葬儀・葬祭業のM&A|業界再編の今と価格・相手選びの考え方
葬儀

葬儀・葬祭業のM&A|業界再編の今と価格・相手選びの考え方

葬儀のM&A、葬祭業のM&Aは件数が増えるなかで中身が変わってきている、と当社代表取締役社長の光田卓司は見ています。上場企業どうしの統合やファンドの出口となる案件が2025年ごろまでに一巡し、地域で売上10億〜20億円規模の葬儀社が、近くの1億〜5億円規模の葬儀社をグループに迎える形が増えているという見立てです。

光田は2008年に株式会社船井総合研究所に入社し、20年近く葬祭業の経営コンサルティングに携わってきました。支援してきた葬儀社は約160社で、地域で一番手の葬儀社から上場企業まで、規模の違う会社の経営を見てきました。全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)や日冠連経営者協議会、エンディング産業展などで講演も重ねています。葬祭業のM&Aには20件以上携わり、2022年に同社のM&A支援部の部長、2026年3月に当社の代表取締役社長に就きました。

地域で葬儀社を経営する立場で何を決めておくかについて、光田の答えは、譲渡するか譲り受けるかをいま決める必要はない、というものです。そのうえで光田は、譲渡・譲り受け・単独で続けるのどれを選ぶことになってもよいよう、選択肢を手元に残しておくことを勧めています。価格の付き方は数年前から変わっており、譲渡後に何が変わるかも相手によって違います。

光田が支援の現場で見てきたEBITDA(営業利益に減価償却費を足したもの)の倍率は、8倍前後から3〜5倍程度まで下がりました。


葬儀社の出口戦略を整理するための資料として、【葬儀業界】出口戦略パッケージをご用意しています。自社の状況を葬儀業界専門のコンサルタントと確かめたい場合は、出口戦略診断もご利用いただけます。

葬儀業の出口戦略診断【葬儀業界】自社の「真価」を知る3点セット(出口戦略パッケージ)

葬儀業界のM&Aは、大手どうしの統合から地域の葬儀社どうしの統合へ移っています

葬儀業界のM&Aを数年さかのぼると、目立っていたのは上場企業とファンドが関わる大型の案件でした。

上場企業とファンドが関わる再編は2025年ごろまでに一巡した

公表されている主な案件は次のとおりです。

公表内容出典
2023年10月株式会社ティアが、日本産業推進機構が設立した持株会社2社の全株式を取得し、八光殿と東海典礼をグループに加えた(取得は同年11月)株式会社ティアの適時開示(2023年10月24日・11月20日)
2024年7月燦ホールディングス株式会社が、きずなホールディングス株式会社に対する公開買付けを公表し、同年9月に同社を連結子会社とした両社の適時開示
2025年10月燦ホールディングスとこころネット株式会社が、株式交換による経営統合を公表した(効力発生は2026年2月)両社の開示資料

八光殿と東海典礼の件は、ファンドが投資していた葬儀社が上場企業に移った例です。光田は、2023年から2025年にかけてこうした案件が続いた一方、2026年に入ってからは新たな大型の統合は比較的落ち着いていると話しています。

業界の動向

売上10億〜20億円の葬儀社が、1億〜5億円の葬儀社をグループに迎える

大型の統合に代わって光田が増えていると見ているのが、地域の中堅による統合です。地域で10億〜20億円規模の葬儀社が譲り受ける側に回ると、その周りの10億円未満の葬儀社が統合の対象になっていく、と光田は説明します。

地域の葬儀社どうしで連合をつくる動きです。近隣の会社をまとめる理由は、葬儀社の収益がドミナント(一定の地域に拠点を集めること)で上がる構造にあります。

業界のライフサイクルは成熟期から安定期へ向かっている

光田が葬儀業界の再編を説明するときに使うのが、業界のライフサイクルです。光田によれば、2016〜2018年ごろにPEファンドが葬儀社への投資を始め、投資先を軸に周辺の会社を追加で譲り受ける「ロールアップ」によって再編が一気に進みました。アドバンテッジパートナーズが運用するファンドの出資を受け、2020年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場したきずなホールディングスは、この時期の例の1つです。

ファンドは投資からおおむね5年で、上場や次の譲受先への譲渡という出口を迎える、というのが光田の説明です。ファンドが持っていた葬儀社の出口が相次いだ2023年ごろに業界は成熟期に入り、現在は徐々に下がり始める「安定期」に向かっていると光田は見ています。安定期に入ると、譲り受けたい会社が減り、譲渡したい会社が増えます。

