【開催レポート】株価対策の向きは、誰に承継するかで逆になる ― 事業承継を事業面・財産面・組織体制面の3軸で考える
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【開催レポート】株価対策の向きは、誰に承継するかで逆になる ― 事業承継を事業面・財産面・組織体制面の3軸で考える

株式会社船井総研あがたFASは、株式会社船井総合研究所が主催する「第99回経営戦略セミナー 経営研究会全国大会2026」において、2026年8月20日、「持続的成長を実現する“事業承継”」と題した講座を担当しました。登壇したのは事業承継・再生部グループマネージャーの植木諒です。事業承継を財産の問題としてだけ捉えると打ち手が狭くなるため、事業面と組織体制面も含めた3軸で考えてほしい、というのが講座を通しての主張でした。

開催概要

  • 大会:第99回経営戦略セミナー 経営研究会全国大会2026(主催:株式会社船井総合研究所/8月19日〜23日・メイン日8月20日)
  • 日程・会場:2026年8月20日/グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール
  • 開催枠:8月20日のランチタイムセミナー全12講座のうちの1講座(企業価値向上経営フォーラム M&A分科会 特別セミナー)
  • 講座:「持続的成長を実現する“事業承継”」
  • 登壇者:植木諒(株式会社船井総研あがたFAS 事業承継・再生部 グループマネージャー)

対策をしないまま業績を伸ばすと、何が起きるか

講座の冒頭で紹介されたのは、船井総合研究所と当社が編集し、2026年4月にプレジデント社から刊行した「サステナグロースカンパニーを実現する事業承継の教科書 会社を成長させた10の代替わり」です。事業承継をきっかけに成長した10社を、親族内承継・従業員承継・M&Aの類型に分けて扱った書籍を、植木は導入に据えました。

対策をしないまま業績を伸ばすと何が起きるか、という話がこれに続きます。承継資金を用意できずに想定外のキャッシュアウトが生じること、右腕の役員に承継を持ちかけても株式を買い取るだけの個人資産がなく断られること、創業者が株式を持ち続けた結果として相続で株式が分散し経営権の争いになることの3つです。植木はこれらを、対策を先送りした会社に共通して起きることとして並べました。

根はいずれも同じで、業績が伸びれば株価も上がることにあります。株式を移すときの資金と税負担もそれだけ重くなるため、事業承継のコストは事業を伸ばすほど後ろで膨らんでいく、というのが植木の説明でした。

親族内承継・従業員承継・M&Aの三択をどう比べるか

親族内承継、従業員承継、第三者承継(M&A)の3つは、講座の中で並べて比較されました。

親族内承継は、幼い頃から会社に出入りしていれば従業員の理解を得やすく、ファミリー内の資産も維持できるものの、急に戻って役員に就くと反感を生むケースが多くなります。従業員承継は現場をよく知るぶん理解を得やすく、経営機能の引き継ぎが最もスムーズです。もっとも譲渡対価を高く言いづらく、価格の決め方が難しくなります。M&Aは経営者に還元される経済的利益が最も大きい、というのが植木の整理でした。

数字の面でも触れています。PLとBSの積み上げで売上100億円に達する企業は少なく、M&Aによる非連続的な成長で到達している企業のほうが多いという指摘でした。同じ日に別会場で行われたM&A講座とも論旨が重なる部分です。

出口戦略は事業面・財産面・組織体制面の3軸で考える

この3軸に、講座は最も多くの時間を割きました。財産面だけで事業承継を考えないよう促したうえで、検討項目が軸ごとに示されています。

  1. 事業面:誰に承継するか。長男か番頭の専務かといった候補をどう選ぶか。後継者候補にどこまで情報を開示して話せているか
  2. 財産面:株式の集約コストを把握しているか。創業時代の少数株主から買い取れているか。相続税対策と、遺言や弁護士との連携を含む争族への備え
  3. 組織体制面:後継者は育っているか、どんな計画で育てるのか。未来の組織図を描けているか

このうち組織体制面には、社長自身のセカンドライフも入りました。セカンドライフが決まらないうちは話が動かない、という指摘が講座では繰り返されています。株式を渡すことが居場所を失うことだと受け取られやすいためです。うまくいきやすいのは生涯現役のタイプで、現業と関わる新規事業を担ってもらう形になります。植木はここを、3軸のなかでも動かしにくい部分として強調しました。

承継計画表には、売上と利益に加えて株価の予測を並べる

承継計画表は中小企業庁のフォーマットを使い、売上・経常利益に加えて株価の予測を必ず並べます。過去3期分の株価の上がり具合と合わせて出すことが多いものの、中期経営計画は強気になっていることが多く、何を使うかは見定めが要ります。植木はこの注意を添えました。

1枚に並ぶ項目は、現経営者と後継者の年齢・役職、株式評価額を下げるタイミングと手段、経営者機能の受け渡し、後継者の育成、完全引退の時期です。これを出口戦略ごとに作って比較します。親族内承継なら株式評価を下げる計画を、M&Aなら評価を上げる計画と譲渡対価の見込みを置く、という進め方が示されました。

