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不動産仲介業界(売買)M&Aの時流・今後

  • 住宅・リフォーム M&Aレポート
不動産 M&A

株式会社船井総合研究所の吉川です。不動産仲介業界(売買)において、長らくコンサルティング活動を実践してきました経験から、今回不動産仲介業界(売買)のM&Aにおける時流について解説させて頂いています。

M&Aが活発化している不動産仲介業界(売買)において、昨今の時流を踏まえて、その背景はどうなっていて、成長する企業はどのようなM&A戦略を描き、実践しているのか、そのヒントを見つける機会になれば幸いです。

1.不動産仲介業界におけるM&Aの時流

・売り手企業の特徴

不動産仲介業界のM&Aで実行される理由として、圧倒的に多いのが後継者問題です。順調に経営を続けてはいるものの、次の適材の承継者がいない場合、業績・財務状況が良く企業価値のあるうちに希望する買い手企業へ株を売却し、第二の人生設計を立てるというものです。

この第二の人生設計は大きく2パターンに分けることができます。

1つ目は、株式譲渡した後に役員(経営者)も引退するパターンです。高齢の売り主の方に多く見られますが、一部若い売り主であっても、M&A後に別事業を行うことを希望する方等はご引退されることもあります。

ここで注意しなければならないのが、引退後の会社の経営についてです。前述したように、そもそもM&Aを選択されるに至った理由として後継者問題が多いのは、親族・従業員に適任な後継者がいないことがその背景にあると考えることもできます。そうすると、現経営者が引退することによって、会社は事業を回せなくなり、業績が著しく悪化する可能性が高いといえます。さらに、譲り受ける側としてもM&A後に経営者人材を派遣しなければならないため、人材不足が嘆かれる昨今においては投資決定の過程でマイナスに働いてしまう可能性も考えられます。もちろん、上記のような会社であっても積極的に買収を検討する譲り受け側企業もございます。そういった会社は、後述する仕組みづくりや人材育成に強みを持ち、グループに入れることで業績改善・事業拡大ができる自信があるからだといえます。

特に、不動産仲介業界(売買)においては、経営者の人脈や紹介からの売上が業績を支えていることも散見されますので、現経営者が引退した後も、業績が下がることのないよう準備しておくことが重要です。具体的には組織的に売上を計上できる仕組みづくりや、経営者としての後継者とまではいわなくとも、核となる人材育成等が考えられます。

このように、スムーズにM&Aを実施するためには、ある程度の準備期間が必要となることもあります。後継者問題をどう解決するのか検討するに至った際は、一度M&Aの専門家にご相談してみると選択肢の幅が広がり、十分な準備をもって問題に臨むことができます。自社だけではなく、第三者の知恵・ノウハウを借りて準備することが後継者問題をより良い形での解決に繋がります。

船井総合研究所では無料で経営相談・企業価値評価を行っています。一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。

2つ目の人生設計としては、M&A後も役員(経営者)として継続するパターンです。

40代~50代の経営者が選択されることが多くみられます。不動産仲介業としてある程度事業拡大してきたものの、自社のみでの成長に限界・頭打ちを感じている経営者が、さらなる事業発展のために中堅・大手のグループに属し、自身も雇われ経営者として、次なるステップへ向かうというパターン(成長戦略型M&A)です。

売り主としてのメリットはいくつかありますが、①個人保証が外れたうえで経営できること、②中堅・大手グループの資本、ノウハウを活用できること、が大きいといえます。中小企業の経営者にとって借入の個人保証は大きなストレスです。個人の不動産にまで保証が及び、破産されてしまう可能性もあるでしょう。M&Aでは個人保証を外し、譲り受け側が保証をする、といったケースが見られますが、経営者を継続する場合でも変わりません。つまり、経営者は個人保証のストレスから解放されながら、経営ができることになり、大きなメリットとなります。また、M&A前では投資・運用できなかった規模の仕事ができるようになることも事業規模拡大志向の強い売り主にとってはメリットとなります。中堅・大手グループに入れば会社の信用も大きく変わり、これまでは手の出なかった借り入れが可能となる可能性が高いためです。

