予備校のM&Aとは、予備校の経営権または事業を第三者へ引き継いでもらい、事業を続けてもらう手法です。
価格の目安は営業利益の約3年分に時価純資産を足した水準で、最終的にはPL(損益)を軸に判断されます。
総合型選抜と学校推薦の拡大で大学受験の構造が変わり、一般入試に強い旧来型の予備校はダウントレンドに入っています。だからこそ、価値が相対的に下がる前に動きたいオーナーが増え、予備校のM&Aの相談が増えています。
後継者不在で廃校を考えていた経営者が、第三者への譲渡で事業を残す選択をするケースは珍しくありません。
本記事では価格の決まり方・手続きの流れ・デューデリジェンス・実際の事例・買い手側の注意点・仲介選びまでを、予備校に特化して整理します。
経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。 プロの目利きで自社の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。

予備校業界のM&Aの現状——なぜ今、再編が加速しているのか
予備校業界のM&Aは、大学受験制度の変化という業界固有の逆風の中で件数を増やしています。
少子化と映像授業の普及が学習塾と共通する圧力なら、入試制度の変化は予備校に固有の圧力です。この二重三重の構造変化が、譲渡を考える売り手と、規模拡大を狙う買い手の双方を増やしています。
18歳人口の減少と予備校業界への直撃
予備校が相手にする18歳人口は、長期の減少局面に入っています。
通う生徒の母集団が縮めば、同じ校舎・同じ講師陣を維持しても売上は先細りになります。
その結果、予備校経営の土台そのものが揺らいでいます。
ここに大学受験制度の変化が重なります。
総合型選抜と学校推薦が広がり、一発勝負の一般入試で合否が決まる生徒の割合が縮んできました。推薦系のパイが激増する一方で、一般入試対策を磨いてきた旧来型の予備校は、得意とする市場そのものが縮小していきます。
この制度変化を「少子化以上に大きく影響する」逆風と受け止めているオーナーが増えています。予備校業界がダウントレンドにあるという見立ては、ここに根があります。
映像授業・オンライン学習サービスの台頭が変えた競争環境
もう一つの変化が、映像授業の一般化です。
スタディサプリのような低価格のオンライン授業で、大手予備校に近い内容の講義が自宅で受けられる時代になりました。校舎に通って対面で受ける授業の優位性を、料金面でどう説明するかが難しくなっています。
この変化はM&Aの評価軸にも表れます。
実際、人が教えるモデルと映像で教えるモデルでは、たとえ同じ収益構造でも映像モデルのほうが高く評価される傾向があります。
理由は単純で、人を仕入れる手間が少なくて済むからです。
優秀な講師を継続的に確保しなければ回らない対面モデルに対し、映像はコンテンツさえあれば供給が安定します。買い手はこの「人への依存度の低さ」を価値として見ています。
予備校特有の経営課題:講師・合格実績・校舎賃貸の三重負担
予備校は、教える人材・積み上げた合格実績・主要駅周辺の校舎という3つの資産で成り立っています。裏を返せば、この3つがそのまま重荷にもなります。
講師は商品そのものです。教えられる人は限られ、近くに供給源となる大学がなければ優秀な講師を仕入れにくくなります。
合格実績は集客の核ですが、その実績を出してきた看板講師に強く依存していれば、その人が抜けた瞬間に価値が揺らぎます。
校舎は比較的高い商圏のターミナル立地に構えるほど集客力が高い反面、賃料負担も重くなります。そのため、生徒数が減れば、この固定費が一気に経営を圧迫します。後継者不在がそこに加わると、オーナー一人で抱え込める範囲を超えてしまいます。
予備校のM&Aが選択肢に上がる背景には、この構造的な負担の重なりがあります。

予備校のM&Aで売却側が得られるもの
予備校のM&Aで譲渡側が手にするものは、廃校との比較で初めてはっきりします。
事業を閉じるのか、誰かに引き継いでもらうのか——選んだ道によって、同じ「経営から退く」でも、生徒・講師・経営者本人に残るものがまるで違います。
後継者不在のまま廃校するより何が変わるのか
廃校を選べば、在籍する生徒は受験の途中で通う場所を失います。
長年その地域で積み上げた合格実績も、看板を下ろした時点で途切れます。
