この記事では、後継者不在に悩む動物病院の院長に向けて、廃業を回避し地域医療を守るためのM&A・事業譲渡について解説します。読了後には、自院がいくらで評価されるかの目安と、トラブルなく引退するための具体的な手順が理解できるようになります
経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。 プロの目利きで自院の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。
【動物病院専門】「出口戦略」診断で自社の価値を正しく守る。ベストな承継を実現するための第一歩。

そもそも動物病院M&Aとは? 地域の医療を次世代へつなぐ「たすき掛け」
「M&A」と聞くと、大企業同士の合併や、乗っ取りのような冷徹なイメージを持つ先生も多いかもしれません。しかし、動物病院業界におけるM&Aは、「地域の動物医療インフラを次世代へつなぐ、たすき掛け」という意味合いが非常に強いものです。
長年、地域密着で診療を続けてきた先生にとって、閉院は苦渋の決断です。「飼い主さんを路頭に迷わせたくない」「スタッフの雇用を守りたい」という想いがあっても、後継者がいなければ、最終的には廃業を選ばざるを得ません。しかも、廃業には医療機器の処分やテナントの原状回復など、多額のコストがかかります。
M&A(事業譲渡・株式譲渡)を活用すれば、病院という「ハコ」だけでなく、先生が培ってきた「信頼」や「カルテ(患者基盤)」、そして「スタッフ」をそのまま引き継ぐことができます。買い手となる企業や個人獣医師に経営をバトンタッチすることで、先生は創業者利益を得てリタイアでき、患者さんはいつもの場所で診療を受け続けられる。 まさに「三方よし」の解決策なのです。
動物病院の事業譲渡についてより詳しく知りたい方はこちら
動物病院M&Aの「成功」を決める3つの条件
動物病院のM&Aにおいて、買い手企業は単に「売上」や「立地」だけを見ているわけではありません。実は、「先生が引退した後も、その病院が回り続けるか?」 という一点を最もシビアに見ています。ここでは、評価額を大きく左右する3つの分岐点について解説します。
「常勤獣医師」が院長以外に在籍しているか
現場の実務を知るM&Aコンサルタントとして、あえて厳しいことを申し上げます。「院長以外に常勤の獣医師がいるかどうか」が、評価額を分ける最大のポイントです。
多くの個人病院では、院長先生お一人で診療を回されているケースが少なくありません。しかし、M&Aで院長先生が引退された場合、その病院の「診療機能」はゼロになってしまいます。買い手からすれば、獣医師を一から採用しなければならず、リスクが非常に高い案件と判断され、評価額が伸び悩む(あるいは買い手がつかない)原因となります。
逆に、若手の常勤獣医師が育っており、院長がいなくても診療が回る体制であれば、それは「組織として機能している」とみなされ、高い評価がつきます。もし現在、常勤医がいない場合は、譲渡後もしばらく先生が診療を続ける「ロックアップ期間」を設けることで、評価を維持する交渉が必要になります。
買い手企業が「後継獣医師」を派遣できるか
売り手(先生)側から見た「成功の条件」として重要なのが、買い手の「人材供給力」です。
動物病院のM&Aは、単にオーナーが変わるだけでは済みません。先生が引退した後、誰が診察室に座るのか? その「後継獣医師」を派遣できる体力のある買い手を選ばなければ、M&Aは成立しません。
近年、動物病院を積極的に買収している大手グループ病院の中には、豊富な獣医師プールを持ち、譲渡と同時にエース級の獣医師を院長として派遣できる企業もあります。一方で、資金力はあっても人がいない企業に売却してしまうと、結局先生がいつまでも引退できないという事態になりかねません。「お金」だけでなく、「人」を持っている相手かどうかが、幸せな引退の条件です。
地域の「医療連携エリア」に含まれているか
意外に見落とされがちなのが、買い手企業の「ドミナント戦略(地域集中出店)」です。
例えば、先生の病院の近隣に、すでに買い手グループの分院がある場合、その案件は非常に高く評価されます。理由は、「スタッフの融通」と「医療連携」が可能になるからです。
「A病院のCTが空いていないから、近くのB病院(今回買収する病院)で撮影しよう」「B病院で欠員が出たから、A病院からヘルプを出そう」といった相乗効果(シナジー)が見込めるため、単独での収益価値以上の値段がつくことがあります。これを踏まえ、ご自身の病院の近くにどのグループが進出しているかを知っておくことも、戦略の一つです。
【実録】動物病院M&Aの流れと期間 プロセス
M&Aの検討から最終的な譲渡完了までは、一般的に半年〜1年程度の期間を要します。ここでは、実際の現場でどのようなことが行われるのか、そのプロセスを解説します。
相談からマッチングまで:情報はどこから漏れる?
