食品業界の2024年M&Aの振り返り

2024年の食品業界は、経営環境の厳しさを痛感した1年だったかと思います。食品関連の市場は巨大市場ではあるものの勝ち負けがはっきりでてきています。
食品業界の市場規模と倒産件数
農林水産省の統計によると、2023年の食品業界の市場規模は114兆円に達し、2024年も市場規模は拡大傾向にあり2023年を上回る市場規模になりました。また、食品業界は日本全体の産業市場の約10%を占めており、非常に大きなマーケットではあるものの、各種原価高騰の影響は非常に大きく、値上げ交渉に追われた経営者も多いのではないかと思います。
しかし、市場規模の伸長とは裏腹に食品関連企業の倒産件数は増加傾向にあり、2024年には過去最高の700件近くの倒産が公表されています。しかし、この数字には中小零細企業は反映されていないことが多く、実際の倒産件数はこの3倍以上に達すると推定されています。
原価高騰と人手不足
世界的な食材価格とエネルギーコストの上昇により、多くの企業が製品の値上げを実施していますが、中小企業は取引先との力関係から価格転嫁が難しい状況にあります。
実際に弊社とお付き合いのある企業でも価格交渉の結果、大手取引先との取引が中止になったり、値上げ交渉が失敗しているケースも散見されます。その結果、原価高騰が利益を大きく圧迫し収益力が著しく落ちている企業も多いかと思います。また、収益性の低下により賃金の引き上げが困難になり、人手不足を招き、企業の成長を阻害し、売上の最大化を図れないと悩む経営者の声も数多く聞きます。
【※参照:帝国データバンク資料を参考に弊社編集】
経営者の高齢化と後継者不足
中小企業では経営者の高齢化が進行しており、60歳以上の経営者が51.8%を占めています。また、経営者の高齢化だけでなく後継者不在の企業も多く、2024年のデータで後継者不在の企業は52%に達しています。この“経営者の高齢化”と“後継者不足”は、企業の存続に非常に大きな影響を与えることは皆さまも痛感しているかと思います。
「ほんとうなら…親族に承継してほしいが、今の経営状況ではとても話ができない」
「従業員の中に経営を任せられる人材がいない…」
「自分(経営者)ももう65歳になったし、これから後継者育成に取り組むといってもね…そんなモチベーション湧かないよね」
上記は私たちがお付き合いしている経営者のお言葉です。厳しい外部環境の中で、必死に経営をされている経営者のこうした言葉を聞くと非常に辛く思うこともしばしばあります。
さらに、
「従業員のことを考えると、クビにはできないしボーナスも支給したい」
「取引先のAは自分が創業当時からお世話になっているから、そこに迷惑はかけられない」
「自分自身だけの問題なら、廃業も選択肢になるが、従業員、取引先、お客様のことを考えたら…みんな一生懸命頑張っているから“廃業”という判断はできないよね」
など、経営者ならではの葛藤、苦悩もお伺いし、自分たち(船井総研あがたFASとして)の仕事の意義、どうにかしたいという気持ちも大きくなります。
食品業界でもM&Aが増加傾向
厳しい経営環境と後継者不足を背景に、食品業界ではM&A(第三者承継)が活発化しています。M&A(第三者承継)は、一般的に自社よりも大きい規模の会社にグループインすることで、仕入れコストの改善、販売チャネルの拡大、優秀な人材の確保と持続的な成長を実現するための有効な手段になります。
特に食品業界は政府も後押ししているように、日本国外への輸出で企業規模を拡大している企業は多く存在します。日本国内だけに目を向けると人口減少で市場環境は厳しくなっていますが、海外に目を向けると“日本産”のブランド力は依然として大きな価値になります。また、海外企業との取引に関しては一定の難しさもあるものの、価格交渉では日本国内の企業よりも有利になりやすいです。実際に国内企業との取引よりも海外企業との取引だと粗利率で20%~30%前後変わることも多々あります。こうした企業へ承継できれば販路として海外が視野に入り、自社の成長につながるケースもあります。
M&A(第三者承継)の現状と注意点
昨今、M&A市場には多くの企業が参入していますが、知識や経験が不足している業者も存在するため注意が必要です。特に譲渡企業(売手企業)にとってM&Aの経験は多くできるものではありません。だからこそ、きちんと知識を持っておくことと頼れる存在を持つことが重要です。
株式会社船井総研あがたFASは、M&Aだけでなく、経営“者”コンサルティングを通じて経営者の成功を支援します。M&Aを検討する際には、早めに専門家にご相談ください。このコラムが、食品業界の経営者の皆様にとって、M&Aを検討する上で有益な情報となることを願っております。
食品・飲食業のM&Aについてはこちらからご確認ください。

金嶺 一馬
(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント
台湾国立台北教育大学卒業後、2015年に新卒で船井総研に入社。2019年から2023年まで船井総研グループの船井上海商务信息咨询有限公司に出向し中国国内の中堅大手飲食企業のコンサルティングに従事、2024年に帰任した後、飲食、食品のM&Aに従事。

金嶺 一馬
(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント
台湾国立台北教育大学卒業後、2015年に新卒で船井総研に入社。2019年から2023年まで船井総研グループの船井上海商务信息咨询有限公司に出向し中国国内の中堅大手飲食企業のコンサルティングに従事、2024年に帰任した後、飲食、食品のM&Aに従事。