【2025年最新】税理士事務所・会計事務所のM&A/事業承継の流れを解説

ここでは、税理士事務所・会計事務所のM&A/事業承継の流れをお伝えします。

士業事務所同士のM&Aの増加傾向

会計事務所の皆様にとっては「M&A」というワード自体はよく聞くお話しかと思います。顧問先のM&Aのご相談やM&A仲介会社との協力関係は古くから多くの事務所が取り組んできたことと思います。

M&A仲介会社からの営業などを通じて、皆様自身も中小企業M&Aが全国的に増加している、というのは肌でお感じなのではないでしょうか?実際に数字上でもM&Aの件数は毎年増加しています。

そのような時流の中、会計事務所のM&Aも増加を続けており、私たちのもとにいただくご相談も目に見えて増えてきています。

ご相談いただくのは、

  • 代表自身のご年齢による退任
  • 後継者不在
  • 承継予定の税理士の経営能力の不安
  • 事務所マネジメントの課題
  • 職員の採用不能、離職に伴う人員不足

こうした理由を背景としたM&A選択肢の可能性です。

実際に会計事務所ではこれまでもM&Aに積極的に取り組む事務所があり、グループ経営も含めて多種多様な形でM&Aが行われてきました。実際にどういう流れでM&Aを検討することになるのか、順を追って説明します。

事業承継の4つの選択肢

一般的に事業承継の選択肢は4種類あるといわれています。「親族への承継」「従業員への承継」「第三者への承継(M&A)」「廃業」の4つです。

親族内に有資格者の方がいる場合は、まずその方への承継を優先して検討します。
親族内でいない場合は従業員の中に有資格者がいる場合はその方への承継という流れになります。
どちらも該当する方がいない場合や、税理士法人化をされている場合などで資格者が代表以外に1名しかおらず、税理士法人の社員となる方を見つけられない、適切な方がいない場合に第三者承継としてM&Aを検討することとなります。

中にはこれらの検討の中で「廃業」を選択される方もいらっしゃいますが、従業員への影響や顧問先への影響を考えると事業継続ができる方向を選択いただく方が多くいらっしゃいます。
「親族内承継」「従業員承継」と「第三者承継(M&A)」で最も大きな違いは、事業承継のプロセスの中で「譲渡対価」が発生するか否か、になります。

もちろん親族や従業員への承継でも譲渡対価を設定することも可能ですが、実際の承継された事務所の方のお話をお伺いすると、譲渡対価をいただかないケースが多いように思われます。
事務所の状況や代表者の考え方にもよりますが、M&Aが増えてきたことでそうした選択肢が取れるようになってきたといえるでしょう。

M&Aのプロセス

M&Aの選択肢を視野に入れた場合は、下記のようなプロセスで検討と交渉を進めます。

  • 事務所の企業価値の算出
  • 承継先候補者を探す
  • トップ面談
  • 基本合意の締結
  • デューデリジェンス
  • 最終契約書の締結
  • クロージング

こうした流れです。

事務所の企業価値の算出

M&Aで相手に提示する価格の算出を行い、M&Aの条件を整理します。企業価値の算出に当たっては、「事務所の売上1年分の8掛け」「継続売上の1年分」「1年間の実態利益の3年~5年分」といった考え方があります。それぞれ計算方法は少しずつ異なりますが、概ね近しい水準で算出されます。

譲渡価額以外にもM&Aに当たっての条件もまとめておきます。自身の待遇、処遇、従業員の待遇、M&A後の事務所の方針の希望などを明確にしておき、今後の交渉の中で伝えていきます。

承継先候補者を探す

譲渡価額の希望や譲渡条件が決まったら、書面にまとめて整理します。事務所名を明かさずに一部の情報を伝える「ノンネームシート」を元に承継先候補者に情報を伝え、詳細を希望する方には具体的な事務所名や概要を記載した「企業概要書」を通じて情報を伝えます。

これらの情報はM&A仲介会社など、仲介者を通じて情報提供することが一般的ではありますが、知人への承継等の場合には直接交渉することもあります。

トップ面談

承継候補者の中から興味を持っていただいた方と直接お会いして、M&A後の経営方針やお互いの事務所の概要を伝えます。お互いの人柄や経営方針などを知り、承継候補を絞り込み、相手を選んでいくことになります。面談した後にM&Aの意向がある場合は意向表明書を提出します。

基本合意書の締結

意向表明書の内容を通じてお互いの希望条件に合意することができた場合は、基本合意書を締結します。譲渡価額や承継後の待遇など、重要な点を合意し、独占交渉をスタートします。

デューデリジェンス

基本合意書の内容に基づき、デューデリジェンス(買収監査)を実施します。財務・税務、労務、法務、ビジネスといった種類があり、M&A後に起こりうるリスクや税務情報が事前情報と正しいか、既存契約の引継ぎに当たっての法務的な問題はないかなどを調査します。デューデリジェンスの内容によっては譲渡条件の修正が入る場合もあります。

最終契約書の締結

デューデリジェンスが終了し、双方が条件に合意した後に最終契約書の作成と締結を行います。契約書の記載内容や些細な表現の違いによってその後のトラブルの原因になることもありますので、契約書の作成や監修は弁護士に依頼することが一般的です。

クロージング

最終契約書の内容に基づき、M&Aを実行します。顧問先の契約の移行や従業員の雇用契約の移行、その他契約の移行などを進めて経営権の譲渡を行います。また、設定した譲渡対価を受け取り、M&Aが完了します。

このような流れでM&Aが行われていきます。それぞれのプロセス一つ一つの中にはより細かいノウハウや注意点もありますので。M&Aを進める上では全体像を把握している仲介会社などのアドバイザーを活用いただくことをおすすめします。

なお、船井総研あがたFASでもM&Aのアドバイザーを務めておりますので、ご不明な点や相談されたいことがありましたらいつでもご相談ください。

税理士/会計事務所のM&Aに関する詳細な情報は、こちらをご参照ください。

1.税理士・会計事務所のM&AのTOPへ
2.税理士事務所・会計事務所;2024年のM&A動向の振り返り
3.税理士事務所・会計事務所のM&A/事業承継の流れを解説
4.税理士法人のM&Aに関するスキームとその後の流れを徹底解説
5.税理士がM&A実施後に意識する顧問先・案件引継ぎの成功ポイント
6.税理士事務所・会計事務所をM&Aした際に発生する手数料とは
7.成功する会計事務所のM&A、失敗する会計事務所のM&A(譲渡希望事務所編)

最後に税理士・会計事務所向けのM&Aレポートを下のバナーから無料でダウンロードいただけます。ぜひご覧ください。


山中 章裕

(株)船井総研あがたFAS マネージャー

大学卒業後、船井総合研究所に入社。税理士・会計事務所のコンサルティングに従事。 その後、HR部門にて住宅、不動産、建設、リフォーム、IT、製造、運送、給食、保育園など多くの業種の人材開発を支援。現在は、成長支援型のM&Aコンサルティングに従事。

山中 章裕

(株)船井総研あがたFAS マネージャー

大学卒業後、船井総合研究所に入社。税理士・会計事務所のコンサルティングに従事。 その後、HR部門にて住宅、不動産、建設、リフォーム、IT、製造、運送、給食、保育園など多くの業種の人材開発を支援。現在は、成長支援型のM&Aコンサルティングに従事。