ヶ月間はほとんど毎日現地に行き、どんなことをやっているか、処理の流れなどをチェックしていました。最初から口出しはせず、現場を見て、処理の流れをチェックしました。九昭電設工業株式会社でやっていた手法を、その会社に合わせ、10%ぐらいから始め、2年ぐらいかけて100%に持っていきました。また、ことあるごとに付加価値額の話をずっと浸透させていきました。急にやり方を押し付けることはせず関わっていきます。

 

Q: 池上社長はどんな会社・経営者と一緒になりたいとお考えでしょうか?構想などがありましたら併せて教えてください。

A: 人物(経営者)としては、明るくて、素直で、前向きな考えの方と一緒に仕事がしたいです。 企業/エリアとしては、今、営業エリアがないところに営業所を作り、その営業所と、地場の会社とタイアップしてできるような体制を早く作っていきたいです。特に沖縄の事例のように九州各県(7つの県)で展開できるような形を目指しています。 M&Aの基準としては、EBITDA(税引き前純利益+支払い利息+減価償却)に社長の給料を足した合計が5年以内(長くても7年以内)で償却できる会社であれば、買収のゴーサインを出します。また、人材のリスク(買収後に社員が辞めてしまうリスク)も考慮します。

 

九昭ホールディングスが考える付加価値額経営について

Q: 従来の会計処理を変えて「付加価値額」を定義するために、具体的にどのような仕組みを導入したのですか。 

A: 従来の会計処理に対する疑問を解決するため、税理士の反対を押し切って、正社員の給料や人件費(労務費)をすべて販管費(販売費及び一般管理費)に入れる損益計算書に切り替えました。この処理変更の結果、売上高から外部に流出するお金(材料費や外注費など)だけを引いた残りの部分を売上総利益とし、この残りの部分を付加価値額と定義し、売上総利益として計上しています。


Q: 付加価値額経営において、目標設定はどのように行われ、社員への浸透はどのように図られていますか。 

A: 目標設定は、従来の「売上高」から始めるのではなく、まず来期の営業利益(残したい利益)を先に決定し、そこに必要な販管費を加えて、目標とする付加価値額を逆算して設定します。この目標達成のため、以下のステップを踏んでいます。

1. 担当者には案件ごとに目標付加価値額に合った予算書を作成させます。

2. 毎週月曜日に「実行予算委員会」を開催し、案件の合否決定や全ての工事のチェックを徹底して行います。

3. 全社員に対し、目標付加価値額の達成状況を棒グラフなどで休憩室に貼り出し「見える化」することで、共有を促します。

4. 目標を達成した際には決算賞与を支給する仕組みを導入し、社員のモチベーション向上と利益意識を醸成しています。

 

Q: 付加価値額経営を導入したことによる、具体的な業績変革の事例があれば教えてください。 

A: 最初のM&A先である旧内田電気工業(現 九昭エンジニアリング)は、M&A前は売上高1億7,000万から2億程度、経常利益はわずか300万円ほどの零細企業でした。不良債権処理後の初年度の赤字(4,600万円)を乗り越え、社員のリストラを一切行わずに付加価値額経営を浸透させました。その結果、導入2年目で経常利益2,000万円を達成しました。さらに、導入から8年後(直近の決算)には、売上高3億4,000万円、経常利益5,470万円を達成し、自己資本比率が77.8%を超える超有力企業へと成長を遂げています。

 

九昭ホールディングス池上社長が語る業界への提言

Q: 業界向けに勉強会などを実施されていますが、業界の企業への提言やメッセージなどがありましたら教えてください。 A: とにかく自分でやること、迷ったらやることです。迷ってやらないのが一番悪いと思っています。失敗してもいいので、若いからこそ、やれば経験になります。今の若い経営者には安全運転の人が多いですが、怖がらずにどんどん挑戦し続ければ、必ずどこかでそれが経験になって花咲く時が来るのではないでしょうか。また、企業が成長するためには、売上5億円ぐらいを超えたら、経営者自身の仕事(経営の勉強)に専念することが必要です。そうしないと会社は成長しません。

 

本インタビューはごく一部です。全編のセミナーでは、上記以外の質問にも詳しく説明しております。詳細な内容は無料セミナーを開催しておりますので、お申込みください。

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西野 豪

株式会社船井総研あがたFAS コンサルタント

大学卒業後、10年間大手半導体・電子部品商社にて半導体単体から、基板実装・ユニット品の提案営業に従事。さらに1年間、中国駐在して海外営業を経験。船井総研入社後、製造業の国内・海外向けWebマーケティング・業績アップ支援。現在は製造業を中心とした事業承継・M&A支援に従事。

西野 豪

株式会社船井総研あがたFAS コンサルタント

大学卒業後、10年間大手半導体・電子部品商社にて半導体単体から、基板実装・ユニット品の提案営業に従事。さらに1年間、中国駐在して海外営業を経験。船井総研入社後、製造業の国内・海外向けWebマーケティング・業績アップ支援。現在は製造業を中心とした事業承継・M&A支援に従事。