株価対策の向きは、誰に承継するかで逆になる

株価対策の方向は、出口戦略によって真逆になります。親族内承継なら評価額を下げて渡したい一方で、M&Aなら評価額を上げて対価を得たいからです。

難しいのは従業員承継です。従業員から高く買い取らせようとする経営者はまずいませんが、創業者としての対価も得たいという事情があります。下げて承継しやすくするのか、上げて対価を得るのかを早めに判断し、下げるなら退職金や役員報酬で調整します。暦年贈与か相続時精算課税かの判断も、株価の見込みが分かってからです。植木はこの順番を示しました。

相続税対策をセットで進める理由

中小企業のオーナーの資産は株式が大半を占めるため、株式に触れることはオーナー本人の資産の大半に触れることになります。だからこそ、相続税対策はセットで進めるのが有効です。ただし相続税対策の話は本人が亡くなることを想定した話になるので受け入れられにくく、事業の存続のためという文脈なら動きやすくなります。植木はこの入り方の違いを指摘しました。

具体的な打ち手は、みなし相続財産と課税遺産総額をいかに減らすかという観点から並びます。株価対策、小規模宅地等の特例、基礎控除、生命保険の非課税枠、そして退職金の5つが並びました。事業承継税制の特例はあくまで猶予で、要件を満たさなければ免除になりません。植木はこの点にも触れました。


株式承継コストは「株式数」と「評価額」で考える

株式承継コストを押さえる軸は、株式数と評価額の2つです。会社規模が大きいほど類似業種比準方式の比重が高くなり、株式評価が下がりやすくなります。そのため会社規模区分を上げる対策や、役員退職金の支給による株価の引き下げが行われてきました。

この前提が、いま動きつつあります。国税庁は2026年4月から「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を重ねており、類似業種比準価額により評価額が相対的に低く算定される点を課題としています。論点に挙がっているのは、会社規模ごとの評価方式の違いの是正、人為的に株価を低く抑える手法が機能しないような見直し、企業の収益力や実際の企業価値の評価の取り入れです。現在大会社に該当し類似業種比準価額が適用されている企業ほど影響が大きいと、植木は見立てを示しました。

組織面|未来組織図、ハッピーリタイア、ファミリー会議

組織面では3つが挙がりました。

1つめの未来組織図は、事業承継のタイミングまでにいつどの役職を経るかを、組織図と連動させて描くものです。現場経験を積み、拠点長や店長として独立採算で事業成長を担い、本部業務を経験したうえで代表に就くという道筋になります。これを後継者候補の段階で見せたうえで、「それでもやるか」を確認することを植木は勧めました。

2つめのハッピーリタイアでは、70代80代のオーナーが100%株式を保有し、40代の後継者は現場経験を積んでいるのに株式だけがない、という会社が非常に多くなっています。前向きなリタイアを描くことは経営者にとって最後の重要な仕事だと、植木は位置づけました。

3つめのファミリー会議は、出てきたスキームを家族で話し合う場です。第三者が同席することで複雑な問題が見える化され、感情的な議論や「言った言わない」を避けられます。議事録に落として遺言書に反映するところまでが進め方だと、植木は説明しました。

ホールディングス化は、機能を決めてから設計する

組織戦略では、ホールディングス化も取り上げられました。事業承継のタイミングで持株会社をつくる話は出やすいものの、機能を持たない箱だけの会社になると管理コストだけが乗るという指摘です。

持たせる機能として、植木は次の4点を挙げました。

  • 本部機能の集約(事業会社からの出向)
  • シェアドサービスの提供と業務委託料
  • 不動産を保有して賃料収入を得ること
  • ファミリーカンパニーとしての資産承継

4つ目の「ファミリーカンパニーとしての資産承継」について、株式評価額が下がることもありますが、それは一つの要素として軽く見ます。ガバナンス(取締役会などの機関設計)と役員報酬の設計を連動させること、100%子会社は上の決定が降りてくるだけになりがちで現場に不満が残ることにも話は及びました。本部機能を持株会社に持たせて100%子会社をぶら下げていく形が取りやすく、M&Aを推進しやすい座組みでもあります。節税目的の箱だけのホールディングスにはしない、というのが植木の結論でした。

どの選択肢を選んでも、当社で完結します

選ぶべき出口を決めるのは、後継者がいるかどうかと、株価がいくらかの2つです。親族内承継を前提に評価額を下げる計画を立てていた会社が、候補者の意思が固まらずM&Aに切り替わることもあれば、その逆の動きもあります。講座で3軸をお伝えしたのも、この入れ替わりに耐える設計が要るからでした。

