【2025年最新】税理士がM&A実施後に意識する顧問先・案件引継ぎの成功ポイント

税理士事務所・会計事務所のM&Aにおいて最も重要な要素の一つである、顧問先・案件引継ぎの成功ポイントについてお伝えします。

士業事務所はM&Aとの相性が良い

税理士事務所・会計事務所の基礎となる顧問契約というビジネスは、士業というどちらかというと個人色の強いビジネスの中でも非常にM&Aとの相性が良く、M&Aの中でも比較的成功確率の高いビジネスといえます。

理由としてはいくつかの要因がありますが、「顧客との関係性」「顧問サービス提供実務の進め方」「契約形態」これらが影響していると思われます。

顧客との関係性

税理士事務所・会計事務所の顧問先との関係性においては、比較的良好な関係性を築けることが多く、上下関係という表現は適切ではないかもしれませんが、一定の信頼関係のもと、税理士事務所が主導的な立場でサービス提供ができていることが多いように思います。

こうした関係性を背景として、M&Aの際にも顧問先からの一定の理解を得やすいビジネスであると感じています。

顧問サービス提供実務の進め方

税理士事務所・会計事務所のサービス提供のあり方として、事務所の規模にもよりますが、代表となる税理士有資格者が全ての顧問先と面談を毎月行うことは多くなく、担当者が月次の顧問サービス実務を担当し、資料の作成や財務状況の報告・説明・相談を担当されるケースが多くあります。

そのため、有資格者1人のグリップにより全ての顧問先を確保しているわけではなく、担当者によるグリップや関係性構築が顧問契約の維持に影響を与えているというケースは比較的多いといえます。

反面、それが影響してしまい、担当者の離職に伴う顧客の離脱ということが起きやすいデメリットもありますが、逆に言えば、担当者が辞めずに続ければ顧問契約望も続きやすいというメリットがあります。この点はM&Aにおいてもメリットといえる部分です。

契約形態

顧問契約の性質上、少なくても毎月一定の役割が継続し、そう何度も税理士事務所・会計事務所を変更する経営者は多くはありません。また、実務上、解約時であっても後任の税理士事務所・会計事務所が決まらない間に解約が先行することが少ないです。

そのため、税理士変更には一定のハードルがあり、中には先代経営者から何十年も同一の税理士事務所・会計事務所との顧問契約を継続しているというケースもあります。譲渡先事務所の代表が継続勤務されるかどうかによる影響もありますが、M&Aを実行した後でも比較的安定した顧問契約の継続は見込める可能性が高いといえます。

士業事務所の顧問先等の引継ぎのプロセス

このように税理士事務所・会計事務所のM&Aでは、現状の顧問契約の引継ぎが見込めるため、積極的にM&Aの検討が行われていると思われます。とはいえ、これらの状況的要因に頼って顧問先の引継ぎを疎かにしてよいわけではありません。どういうプロセス、どのような進め方で行うのが良いかも解説いたします。

顧問契約の承継プロセス

 M&A後の顧問契約の承継においては、まず「顧問契約の一覧化」を作成し、「承継告知の対応方法」を個別で設定します。顧問契約の一覧を作る中では、顧問契約の継続期間、年間報酬額、代表者の年齢、提供しているサービス内容などの情報をまとめて、事務所内での優先順位を考慮して順次対応を進めていきます。

承継告知の方法としては、基本的には全件訪問・対面の上告知を行い、事務所の経営形態の変更を告知します。M&Aをした、という表現よりは「経営統合」「法人化」など前向きな表現で伝えていきます。

なお、告知を伝える際には引き継ぎ先の事務所経営者や幹部の方同席のもと、承継元・承継先どちらの担当者もいる状態で伝えるようにします。

 顧問先以外の関係性の承継について

顧問先以外にも、顧問先の紹介をしていただく紹介元となる方や普段依頼をしている社会保険労務士事務所や司法書士事務所など、一定の関係性のある先に関しては、継続し低廉研していく可能性もあるため、人脈、関係性の承継も行えるようにします。 これらの顧問先以外の関係者についても連絡リストを作成し、直接お伝えする先には顧問先同様個別連絡の上、対面、承継先、承継元の幹部と一緒に訪問し、M&Aのご報告をします。

また、上記の顧問先、関係先に対しては経営統合の案内を書面でお送りし、告知もします。

この辺りの告知の手続きや段取りについては譲受先の事務所が主導となり行うことが一般的ですので、経営統合実務の間に双方打ち合わせの上進め方を決定します。

税理士事務所・会計事務所は比較的顧問先の引継ぎをしやすく、M&Aに向いているという所はありますが、1件1件の承継を丁寧に行うこと、また顧問先に限らずこれまでの歴史の中で培った人脈ともいえる関係先の承継まで行うことで、M&Aの効果を最大化することが可能です。

丁寧な承継をしていけるよう、入念な準備の中で承継を行うことをお勧めします。これらの承継実務についても船井総研あがたFASではアドバイスをさせて頂いております。M&Aを進めるけれどその進め方を相談したい方などはぜひ一度ご相談ください。

税理士/会計事務所のM&Aに関する詳細な情報は、こちらをご参照ください。

1.税理士・会計事務所のM&AのTOPへ
2.税理士事務所・会計事務所;2024年のM&A動向の振り返り
3.税理士事務所・会計事務所のM&A/事業承継の流れを解説
4.税理士法人のM&Aに関するスキームとその後の流れを徹底解説
5.税理士がM&A実施後に意識する顧問先・案件引継ぎの成功ポイント
6.税理士事務所・会計事務所をM&Aした際に発生する手数料とは
7.成功する会計事務所のM&A、失敗する会計事務所のM&A(譲渡希望事務所編)

最後に税理士・会計事務所向けのM&Aレポートを下のバナーから無料でダウンロードいただけます。ぜひご覧ください。



山中 章裕

(株)船井総研あがたFAS マネージャー

大学卒業後、船井総合研究所に入社。税理士・会計事務所のコンサルティングに従事。 その後、HR部門にて住宅、不動産、建設、リフォーム、IT、製造、運送、給食、保育園など多くの業種の人材開発を支援。現在は、成長支援型のM&Aコンサルティングに従事。

山中 章裕

(株)船井総研あがたFAS マネージャー

大学卒業後、船井総合研究所に入社。税理士・会計事務所のコンサルティングに従事。 その後、HR部門にて住宅、不動産、建設、リフォーム、IT、製造、運送、給食、保育園など多くの業種の人材開発を支援。現在は、成長支援型のM&Aコンサルティングに従事。