2023年から2025年にかけて、葬儀業界の再編では、上場している葬儀会社同士の統合や、ファンドが保有していた葬儀社の譲渡が続きました。当社代表取締役社長の光田卓司は、2026年はこうした大きな案件が落ち着き、地域で売上10億〜20億円規模の葬儀社が、売上1億〜5億円規模の葬儀社をグループに迎える形が増えていると話しています。
光田は2008年に株式会社船井総合研究所に入社し、20年近く葬祭業の経営コンサルティングに携わってきました。支援してきた葬儀社は約160社で、地域で一番手の葬儀社から上場企業まで、規模の違う会社の経営を見てきました。全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)や日冠連経営者協議会、エンディング産業展などで講演も重ねています。葬祭業のM&Aには20件以上携わり、2022年に同社のM&A支援部の部長、2026年3月に当社の代表取締役社長に就きました。
インターネット上の相談でも、「大手がどんどん進出して中小企業は潰されています」という書き込みが見られる一方で、光田の話では、M&Aの面では全国規模の大手による取引よりも、同じ地域の葬儀社同士の統合が増えています。近隣の同業者が譲り受ける側に回るのか、自社が迎えられる側になるのかという話が、同じ商圏の葬儀社の間で起きるようになっている、というのが光田の見方です。
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葬儀業界の再編は2026年に何が変わったか
葬儀業界の動向を公表された取引で追うと、2023年から2025年までの再編の中心は上場企業とファンドでした。2026年に入ってからは、地域の中堅の葬儀社が再編の主役になっていると光田は見ています。
2023年から2025年に公表された大手の統合
この3年間には、上場している葬儀会社が関わる取引が続けて公表されています。いずれも各社の適時開示などで確認できる内容です。
| 公表時期 | 内容 | 出典 |
|---|
| 2023年10月 | 株式会社ティアが、日本産業推進機構のファンドが保有していた株式会社八光殿と株式会社東海典礼の持株会社2社の全株式を取得(取得価額はアドバイザリー費用等を含む概算で73億400万円) | ティアの適時開示(2023年10月24日) |
| 2024年7月 | 燦ホールディングス株式会社が、株式会社きずなホールディングスの株式を公開買付けで取得すると公表し、同年8月に成立 | 燦ホールディングスの適時開示(2024年7月12日・8月28日) |
| 2025年10月 | 燦ホールディングス株式会社とこころネット株式会社が、株式交換による経営統合を決定(2026年2月1日に効力発生) | こころネットの公表資料(2025年10月23日)・燦ホールディングスの決算説明資料 |
3件のうち、ティアの取引は地域に根差した葬儀社をファンドから引き継いだ例です。ティアの開示によると、八光殿は大阪府の八尾地域を中心に16施設、東海典礼は愛知県の東三河地域を中心に22施設の葬祭会館を運営していました。燦ホールディングスとこころネットは、経営統合の目的の一つに出店地域の相互補完を挙げています。
M&Aの手法や件数の推移を含めた、葬儀業界のM&Aの全体の動きについては、こちらのコラムもおすすめです。
『葬儀・葬祭業界のM&A動向とは?』

2026年は地域の葬儀社同士の統合が増えている
光田は、「2026年はもうそういった大きなM&Aというのは比較的落ち着いている」と話します。光田によると、代わりに、地域で売上10億〜20億円規模の葬儀社が同じ地域の売上1億〜5億円規模の葬儀社をM&Aでグループに迎える形が増えています。光田の表現では、地域の連合をつくる動きです。
当社が公開している葬儀業のM&A成功事例にも、2025年に山陰の葬儀社が山陰両県で葬祭事業を展開するグループへ事業を承継した例と、中国地方の葬儀社が同じ県内の葬儀グループへ株式を譲渡した例があります。どちらも、譲り受けた側は近隣で会館を構える葬儀社です。
年1,000件を超える地域グループの営業利益率は15〜20%が目安
地域の葬儀社同士が組む理由について、光田はドミナント(一定の地域に集中して会館を構えること)による生産性の差を挙げます。
光田の説明では、年間200件を施行する売上2億円の葬儀社の場合、1年365日のうち少なくとも165日は、式場も社員も売上を生まない日です。地域で年間1,000件を施行する葬儀社になると、毎日どこかの会館で葬儀があり、社員は会館を回りながら施行に入ることができます。
光田によると、年200〜300件・売上2億〜3億円の葬儀社の営業利益率は5%前後で、地域でドミナントを築いて年1,000〜2,000件を施行する会社では15〜20%、多いところでは25%まで上がります。業界の統計ではなく、光田が支援の現場で見てきた目安です。この差が、地域で規模を持つ葬儀社が近隣の会社を迎える動機になっています。