まずはM&A仲介会社と契約し、病院の財務状況や希望条件を整理します。その後、買い手候補への打診(マッチング)が始まりますが、ここで最も注意すべきは「情報の漏洩」です。
動物病院業界は非常に狭い世界です。「〇〇先生が病院を売るらしい」という噂が広まれば、スタッフや患者さんの不安を招き、最悪の場合、売却前にスタッフが辞めてしまうこともあります。
信頼できる仲介会社は、初期段階では病院名を伏せた「ノンネームシート」を使用し、秘密保持契約(NDA)を結んだ買い手候補にだけ詳細を開示します。「どこから情報が漏れるか不安」という先生は、情報管理の徹底を約束してくれる専門家に相談することが第一歩です。
「自分の病院はいくらで売れる?」秘密厳守で無料査定をご希望の方は、動物病院に特化したM&A資料をダウンロードするか、専門コンサルタントにご相談ください。

デューデリジェンス(買収監査)で見られるポイント
基本合意に至ると、買い手による詳細な調査、いわゆる「デューデリジェンス(DD)」が行われます。
ここでは、決算書の数字だけでなく、「カルテの管理状況」や「未払い残業代の有無」などが厳しくチェックされます。
特に動物病院で問題になりやすいのが、アットホームな経営ゆえの「労務管理の曖昧さ」です。「みんな家族みたいなものだから」と、残業代を払っていなかったり、雇用契約書がなかったりすると、DDで指摘され、譲渡価格から差し引かれる(減額される)可能性があります。隠し事はせず、事前に専門家と相談して整備しておくことが重要です。
動物病院におけるデューデリジェンスの注意点について詳しく知りたい方はこちら
最終契約とクロージング:スタッフへの公表タイミング
最終契約書に調印し、譲渡代金の決済が終われば、M&Aは完了(クロージング)です。しかし、現場としてはここからが正念場です。
「スタッフにいつ、どう伝えるか」。これはM&Aの成否を分ける最もデリケートな問題です。
早すぎれば動揺を招き、遅すぎれば「裏切られた」と不信感を持たれます。一般的には、クロージングの直前、または直後に、新オーナー(買い手)同席のもとで説明会を開くケースが多いです。ここで、「雇用条件は変わらないこと」「先生も当面は顧問として残ること」をしっかりと伝え、スタッフの安心感を醸成することが、スムーズな引き継ぎのコツです。
院長が最も気にする「譲渡価格(手数料)」と「M&Aトラブル」
やはり気になるのは「お金」のことと、譲渡後の「トラブル」でしょう。ここでは、綺麗事抜きのリアルな実情をお話しします。
動物病院の売却価格はどう決まる? 純資産+営業権の真実
動物病院の譲渡価格は、一般的に以下の計算式で目安が算出されます。
時価純資産 + 営業権(のれん代:営業利益の2〜5年分)
「時価純資産」とは、現在保有している医療機器や内装などの資産価値から、負債を引いたものです。これに、病院の「稼ぐ力(営業利益)」の数年分を「のれん代」として上乗せします。
ただし、先述の通り、「常勤獣医師がいるか」「立地が良いか」によって、のれん代の倍率は大きく変動します。赤字であっても、好立地で患者数が多い場合は、高値がつくこともあります。
仲介手数料の仕組みと「完全成功報酬」のメリット
M&A仲介会社への手数料は、一般的に「レーマン方式」と呼ばれる計算式(譲渡額の〇%)で決まりますが、注意すべきは「着手金」や「中間金」です。
成約しなくても発生する着手金が必要な会社もありますが、最近は「完全成功報酬型(成約しなければ0円)」の会社も増えています。初期リスクを抑えたい場合は、こうした料金体系の会社を選ぶのが賢明です。
動物病院における仲介手数料の相場について詳しく知りたい方はこちら
よくあるトラブル:譲渡後の「スタッフ総辞職」を防ぐには
最も恐れるべきトラブルは、「M&Aをきっかけにスタッフが全員辞めてしまうこと」です。
