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【士業M&A】税理士事務所・会計事務所M&A:2024年のM&A動向の振り返り

  • 士業 M&Aレポート

株式会社船井総合研究所(船井総研)M&Aコンサルティンググループです。本コラム記事では、税理士事務所・会計事務所M&A:2024年のM&A動向の振り返りについて、主に解説しています。事業・事務所の譲渡をお考えの税理士事務所・会計事務所の経営者様は必見の内容となっております。この機会にぜひご覧ください。

税理士・会計事務所の動向

日本税理士会連合会発表の、令和6年8末日時点での税理士登録者数は81,228名となっており、税理士登録者数は増加し続けている状況です。

一方で、税理士事務所数の推移を総務省統計局「経済センサス」の調査結果からみると、約31,000事務所程となっており、過去20年間でやや微減傾向にあると見て取れます。

これは、税理士法人が増加したことで1拠点当たりの税理士登録者数が増加したことや高齢税理士の廃業や統合が進んだ結果であると予測されます。

また、税理士試験受験者数の推移を見ると2010年ごろから減少の一途を辿っていた税理士試験受験者も、2021年から微増傾向にあり、コロナ後の時代背景を受けて税理士資格の取得を目指す人が増えているものと思われます。

税理士試験の受験者の年齢構成を見ると、「25歳以下」の税理士試験受験者数が2022年4,929人だったのに対し、2023年は7,023人と大幅に増加しておりこの点に関しては税理士業界にとって明るい話題であると思われます。

とはいえ、2010年の税理士試験受験者数は50,000人を超えていた中、2023年の実績で32,893人と受験者数は大きく減少しているというのも事実です。

そのため、そう遠くない将来、税理士登録者数が純減していく状況が来ることは間違いなく、事務所を存続させるための法人化や事業承継としてのM&Aは今後増加してくることも間違いないといえる状況にあると考えられます。

業界を問わずM&Aの件数が増え続けている中においては、M&A事態の捉え方も変わってきています。いわゆる高齢や後継者不足に伴うM&Aではなく、M&A後も継続して会計事務所の経営に関わり、所長としてのポジションは継続しながら大手会計事務所に譲渡し、所長が得意としている業務や強みを活かしつつ、弱みとなる部分をフォローし合うような組織作りを行い、将来の不安を解消しつつも事業は継続する、「成長支援型」のM&Aが広がってきています。

特に税理士資格の取得と経営管理、マネジメント、営業力といった部分は必ずしも比例するものではないので、資格者としては優秀でも経営者としての適性は高くないという現象はどこの会計事務所でも起こっています。

今まではそういった矛盾も抱えつつ、税理士資格を持つスタッフの中から承継者を選び、何とか経営のバトンを繋いでくることが当たり前でしたが、現在ではM&A・譲渡という選択肢が増えたことで、必ずしもスタッフの中から選ぶのではなく、M&Aにより外部の方と協力体制を築いて会計事務所の事業を継続させていくことができるようになったといえます。

税理士・会計事務所業界の2023年のM&A件数

BATONZやレコフデータで開示されている情報から2023年の税理士・会計事務所のM&Aの件数としては、全体で3件程度と非常に少ない件数となっています。

しかしながら、公表されていないものの船井総合研究所が会員事務所のヒアリング等により独自で収集した情報を確認すると、2023年は全国で少なくても15件以上はM&A(事務所・顧問先の譲渡)が発生していると思われます。

税理士・会計事務所業界におけるM&Aのパターンとは

M&Aと一言で言っても、その理由や目的は複数パターンがあり、個別の事情により変わってきます。2023年、私たちが聞いた税理士・会計事務所業界のM&Aのパターンも代表的な3パターンのケースがありますので、その内容をご紹介させていただきます。

①事業承継型M&A

2023年の税理士・会計事務所業界で発生したM&Aの中身を見ると、多くが「事業承継」を目的としたM&Aとなっており、代表のご年齢やご病気がきっかけとなり、他に資格者がいない個人の税理士・会計事務所において、顧問先及び従業員の引継ぎを主な目的とした譲渡が多くのパターンを占めているようです。

