コロナウイルスの影響で事業戦略・事業計画の修正を行っている方も多いのではないでしょうか。
そのような状況の中、今後の事業戦略・事業計画にM&Aを取り入れていこうと考えている方が増えています。
今回は、コロナ禍のM&Aにおいて、資金繰り計画、資金調達の方針を決めるにあたって大事な要素である「M&Aの売却価格」について、リーマンショック時の状況も参考例としながら解説させていただきます。
■「買い手市場への転換」と「売却価格の下落」
コロナ禍で予想されるM&A市場の大きな変化は「買い手市場への転換」と「売却価格の下落」です。
コロナによる不況で企業の業績が悪化し経営難になると、会社や事業の売却を考える経営者が多くなります。業績の悪化は買い手側にも当てはまり、M&Aなどの積極的な投資を控える企業が多くなります。
つまり、売り案件が増加するが買い手は少ないという状況になるため、買い手市場となり、それによって売却価格も低くなります。
内閣府経済社会総合研究所の「内外M&A事情調査研究報告2011」によると、リーマンショックによる不況でM&Aの件数が減少しましたが、それ以上にM&A金額が大きく減少しています。
例えば、リーマンショック後である2010年のIN-IN(国内企業による国内企業のM&A)の件数は前年比-21.5%なのに対し、金額は-45.1%となっています。これは①財務基盤の弱い企業の小型案件の成約の割合の増加と②全体的な売却価額の減少が考えられます。
M&Aの価格の算出法は様々ありますが、ベースとなるのは「実態の純資産」と「実態の営業利益」です。今回のコロナ禍における業績悪化により、売却価格は下がってしまうケースが増えています。
■不況下にも買収を行う企業の特徴
とはいえども、日本はD/Eレシオが低い会社つまり資本に対して有利子負債が少ない会社がまだまだ多いので、企業の買収の機会は多くあります。
また、不況で割安になったことを機に企業買収を積極的に行う会社もあります。
例えば、株式会社アウトソーシングという会社は2008/10~2012年度で11件M&Aし、現在、売上をリーマンショック前から1400%増収させており、
前田工繊維株式会社は2008/10~2012年度で5件M&Aし、現在、売上をリーマンショック前から227%増収させています。
一方、売り手企業も不況時には割安にはなってしまうかもしれませんが、日頃からビジネスモデルに磨き込みをかけて、不況を見据えた健全な経営を行い、被害を最小限に食いとどめるような取り組みをしていれば、買い手側もしっかりそれを評価します。
次回のレポートでは実際にM&Aを行ううえで必要な「資金の調達法」について解説いたします。
現在、国が行っている融資制度やIPO(新規上場)による資金調達等ご興味のある方は是非ご覧ください。