製造業

製造業/商社の経営者がM&Aを考え始める7つのきっかけ

製造業/商社の経営者がM&Aを考え始める7つのきっかけについて、製造業/商社の専門コンサルタントの経験を基に解説いたします。

1. 後継者不在と事業承継の限界が引き金に

中小企業の経営者にとって最も大きな課題の一つが「後継者不在」です。特に製造業や商社では、経営ノウハウや技術、人脈などが属人的になりやすく、親族や社内に後継者候補がいない場合、事業の継続が困難になります。長年かけて築き上げてきた企業を「このまま終わらせたくない」という思いから、第三者への承継としてM&Aを検討する経営者が増えています。

また、別の背景では、近年、少子高齢化が進む日本において、親族内承継が困難になるケースが増加しています。「息子や娘には別の道に進んでほしい」「適任の親族がいない」といった状況に直面した時、事業の継続という観点からM&Aが有力な選択肢として浮上します。従業員の雇用を守り、長年培ってきた技術や顧客との関係性を次世代へと引き継ぐために、第三者への譲渡を検討し始める経営者は少なくありません。

2. 新市場と新技術の獲得

事業の持続的な成長を目指す経営者にとって、M&Aは時間とコストを大幅に削減しながら、新たな市場への参入や、自社にはない技術やノウハウを獲得するための有効な手段となります。競合他社の買収によってシェアを拡大したり、異なる分野の企業と手を組むことでシナジー効果を生み出したりすることも可能です。既存事業の成長だけでは限界を感じ始めた時、M&Aは新たな成長のエンジンとなります。

3. 経営者の高齢化と引退時期の見直し

団塊世代を中心に、70歳を超えても経営を続けている経営者は少なくありません。しかし体力や判断力の低下を実感する中で、「そろそろ身を引く時期ではないか」と引退を意識し始めるケースが目立ちます。自らの引き際を見極める中で、M&Aという選択肢が現実味を帯びてきます。引退後の生活や会社の今後を見据えたとき、「自分が元気なうちに次の経営者にバトンを渡したい」と考えるようになります。

4. 市場環境の変化による将来不安

近年、原材料価格の高騰、物流費の上昇、エネルギーコストの増加、そして脱炭素などの規制強化により、製造業・商社の経営環境は激変しています。過去には安定していた事業でも、急速な市場の変化に対応するためには、新たな資本力や技術力が必要になる場合があります。単独での生き残りに限界を感じた際、「グループ傘下で安定経営を続けたい」という思いからM&Aを検討するきっかけとなります。

5. 競争激化と生き残り戦略としてのM&A

市場の変化や技術革新のスピードが加速する現代において、業界の勢力図は常に変化しています。競争が激化する中で、単独での生き残りに危機感を感じ始めた時、同業他社との統合や、異業種との提携による事業多角化といったM&Aが、企業の持続的な成長と競争力強化のための戦略的な選択肢となります。変化の波を乗りこなし、新たな成長の機会を掴むために、M&Aが重要な役割を果たすことがあります。

6. 設備更新や人材投資への資金負担

製造業では、生産設備の老朽化が避けられない問題です。設備更新には多額の投資が必要であり、同時に優秀な人材確保やDX対応などの課題にも直面しています。自己資金や金融機関の融資だけでは対応が難しいと感じたとき、「資本力のある企業と組んで継続・成長を図るべきかもしれない」という思考に至る経営者は多く、これがM&Aの初動となる場合があります。

7. 家族・社員への責任と企業存続への思い

創業者や長年経営を担ってきた経営者にとって、会社は単なるビジネスではなく、人生そのものです。だからこそ、「自分がいなくなった後も、社員の雇用を守りたい」「顧客との関係を継続したい」「地元への貢献を続けたい」といった強い思いを抱く方は少なくありません。その思いを実現する手段として、M&Aを活用することが有効であると認識し、決断に至ることが増えています。

【譲渡企業 事例】 精密板金加工会社 K社

創業90年の歴史を持つK社は、精密板金加工のトータルソリューションを提供する企業です。

その事業は多岐にわたり、超精密部品や小型ユニットから大型板金加工まで、多様なニーズに対応可能で、同社の大きな強みは、最新の加工設備と熟練の職人の技術を融合させている点にあります。

そんな歴史ある同社が譲渡を検討された背景には、主に4つの複合的な要因がありました。

●後継者不在
●社員の将来への不安
●財務改善による個人での承継が困難となったこと
●「会社の色を失いたくない」という思い

まず、後継者不在の問題が挙げられます。親族に頼らない事業承継の必要性を社長自身が長年考えていたようです。また、社長が高齢になった際、現場から「いつまで社長をやってくれるのか」という声が聞かれ、それが不安で退職する社員もいたため、この状況を打開する必要性がありました。

さらに譲渡先を選定する上での強い思いとして「会社の『色』を失いたくない」という点があり、結果として、K社の独自性を尊重し、この強い思いを受け入れることができた会社への譲渡が実現しました。

社長自身もとても満足された事業譲渡の事例です。

まとめ

M&Aは、経営者にとって人生を左右する大きな決断です。後悔のないM&Aを実現するためには、早い段階から十分な情報を収集することが不可欠です。複数の専門家から意見を聞き、比較検討することも重要です。焦らず慎重に、自社にとって最善の道を選択するために、積極的に行動することが求められます。

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製造業/商社のM&Aについて詳しく知りたい方は、下記よりご確認ください。

1.製造業M&AのTOP
2.製造業M&A【譲渡企業】のメリット・デメリット
3.製造業M&A【譲受企業】のメリット・デメリット
4.生産財商社M&AのTOP

最後に「売主が必ず読む本」を下から無料でダウンロードいただけます。ぜひご覧ください。





西野 豪

株式会社船井総研あがたFAS コンサルタント

大学卒業後、10年間大手半導体・電子部品商社にて半導体単体から、基板実装・ユニット品の提案営業に従事。さらに1年間、中国駐在して海外営業を経験。船井総研入社後、製造業の国内・海外向けWebマーケティング・業績アップ支援。現在は製造業を中心とした事業承継・M&A支援に従事。

西野 豪

株式会社船井総研あがたFAS コンサルタント

大学卒業後、10年間大手半導体・電子部品商社にて半導体単体から、基板実装・ユニット品の提案営業に従事。さらに1年間、中国駐在して海外営業を経験。船井総研入社後、製造業の国内・海外向けWebマーケティング・業績アップ支援。現在は製造業を中心とした事業承継・M&A支援に従事。