買い手が変わったことで、「経営方針が合わない」「ドライなやり方についていけない」と、スタッフが反発するケースは珍しくありません。
これを防ぐためには、買い手選びの段階で「現場の文化を尊重してくれる相手か」を見極めることが重要です。獣医師同士の横のつながりで、「あそこのグループに買収された病院、スタッフがみんな辞めたらしいよ」といった口コミはすぐに回ります。条件面だけでなく、「人を大切にする企業風土」を持っているかを、面談で見抜く必要があります。
動物病院M&Aのメリット・デメリット
メリット:創業者利益の確保と「診療」の継続
最大のメリットは、「廃業コストがかからず、むしろ退職金代わりのまとまった資金(創業者利益)が手に入る」ことです。借入金の個人保証からも解放され、老後の不安を一掃できます。
そして何より、「先生が築き上げた病院が残り、患者さんが路頭に迷わない」という事実は、獣医師としての誇りを守る大きな救いとなるはずです。
デメリット:ロックアップ期間と経営方針の変化
一方でデメリットとしては、譲渡後すぐに引退できるとは限らない点です。買い手から「引き継ぎのために1〜3年は院長として残ってほしい」と要請されることが多く、これを「ロックアップ」と呼びます。
また、経営権が移るため、診療方針や使用する薬剤、料金体系などが買い手の方針に変更される可能性があります。「自分の城」ではなくなる寂しさを感じる先生もいらっしゃいます。
【まとめ】動物病院M&Aを成功させるために
動物病院のM&Aは、先生ご自身の人生と、スタッフ・患者さんの未来を守るための前向きな選択肢です。
しかし、その成功は「自院の適正な評価」と「最適なパートナー(買い手)選び」にかかっています。まずは一人で悩まず、動物病院業界に精通した専門家に相談し、「自分の病院にはどんな価値があるのか」を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。
その分野については、M&Aシニアエキスパートなどの資格を持つ「M&A仲介会社」のアドバイザーに相談することをお勧めします。彼らは弁護士や税理士とも連携しており、法務・税務を含めたトータルなサポートが可能です。
まずは、船井総研あがたFASへ相談いただくか、各業界に特化したM&A、事業承継に関する資料をダウンロードして、情報収集から始めてみてください。
知識を得るだけでは、未来は変わりません。 激変する環境下で、貴社の選択肢が狭まってしまう前に『攻めの出口戦略』を。
独自のノウハウを凝縮した出口戦略診断ツールをダウンロードし、 その上で、プロの目利きで『自院の真価』を直接確かめる。
経営者としての集大成を、最も価値ある形で次へ繋ぐ準備は、今、ここから始まります。
【主導権を握れるうちに、一度プロの視点で「最良の出口」を可視化しませんか?】


動物病院のM&Aにおいてよくあるご質問
Q. 赤字の動物病院でもM&Aで売却できますか?
A. 可能です。好立地で患者基盤があれば、買い手の経営ノウハウで黒字化できるため、評価額がつくケースが多くあります。
Q. 院長である私は、譲渡後すぐに引退できますか?
A. 多くの場合は1〜3年の「ロックアップ(引き継ぎ期間)」が求められますが、条件交渉次第で短縮も可能です。
Q. 従業員にM&Aのことを知られずに進められますか?
A. 可能です。最終契約直前までは情報を伏せる「秘密保持契約」を結び、水面下で交渉を進めるのが一般的です。
Q. 買い手企業はどのように探せばよいですか?
A. 動物病院に特化したM&A仲介会社に依頼し、全国の獣医師ネットワークや大手グループから候補を探すのが確実です。
Q. 譲渡価格はどのように計算されますか?
A. 「時価純資産」に、病院の収益力(営業利益の2〜5年分)を「のれん代」として上乗せした金額が目安となります。