業界のライフサイクルで見る再編の段階
葬儀業界の今後を考えるにあたって、光田は再編の流れを業界のライフサイクル(成長期・成熟期・安定期)に重ねて説明しています。光田によると、式場を出して「家族葬」とうたえば顧客が集まった成長期は過ぎ、いまは家族葬がどの葬儀社にもある一般的なプランです。
2016年から2018年はファンドの参入とロールアップが進んだ
光田によると、2016年から2018年にかけて、PEファンド(未上場企業などに投資するファンド)が葬儀社への投資を始めました。ファンドが1社に投資すると、その会社を軸に周辺の葬儀社をM&Aで次々に迎えるロールアップが進みます。光田は、ファンドが入ると業界の再編が大きく進むと話しています。
ファンドの投資を受けた葬儀社の例として光田が挙げるのが、きずなホールディングスです。同社の2020年3月6日の開示によると、2020年3月に東証マザーズ(当時)へ上場する前の同年1月30日時点で、アドバンテッジパートナーズが運営するファンド(投資事業有限責任組合アドバンテッジパートナーズV号)が議決権の68.50%を持つ支配株主でした。
2023年ごろの出口を経て、いまは安定期への入り口にある
光田によると、ファンドは投資からおよそ5年で出口を迎えます。上場するか、次の譲受先へ株式を譲渡するかのどちらかです。ファンドが保有していた葬儀社の出口が重なった2023年ごろに、光田は業界が成熟期に入ったと見ています。日本産業推進機構のファンドが保有していた八光殿と東海典礼がティアへ移ったのも2023年です。ファンドの投資を受けて上場したきずなホールディングスも、2024年に燦ホールディングスの公開買付けを経て同社の子会社になりました。
成熟期の次に来る段階を、光田は「安定期」と呼んでいます。光田が衰退期という言葉の代わりに使う、市場が徐々に下がり始める時期の呼び方です。大型の取引が落ち着き、地域の葬儀社同士の統合が増えている今の状況を、光田はこの安定期への入り口と位置づけています。

譲渡を考える会社が増え、倍率は下がってきた
葬儀社の今後の企業価値に関わる変化として、光田は譲渡と譲り受けの需給と、価格のつき方の2つを挙げています。
譲り受けたい会社が多い局面から、譲渡を考える会社が多い局面へ
光田によると、ファンドが追加で迎える葬儀社を探していた時期は、譲り受けたい会社が多く、譲渡を考える会社は少ない状態でした。この局面では価格がつきやすくなります。安定期に向かうと、譲り受けたい会社が減り、譲渡を考える会社が増えていく流れです。
光田は、個々の取引の成立価格は公開できないとしたうえで、自身が携わった取引を振り返ると、倍率は年々下がってきていると話しています。
EBITDA倍率は8倍前後から3〜5倍へ
EBITDAは営業利益に減価償却費を足した数値で、葬儀社の企業価値を見るときの目安の一つです。光田が挙げた倍率の推移を、次の表にまとめました。
| 時期 | EBITDA倍率の目安 |
|---|
| 2016〜2018年ごろ | 8倍前後 |
| 2023年ごろ | 6倍程度 |
| 2026年現在 | 3〜5倍 |
光田は、倍率は会社の規模・ブランド力・地域の事情で変わるため一概には言えないと断ったうえで、この数字を示しています。譲り受ける側に特定の地域へどうしても出たい事情があることも、倍率を動かす要因の一つです。
会館が小さくなり、出店の回収が短くなった
倍率が下がった理由として、光田は需給の変化に加えて、会館の大きさの変化を挙げます。かつては多くの会葬者を迎えるために大きな会館が必要で、新たに出店すると投資の回収に10年ほどかかりました。この条件であれば、すでに会館を持つ葬儀社を8倍で譲り受けても見合うという判断が成り立ちます。
家族葬や一日葬、直葬が広がった今は、大きな式場が要らなくなりました。小さな会館なら5〜6年で回収できるため、M&Aで譲り受けるより自社で出店したほうが回収は早いと考える会社も現れるという構図です。光田は、譲り受ける側が出店と譲り受けを比べて判断するようになったことが、倍率を押し下げていると見ています。