講師は職を失い、経営者の手元には譲渡対価ではなく原状回復などの費用負担が残ります。
予備校のM&Aなら、事業が続くので生徒は同じ校舎で受験まで走り切れます。
承継は第三者への譲渡が中心で、引退を前提に経営から退きたいオーナーの受け皿になります。親族内承継を望む声は実際に多いものの、創業オーナーから2代目への承継は現場がついてこず難しい局面が少なくありません。
従業員への承継も、買取資金の調達という壁があってあまり広がっていません。そのため第三者承継が、こうした行き止まりを避けて事業を未来に渡す現実的な道になります。
経営者の個人保証・負債から切り離されるまでの流れ
中小の予備校では、校舎の賃借や運転資金の借入にオーナー個人が連帯保証を入れているケースが少なくありません。廃業してもこの保証や負債は消えず、経営者個人に残り続けます。
一方、株式譲渡で会社ごと引き継いでもらう形をとれば、買い手が事業を承継する過程で、金融機関との交渉を通じて個人保証を外す手続きを進めていきます。
負債を含めて新しい経営体に組み込まれることで、経営者個人が背負ってきた金融債務のリスクから離れられます。
こうして、譲渡対価を受け取りながら、保証からも解放されます。この二つを同時に実現できる点が、廃業との決定的な差です。
従業員・講師の雇用を守る条件の設定方法
予備校は人材こそが価値の源泉です。
だからこそ、雇用と指導体制をそのまま引き継いでもらうのが原則になります。
実務では雇用条件をM&Aのタイミングで変えることはせず、当面はほぼ全員に残ってもらう前提で進めます。条件をこの局面で動かすと現場が揺れ、トラブルになりやすいからです。
アルバイトや非常勤の講師を「方針が違うから」と入れ替えることも避けるのが望ましく、買い手側にもその点は控えるよう求めるのが原則です。
なお、講師に譲渡の事実を伝えるのは契約締結後です。運営を担う講師陣のための話として、何も変わらないこと、とりわけ金銭面の条件は変えないことを丁寧に伝えます。
この順序と約束を契約の前提に組み込んでおくことが、雇用を守る一番の方法です。

予備校のM&Aの価格相場と企業価値の算定方法
予備校のM&Aの価格は、どう決まるのでしょうか。
一般的な相場の考え方と、予備校ならではの加点・減点要因を順に整理します。
前提として押さえておきたいのは、立地や合格実績といった魅力も、最終的にはPL(損益)を通してしか評価に乗らないという点です。
年倍法(時価純資産+営業権)の計算と予備校への適用
中小の予備校で最もよく使われるのが年倍法です。
時価で評価し直した純資産に、営業権(のれん)を上乗せして価格を出します。
営業権の目安は営業利益の約3年分です。BS上の時価純資産にこの営業権を足した金額が、おおまかな譲渡価格のイメージになります。
一教室から数教室の規模では、営業権が営業利益の3倍程度に収まることが多く、一般的な相場とほぼ同じ水準です。
一方で、規模が大きく実績があるほど倍率は高くなりやすい傾向があります。
ただ、ここで強調しておきたいのは、最後はPLで判断されるという点です。
立地や口コミがどれほど良くても、PLが伴っていなければ買い手はつきません。
生徒数・継続率・立地・ブランドは、それ単体で加点される指標というより、最終的にPLへ反映される要素として見られます。
EBITDAマルチプルが使われる場面
規模が大きくなり、同業や同規模の成約事例と比べて価格を出せる段階になると、EBITDA(償却前営業利益)に一定の倍率を掛けるマルチプル法も使われます。
複数校舎を展開する法人や、買い手が上場企業のような場面でなじむ手法です。
とはいえ、中小オーナーの単独校に近い案件では、年倍法のほうが実態に合うことが多くなります。実務では複数の手法を突き合わせて妥当な水準を探りますが、土台になる発想は同じで、稼ぐ力(PL)にどれだけの上乗せを認めるかという一点に行き着きます。
予備校の企業価値を上げる要因・下げる要因
予備校の価格を押し上げるのも、押し下げるのも、突き詰めれば「将来も稼ぎ続けられるか」です。顧客ニーズが伸びている領域か、他にない希少性があるか、そして収益性が安定しているか——この3つが揃うほど評価は高くなります。
一方で、5年後に対象エリアの子どもの数が半分になるような人口動態は、デューデリジェンスでもエリアの将来人口として必ず見られ、評価を下げる要因になります。
地方都市ほどこの数字が効きます。