段階を上る階段

譲り受ける側は、葬儀のM&Aでドミナントと屋号を手に入れようとしています

葬儀会社のM&Aで譲り受ける側の目的は、光田の整理では、地域でのドミナントを強くすることと、地域で長く使われてきたブランドを手に入れることの2つです。

年200件の葬儀社では、施行のない日が年165日以上ある

ドミナントで生産性が上がる理由を、光田は式場と人の稼働で説明します。年間200件を施行する売上2億円の葬儀社では、通夜と葬儀のどちらかで式場が埋まる日を数えても、1年のうち少なくとも165日は、式場も人も売上を生まない日です。地域で年間1,000件を施行する葬儀社なら毎日どこかで葬儀があり、担当者は会館をまたいで動くことができます。

差が表れるのは利益率です。光田が支援の現場で見てきた目安では、年200〜300件・売上2億〜3億円の葬儀社の営業利益率は5%前後で、地域で1,000〜2,000件をドミナントで施行する葬儀社では15〜20%、高いところで25%に達します。

数字の分析

100年続く屋号は、出店では手に入らない

近隣ではない、離れた地域の葬儀社を譲り受ける例もあります。資本力のある会社が、その地域で100年、150年と続いてきた葬儀社を譲り受け、その屋号を軸に周りへ出店して、年200件だった施行を500件、1,000件へ伸ばしていく形です。葬儀は地域に根差した商売で、屋号が知られるまでには時間がかかります。譲り受ける側にとって、屋号は新しく出店しても手に入らない資産です。

生花で飾られた葬儀の祭壇

葬祭業のM&Aで譲渡を考える理由は、出店の負担と商圏の先行きにあります

光田によれば、M&Aは経営がうまくいかなくなった会社が手放すものだと受け取られることがあります。実際に光田が相談を受ける葬儀社では、業績が良いときに、さらに伸ばすための手段として譲渡を検討するケースが多いといいます。

出店に1億円近くかかり、家族葬でも単価を上げにくい

これまで葬儀社が伸びるときの形は、会館を出して件数を集め、家族葬でも付加価値をつけて単価を確保し、出店の費用を回収するというものでした。光田によれば、その形が成り立ちにくくなっています。かつては家族葬を掲げれば顧客が集まりましたが、今はどの葬儀社も家族葬を扱い、家族葬が一般的な葬儀になりました。単価を上げにくいうえに建築費も上がり、1会館の出店に1億円近くかかるため、以前の見込みより回収に時間がかかります。自社だけで借入を重ねて出店を続けるより、どこかと組んで相手の資本を使うほうがよいと考えて、M&Aを検討する葬儀社が多いと光田は話します。

資本力のある会社と組む利点は、出店のスピードが上がることです。単価は上げられなくても、ドミナントで件数を増やして営業利益率を上げれば、出店の費用を早く回収できるという考え方です。光田は、件数の多い会社と手を組むことが、これからの葬儀社が伸びる形になると話しています。

電卓と疑問符

死亡数のピークは全国では2040年、地方では今がピークの地域もある

死亡数がまだ増えるのだから葬祭業は伸びるはずだ、と光田は経営者から言われることが多いといいます。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」では、死亡数のピークは2040年の約167万人です。

ただ、光田はこの数字だけで自社の先行きを判断しないよう注意を促しています。全国の数字には人口が集中する関東の都県が含まれており、地方都市には、今がピークの地域や、2033年ごろにピークを迎える地域があるためです。死亡数が減っていく地域もあれば、死亡数は増えても競合の出店が増える地域もある、というのが光田の見方です。光田は、判断には全国の推計より自社の商圏の数字を使うよう勧めています。

商圏の変化の1つが、競合の出店です。インターネット上の相談でも、「大手が近隣に式場建設した瞬間から会社自体が危なくなる」という、葬儀社で管理職を務めたという人の書き込みが見られます。当社が公開している関西の葬儀社の成約事例でも、譲渡を考えたきっかけは、大手葬儀社が隣接する立地に進出してきたことでした。譲渡する側と譲り受ける側の利点と注意点を並べて整理するなら、こちらのコラムもおすすめです。
『葬祭業M&Aのメリット・デメリット』

