食品業界のM&A事例

近年、食品業界ではM&Aが活発化しています。

背景には、

  1. 経営者の高齢化
  2. 後継者不在
  3. 国内市場の縮小
  4. 原価高騰による収益性の悪化
  5. 大手中堅企業と中小企業の格差

など様々な要因が挙げられます。このような背景から現在食品業界では大手企業を中心に業界再編の波が起こっています。本コラムでは、食品業界におけるM&Aの現状と背景を踏まえ、具体的な事例を紹介しながら、M&Aの動向分析、成功のための注意点、そして今後の展望について解説していきます。

直近のM&A事例紹介

2025年も年初からM&Aは活発に起こっています。1月1日~2月18日の約50日間の間にも30件以上のM&Aが成立しています。

2025年1月

譲受企業:株式会社プレコフーズ
譲渡企業:丸上食品工業株式会社

食肉・冷食加工品事業、鮮魚・水産品事業などを行う株式会社プレコフーズは丸上食品工業株式会社が行う食品製造販売事業を譲り受けた

2025年1月

譲受企業:株式会社西原商会
譲渡企業①:有限会社竜乃家
譲渡企業②:倉橋島海産株式会社・有限会社大良
譲渡企業③:株式会社ランステック

業務用食品卸の大手企業、株式会社西原商会は和菓子の製造・卸売・小売事業を行う有限会社竜乃家、牡蠣養殖・加工業を行う倉橋島海産株式会社・有限会社大良、システム開発から運用、保守を行う株式会社ランステックをM&Aでグループインしました。

実際にあったM&Aの落とし穴

東海地方に本社を置く老舗の食品製造会社A社は原価高騰による収益性の悪化から経営難に陥っており、M&Aによって再建を目指していました。そんな中M&Aの仲介を依頼していた企業から譲受候補先としてB社を紹介されました。各種条件面の交渉がまとまり、2023年にB社に全株式を譲渡しました。

これで厳しい資金繰りから解放される…そう思ったのもつかの間、譲渡後数カ月たっても譲渡企業のB社から必要な資金が投入されなかった影響もあり、A社は資金繰りが苦しい状態になりました。そしてその数か月後に倒産に追い込まれました。譲渡企業のB社はA社後が倒産後も事業は継続しています。A社は数年前に親族内承継により、息子さんが経営をしており再建を図っている最中の出来事でした。

これは実際に食品業界で起こったM&Aの事例です。非常に悲しく、腹立たしい事例かと思います。しかし、このようなM&Aの事例は残念なことに数件発生しています。

M&Aで失敗しないために

M&Aを経験する人は多くはないかと思います。しかし、最近では食品業界でのM&Aは活発に行われています。みなさんが失敗しないためにも注意点を下記に記載します。

1. 譲渡先は複数の候補先から選定する

譲渡先は慎重に選ぶことが重要です。特に譲渡候補先1社の中から譲渡先を選ぶことはできる限りしない方が良いです。条件面を多少調整しながらでも複数社の中からきちんと自社のことを考えてくれる企業を選ぶことがとても重要です。

2. 譲渡先の財務状況は事前に把握する

昨今のM&Aに関する問題を踏まえ、中小企業庁は新しくM&Aにおけるガイドラインを厳格化しました。その中には譲受企業の財務状況の確認をM&Aの仲介企業に求めています。

3. 譲受先の事業実態に関する調査を行う

譲受企業に事業実態があるかも調査する必要があります。中には事業実態がないものの譲渡企業にあるキャッシュの吸収を目的とした企業も存在しています。

4. 譲渡後の事業計画の把握

悪徳と言われる企業はM&A後の事業計画を伝えずに交渉事を進めてくることが多いです。そのため譲渡先を選ぶ際には譲渡後の統合計画、事業計画も含めてきちんと話し合うことが重要です。

5. 適切な専門家に依頼する

M&Aは専門知識が必要とされる分野になります。知識がない中で交渉を進めると、知らない間に不利な条件で交渉がまとまることもあります。特に中小企業の場合、M&Aに関する専門知識や経験が不足していることが多々あります。そのため、専門家のアドバイスを受けながら、慎重にプロセスを進めることが重要になります。

M&Aは、企業にとって大きな転換点となります。M&Aを成功させるためには、十分な準備と注意が必要になります。食品業界におけるM&Aは、企業の成長戦略において重要な役割を担っています。M&Aを成功させるためには、事前の綿密な準備、明確な経営戦略、そして専門家のサポートが不可欠です。もし、M&Aに関するご相談があれば、お気軽に弊社までお問い合わせください。

食品・飲食業のM&Aについてはこちらからご確認ください。

1.飲食/食品業界M&AのTOP

2.食品業界の2024年M&Aの振り返り

3.食品製造業界M&Aに関するメリットとデメリット

4.知っておきたい!食品業界のM&Aのポイント

5.食品業界のM&Aで使われる譲渡スキーム

6.食品製造・食品卸業を売却する際に検討しておくべき情報

7.食品業界のM&A事例

金嶺 一馬

(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント

台湾国立台北教育大学卒業後、2015年に新卒で船井総研に入社。2019年から2023年まで船井総研グループの船井上海商务信息咨询有限公司に出向し中国国内の中堅大手飲食企業のコンサルティングに従事、2024年に帰任した後、飲食、食品のM&Aに従事。

金嶺 一馬

(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント

台湾国立台北教育大学卒業後、2015年に新卒で船井総研に入社。2019年から2023年まで船井総研グループの船井上海商务信息咨询有限公司に出向し中国国内の中堅大手飲食企業のコンサルティングに従事、2024年に帰任した後、飲食、食品のM&Aに従事。