合格実績・ブランド力が価格に与える影響
合格実績は、予備校の付加価値の核です。
その地域で一番偏差値の高い学校に毎年まとまった人数を送り込んでいる、といった実績は、それ自体が強い価値になります。
評価の対象になりやすい合格実績のレンジは、少なくとも関関同立・MARCH以上が一つの目安です。ただし地域特性もあり、「これ以上でなければ評価されない」という確定した基準があるわけではありません。
注意したいのは、合格実績が特定の看板講師に紐づいているケースです。
その講師が抜ければ実績の継続性が揺らぐため、買い手は実績を生み出している源泉が個人なのか組織なのかを見極めようとします。
生徒数の推移と在籍単価の重要性
生徒数や在籍単価は、PLを構成する最も直接的な要素です。
月次の在籍推移を複数年分さかのぼって確認するのが実務の標準で、減少が続いているのか、底を打って戻しているのかで評価は変わります。
予備校は高単価系と低単価系で収益構造がかなり違います。だからこそ、生徒数だけを単独で見るのではなく、単価と掛け合わせて収益にどう効いているかで判断します。
在籍数が多くても単価が崩れていれば評価は伸びず、生徒数が少なくても高単価で利益が厚ければ評価されます。ここでもPLが軸になります。
大学受験専門型と総合学習塾型で変わる評価軸
同じ「塾・予備校」でも、大学受験に特化した予備校型と、小中学生を含む総合学習塾型では、評価で見る景色が変わります。
まず予備校型は、制度変化の影響を正面から受けます。総合型選抜の拡大で一般入試対策の需要が縮むため、一般入試に強みを置いてきた予備校ほど将来の収益見通しが慎重に見られます。
一方、総合学習塾型は受験年齢層が幅広く、地域の人口動態の影響を受けますが、入試制度の一点に依存しない分だけ収益の振れ方が異なります。
買い手が水平統合で狙う業態によって、どちらの評価軸を当てるかが決まります。
学習塾の売却相場と企業価値評価のしくみについては、こちらのコラムもおすすめです。
『学習塾の売却相場・企業価値評価|年倍法の算定としくみを実務で解説』

予備校のM&Aの売却手続きと流れ
予備校のM&Aは、相談から始まりクロージングで終わるまで、いくつかの段階を踏みます。
知り合い同士のマッチングが多い業界では半年程度で決まることもありますが、一般的には6か月から1年程度を見込んでおくと進めやすいです。
相談・情報整理から候補先探しまで
最初にやることは、自社の状況を数字で棚卸しすることです。
決算書を複数期分、月次の試算表、校舎ごとの生徒数推移、講師の在籍状況といった資料をそろえます。これらを整理して、強みと弱みを把握します。
譲渡を考え始めたら、価格に近づけるための準備を1年がかりで進めておくと効果的です。
まず直近1年のPLを整えます。販促費をかけてでも生徒を集めて損益を良く見せ、接待交際費のような不要な経費を削ります。
1年かけて数字を整えていくのが基本です。あわせて講師の離職率を1年前から下げておきます。
人材が価値の源泉だからこそ、譲渡直前に現場が崩れていないことが価格に直結します。
こうして準備が整ったら、仲介やアドバイザーを通じて買い手候補を探していきます。
トップ面談・基本合意から契約締結まで
買い手候補が見つかると、経営者同士のトップ面談に進みます。数字に表れない経営方針や、講師・生徒への向き合い方をすり合わせる場です。
ここで方向性が合えば、基本合意書を結び、独占交渉に入ります。
次に、デューデリジェンスを経て、最終契約の締結とクロージングへ進みます。
講師に譲渡を伝えるのは、この契約締結の後です。
運営を担う講師陣に向けて、雇用も金銭面の条件も変わらないことを伝えます。
順序を守ることが、現場の動揺を抑えるうえで欠かせません。
予備校のデューデリジェンスで必ず確認される項目
予備校のデューデリジェンスには、学習塾以上に「人」と「立地」に踏み込んだ確認が入ります。最大の落とし穴は、教えられる講師が限られるという点です。
人が教えるモデルなら、講師の供給量がそのまま事業の継続性を左右します。
近くに大学があるか、地方国公立が近くて優秀な講師を仕入れやすい立地かまで見られます。
立地が集客だけでなく、商品力そのものに直結しているのが予備校の特徴です。
講師・チューターの雇用状況と離職リスク
誰がどの科目を担当し、合格実績のどこに効いているかを、講師単位で把握します。
