工事業界の2023年時流予測と工事業界におけるM&Aの活用方法
- 建設業 M&Aレポート
今回は建設・工事業の2023年時流予測についてお話しさせていただきます。
まず前回のコラム「工事業界における2022年のM&A振り返り」でもお伝えさせていただいたように、2022年の建設・工事業界は人材不足・高齢化に悩まされた年でした。
しかし、2023年も昨年同様に人材不足・高齢化がさらに加速し、それに伴い建設・工事業界のM&Aは活発化すると予測されます。
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建設・工事業界の2023年の時流予測
2023年は昨年に続き大阪万博やIR、リニア中央新幹線の開通工事など、大規模プロジェクトが続く建設業界ですが、一方で倒産する企業の増加が懸念されています。
中小企業庁が発表する業種別倒産状況によると、2022年の建設業の倒産件数は1194件でした。2021年が1065件であったのに対し、約12%増となっています。また既に公表されている2023年1月の倒産件数は103件と、前年同月比約21%増となっています。
倒産件数増加の大きな要因となっているのが人材不足と高齢化、資材高騰、そして「2024年問題」です。(人材不足・高齢化に関しては前回のコラム「工事業界における2022年のM&A振り返り」でもお伝えしておりますので省略させていただければと思います。)
まず資材高騰ですが、2022年のウッドショックから木材価格は下落に転じ、鋼材価格の上昇も高止まりではあるものの一服している状況です。一方で生コンクリートは未だ高値で推移し続けており、2023年4月にも更なる値上げに踏み切ると予想されています。生コンは建設工事で幅広く使用されるため、建設・工事業界に与える影響は非常に大きいと考えられます。
次に「2024年問題」ですが、この問題に伴い、建設・工事業界は2023年に大きなターニングポイントを迎える可能性があります。
2024年4月1日から働き方改革関連法に基づく時間外労働時間の上限規制が、これまで猶予されていた建設業にも適用されるようになります。上限規制が適用されることによって、時間外労働を原則月45時間以内かつ年360時間以内に抑える必要性が出てきます。しかし日本建設業連合会が2022年9月に公表した調査報告書によると、会員企業に所属する労働者のうち非管理職の半数近くが2021年度に年360時間を超える時間外労働をしていました。さらに約3割は、年720時間以内といった特例基準も超過していました。この規制に対応するためには、生産性の向上、そして新たな人材確保による労働力の分散が不可欠となります。しかし、建設・不動産業では高齢化が進み、新規人材の確保は難しい状況が続くと予想されます。そのために注目されているのがAIやロボット、ICTを駆使した新しい建設業の在り方です。2023年は建設・工事業界でも現場作業のDX化が活発になりそうです。
建設・工事業界が2023年以降M&Aを検討する際のポイント
2023年以降、建設・工事業界でM&Aを検討する際一番大きなポイントとなるのは、人材の確保、そのための異業種とのM&Aです。先ほども述べた通り、2024年問題が目前に迫る中、生産性の向上、DX化は必須と考えられます。しかし建設・工事業界は特に高齢化が進んでおり、新規人材の流入も伸び悩んでいる状況です。そのため最近では、ハウスメーカーが中堅のゼネコンを買収し建設業界に進出したりするなど、商業圏の拡大や人材の確保を目的として、業界の枠を超えたM&Aが増加してきています。異業種の参入により、事業の多角化や自社での内製化が見込め、各会社の得意分野やノウハウを生かしてシナジー効果を発揮することができるようになります。
また、後継者不足の解消に向けたM&Aも引き続き増加していくと考えられます。建設業界では就業者数のうち55歳以上が35%超となっており、次世代への事業承継が大きな課題となっています。これらを解消するためにM&Aという選択は大きなポイントとなるでしょう。
まとめ
2023年、今まで以上に大きく変化する建設・工事業界。その変化に対応するためには、M&Aという新たな選択肢も視野に入れる必要があるかもしれません。
船井総合研究所では業種専門のコンサルティング力を生かし、あらゆる手法で相互にとっての最大のシナジー効果の発揮に向けコンサルティングをさせていただくことが可能です。
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大手証券会社にて、上場・未上場オーナー及び法人の資産運用・事業承継コンサルティング業務に従事。2022年入社後、前職で最も関わりの多かった建設・不動産業を中心に後継者問題の解決や成長戦略としてのM&A仲介業務に従事している。
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