動物病院

【動物病院の事業譲渡】院長とスタッフを守るための「失敗しない」承継ガイド

この記事では、後継者不在に悩む動物病院の院長に向けて、事業譲渡(M&A)の具体的な手順と、買い手から高く評価されるポイント、そしてスタッフを守るための実務上の注意点を解説し、読了後には具体的な承継の第一歩が踏み出せるようになります。 

動物病院のM&Aにおける全体像をまずは知りたい方はこちら


経営の正解は、一つではありません。 まずは出口戦略の『選択肢』を可視化する診断ツールを手に取り、 次なるステージへの展望を具体化する準備を始めてください。 プロの目利きで自院の『真価』を知ること。それが、後悔のない決断への第一歩です。

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動物病院の「事業譲渡」とは? 廃業を避け、地域医療を未来へ繋ぐ最良の選択肢 

「自分の代で病院を閉めるしかないのか……」
長年、地域の動物たちと飼い主様に寄り添ってきた先生にとって、廃業という選択は身を切るような辛さがあることとお察しします。しかし、「事業譲渡」という選択肢をとれば、病院という「箱」だけでなく、先生が築き上げた「信頼」と「スタッフの雇用」を次世代へ引き継ぐことができます。 

事業譲渡とは、会社法において、事業の全部または一部を第三者に譲り渡す行為を指します。動物病院においては、カルテ(患者様)、医療機器、スタッフ、そして病院のブランド(のれん)を有償で他の獣医師や企業へ引き継ぐ手続きとなります。 

 なぜ今、動物病院の「事業譲渡(M&A)」が急増しているのか

かつては「親族承継」が当たり前でしたが、現在は獣医師の子息が必ずしも獣医師になるとは限らず、また獣医師になっても「開業リスク」を嫌って勤務医を続けるケースが増えています。  

一方で、ペットの飼育頭数は減少傾向にありながら、動物医療の高度化により1病院あたりの負担は増しています。新規開業を目指す若手獣医師にとっても、ゼロから病院を作るより、既存の患者基盤がある病院を引き継ぐ方がリスクが低いため、売り手(引退したい院長)と買い手(開業したい獣医師・規模拡大したいグループ)のニーズが合致し、M&A件数は急増しているのです。  

「株式譲渡」と「事業譲渡」の違い【会社法・条文の基礎知識】

法人の場合、「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つの手法がありますが、個人事業主の動物病院の場合は必然的に「事業譲渡」となります。 

  • 株式譲渡: 会社の「株」を渡すことで、経営権を丸ごと移転させます。許認可や雇用契約もそのまま引き継がれるため、手続きは比較的シンプルです。

  • 事業譲渡: 事業の資産(設備、カルテ、契約関係)を個別に特定して移転させます。これを「特定承継」と呼びます。重要なのは、従業員の雇用契約や賃貸借契約などは自動的には引き継がれず、相手方の同意を得て「巻き直し」が必要になる点です。

事業譲渡譲渡を用いたM&Aについて詳しく知りたい方はこちら

【査定の真実】買い手が「喉から手が出るほど欲しい」病院の条件 

「うちは建物も古いし、最新のCTもないから売れないだろう」
そう諦めている先生が多いのですが、実は買い手が見ているポイントは、先生が思っている場所とは全く違うところにあります。 多くのM&A現場を見てきた経験から断言します。  

 設備よりも「人」!  院長以外の「常勤獣医師」がいるか 

買い手企業が最も重視する指標、それは売上高でも最新機器でもなく、「院長以外に、常勤の獣医師が在籍しているか」です。 

院長先生お一人で回している病院の場合、M&A直後に先生が体調を崩されたら、その瞬間に病院の機能は停止します。買い手にとってこれは最大のリスクです。逆に、右腕となる勤務医の先生がいらっしゃり、その方が承継後も(たとえ数年でも)残ってくれるのであれば、病院の評価額は跳ね上がります。「人」こそが最大の資産なのです。 検診をする動物病院・獣医師

 エリア戦略の鍵を握る「立地」と「ドミナント展開」 

「なぜ、うちのような普通の病院に大手のグループからオファーが?」と驚かれることがあります。
大手グループは、特定の地域に集中して出店する「ドミナント戦略」をとることがあります。近隣にグループ病院があれば、「難しい手術は本院へ送る」「スタッフが足りない時は融通し合う」といった連携が可能になります。
先生の病院の立地が、彼らのネットワークを補完する場所にある場合、単独での収益性以上の価値(シナジー効果)を見出してもらえるのです。 

 「特定承継」としての注意点:スタッフの雇用契約はどうなる?

事業譲渡において最もデリケートなのがスタッフの処遇です。前述の通り、事業譲渡では雇用契約は自動承継されません。 

形式上は「先生の病院を退職し、買い手の会社に再就職する」形をとります。この時、給与や待遇が維持されるかどうかが、スタッフが残留してくれるかの分かれ目になります。買い手選びの際は、提示金額だけでなく「スタッフの待遇を維持してくれるか」を最優先条件にすることを強くお勧めします。 

3. 動物病院の事業譲渡「完全成功」への5ステップ【流れ】

M&Aは相手探しから成約まで、通常半年〜1年程度かかります。 この章では、事業譲渡の成功のために進めていく5つのステップについて解説します。

【STEP1】準備・磨き上げ:決算書よりも見られる「カルテ」と「労務」 

まずは「見せられる病院」にする準備です。財務はもちろんですが、買い手が気にするのは「未払い残業代がないか」という労務リスクです。動物病院業界は長時間労働が常態化しがちですが、M&Aのデューデリジェンス(買収監査)ではここが厳しく見られます。今のうちに専門家に相談し、整理しておきましょう。 