実務では雇用も指導体制もそのまま引き継ぐのが原則で、当面はほぼ全員が残るのが通例です。条件をこのタイミングで変えるとトラブルになりやすいため変えません。
ただし、合格実績を一人の看板講師が支えている場合は注意が必要です。
その人が抜ければ実績の継続性が損なわれるため、買い手は依存度を慎重に確認します。
実際、最初の段階では何も変えないので残留率は高く、信頼関係を築いたうえで2〜3年かけて少しずつ体制を整えていくのが現場の進め方です。
校舎の賃貸条件と移転・閉鎖の可能性
予備校はターミナル立地に校舎を構えることが多く、賃料は経営の重い固定費です。
賃貸借契約の残存期間、更新条件、名義変更の可否を一件ずつ確認します。
事業譲渡を選ぶと賃貸借契約は自動では引き継げず、賃貸人の承諾を得て買い手名義で結び直す必要があります。
仮に承諾が得られない、あるいは保証金の積み増しを求められると、移転コストやスケジュールの遅れにつながります。
立地が商品力の一部である予備校では、校舎を動かすこと自体が集客力の毀損になりかねないため、この確認は価格交渉にも影響します。
合格実績データの正確性と著作権帰属
合格実績は予備校の最大の看板です。
だからこそ、その数字が正確か、どこまでが自校の指導による合格かが検証されます。
模試の成績資料や合格体験記、講師個人が発信してきた教材やコンテンツの帰属も論点になります。
退職した講師個人に紐づくコンテンツが実質的な集客源になっていると、その人が抜けた後の扱いが問題になります。デューデリジェンスの段階で、実績データと教材の権利関係を整理しておくことが必要です。
デューデリジェンスで引き継ぐ側から求められる資料には、業種を問わず共通する部分があります。準備すべき資料と進め方については、こちらのコラムもおすすめです。
『デューデリジェンス(DD)チェックリスト|売り手が準備すべき資料と進め方』

予備校のM&Aの事例——実際に成立した取引から読み取れること
公開されている予備校のM&Aの事例から、買い手がどこに価値を見て動いているかを読み取ります。大手による取り込み、映像系と対面系の統合、異業種からの参入という3つの型に整理します。
大手グループによる地方予備校の取り込み事例
大手グループが地域の有力予備校を傘下に収める動きは続いています。
株式会社ナガセは株式会社早稲田塾を子会社化し、大学受験指導の体制を広げました。
同じくナガセはヒューマレッジを傘下に収めています。株式会社ベネッセホールディングスは京都洛西予備校を子会社化し、地域の予備校事業を取り込みました。
これらに共通するのは、買い手が既存ブランドや合格実績を生かしながらエリアと生徒基盤を広げている点です。
実際、関西の大手塾が、そのエリアで圧倒的な実績を持つ地域有力塾を、売上と同程度の規模の金額で引き継いだ例も現場では知られています。
買い手がどうしても欲しい業態やエリア実績に合致したとき、価格は通常の算定を超えて上振れします。
映像授業系と対面指導系の統合事例
映像で教えるモデルと、人が対面で教えるモデルを組み合わせる統合も進んでいます。
アガルートによるジェニュインの譲受は、オンライン教育の事業者が指導コンテンツを取り込んだ動きとして知られています。
映像系の事業者が対面の予備校を引き継ぐと、オンラインの効率性と対面の手厚さを一つのグループで提供できます。
同じ収益構造なら人への依存が少ない映像モデルのほうが高く評価される一方、合格実績を生む対面指導の現場価値も依然として大きいといえます。
だからこそ、両者を補い合う形での統合に、買い手の狙いがあります。
異業種(出版・EdTech)による予備校買収事例
予備校は、学習塾よりも異業種からの参入が起きやすい領域です。
たとえば武田塾や東進のようにフランチャイズで校舎を広げるモデルでは、加盟する側にさまざまな業種の人が入ってきます。収益を目的に教育へ参入する事業者が一定数いるためです。
加えて、出版やEdTechからの参入も見られます。
株式会社増進会出版社が栄光ホールディングス株式会社を完全子会社化した事例のように、出版・通信教育の事業者が対面の教育事業を取り込む動きがあります。
異業種の買い手は、既存事業との掛け合わせで生徒接点や収益機会を広げることを狙っています。

買い手が見るべき予備校のM&Aの注意点
買い手にとって予備校のM&Aの成否は、引き継いだ後にかかっています。