死亡数が増えても葬儀社の今後が安泰とはいえない理由
葬儀業界の今後について、死亡数が増えるなら葬祭業はまだ伸びるのではないかと問われると、光田はそうとは言い切れないと答えます。
全国は2040年がピーク、地方には2033年がピークの地域もある
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」(出生中位・死亡中位)では、日本の死亡数は2040年の約167万人が最も多い推計です。
光田は、2040年まで死亡数が増えるのはあくまで日本全体の話であり、地方都市には死亡数がすでにピークを迎えている地域や、2033年にピークを迎える地域が多くあると話しています。死亡数が減っていく地域もあれば、死亡数は増えても競合が増えていく地域もあります。自社の商圏がどうなっているかを押さえたうえで経営を考える必要がある、というのが光田の指摘です。
件数は過去最多でも売上高は伸びていない
帝国データバンクが2024年12月8日に公表した調査では、経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」をもとに、2023年の葬儀業の年間取扱件数が50万件を超えて過去最多となった一方、売上高は5,944億円で、2017年の6,112億円に届いていないとしています。同じ調査は、家族葬など簡素な葬儀の需要が広がり、葬儀料金の低価格化が進んだことを、収益が伸び悩む要因に挙げています。
同調査によると、2024年1〜11月の葬儀社の倒産(負債1,000万円以上・法的整理)は12件、休廃業・解散は35件の計47件で、それまで年間で最も多かった2007年の42件を上回りました。
光田も、家族葬でも付加価値をつけて単価を確保し、出店の費用を回収するという従来の勝ち方は、単価を上げにくくなったことで難しくなっていると話しています。会館が小さくなって回収の年数は短くなった一方で、建築コストの上昇がその年数を押し戻している、というのが光田の説明です。

地域の葬儀社にとって再編で変わること
光田は、葬儀業界の再編が地域の単位で進み、地域で10億〜20億円規模の会社が譲り受ける側に回ると、売上10億円未満の会社は統合の対象になっていくと話しています。
譲り受ける側が求めるのはドミナントと地域のブランド
光田によると、地域の葬儀社を譲り受ける側が得たいものは、前述のドミナントの強化と、地域で長く続いてきた葬儀社のブランドの2つです。葬儀は地域密着の商売で、100年、150年と続く葬儀社の名前そのものに価値がある、と光田は話しています。
資本力のある会社が、離れた地域の葬儀社を譲り受けるケースもあります。光田の説明では、その地域で知られた屋号を引き継ぎ、周りに会館を出していくことで、年200件の会社を年500件、1,000件へ伸ばしていく狙いです。光田が携わったM&Aでは、譲り受けた後も社名と屋号を残すケースが多くありました。

業績が良いうちに組む相手を探す会社もある
光田が譲渡の相談で聞く事情は、業績の悪化よりも、伸ばし続けるための出店の負担です。新たに会館を出すには1億円近くかかります。自社で負債を抱えて出店を続けるより、資本力のある会社と組んで出店の速度を上げ、件数を増やして営業利益率を高めるほうが早く回収できるという考えから、M&Aを検討する会社があるというのが光田の説明です。
光田が支援する会社では、業績が良いときに一段の成長を目指して譲渡を検討するケースが多いといいます。M&Aは経営がうまくいかなくなった会社が選ぶもの、という受け止め方とは逆の事情です。
単独で続けるなら商圏の数字を先に押さえる
光田は、単独で続ける道も十分にありうると話しています。ただし、今より市場環境が良くなることはあまり考えにくく、単独の道だけで考えるのは難しい場合もあるので、いくつかの選択肢を持っておく必要がある、というのが光田の考えです。
当社は、考える材料として、自社の商圏の死亡数の見通し、近隣で会館を増やしている葬儀社の動き、自社の施行件数と営業利益率の3つを手元にそろえておくことをおすすめしています。地域の死亡数がすでにピークを過ぎているのか、まだ増えるのかによって、出店を続けるか、組む相手を探すかの判断は変わります。