リスクの見極め

葬祭業のM&Aでの評価はEBITDAの3〜5倍程度が目安、相手によって動きます

葬儀社のM&Aの価格について、光田は「一概には言えない」と前置きしたうえで、倍率の推移と評価が動く要素を挙げています。

倍率は2016〜2018年ごろの8倍前後から下がってきた

光田が支援の現場で見てきたEBITDA倍率の目安は、2016〜2018年ごろが8倍前後、2023年ごろが6倍前後、現在は3〜5倍程度です。

下がった理由の1つは、先に触れた、譲渡したい会社のほうが多くなるという需給の変化です。もう1つは、葬儀会館の大きさの変化にあります。会葬者の多い一般葬が中心だった頃は大きな会館が必要で、出店の投資回収に10年かかるなら、M&Aで8倍を払っても見合うという計算が成り立ちました。家族葬・一日葬・直葬が広まって小さな会館で足りるようになると、大きな会館を建てていた頃と比べて、出店しても5〜6年で回収できる計算になります。譲り受ける側から見ると、M&Aより自社で出店するほうが回収が早い場面が増え、それが倍率を押し下げているというのが光田の見立てです。

とはいえ、会社の規模、屋号の力、地域の状況、譲り受ける側がその地域に出たいという意向の強さで、倍率は変わります。

白い百合と数珠

マルチプル法と年買法のどちらで見るかは、相手によって変わる

葬儀社の価格の出し方としてよく使われるのは、次の2つです。

方法計算の考え方主に使う相手光田が見てきた目安
マルチプル法EBITDAに、類似する上場企業と比べた倍率を掛けて事業の価値を出し、手元の現預金と借入金の差を加味して株式の価値にするファンド(事業会社も併用することがある)EBITDAの3〜5倍
年買法時価で見た純資産に、実態の利益(正常な収益力)の何年分かを足す事業会社実態の利益の2〜4年分

光田によれば、相手がファンドの場合はマルチプル法で評価し、DCF法(将来生み出すお金を今の価値に引き直して評価する方法)を加えることもあります。事業会社は年買法で見たり、マルチプル法と両方で見たりと、会社によって違います。

会員・会館・粗利率・互助会の前受金は、決算書の数字だけでは見えない評価の軸

葬儀社に特有の評価の軸について、光田の挙げる点は次のとおりです。

  • 会員数と会員の施行率:会員が多くても、施行につながらない会員が多ければ評価は上がりにくい。会員数と施行率が毎年安定していれば、3倍だった倍率が4倍、5倍になることもある
  • 会館の数と、土地建物を所有しているか賃借か:互助会は所有している会社を高く評価し、ファンドは賃借で資産を持たない会社を高く評価する
  • ウェブの紹介会社への依存度:1,000件のうち400件が紹介会社経由というように、3〜4割に及ぶと注意が必要(アフターサービスで生涯の顧客単価を上げる戦略として増やしている場合は別)
  • 互助会の前受金:割賦販売法で半分の保全が求められ、残りを会館の投資に使う会社もある。企業価値を出すときは、前受金で集めた資金を手元の現金とみなさず、借入金に近い負債として差し引く

もう1つ、光田が最も重視しているのが粗利率です。一般的な葬儀社の粗利率は60〜65%、低い会社で50%前後で、仕入れやオペレーションを変えれば75〜80%まで上げられる余地があると光田は見ています。譲り受ける側と組むことで粗利率が10ポイントほど上がる見込みがあれば、営業利益が1,000万円の会社でも、3,000万円程度の営業利益を基準に価値を考える提案ができる、と光田は話します。利益率が低いことだけを理由に、評価が付かないとは限らないということです。

チェックリスト

回収が早いと見込めれば、高い評価でも譲り受ける側に見合う

光田が支援した案件に、金融機関からの紹介で始まり、地域の葬儀社どうしが一緒になった例があります。譲り受けた会社は、オペレーションと粗利率の違いから改善の余地を見込んでおり、光田は回収が3年程度で終わると見ています。その見込みが根拠となって、年買法では実態の利益の2〜4年分が一般的な基準とされるなか、この案件では6年分の評価で譲り受けが決まりました。

光田は、高い価格で譲り受けることが、譲り受ける側にとって不利だとは限らないと話します。安く譲り受けても回収できなければ見合わず、高く譲り受けても回収が早ければ見合うためです。相手の葬儀社の収益構造を分かっている譲り受ける側ほど、改善の余地を評価に織り込むことができます。相手を選ぶときの判断軸の1つは、葬儀社の経営を理解したうえで評価してくれるかどうかです。