価格交渉で勝っても、講師が抜け、生徒が離れれば、買った価値そのものが目減りします。
だから注意点は成約後の人と情報の扱いに集中します。
M&A後に講師が離職するリスクとその防止策
予備校は人材こそが価値の源泉です。
新しいオーナーのやり方が講師陣に合わなければ、モチベーションが下がり、その先で生徒数が落ちることは大いにあり得ます。
逆に、評価制度を見直して現場のやる気が上がり、生徒数が伸びた例も実在します。
つまり、分かれ目はカルチャーフィットです。
防止策の核心は、最初の2年のコミュニケーションにあります。
実際、ある会社では、最初の2年、買い手の社長や幹部が現場の幹部と懇親の場を増やして関係を築いていました。そして2〜3年はルールを大きく変えません。
少なくとも待遇の下方修正はしないようにします。信頼関係ができてから変化を加えるのが鉄則です。この順番を守ることが、離職を防ぐ一番の方法です。
生徒・保護者への情報開示のタイミングと方法
譲渡の事実をいつ誰に伝えるかは、慎重に設計します。
講師に伝えるのは契約締結後で、運営を担う講師陣のための話として、何も変わらないことを先に伝えます。この順序が崩れると現場が動揺します。
生徒や保護者への開示も同じ発想です。
「先生が変わるのではないか」「指導方針が変わるのではないか」という不安が、退塾の引き金になります。だからこそ、経営体が変わっても授業・担当講師・指導方針が続くことを、落ち着いたタイミングで丁寧に伝えます。
受験期の直前に不安を煽らないよう、開示の時期も学事日程に合わせて選びます。
合格実績ブランドをPMIで引き継ぐための実務
合格実績は、予備校の価値そのものです。こ
れをPMIで引き継ぐには、実績を生んでいる源泉を守ることが先決になります。
看板講師が実績の核なら、その人に残ってもらうための処遇と関係づくりを最優先にします。
加えて、ブランド名や校舎の立地も、そのまま継続することで生徒・保護者の安心につながります。
実務では2〜3年は大きく変えず、現場の信頼を保ったまま運営を引き継ぐのが定石です。
合格実績は単年で作れるものではないため、引き継いだ実績を翌年も再現できる体制を、買い手が時間をかけて整えていきます。

予備校のM&Aを成功させる仲介・アドバイザーの選び方
予備校のM&Aを進めるとき、誰に伴走してもらうかで結果が変わります。
価格を出すだけなら多くの会社ができますが、人材が価値の源泉となる事業を引き継いだ後まで支えられるかどうかは、相手によって大きく差が出ます。
業界特化の知見を持つかどうかが分かれ目になる理由
予備校は、講師の供給量・立地と商品力の結びつき・合格実績の評価といった固有の論点を抱えています。
これらを理解していないアドバイザーだと、価格の根拠も、デューデリジェンスで見るべき勘所も外しかねません。
だからこそ、選ぶときに重視したいのは、引き継ぎ後のPMIまで見据えてくれるかどうかです。人材が価値の源泉なので、引き継いだ後が難しくなる相手では困ります。
成約して終わりの売り切り型ではなく、カルチャーフィットを優先し、引き継いだ後まで伴走してくれる相手を選びます。これが、相手を見極めるうえでの基準になります。
手数料体系と利益相反リスクの確認ポイント
手数料は、成約金額に応じて料率が決まるレーマン方式が一般的です。
譲渡金額が大きくなるほど料率が下がる累進構造で、小規模案件には最低報酬額が設定されていることが多くなっています。複数社に当たって体系を比べることをおすすめします。
あわせて確認しておきたいのが利益相反です。
売り手と買い手の両方から手数料を取る仲介の形では、どちらの利益を優先するのかという構造的な緊張があります。
実際、カルチャーフィットを優先してほしいという売り手の希望と、成約を急ぎたい仲介の事情がずれることもあります。
料率の安さだけで決めず、誰のために動く立場の相手なのかを最初に確かめてください。
仲介会社の種類と手数料の比べ方については、こちらのコラムもおすすめです。
『学習塾のM&Aの仲介会社・手数料の選び方|種類・費用・PMI伴走まで実務で解説』

【まとめ】予備校のM&Aを検討するオーナーが最初に動くべきこと
予備校のM&Aは、廃校では手にできない譲渡対価と、生徒・講師への責任を果たすことを両立させる手段です。
総合型選抜・学校推薦の拡大で一般入試のパイが縮み、業界はダウントレンドにあります。