雇われ経営者として、個人保証を外しつつ、より大きな事業を展開するというのは、中小企業の経営者にとってこの上ないメリットであるといえるでしょう。さらに、中堅・大手グループの傘下に入ることで得られるものは資金面だけではありません。現事業の中で不得意な分野、特に中小企業においてはDXによる生産性側面や、採用・教育、給与体系等の人事的側面において、中堅・大手グループのノウハウを享受できるため、働く環境について改善されるケースが多くみられます。実際にM&Aした後に売り手側企業の従業員の意識が変わったと耳にすることもあります。

一方、注意しなければならないのが、どのような相手先に譲渡するか、です。現経営者も継続する以上、ある程度自社のやり方・風土等も継続したいところです。しかし、相手先によってはいわゆる上から目線で統合する会社もあり、それまで積み重ねてきたものが一気に壊されること可能性もあります。もちろんマイナスなことだけではなく、古い風習や考え方等一新すべきものもあろうかと思われますが、現経営者・従業員の意向に背いた施策ばかりでは、M&A後の成長は難しいと言わざるを得ません。

そうならないよう、M&A時には相手先の考え方やM&A後の進め方等、よくよく確認しておく必要があります。両者が「こんなはずではなかった」となってしまうのは、最も避けなければなりません。また現経営者は、相手方にもよりますが、雇われ経営者として業績にコミットした評価がなされることはある程度認識しておいた方がよいでしょう。

最後に、第二の人生設計を考える間もなくM&Aをされる経営者の方もいらっしゃいます。体調不良等の身体的要因から引退をせざるを得ない方や、資金繰りが難航し、自社だけでは業績回復ができないと判断される方は、人生設計をせずにM&Aを選択せざるを得なくなります。こういったケースはよく見られますが、急いでM&Aを進めるのは得策とはいえませんし、相手方との交渉においても劣勢に立ってしまう可能性も高くなってしまいます。

そうならないよう、今すぐに売却を検討していない場合であっても、会社の業績が良いうちに、経営者が健康であるうちに、一度M&Aを踏まえた人生設計を検討しておくことが重要です。事業承継問題はいずれ必ず発生します。親族内承継をするのか、従業員に承継するのか、又は第三者へ承継するのか、いざという時のため、前もって関係者と話しておくことをご検討いただければと思います。

船井総合研究所では無料の経営相談・企業価値評価を行っております。長年のコンサルティング経験を活かし、業界ならではの視点を踏まえて、売り主の意向にそったご提案をさせていただきます。一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。

・買い手企業の特徴

一つ目の特徴としては、広範囲のエリアで同業(不動産仲介業)を展開する中堅・大手、または地域一番店の企業です。新たな商圏拡大や、地域シェアを上げ、より自社の成長拡大を目指すシンプルな理由です。上記会社がM&Aを検討する際には、自社出店と比べてどうか、が重要な指標の一つとなります。そのため、前述した現経営者が引退した後に業績が下がってしまう会社であっても、自社出店と比べると、従業員、顧客、店舗が既に揃っていれば前向きに検討する可能性も考えられます。中堅・大手グループ、地域一番店であっても人材不足は否めず、現経営者の継続を望む買い手も多いですが、それでもグループイン後の仕組みづくり・業務改善には長けているため、上記会社を買収する可能性は比較的高いといえます。

また昨今増えている二つ目の特徴として、買い手が近隣業種であることです。例えば、売り手企業と同エリアで事業展開する中堅以上の住宅建築会社等が挙げられます。住宅建築会社にとって、土地、中古住宅・マンションの仲介の強化は、総合住まい産業としての発展に繋がるためです。その他にも、リフォーム会社、賃貸管理会社、司法書士事務所など、自社事業の成長展開の為に考慮する会社も増えています。いずれも、建築・不動産業界の再編禍の中での、成長戦略としてM&Aを検討しています。このようなケースにおいては、売り手としては経営者が継続することがより望まれます。買い手にとって不動産仲介業に特化した現経営者は、M&A後も頼りにしたい人材であるためです。

