製造業

製造業M&A【譲渡企業】のメリット・デメリット

近年、後継者不足や事業承継問題が深刻化する中で、M&Aは事業継続の有効な手段としても注目されています。本稿では、事業譲渡を検討されている経営者様に向けて、製造業・商社のM&Aにおける譲渡側と譲受側のそれぞれのメリット・デメリットを詳しく解説いたします。

1. 製造業のM&A(譲渡側)のメリット

新しい販路・市場の獲得

自社がこれまで拡販できなかった新たな販路や市場を持つ企業とM&Aを行うことで、製品やサービスをより広範囲の顧客に提供できるようになります。例えば、自動車関連向けに部品加工している会社が、譲受企業を通じて医療機器や産業機器など別業界の仕事を請け負うことがあります。製造業では既存顧客からの脱却が難しいという課題がありますが、M&Aを通して新しい業界や市場へ進出することは大きなメリットとなります。

グループ経営資源による人材育成・組織強化(優秀な人材の確保)

大前提として製造業における人材不足は深刻な課題です。その中でM&Aを実施することにより、人材の確保だけでなく、譲渡先の企業が持つ高度な専門知識や研修制度、組織運営のノウハウを活用することで、従業員のスキルアップや組織全体の活性化が期待できます。異なる企業文化が融合することで、新たなイノベーションが生まれる可能性もあります。企業規模が拡大することで人的交流が促進されます。 また、企業によっては、譲受企業がホームページや採用活動に力を入れている場合、数年間応募がなかった求人に人材が集まるようになったという事例も多くあります。

購買力・交渉力の強化によるコスト削減

M&Aにより規模が拡大したグループの一員となることで、原材料の調達や物流、間接材の購入などにおいて、より有利な条件での交渉が可能になります。スケールメリットを活かしたコスト削減は、収益性向上に直結します。また、原価管理についてもより綿密に行うことで、コスト競争力を高めることができます。

部品・技術の内製化によるサプライチェーン強化とコスト削減

部品製造の内製化や外注に委託していた工程を内製化できることは、M&Aによる大きなメリットです。垂直統合が可能なM&Aの場合や、譲受側の企業が特定の部品製造技術や要素技術を有している場合、それらを自社に取り込むことで、サプライチェーンの安定化を図り、外部依存によるコストやリスクを低減できます。例えば、これまで顧客から部品支給を受けていた部品加工業の企業が部品の自社調達が可能になることで、より利益を出しやすい構造になったり、自社にない加工工程を譲受先の協力会社のリソースを活用することでシナジー効果を生んだりすることがあります。 また、同様に技術的なシナジー効果による製品開発力の強化も期待できます。

グループの技術・ノウハウを活用したDX促進

近年重要性が増しているデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する上で、譲受側の企業が持つデジタル技術やノウハウを活用できる場合があります。元々紙で管理を行い、発注などもFAXで運用していた場合、M&A前は高価なシステムを導入してIT化を進めるメリットは小さいですが、M&A後は低コストでデジタル化を進めることができ、事務作業の効率化など人件費を抑制できます。 また、様々な業務を可視化して、例えば工場での生産のリアルタイムな状況や稼働率を把握することで、効率的な改善活動につなげることができます。

経営者保証からの解放によるリスク軽減

中小企業の経営者は、金融機関からの融資に対して個人保証を行っているケースが多く見られます。M&Aにより事業譲渡が成立した場合、この経営者保証から解放される可能性があり、経営者個人のリスクを軽減することができます。

2. 製造業のM&A(譲渡側)のデメリット

①譲受先決定までの期間

一方で、製造業のM&A(譲渡側)には、デメリットも存在します。それは、M&Aの相手先がいつ見つかるか、不確実であるということです。すぐに自社にとって納得のいく譲受先が見つかるケースもあれば、数年を要するケースもあります。

②決裁権の変更

これまで単独で行っていた意思決定を、他者と協議して行う必要が生じます。新しい意見を取り入れることができる点はメリットとなり得ますが、必ずしも自身の意向のみで進められなくなる点はデメリットと捉えることもできます。

3. 【事例】譲渡企業 精密板金加工業 K社

【譲受企業】譲受企業の経営支援会社

【譲渡企業】精密板金加工業会社

譲受会社は、10社以上のM&A実績を持つ企業で、グループ会社への経営支援を得意としています。複数のM&Aを通じて、業種や規模の異なる企業が抱える共通の経営課題や、それらを改善するためのノウハウを豊富に蓄積してきました。そのため、K社に対しても的確なアドバイスを提供できます。

M&A後、K社はグループ企業内での情報交換を通じて、社長の育成だけでなく、経営資源を活用した人材育成や組織強化、さらには従業員のモチベーション向上を実現できました。これは、M&Aが譲渡企業にとってさらなる企業成長のきっかけとなる事例です。

まとめ

本稿では、製造業・商社のM&Aにおける譲渡側のメリット・デメリットについて解説しました。M&Aは経験する機会が限られるケースが多い為、慎重な検討が求められます。M&Aのメリット・デメリットを深く理解し、ご自身のライフプランや大切な自社にとって善い判断となり得るか見極めることが重要です。

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製造業のM&Aについて詳しく知りたい方は、下記よりご確認ください。

1.製造業M&AのTOP
2.製造業M&A【譲受企業】のメリット・デメリット
3.製造業/商社の経営者がM&Aを考え始める7つのきっかけ

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西野 豪

株式会社船井総研あがたFAS コンサルタント

大学卒業後、10年間大手半導体・電子部品商社にて半導体単体から、基板実装・ユニット品の提案営業に従事。さらに1年間、中国駐在して海外営業を経験。船井総研入社後、製造業の国内・海外向けWebマーケティング・業績アップ支援。現在は製造業を中心とした事業承継・M&A支援に従事。

西野 豪

株式会社船井総研あがたFAS コンサルタント

大学卒業後、10年間大手半導体・電子部品商社にて半導体単体から、基板実装・ユニット品の提案営業に従事。さらに1年間、中国駐在して海外営業を経験。船井総研入社後、製造業の国内・海外向けWebマーケティング・業績アップ支援。現在は製造業を中心とした事業承継・M&A支援に従事。