同じことを続けていれば利益は下がり、売り物件が増えて価値は相対的に下がっていきます。
だからこそ、動くならできるだけ早いほうが望ましいといえます。先送りには合理性がありません。
価格は営業利益の約3年分に時価純資産を足した水準が目安ですが、最終的にはPLで判断されます。合格実績と立地が付加価値の核で、人が教えるモデルより映像モデルのほうが高く評価されます。
デューデリジェンスでは教えられる講師の供給量が最大の論点になります。
引き継いだ後は、最初の2年のコミュニケーションと、2〜3年はルールを変えないことが、講師の離職を防ぎ価値を守る鍵です。
最初に動くべきことは、自社の数字を棚卸しし、1年がかりでPLと離職率を整えながら、予備校の現場と教育業界のM&Aの両方を知る相手に相談することです。
価格を出して終わりではなく、引き継いだ後まで伴走してくれるかどうかを、最初の相談で見極めてください。
船井総研あがたFASでは予備校のM&Aの相談を無料で受け付けています。
自社の予備校の価値をおおまかに知りたいという段階からでも構いません。
業種別の資料は こちらからダウンロードできます。
学習塾のM&Aの全体像については、こちらのコラムもおすすめです。
『学習塾のM&Aで知っておくべき全知識|売却・買収・事業承継の流れと価格相場を網羅』
経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。 プロの目利きで自社の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。
【業界専門コンサルタントが担当】「出口戦略」診断で自社の価値を正しく守る。ベストな承継を実現するための第一歩。

よくある質問
Q. 予備校のM&Aとは何ですか?廃校とどう違いますか?
予備校のM&Aとは、予備校の経営権または事業を第三者へ引き継いでもらい、事業を続けてもらう仕組みです。廃校では在籍生徒が受験の途中で通う場所を失い、講師は職を失い、譲渡対価も得られません。M&Aなら事業が続くため、生徒は同じ校舎で受験まで走り切れ、講師の雇用も守られ、経営者は譲渡対価を受け取れます。原状回復などの廃校コストも発生しません。後継者不在のオーナーにとって、廃校の代わりに事業を未来へ渡す選択です。
Q. 予備校の譲渡価格はどのくらいですか?
おおまかな目安は、時価純資産に営業権を足した年倍法の水準で、営業権は営業利益の約3年分です。一教室から数教室の規模では営業権が営業利益の3倍程度に収まることが多く、一般的な相場とほぼ同じです。規模が大きく実績があるほど倍率は高くなりやすい一方、最終的にはPL(損益)で判断されます。合格実績や立地が良くてもPLが伴わなければ評価は伸びません。正確な算定は企業価値評価の専門家への依頼をおすすめします。
Q. 予備校のM&Aにはどれくらいの期間がかかりますか?
相談開始から成約・クロージングまで、一般的には6か月から1年程度が目安です。予備校業界は知り合い同士のマッチングが多く、条件が整えば半年程度で決まるケースもあります。一方で複数校舎の賃貸借確認や、買い手探しに時間がかかる案件では1年以上かかることもあります。譲渡価格に近づけるための準備に1年を充てる場合は、その期間を別途見込んでおくと進めやすいです。
Q. 人が教える予備校と映像授業の予備校では、評価はどう違いますか?
同じ収益構造であれば、映像モデルのほうが高く評価される傾向があります。理由は、講師という人を仕入れる手間が少なくて済むビジネスモデルの優位性です。人が教えるモデルは教えられる講師が限られ、近くに大学があるかなど立地に供給量が左右されます。一方で対面指導は合格実績を生む現場価値が大きく、軽視されるわけではありません。買い手は人への依存度と実績の継続性の両面を見て評価します。
Q. 予備校のM&Aで講師が辞めてしまわないか不安です。どう対策しますか?
人材が価値の源泉である予備校では、雇用も指導体制もそのまま引き継ぐのが原則で、当面はほぼ全員が残るのが通例です。条件をこのタイミングで変えるとトラブルになりやすいため変えません。鍵はカルチャーフィットで、最初の2年は買い手の経営層と現場の幹部がよくコミュニケーションを取り、2〜3年はルールを大きく変えないことが有効です。少なくとも待遇の下方修正はしません。信頼関係を築いてから段階的に変化を加えるのが、離職を防ぐ実務上の定石です。