旅館

旅館M&A譲渡対価の相場観vol2

2024年以降の宿泊業新規参入と好況感

2024年以降(アフターコロナに入り)、特に旅館業のM&A相場観に大きな影響を与えているのは「宿泊業に新規参入を希望する事業社」です。なぜなら、コロナ禍を経て、新規参入事業を模索する事業社が最も注目している業種筆頭が宿泊業と言っても過言ではないからです。多くの業種が「人口減少による市場縮小」という課題に向き合わなければならない中で、新規事業への挑戦を模索する事業社が増えるのは当然のこととも思います。

そんな中、様々な追い風があって驚異的な好況となっている業種である宿泊業。中でも、宿泊業の中でも旅館業というのは、新規参入が比較的検討し易い業態といえます。大型化が進むビジネスホテルやリゾートホテルという業態は、旅館業に比べて運営面の難易度が上がると考えられる中、比較的小規模の旅館業は新規参入事業社が検討し易い案件になるのです。

既存宿泊事業者の財務ひっ迫感

 ただ、一方で、以前から宿泊業を営んでいる事業社の多くは、コロナ禍で受けた財務面のダメージから回復していない状況が散見されます。2024年以降、業績は回復してきたものの、借入金過多傾向や、修繕等に手が付ける余裕がない状況が散見され、新規投資に舵取りをしにくい状況です。

多くの既存事業社は、財務面が回復するまでもう少し時間を要すると思います。以前から宿泊事業を営む既存事業社の中にはM&Aを継続検討している事業社もいらっしゃいます。しかし、総じて、案件を厳選して慎重に検討せざるを得ない事業社が多いと考えられる状況です。ので、M&Aにて譲渡を希望する企業様においては、既存の宿泊業事業社にフラれても過剰に気にせず、「まだまだ自社が出会うべき企業様があるはず」と前向きに捉えていくことも重要と思います。

旅館業のM&Aの譲渡対価決定要因

そして、旅館業に限らずなのですが、M&A案件の場合「事業収支が赤字or黒字か?」という点は譲渡対価の決定に非常に大きな影響を持ちます。再投資で業績が飛躍する可能性が高い譲渡案件においても、現在の事業収支が赤字ならば価値のつくM&A成立は非常に難しい。ただ、ほんの少しでも黒字であれば業績飛躍の余地が評価されることがあります。

弊社においても、特に2024年以降、多くの譲渡希望社から相談いただいておりますが、黒字化している施設は少数。多くの譲渡希望企業様からは赤字の状況でのご相談をいただくのが実情です。そのようなご相談をいただく中で、「もう少しで黒字化するのに・・・」と思うこともしばしば。M&Aで相談いただいた企業様であるにも関わらず、黒字化するまでの道筋と手法論を強くご提案するのも弊社の特徴です。少し横道にそれましたが、旅館業の相場観としては赤字企業が多いという点もそれを押し下げている要因と言えます。

 まとめ

2025年において、旅館業M&Aの相場観を形成しているのは旅館業への新規参入を希望する事業社の事業拡大意欲。そして、既存施設が赤字から黒字化するか?の二点です。譲渡を希望する企業様においては、既存事業黒字化を目指すとともに、旅館業への新規参入を希望する譲受希望社との出会いを模索することが肝要といえます。


旅館のM&Aに関する詳細な情報は、こちらをご参照ください。

1.旅館M&AのTOPページへ
2.2024年の旅館業界M&A振り返り
3.旅館業M&Aのメリット・デメリット
4.旅館業M&Aの特徴
5.旅館M&A譲渡対価の相場観vol1
6.旅館M&A譲渡対価の相場観vol2
7.旅館M&Aの注意点

奥野 倫充

(株)船井総研あがたFAS ディレクター

1996年に船井総合研究所に入社。1998年よりパチンコ業界のコンサルティングに従事している。2019年にパチンコ法人のM&A仲介案件を経験。その後、レジャー産業事業者向けM&Aコンサルティングに従事している。

奥野 倫充

(株)船井総研あがたFAS ディレクター

1996年に船井総合研究所に入社。1998年よりパチンコ業界のコンサルティングに従事している。2019年にパチンコ法人のM&A仲介案件を経験。その後、レジャー産業事業者向けM&Aコンサルティングに従事している。