タクシー業界の2024年M&Aの振り返り

1、2024年のタクシー業界におけるM&A
2024年も、タクシー業界においては、多くのM&Aが成約しており、M&Aは新聞報道される大企業だけのものではなく、中堅・中小企業の経営の「常套手段」になっています。
また、この業界の大きな特徴として、「後継者不在による事業承継」「ドライバーの獲得」「車両数・車種の拡大」「異なる地域・エリアへの進出」等々の理由によるもののほか、「ライドシェア事業を手掛けるスタートアップ企業によるM&A」というものも、複数実行されていることが挙げられます。
2、タクシー業界のM&Aにおける、2024年のトピックス
ライドシェアの議論は継続していますが、現時点では、既存のタクシー事業者に限定されていることから、ライドシェアをビジネスとして行うことを、主たる目的とするM&Aというものが多く見られます。
また、大阪万博による利用者増加見込みや、インバウンド顧客増加エリアにおける規模・エリア拡大を主たる目的とするM&Aも多く行われています。
その他にも、タクシー会社向けに、運行効率化、ドライバーの労働環境改善、利用者の利便性の向上等のために、クラウド型の配車システムや運行管理システムを提供する事業者に対して、資本参加をするような提携というものも、近時は非常に多くなっています。
3、タクシー業界のM&Aにおけるバリュエーション
それでは、M&Aの場面における、取引対価の算定(バリュエーション)は、どのように行われるものなのでしょうか。
一般的な業界におけるM&Aにおいては、「時価純資産+のれん(営業権)」のように、将来に発生するであろう利益の何年分かを、のれん(営業権)として、M&Aの取引時に「前払い」することが多いのですが、こと、タクシー業界におけるM&Aのバリュエーションでは、十分な留意が必要となります。
その理由としては、譲渡企業の状況にもよりますが、将来に発生するであろう利益は、「車両投資やIT等設備投資」に充当する必要があること、また、「ドライバー等の従業員の待遇改善」のための資金とする必要があるケースも多く、多額ののれん代を、取引対価として「前払い」すべきではないというケースが多いためです。
もちろん、相乗効果を創出することで、将来の利益を拡大することを見込んで、M&Aを検討するかとは思いますが、人件費の高騰、燃料費の高騰等はもとより、地域密着経営の必要性から、例えば、長時間営業を行わなければならない等、経営において、市場の「真の需要」を度外視しないといけないという場面も想定されることから、思い通りに相乗効果が創出できないことも有り得ることは見込んでおく必要性があります。
このようなタクシー業界の特性、対象会社の特性を十分に理解した上で、M&Aのバリュエーションを行うことで、例えば、「保有車両の台数×車両価格」でしか、企業価値を見出すことが出来ないケースもあることをご認識ください。
4、タクシー業界のM&Aについてのご相談は
このような業界特有の留意点は、M&Aの場面だけでは、把握することが難しく、きっちりとした前準備が必要になってきます。M&Aを検討し出すと、途中でM&Aの検討を中断することに躊躇し、本来のM&Aの目的を忘れ、ただ単にM&Aをすること自体が目的になってしまいがちです。
当社・株式会社船井総研あがたFASは、M&Aコンサルタントだけではなく、タクシー業界専門のコンサルタントとともに、M&Aの前工程から後工程まで、全て一気通貫でサポートさせて頂きます。譲渡して終わり・譲受して終わりではなく、皆さまの企業価値向上に資するM&A・提携のサポートをさせて頂くことが、当社の最大の目標でありますので、どのような些細なことでも、また、どのようなタイミングでも、「M&A」「提携」等については、お気軽にご相談ください。

松本 武
(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント
大学卒業後、ノンバンクへ入社。 営業・法務・管理部門を担当する中、当該ノンバンクが投資ファンドに買収されたことにより、その後、投資ファンド側でのM&A(企業買収・売却)や事業再生支援に従事、買収企業でのハンズオン支援などにも携わる。 2019年船井総合研究所に入社。M&A部門にてエネルギー業界、人材派遣業界、サービス業等幅広い業界でM&A成約のサポートを行っている。

松本 武
(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント
大学卒業後、ノンバンクへ入社。 営業・法務・管理部門を担当する中、当該ノンバンクが投資ファンドに買収されたことにより、その後、投資ファンド側でのM&A(企業買収・売却)や事業再生支援に従事、買収企業でのハンズオン支援などにも携わる。 2019年船井総合研究所に入社。M&A部門にてエネルギー業界、人材派遣業界、サービス業等幅広い業界でM&A成約のサポートを行っている。