親族に渡す、従業員に引き継ぐ、第三者へ譲る、いまは譲らず企業価値を高める、事業を立て直す ― どれを選んでも、当社で完結します。

  • 親族へ渡す/従業員に引き継ぐ(MBO):株価の算定と、贈与・相続を含むスキームの設計を担当するのは、税理士と公認会計士です。当社は船井総研ホールディングスとあがたグローバル経営グループの合弁会社で、取締役会長の芦原誠は税理士として、あがたグローバル税理士法人の代表社員理事長を務めています
  • 第三者へ譲る(M&A):譲渡の相手探しと交渉は、M&Aアドバイザリーの担当者が進めます
  • いまは譲らず企業価値を高める:財務・税務・労務を先に整えたほうがよい場合は、税理士と社会保険労務士が改善から入ります
  • 事業を立て直す:財務の立て直しは、当社の事業承継・再生部が担当します

事業の中身を見るのは、どの選択肢でも船井総合研究所の業種専門コンサルタントです。その数は約700名、扱う業種は180を超えます。自社の商習慣を一から説明していただく必要はありません。株価の試算と事業計画を、別々の相手に持ち込んで突き合わせる手間もかかりません。船井総研あがたFASの専門家を中心に、グループを挙げたチーム体制でお客様の承継をサポートいたします。担当は場面ごとに変わりますが、方針が変わってもはじめから説明をやり直さずに済みます。なお当社は、M&A Professional Award 2025・成約数部門(個人)も受賞しました。

同じ日のM&A講座は「譲り受ける側」の話でした

同じ8月20日、別会場では代表取締役社長の光田卓司が「100億企業を実現するM&A戦略」を担当しました。本記事が譲り渡す側の設計を扱ったのに対して、あちらは譲り受ける側の話です。案件が入ってこない会社に足りないものは何か、自社OSという4つの型をどう用意するか、1件目をいくらから始めるかまで扱っています。第三者承継を選択肢に入れているなら、譲り受ける側が何を見ているかを知る材料になります。

【開催レポート】案件を探す前に、譲り受ける側の準備を ― 「自社OS」で非連続な成長をつくるM&A戦略

登壇者プロフィール

植木 諒(株式会社船井総研あがたFAS 事業承継・再生部 グループマネージャー):新卒で士業事務所に入所し、法務・不動産実務の第一線でキャリアをスタート。現場で培った実務知見をもとに、2018年船井総合研究所に入社。以降、財務コンサルティングを軸に事業承継・事業再生のプロジェクトを担当し、現在は親族内承継、従業員承継(MBO)、相続税対策、経営者の資産に関する相談を扱う。収益性を高める「事業面」、自社株や不動産を見直す「財産面」、後継者教育やガバナンスを整える「組織面」の3つの視点から支援する。国家資格は行政書士、特定土地家屋調査士、測量士補。共著に「90日で業績アップを実現する『ローコードDX』」「データ・生成AI活用で業界平均の3〜5倍の収益性を実現するCRMカンパニー」。

事業承継について、あわせてお読みください

• 『事業承継とは|方法・進め方・税金までの流れをまとめて理解できるガイド』(https://ma.funaisoken.co.jp/column/business-succession-guide-shokei

• 『事業承継の株価対策|自社株の株価を下げる方法と注意点を経営者向けに解説』(https://ma.funaisoken.co.jp/column/stock-price-measures-kabuka

• 『持株会社化による事業承継のメリット・デメリットと向き不向きが分かる』(https://ma.funaisoken.co.jp/column/holding-company-shokei

• 『第三者承継(M&A)とは|会社売却の流れと後継者の探し方を中立に解説』(https://ma.funaisoken.co.jp/column/employee-succession-mbo-shokei

最初に手をつけるとすれば、直近3期分の株価の推移を出し、売上と経常利益の計画に並べてみるところからです。出口戦略が固まっていなくても構いません。『当社の相談ページ』(https://ma.funaisoken.co.jp/contact_all)から、親族内承継、従業員承継、第三者への承継、再生、廃業を並べて比較するところまでご相談いただけます。

【注記】本記事は2026年8月20日に開催した講座の内容をもとに編集したものです。個別の数値・固有名詞は開催時点の情報に基づきます。税務・法務の取り扱いは個々の事情によって異なります。具体的な検討にあたっては専門家にご相談ください。

光田卓司

(株)船井総研あがたFAS 代表取締役社長

2008年株式会社船井総合研究所(現株式会社船井総研ホールディングス)に入社。入社後は専門サービス業の経営コンサルティングに従事し、2019年より専門サービス支援部部長に就任。併せて、多数のM&A支援に従事。2022年同社M&A支援部部長に就任、同社M&A部門の成長を牽引した。2026年3月、株式会社船井総研あがたFASの代表取締役社長に就任。


光田卓司

(株)船井総研あがたFAS 代表取締役社長

2008年株式会社船井総合研究所(現株式会社船井総研ホールディングス)に入社。入社後は専門サービス業の経営コンサルティングに従事し、2019年より専門サービス支援部部長に就任。併せて、多数のM&A支援に従事。2022年同社M&A支援部部長に就任、同社M&A部門の成長を牽引した。2026年3月、株式会社船井総研あがたFASの代表取締役社長に就任。