デューデリから未来へ向けて「事業承継型MBOが増加」
- M&Aコンサルティングレポート
最近、立て続けにMBOを実施した社長にお会いしている。
MBOとは、Management Buy-out(マネジメント・バイアウト)の略で、経営層や従業員による自社株式の買取のことを指す。
株式公開企業が公開をとりやめるために、市場に出ている自社株を買いとるMBOと、会社オーナーから事業承継の一環で、従業員や経営層が株式を買いとることの2つの使い方がある。
特に、後者の事業承継での一環によるMBOが、今後、増加してくるのではないかと思われる。
これまでの事業承継型MBOは、どちらかというと再生で利用されるパターンが非常に多かった。
実際、私も再生コンサルティングで、従業員持ち株会を設立し、融資先金融機関や取引先の了解を得たMBO形式のご支援を実施したことがある。
ただ、最近増加してきたのが、事業承継において、創業者系が優秀な従業員に株式を引き継ぐ手法である。
実際に、船井総研にもその相談が増加しており、直近でも1件、MBO形式によるM&Aが成立した。
この事業承継型MBOにおける最大のメリットは、承継がスムーズであり、従業員の不安も少ない点にある。
当然、トップが変わるため方針・方向性も変わるにせよ、内部からのトップ変更という着地点として、非常に実施しやすいパターンである。また、株式を譲る現在のトップからしても、人となりが分かるため、安心できる。
逆にデメリットは、事業承継をする従業員側の資金調達にある。
多くは、金融機関などからの個人負債で買い取るという方法となる。そのため、個人にとっては、大きな負担となることや、金融機関との交渉が必要となってくる点である。さらに、中小企業のトップにつきまとう“企業借入金の個人保証”も同時に必要となってくる。最近では、この社長の個人保証を外すということは、交渉次第でできるようになっているが、それでも少数派。このデメリットを乗り越えるための、株の承継を受ける従業員の覚悟が必要となってくる。
そのため、MBOで承継を受けたトップの方と話をしていると、やはりサラリーマン社長と違う、創業者系社長の持つ独特の雰囲気になるのが不思議である。あたらめて人は、責任の重さによって、変わるものである。逆に言うと、その責任に耐えられる人でないと、多くの従業員とその家族を背負う社長業はできないということであろう。
大学卒業後、大手金融機関に営業として従事し、特に、不動産融資、動産物件リースバック、事業承継などの案件を電話で提案し案件化するインサイドセールス部門での立ち上げでは大きな功績を残す。
2011年、船井総研に入社。 2012年より、会計事務所専門のコンサルタントして、会計事務所が事業承継やM&A等、付加価値サービスを提案する営業戦略構築コンサルティングを中心に行う。
2019年より、士業の事業承継・M&Aに加え、物流業向けにM&Aを活用した事業継続のサポートを行っている。
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