葬儀会社のM&Aは、相手のタイプで譲渡後の運営が変わります

屋号や現場の運営が譲渡後にどう変わるかは、相手のタイプで大きく違う、と光田は話します。光田が挙げた違いは次のとおりです。

相手のタイプ譲渡後の運営光田が挙げた点
同業の地域グループ屋号は別のまま、同じ地域の施行を互いの社員が担うなど一体で運営する同じエリアの会社どうしで一緒に運営する形が多い
広域のチェーン出店に相手の資本を使い、運営は従来のやり方を残す例もある隣の商圏や別の商圏の会社を譲り受けるときに見られる
異業種運営はほぼ任される価値が付きにくい。葬儀社を譲り受けたい異業種は一時期より減った
ファンドファンドの投資先となる、または投資先のグループに加わる追加の譲り受けはEBITDA約1億円が目安(投資先の近隣なら3,000万〜5,000万円でも対象)。葬儀に初めて投資するファンドは最低でもEBITDA5億円程度

譲り受ける側の属性ごとの特徴は、こちらのコラムもおすすめです。
『葬儀社を売却する際に検討しておくべき情報』

棺に手を添え白い百合を持つ参列者

屋号はほぼ残り、変わりやすいのは現場の分業

屋号を変える譲り受け企業はほとんどない、と光田は話します。光田がこれまで手がけた案件でも、社名も会社もそのまま残し、屋号を残したケースが多かったといいます。屋号を変えると、地域からは新しい会社が入ってきたように見え、かえってシェアを落とすことがあるためです。まれに名前を変えようとする会社もありますが、当社はその場合も残すことを勧めています。例外は、すぐ隣の葬儀社を譲り受け、屋号をそろえたほうが相乗効果が出る場合や、社名は残して式場の名前だけを変える場合です。

一方で、現場のオペレーションは変わることがあります。光田によれば、年200〜300件規模の葬儀社の多くは「一人一担当制」で、搬送・安置・打合せ・通夜・葬儀・アフターフォローまでを1人が担う形です。500件、1,000件と地域で施行する会社は、搬送、打合せ、通夜と葬儀を分けて担う分業制に移っていきます。

分業の効果は数字に出ます。当社が使っている人時生産性(1時間あたりの粗利)で見ると、年300件規模の会社で約5,000円、3,000件規模の会社で約12,000円と、2倍を超える差です。一人一担当制では打合せの担当者によって単価に約20万円の差がつきますが、打合せの得意な人が打合せを担えば、そのぶれは小さくなります。社員が休みを取りやすくなるのも、分業の効果です。

一人一担当制には、顧客が同じ担当者に任せられる安心感があり、50年、100年とその形でやってきた会社のなかにはオペレーションを変えたくない会社もある、と光田は話しています。その場合は変えない相手を選ぶことになり、評価は今の利益を基準にしたものになりやすいというのが光田の見方です。

葬儀の受付で弔問客に応対するスタッフ

宗教者の紹介・紹介会社・従業員は、相手の方針と引継ぎの段取りで残り方が変わる

光田によれば、宗教者からの紹介は社長が築いてきた関係によるものが多く、社長が抜けると続きにくくなります。そのため光田は、どのような引継ぎ体制にするか、現社長がどう関わって残るかを、交渉の最初の段階で決めておくことを重視しています。譲り受ける側が、社長に2〜3年残って引き継いでほしいと提示してくるかどうかも、相手を見る手がかりの1つです。

インターネットの紹介会社との契約書には、株主が変わるときに事前の報告を求める条項が入っていることが多く、段取りよく報告すれば紹介が大きく減ることは少ないと光田は話します。ただし、譲り受ける側が紹介会社の利用をやめる方針の場合や、紹介会社が自ら施行を始めている地域では、譲渡後に紹介が減ることがあります。

従業員については、採用が難しい今、譲り受ける側の多くはできる限り残ってほしいと考えている、というのが光田の見方です。オペレーションの変化に社員が適応できるかどうかは、相手ごとに具体的に確かめておく論点になります。

