【食品業界・飲食業界M&A】譲渡のご相談をいただく企業様の背景とは

皆様、こんにちは。

今回は、譲渡のご相談をいただく食品・飲食業のご経営者の、ご相談の背景についてお伝えしたいと思います。船井総研あがたFASには月に数十件のご相談が来ておりますが、譲渡を検討しているご経営者の悩みはそれぞれちがいます。

弊社がこれまで受けてきた食品・飲食業の譲渡のご相談の中で、印象的だったものを2例ピックアップさせていただきます。

後継者不在による譲渡検討をし始めた東北のA社様

東北で食品製造業を営んでいるA社は、業歴がながく地域では一定の知名度がある企業様です。社長の年齢は73歳、創業オーナーで会社も少しずつ大きくなっていきました。そんな中、一昨年体調不良を訴え医者に診断してもらいました。診断結果は大きな病気ではないものの、今までのようにバリバリ働くのは体調的にもきつくなってきました。このような背景もあり、事業承継を考えます。

まずは「親族内承継を検討しますが、身内に“社長業”を引き受けてくれそうな人がおらず断念。次に、既存の従業員を中心に検討するもなかなか良い人材が見つからない。一般的に事業承継する際には5~10年かかると言われていることもあり、自分自身が教育していくには時間も多くない、またどのように教育していけばいいのかもわからず、現実的な選択肢ではないなと考え断念しました。

親族内承継、従業員承継を断念した中で、第三者承継(M&A)を中心に事業承継を考え始めました。 しかし、どのように進めていいかもわからず、自社の企業価値もわからない。そんな中でまずは自社の企業価値を把握したいとの要望があり、弊社にご相談が来ました。

ご子息に事業承継をしたものの昨今のコスト高の影響で業績低迷により譲渡を検討し始めたB社様

中国地方で食品加工業を営むB社は5年前にお父様から事業を引継ぎました。事業承継後の最初の2年はコロナの影響もあり、業績が低迷。2022年からコロナの影響も弱まり、少しずつ業績が回復していきます。業績が戻ってくると事業への意欲も高まり、徐々に社長業を理解し前向きになっていました。

しかし、2代目社長として、父親と長年一緒にやってきたベテラン社員ばかりで構成された既存社員をマネジメントすることの難しさを感じながらも、目の前の業務に一生懸命に取り組んでいました。そこに昨今のコスト上昇が大きなダメージを与えます。原材料の高騰、人件費の上昇により収益性が悪化。売価を上げないとどうにもならないと思い、既存の取引先へ価格交渉を行いました。

しかし、価格交渉の中で取引額の大きい企業から取引中止を言い渡されます。他社との価格交渉も難航し、従業員からの視線も気になり始めます。このような日々を過ごしていると、会社の成長を考えることが非常に辛く、逃げ出したい気持ちになっていました。ただ、父親から引き継いだ大事な会社を廃業するわけにはいきません。

そんな中同じ業界の知人の会社がM&Aにより地域の優良企業の傘下に入ったと聞きました。その知人は、“有力企業になると売上が安定している”“従業員の待遇も改善された”と言います。自分一人の力に限界を感じていたこともあり、第三者承継(M&A)を検討し始めます。

WebでM&Aに関する情報収集を行い、仲介会社に連絡します。最初は、その仲介会社の担当者も連絡を多くとっていたが、次第に連絡は途絶えていきます。焦る気持ちとは裏腹に、毎日の社長業は続きます。そこで1社だけにお願いするのはスピード感も落ちると考え弊社にご相談をいただきました。

譲渡を検討している企業に共通していること

上記の2社のような理由で譲渡を検討している企業も最近増えてきていると実感しています。しかし、譲渡を検討している企業にはそれぞれ経営に対する課題や、経営者自身の課題など千差万別あり一概には言えませんが、私たちが感じる共通項は“事業への意欲が低下している”ということです。その原因は経営者の年齢など個別的な事情はさることながら、一番の原因は業界の全体的な課題にあるかと思います。

食品業界は、どうしても仕入れ・取引先・ノウハウ・設備などで大手企業が強くなりやすく、中小企業は苦戦を強いられやすい業界だと感じます。もちろん独自固有の長所を磨き、その中で輝いている企業もあるかと思いますが、他社と大きな差別化要素がないと、企業規模が大きく豊富な資金力を持つところに勝つのは難しいです。

このような背景もあり、食品業界では今後数年間で業界再編が加速していくと予測されます。その中で倒産や廃業する会社も増えていき、M&Aも活発に行われて10年後には現在の構造と違う形の業界になっているかもしれません。このような波は大手企業を中心に行われますが、地方の中小中堅企業も他人事ではありません。多少時間の差はあるにせよ、このような波はきっと皆さまの身近なところでも起こってくるかと思います。

今現在、これからM&Aを検討される食品・飲食業界のご経営者様におかれましては、まずは現状を整理することが重要です。食品・飲食業のM&A専門サポートチームがある弊社では、お話をお伺いしながら現実的な出口戦略を一緒に検討することが出来ます。是非一度お問い合わせください。

食品・飲食業のM&Aについてはこちらからご確認ください。

1.飲食/食品業界M&AのTOP

2.食品業界の2024年M&Aの振り返り

3.食品製造業界M&Aに関するメリットとデメリット

4.知っておきたい!食品業界のM&Aのポイント

5.食品業界のM&Aで使われる譲渡スキーム

6.食品製造・食品卸業を売却する際に検討しておくべき情報

7.食品業界のM&A事例

金嶺 一馬

(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント

台湾国立台北教育大学卒業後、2015年に新卒で船井総研に入社。2019年から2023年まで船井総研グループの船井上海商务信息咨询有限公司に出向し中国国内の中堅大手飲食企業のコンサルティングに従事、2024年に帰任した後、飲食、食品のM&Aに従事。

金嶺 一馬

(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント

台湾国立台北教育大学卒業後、2015年に新卒で船井総研に入社。2019年から2023年まで船井総研グループの船井上海商务信息咨询有限公司に出向し中国国内の中堅大手飲食企業のコンサルティングに従事、2024年に帰任した後、飲食、食品のM&Aに従事。