企業成長には、その事業の市場規模拡大に合わせて、自社のシェアを拡大することが基本戦略とされてきましたが、今の成熟から衰退期へ向かう日本の不動産状況禍においては、近隣業種へのM&Aによる参入・事業拡大が重要視されてきています。

船井総合研究所では長年のコンサルティング経験により、業界に特化した視点から成長戦略のご提案をさせていただきます。一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。

2.不動産仲介業界のM&A手法

中小企業のM&A手法は複数ありますが、その中で多く(7~8割)を占めているのが株式譲渡です。これは不動産仲介業界であっても例外ではなく、株式譲渡スキームが大半を占めています。

株式譲渡とは、対象会社の法人格は原則変わらず、株式(及び付帯資産)を譲渡することで新たな株主に経営権を譲渡するスキームです。今までの株主が、経営者として一定期間残るケースもあり、今までの事業戦略、従業員の雇用形態、取引先と契約関係等は維持したままで、株主の立場だけを譲渡するスキームとなります。手続きが簡易というメリットがある一方、買い手にとっては簿外負債等のリスクも引き受けることになるデメリットもあります。

株式譲渡に次いで多いのが事業譲渡です。こちらは会社の資産、契約、従業員雇用等を一つ一つ譲渡するといったスキームです。株式譲渡とことなり、資産の所有権、契約関係、従業員雇用関係は当然には引き継がれず、一つ一つ確認して譲渡しなければならないため、手続きが煩雑です。一方で、買い手としては簿外債務等の引き受けリスクを軽減することができます。かつ売り手にとっても例えば他の事業がある場合などは、不動産仲介事業だけ譲渡するといった切り売りができるというメリットもあります。

またメイン事業を譲渡する場合は、会社分割をして新たな会社に資産を残し、別事業を実践する場合もあります。売り手企業の方向性、また買い手企業の要望に合わせた手法を考える必要があります。

船井総合研究所では、売り手の意向に沿ったスキームをご提案させていただきます。一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。

3.不動産仲介業界のM&A相場

中小企業M&Aにおける代表的な株価算定方法としては、「時価純資産法(年買法)」と「マルチプル法」という2つがございます。それぞれの計算方法や、不動産仲介業界における相場は以下です。

・時価純資産法(年買法)

時価換算した総資産(簿外資産含む)から、時価換算した負債(簿外負債含む)を差し引き算出された時価純資産を株価とする考え方です。対象会社の業績によっては、そこに営業利益などの「のれん」を上乗せするケースもあり、この算出方法を「年買法」といいます。

・マルチプル法

償却前営業利益の3~5倍から正味有利子負債(有利子負債-現預金等)を差し引き算出された額を株価とする考え方です。先述の時価純資産法が「資産」をベースとした算出方法に対し、「キャッシュ」をベースとした算出方法となります。「3~5倍」という数字については会社ごとに異なりますが、不動産仲介業界においては業績の見通しがつきにくいため、平均1~2倍程度となります。ここから、対象会社の強み(独自のビジネスモデル等)や弱み(反響集客・契約状況等)を踏まえ、倍率を増やしたり減らしたりし価額を交渉することとなります。

4.不動産業界M&Aの時流・今後

コロナ禍以降、不動産仲介業界ではM&Aが活発化しています。マクロ的要素に影響を受けやすい不動産業界においては、今後もM&A件数は増加していくことが想定されます。後継者問題を抱えている経営者は早めの承継計画をし、専門家への相談をご検討ください。また、後継者問題を抱えていなくとも、会社の成長戦略の一つとして、M&Aを検討してみることも重要であるといえます。現時点での企業価値評価を踏まえ、今後の戦略をどうするのか、第二の人生設計をどうするのか、自身の考え・状況をまとめておくべきです。

船井総合研究所では無料で経営相談・企業価値評価を行っています。長年のコンサルティング経験を踏まえ、人生設計に沿ったご提案をさせていただきます。一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。

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