御霊前の不祝儀袋

単独継続か譲渡か、時間軸と優先順位で決める葬儀社のM&Aの進め方

光田は、譲渡するかどうかより先に、譲渡までにどれだけ時間があるかと、何を優先するかを決めておくことを勧めています。

単独で続けるなら、商圏の死亡数と競合の出店を数字で確かめる

光田の考えでは、単独で続けることも十分にあり得る選択です。ただし、市場の環境が今より良くなることは考えにくく、単独で続けることだけを前提に考えるのは難しい場合があるというのが光田の見方です。商圏の死亡数がこの先どう動くか、近くに競合の出店計画がないかを数字で確かめ、譲渡や譲り受けの道も手元に残しておくと、状況が変わったときの選択肢が増えます。地域で売上10億〜20億円規模の葬儀社が周りの葬儀社をグループに迎えているように、自社が譲り受ける側に回る道もあります。

譲渡までの時間と相手のタイプで、今やる準備は変わる

今やるべきことを決める条件の1つが、譲渡までの時間です。光田によれば、譲渡が10年後という会社なら、これから3〜5年は出店して件数を増やすほうがよく、そのための借入も返していけばよいという考え方です。反対に、数年以内に譲渡を考えている会社が今から出店するのは得策ではないと光田は話します。出店から1年目は地域に知られておらず、件数が入りにくいためです。すでに出店した場合は、その会館がどう稼働していくかの事業計画をつくり、譲り受ける側に示して交渉することになります。

相手のタイプによっても準備は違います。光田によれば、ファンドへの譲渡を考えるなら、マルチプル法では借入金と現預金の差が評価に反映されるため、利益を残して現預金を積み増しておく準備が中心です。事業会社への譲渡を考えるなら、利益を出して純資産を厚くしておくことが評価につながります。

見落としに注意

守りたいものに順位をつけてから、相手の候補と会う

相手を見極める基準は、社長が何を優先したいかです。光田は、優先順位ごとに向く相手を次のように挙げています。屋号や社名を変えたくないなら、それを守る相手を選びます。社員のオペレーションを変えたくない場合の候補は、葬儀への参入を考えている異業種の会社です。企業価値を高く評価してほしいなら、利益率を上げられる相手が向いています。優先順位をつけたうえで、合いそうな会社を数社に絞って会っていくのが、光田の進め方です。

葬儀社のM&Aの流れを、葬儀社で決めておく点とあわせて並べると次のようになります。

  1. 相談と、自社の数字がどう見られるかの確認
  2. 優先順位に沿った相手候補の選定(屋号・オペレーションを変えたくないかどうかを先に伝える)
  3. 社長どうしの面談
  4. 条件の交渉と基本合意(現社長の残り方と、2〜3年の引継ぎの有無をここで決める)
  5. 譲り受ける側によるデューデリジェンス(事前の調査)
  6. 最終契約・決済と引継ぎ。紹介会社への株主変更の事前報告や、宗教者への説明は、4の段階で決めておいた段取りに沿って進めます

当社のコラムで取り上げた葬儀社の事例では、デューデリジェンスで会員制度や従業員の未払残業代などが確認の対象になりました。どこが見られるかを事前に知っておきたい場合は、こちらのコラムもおすすめです。
『葬祭業のM&Aにかかる重要な5つのポイント~葬祭業M&A事例紹介(2)~』

握手する経営者

【まとめ】葬儀・葬祭業のM&Aは、時間軸と守りたいものを先に決める

葬儀・葬祭業のM&Aは、上場企業どうしの統合から、地域の葬儀社どうしの統合へ移っています。譲り受ける側はドミナントと屋号を求めており、業績が良いうちに、出店に相手の資本を使う手段として譲渡を選ぶ葬儀社もあります。

評価は、光田が見てきた目安でEBITDAの3〜5倍程度まで下がりました。そのなかでも、会員の施行率、会館の持ち方、粗利率の改善余地、互助会の前受金の扱い、そして相手のタイプによって評価は動きます。譲渡後に屋号や現場の運営、紹介や社員の関係がどうなるかも、相手によって変わります。

いま決めるのは、譲渡するかどうかではなく、判断の材料です。単独で続ける場合も、譲渡や譲り受けを考える場合も、まず自社の商圏の死亡数と競合の出店予定を確かめ、譲渡を考える時期の目安を置いてください。出店を続けるか控えるかは、その時期の目安から逆算して決める判断です。譲渡を考えるなら屋号・社員・価格のどれを優先するかに、譲り受ける側に回るなら近隣のどの会社と組めばドミナントが強まるかに、それぞれ順位をつけておくと、次に会う相手が絞りやすくなります。譲渡するかどうかを決める前の段階でも、自社の数字が相手のタイプごとにどう見られるかを整理するところからご相談いただけます。