【まとめ】葬儀業界の再編は地域の単位で進んでいる
葬儀業界の再編は、2023年から2025年の上場企業同士の統合とファンドの出口を経て、2026年は地域の中堅の葬儀社が近隣の葬儀社を迎える段階にある、というのが光田の見方です。光田の見立てでは、業界は成熟期から安定期に向かい、譲渡を考える会社が増えるなかで、EBITDA倍率の目安は8倍前後から3〜5倍へ下がってきました。
死亡数は全国では2040年まで増える推計です。一方で、地方にはすでにピークを迎えた地域や、2033年にピークを迎える地域があり、2023年の葬儀業の売上高は過去最多の件数のもとでも2017年の水準に届いていません。
次の一歩は、前の章で挙げた3つの材料を並べてみることです。葬儀業界向けの資料として、当社は【葬儀業界】出口戦略パッケージを無料で配布しています。葬儀業界の経営者向けの解説書と、企業価値算定シート、事業承継・出口戦略診断シートの3点です。自社の数字が今の倍率と地域の事情に照らしてどう見られるかは、当社が個別のご相談でお答えしています。
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よくある質問
Q. 葬儀業界の再編とは何ですか?
葬儀業界の再編とは、M&Aによって葬儀社が大きなグループにまとまっていく動きを指します。2023年から2025年は、ティアによる八光殿・東海典礼の持株会社の株式取得や、燦ホールディングスによるきずなホールディングスの子会社化など、上場企業が関わる取引が続きました。2026年は、地域で売上10億〜20億円規模の葬儀社が同じ地域の1億〜5億円規模の葬儀社をグループに迎える形が増えている、というのが当社代表取締役社長の光田卓司の見立てです。
Q. 葬儀業界は今後どうなると思いますか?
当社代表取締役社長の光田卓司は、葬儀業界は成熟期を経て、市場が徐々に下がり始める安定期に向かっていると見ています。全国の死亡数は2040年に約167万人で最も多くなる推計(国立社会保障・人口問題研究所)である一方、地方には死亡数がすでにピークの地域や、2033年にピークを迎える地域があります。単価も上げにくくなっているため、地域の葬儀社同士の統合が進むというのが光田の見立てです。
Q. 葬儀社のM&Aの倍率は下がっていますか?
下がっています。当社代表取締役社長の光田卓司によると、EBITDA倍率の目安は2016〜2018年ごろの8倍前後から、2023年ごろに6倍程度、2026年現在は3〜5倍へ移ってきました。譲り受けたい会社が減って譲渡を考える会社が増えたことと、家族葬の広がりで会館が小さくなり、自社で出店しても5〜6年で回収できるようになったことが背景です。実際の倍率は、規模やブランド力、地域の事情によって変わります。
Q. 死亡数が増えるなら、葬儀社は今後も儲かる事業ですか?
死亡数が増えても、売上と利益が増えるとは限りません。帝国データバンクの調査では、2023年の葬儀業の取扱件数は50万件を超えて過去最多となった一方で、売上高は5,944億円と2017年の6,112億円に届いていません。同調査は、家族葬など簡素な葬儀の広がりと、葬儀料金の低価格化を要因に挙げています。2024年1〜11月には、葬儀社の倒産と休廃業・解散が計47件となり、年間の最多を更新しました。
Q. 地域の葬儀社は、再編のなかでいつ動けばよいですか?
当社代表取締役社長の光田卓司は、譲渡・譲り受け・単独継続のどれを選ぶかは急いで決めなくてよいとしたうえで、業界も地域の顧客の考え方も変わり続けるため、選択肢を早めに整理しておくよう話しています。譲渡を考え始めている場合は、新たな出店を控えるかどうかを早めに判断しておくことが一つの手です。光田によると、新たに出した会館は1年目には件数が入りにくく、譲り受ける側との交渉で数字の裏づけを示しにくいためです。
葬儀社のM&Aを動画で見る
葬儀社のM&Aや事業承継について、当社代表取締役社長の光田卓司が話す動画をYouTubeで公開しています。画像を押すと、YouTubeで再生が始まります。

再生リスト「葬儀業界向け事業承継・M&A」
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