 【STEP2】相手探し:同業者か、大手グループか

マッチングサイトに登録する方法もありますが、動物病院は地域性が強いため、噂が広まると「あそこの病院、潰れるらしいよ」と誤解を招くリスクがあります。秘密保持を徹底できる専門の仲介会社を通じ、水面下で候補を探すのが鉄則です。  

マッチングサイトについて詳しく知りたい方はこちら

 【STEP3】基本合意・デューデリジェンス 

候補先が見つかったら、トップ面談を行います。ここで大事なのは、「先生の診療方針や動物への想い」に共感してくれる相手かどうかです。条件面だけでなく、人間的な相性を確認してください。 

その後、買い手による詳細な調査(デューデリジェンス)が行われます。 

 【STEP4】最終契約とスタッフへの公表(Xデー) 

ここが最大の山場です。最終契約を結んだ後、スタッフに公表しますが、伝える順番と伝え方を間違えると、総退職という最悪の事態を招きます。
「自分たちが大事にされていない」と思われないよう、「なぜ譲渡するのか(病院を存続させたいから)」「みんなの雇用は必ず守る」というメッセージを、先生自身の言葉で誠実に伝える必要があります。 

 【STEP5】クロージングと引継ぎ(商号続用など) 

無事に譲渡が完了した後も、すぐに引退できるわけではありません。患者様への安心感のため、半年〜1年程度は「顧問」や「雇われ院長」として残り、徐々にバトンタッチしていく期間(ロックアップ期間)を設けるのが一般的です。 

事業譲渡契約書・必要書類のチェックリスト【雛形・注意点】

 契約書に盛り込むべき必須条項(競業避止義務など) 

ネット上にある「事業譲渡契約書 雛形」を安易に使うのは危険です。動物病院特有の事情(例:カルテの引き継ぎ方法、入院患畜の取り扱い)が含まれていないからです。 

特に注意すべきは「競業避止義務」です。譲渡後、先生が近くで別の病院を開業しないよう制限する条項ですが、範囲(エリア・期間)が広すぎると先生のセカンドライフ(例えば、ボランティアでの診療など)に支障が出る可能性があります。 

行政手続き:開設届出事項変更と廃止届  

事業譲渡の場合、保健所への手続きは「開設者の変更」ではなく、一度「廃止届」を出し、買い手が新たに「開設届」を出す形式になることが一般的です(自治体により異なります)。X線装置などの許認可も再取得が必要になるため、行政書士等のプロと連携してスケジュールを組む必要があります。 


事業譲渡の準備や、自院の市場価値が気になる方は、動物病院に特化した事業承継・M&Aに関する資料をダウンロードするか、専門コンサルタントにご相談ください。 

【まとめ】動物病院の事業譲渡は「終わり」ではなく、獣医療の「新しい始まり」 

動物病院の事業譲渡は、先生が命を削って守ってきた病院を、次の世代へと託す神聖な儀式です。 

「高く売れればいい」という簡単な話ではありません。そこにいるスタッフ、通い続けてくれる飼い主様、そして動物たちの未来を守るための選択です。

一人で悩まず、まずは専門家の知見を借りてください。M&Aは、先生にとっても、病院にとっても、幸せな「次の一歩」になるはずです。 

専門家への相談を検討される際は、動物病院業界の知見が豊富な船井総研あがたFASへご相談いただくか、まずは各業界に特化したM&A、事業承継に関する資料をダウンロードして、情報収集から始めてみてください。

知識を得るだけでは、未来は変わりません。 激変する環境下で、貴社の選択肢が狭まってしまう前に『攻めの出口戦略』を。

独自のノウハウを凝縮した出口戦略診断ツールをダウンロードし、 その上で、プロの目利きで『自院の真価』を直接確かめる

経営者としての集大成を、最も価値ある形で次へ繋ぐ準備は、今、ここから始まります。

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動物病院の事業譲渡における手数料についてよくあるご質問

Q. 動物病院の事業譲渡の相場はどれくらいですか?

A. 一般的には「修正純資産+営業利益の2〜5年分(のれん代)」が目安です。ただし、常勤獣医師の残留有無や立地条件により評価額は大きく変動します。 

Q. 個人経営の動物病院でもM&Aは可能ですか?

A. 可能です。個人事業主の場合は「事業譲渡」という手法を用います。資産や契約を個別に引き継ぐため、法人よりも手続きは煩雑になりますが、多くの事例があります。

Q. 従業員(獣医師・看護師)の雇用は継続されますか?

A. 事業譲渡では雇用契約は巻き直しとなりますが、買い手側もスタッフの継続雇用を望むケースがほとんどです。同条件での再雇用が一般的です。 

Q. 譲渡後、院長はすぐに引退できますか?

A. 患者様やスタッフの安心のため、半年〜1年程度は顧問等の形で残り、徐々に引き継ぐ期間(ロックアップ)を設けるケースが大半です。

Q. 借金(負債)がある状態でも譲渡できますか?

A. 可能です。事業譲渡の場合、買い手は負債を引き継がず、譲渡代金で売り手が負債を返済するスキームが一般的です。 

長谷川光太郎

(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント

国内大手メーカー勤務を経て、2018年に船井総研に入社。歯科医院の経営コンサルティングに従事し、現在は歯科医院・医療法人の事業承継全般の支援を行っている。医療法人特有の事業承継に関わる知見を有し、譲渡側・譲受側双方からの信頼が厚い。

長谷川光太郎

(株)船井総研あがたFAS チーフコンサルタント

国内大手メーカー勤務を経て、2018年に船井総研に入社。歯科医院の経営コンサルティングに従事し、現在は歯科医院・医療法人の事業承継全般の支援を行っている。医療法人特有の事業承継に関わる知見を有し、譲渡側・譲受側双方からの信頼が厚い。