M&A・事業承継のご相談は、こちらから承っています。

M&A・事業承継の無料レポート一覧


当社では、葬儀業界専門のコンサルタントがM&Aをサポートしています。

葬儀業の出口戦略診断【葬儀業界】自社の「真価」を知る3点セット(出口戦略パッケージ)

よくある質問

Q. 葬儀社をM&Aで譲渡すると、屋号は変わりますか?

葬儀社のM&Aでは、屋号を残すのが基本です。葬儀は地域での認知が重要な商売で、屋号を変えると新しい会社が入ってきたように見え、シェアを落とすおそれがあるためです。当社代表取締役社長の光田卓司がこれまで手がけた案件でも、社名も会社もそのまま残す形が多くありました。例外は、すぐ隣の葬儀社と屋号をそろえたほうが相乗効果が出る場合や、社名は残して式場の名前だけを変える場合です。

Q. 葬儀社の売却価格はどのくらいが目安ですか?

当社代表取締役社長の光田卓司が支援の現場で見てきた目安では、事業の価値はEBITDAの3〜5倍程度で、譲渡価格はそこに現預金と借入金の差を加えて決まります。倍率は2016〜2018年ごろの8倍前後から、譲渡したい会社が増えた需給の変化と小型会館の普及で下がってきました。年買法で見る場合は、時価純資産に実態の利益の2〜4年分を足すのが目安です。会員の施行率、会館の所有か賃借か、粗利率の改善余地、相手のタイプによって評価は上下します。

Q. 互助会を運営する葬儀社でもM&Aはできますか?

互助会を運営する葬儀社でもM&Aはできますが、先に確認が要るのが前受金の扱いです。互助会は会員から受け取った前受金の半分を割賦販売法に基づき保全する必要があり、残りを会館の投資に使っている会社もあります。当社代表取締役社長の光田卓司は、企業価値を出すときに前受金で集めた資金を手元の現金とみなさず、借入金に近い負債として差し引く必要があると指摘しており、前受金の残高と保全の状況は価格に直接かかわります。

Q. M&Aで譲渡した後、社長や役員はどうなりますか?

葬儀社のM&Aでは、現社長が一定期間残って引継ぎを担うかどうかを、交渉の最初の段階で決めておきたい事項です。当社代表取締役社長の光田卓司によれば、宗教者からの紹介や地域の関係は社長が築いてきたものが多く、社長がすぐに抜けると施行件数が落ちるおそれがあります。光田は、譲り受ける側が2〜3年の引継ぎを提示してくるかどうかを、相手を見る手がかりに挙げています。

Q. 葬儀社はM&Aをやめたほうがよいのでしょうか?

M&Aが最善とは限らず、単独で続けることも選択肢の1つです。ただし当社代表取締役社長の光田卓司は、商圏の死亡数が減る地域や、死亡数が増えても競合の出店が増える地域では、市場の環境が今より良くなることは考えにくいと見ています。光田は、譲渡・譲り受け・単独継続を自社の規模と商圏の数字で比べ、選択肢を手元に残したうえで決めることを勧めています。出店を続けるかどうかも、譲渡までの時間で判断が分かれる点です。


葬儀社のM&Aを動画で見る

葬儀社のM&Aや事業承継について、当社代表取締役社長の光田卓司が話す動画をYouTubeで公開しています。画像を押すと、YouTubeで再生が始まります。

YouTube再生リスト「葬儀業界向け事業承継・M&A」

再生リスト「葬儀業界向け事業承継・M&A」
動画は順次追加します。
▶ YouTubeで再生リストを見る

光田卓司

(株)船井総研あがたFAS 代表取締役社長

2008年株式会社船井総合研究所(現株式会社船井総研ホールディングス)に入社。入社後は専門サービス業の経営コンサルティングに従事し、2019年より専門サービス支援部部長に就任。併せて、多数のM&A支援に従事。2022年同社M&A支援部部長に就任、同社M&A部門の成長を牽引した。2026年3月、株式会社船井総研あがたFASの代表取締役社長に就任。


光田卓司

(株)船井総研あがたFAS 代表取締役社長

2008年株式会社船井総合研究所(現株式会社船井総研ホールディングス)に入社。入社後は専門サービス業の経営コンサルティングに従事し、2019年より専門サービス支援部部長に就任。併せて、多数のM&A支援に従事。2022年同社M&A支援部部長に就任、同社M&A部門の成長を牽引した。2026年3月、株式会社船井総研あがたFASの代表取締役社長に就任。