こうした話はあまり表には出ないものの、地域内のコミュニティーや人脈の中で話が上がり、その中でM&Aが行われているケースが多くあります。

ご病気の時などは特に期間が迫っており、短期間でM&Aの実行まで進みます。

②顧問先の一部売却型M&A

近年増加してきたケースが、「顧問先の一部売却型」のM&Aです。

コロナウィルスの影響も明けつつある中、税理士・会計事務所業界においても、採用が大きな課題となってきており、職員の退職をきっかけとした顧問先担当の再配分が事務所の中で完結せず、顧問先の絶対数を下げざるを得なくなり、一定数の顧問先をまとまってM&Aで譲渡するパターンです。

事務所の中で何とか対応できることが理想ではあるのですが、その分の負担を職員の方に負ってもらうことで、更なる退職リスクが高まるという負のスパイラルが起きてしまうことを防ぐため、顧問先を譲渡する選択をされるケースが出て来ています。

③成長支援型M&A

最後に、冒頭でもお伝えさせていただいた「成長支援型」のM&Aです。

税理士・会計事務所の特徴ともいえるのですが、前述のとおり資格者としての実務能力と経営者として求められるマネジメント能力やマーケティング能力はそれぞれ「=(イコール)」の関係ではなく、すべてにおいて力を発揮する方もいれば、どれかの能力が突出している反面、苦手な部分を持つ方もいらっしゃるのが実情です。

単独で経営をしていく中では、たとえ苦手でもそれぞれの業務をやらざるを得ないところがあるのですが、苦手な部分を補完する関係をM&Aにより達成し、会計事務所としての成長をさらにスピードアップさせるための選択としてM&Aの手法を考えるパターンが出て来ています。

税理士・会計事務所の譲渡価額の決め方

税理士・会計事務所のM&Aをする際に、どの程度の値段で取引されるのか?はよくいただくご相談の一つです。

譲渡価額の決め方は主に2つの方法で考えられます。

  • ①継続売上(顧問業務・確定申告等)の1年分
  • ②正常収益力(その事業で年間で生み出せる利益)の3年分程度
  • ①の継続売上1年分というのは非常にシンプルで、相続税申告などのスポット売り上げを除いた金額の1年分を目安として算出する計算方法です。スポット売上はその性質によって交渉の余地はありますが、基本的には1年分の継続売上がベースとなり交渉をしていく形となります。
  • ②の「正常収益力」は、簡潔に言うと営業利益をベースに代表の私的経費や一過性の経費など、純粋にその事業を継続していくことで発生する利益を計算し、その継続性がどの程度見込めるかによって3年程度で計算していく考え方です。
    どの程度の金額となるかは、個別の事務所により異なる部分もあるため、一度ご相談いただけると幸いです。

税理士・会計事務所のM&Aの場合、譲渡対価が目的となるM&Aはあまり多くはありませんが、譲渡行う上では大事な要素の一つです。

もしかしたらこれからM&Aをすることになるかもしれない、事業を譲渡することになるかもしれないという方は、ぜひ一度事務所の価値がどの程度になるのかを把握していただければと思います。

いざその時になったとしてもスムーズに進行できますし、金額を知っていただくことで先生自身のライブプランも変わってくると思います。

もちろんM&A・譲渡後に働き続けるという選択もありますので、どの程度の給与がもらえるのか?という点も含めてお話させていただきます。

これからM&Aが一般化され、人材の課題を解決できる事務所とそうでない事務所が分かれる中、今後この成長支援型のM&Aを利用する事務所は徐々に増加していくものと思われます。

また、売却・引退ではなく、M&Aや譲渡をきっかけにさらに事務所を成長させるこの手法は、顧問先の中でも増加してくることと思われます。

会計事務所経営も人材の確保や顧問先を伸ばすためのコストは徐々に上がってきている状況にあります。その中で、単独でそのコストやリスクを背負うのも限界が出てきています。

今後の会計事務所の成長課題の解決手法としてのM&Aをぜひご検討ください。

また、船井総合研究所では、企業価値試算、事務所価値試算を無料で行っております。

ぜひご相談ください。

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