基礎知識

M&Aにおけるクリーンチームとは?その役割と構成する上でのポイントを解説

クリーンチームとは

クリーンチームとは、M&Aにおいて、取引がすべて完了する(クロージング)前の重要情報を扱うチームのことです。一般的には外部のメンバー(弁護士・コンサルタント等)がメンバーとして構成されます。クリーンチームはM&Aのプロセスの1つである「デューデリジェンス」において活躍します。デューデリジェンスとは買い手企業による売り手企業の調査のことです。

クリーンチームの役割

先述したように、クリーンチームはデューデリジェンスを実施するメンバーです。外部メンバーで構成されたクリーンチームがデューデリジェンスを実施する理由は「ガン・ジャンピング規制」の回避です(ガン・ジャンピング規制については下記で説明いたします)。仮に買い手企業の内部者のみでデューデリジェンスを実施した場合は、ガン・ジャンピング規制に抵触する可能性があり、最悪の場合は競争法のカルテルに抵触しているとみなされる場合があります。クリーンチームを用いることで、文字通りガン・ジャンピング規制等の各規定に抵触していない=クリーンであることを強調することができます。

ガン・ジャンピング規制とは

ガン・ジャンピング(Gun-Jumpin)規制とは、M&Aにおける全ての手続きが終了する前に売り手企業・買い手企業が行ってはいけない行為への規制です。「ガン・ジャンピング」という言葉は陸上におけるフライングスタートから由来しています。ピストルが鳴る前に飛び出すことは反則であるように、全ての手続きが完了する=取引が完結するまでに「センシティブな情報」を売り手企業・買い手企業間で交換したり、「センシティブな情報」を用いて売り手企業・買い手企業間で協調・協力関係を結ぶことは競争法・独占禁止法等における「カルテル」に該当していると見なされ、厳重な処罰が下ります。

「センシティブな情報」にあたるもの

売り手企業と買い手企業が同業他社などの競合関係にある場合において、通常共有されることのない情報は「センシティブな情報」に該当する可能性が高いです。その中でも以下の3つに関する情報は通常の場合、機密性が非常に高いため、クリーンチームのみが知ることが望ましい情報です。

製品に関する機密情報

製品ごとの販売価格・原価等の製品に関する秘密情報はセンシティブな情報に該当します。売り手企業と買い手企業間が競合関係にある場合において、製品に関する機密情報を両者で共有することは、カルテルと見なされる可能性が非常に高いです。また、両者が競合関係にない場合であっても自由競争を阻害する可能性があるため、製品に関する情報の取り扱いには慎重になりましょう。

顧客に関する機密情報

顧客ごとの取引・顧客情報(年代等)等の顧客に関する機密情報はセンシティブな情報に該当します。売り手企業と買い手企業間が競合関係にある場合において、顧客に関する機密情報を両者で共有することは、ガン・ジャンピング規制に抵触する可能性が非常に高いです。顧客に関する情報は企業の中でも機密性が非常に高い情報に該当します。また、顧客の同意なしでの顧客情報の共有は個人情報保護法の観点からも慎重になりましょう。

将来の価格やマーケット戦略など

その他・製品や顧客のみならず、当該企業が算出したマーケットに関する情報やそこから導き出した戦略などの企業の中核を為す情報もセンシティブな情報に該当する場合があります。将来予想・戦略を両者で共有・協調することはカルテルそのものに該当します。

クリーンチームの構成メンバー例

クリーンチームの構成メンバーは、一般的には外部の人間をメンバーとして迎え入れます。しかし、場合によっては買い手企業内部の人間を構成メンバーの一人とする場合があります。しかし、この場合の売り手企業の内部メンバーは競争関係にある事業に直接従事し又はその決定に関与していない内部者に限られます。

外部メンバー 例

外部コンサルタント

弁護士

外部専門家

内部メンバー 例

競争関係にある事業に直接従事し又はその決定に関与していない内部者

クリーンチームを構成する上でのポイント

クリーンチームを構成する上でのポイントが幾つかあります。

費用に余裕をもっておく

外部メンバーをクリーンチームとして迎え入れるためには別途費用がかかります。実施するデューデリジェンスによって必要な外部メンバーを揃える為には、事前に費用を想定し・用意しておくことが必要です。

外部メンバーの選出にあたっては、その人物・所属する組織の領域とクリーンチームが実施することとの整合性を考える

外部メンバーといっても、それぞれ専門的な領域があります。法に関する部分であったり経営に関する部分であったり、実施するデューデリジェンスの内容であったり、売り手企業の業種・特徴を踏まえた適切な外部メンバーを選出することが重要です。

まとめ

M&A取引において、ガン・ジャンピング規制及び競争法(カルテル)に関する制裁を回避することは、常に念頭に置いておく必要があります。クリーンチームを構成し、クリーンなデューデリジェンスを実施することは、ガン・ジャンピング規制などを回避する為に非常に有効な対策の1つです。クリーンチームの構成にあたっては、各規制でセンシティブな情報とされる可能性の高い情報を把握し、実施するデューデリジェンス及び相手方の企業の業種・特徴を踏まえたメンバーで構成することが非常に重要です。クリーンチームを構成し、適切な調査を実施することによって、各規制を回避し、問題なくM&Aの取引を完了させることができます。

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光田卓司

(株)船井総研あがたFAS 取締役

2008年株式会社船井総合研究所(現株式会社船井総研ホールディングス)に入社。入社後は専門サービス業の経営コンサルティングに従事し、2019年より専門サービス支援部部長に就任。併せて、多数のM&A支援に従事。2022年同社M&A支援部部長に就任、同社M&A部門の成長を牽引した。2025年1月、株式会社船井総研あがたFASの取締役に就任。

光田卓司

(株)船井総研あがたFAS 取締役

2008年株式会社船井総合研究所(現株式会社船井総研ホールディングス)に入社。入社後は専門サービス業の経営コンサルティングに従事し、2019年より専門サービス支援部部長に就任。併せて、多数のM&A支援に従事。2022年同社M&A支援部部長に就任、同社M&A部門の成長を牽引した。2025年1月、株式会社船井総研あがたFASの取締役に就任。